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2016年元旦の日経新聞。経営者の株価予想を今読み返す。

2016年1月1日。20人の大企業経営者の日経平均株価予想とは?

毎年、夏以降に相場が荒れてくると、その年の正月の株価予想ってどんなものだったか、気になります。でも、だいたいその時点では忘れてしまっています。

 

それ以外でも、自信満々なアナリストが、数カ月前(場合によっては数週間とか数日前)にどんな予想を述べていたのか、覚えておいた方が良いなと思うことがあります。

ものすごく自信ありげな態度で予想をし、結果が大外れでもまったく反省しないアナリストは多いです。そういう人に惑わされないように、外れても謝らないアナリストは、最初から無視した方が良いですね。

 

さて、今日の本題ですが、経営者による元日の株価予想です。今年は、1月1日の日経新聞をわざわざ残しておきました。他人の株価予想を聞くことの無意味さや、自分の予想が外れることを前提に投資行動をとるべきだ、といったことがわかります。

 

 

20人の文殊の知恵。最高値24000円。最安値17000円。

誰の予想が当たったとか外れたとか、そういうことを言いたいのではないです。(まあ全員外れているのですが。)経営者の実名を挙げて、予想結果とすり合わせることはしません。

 

ただ以下のように、日本を代表する大企業の経営者20人の予想です。素人ではないはず。

アサヒ、セコム、三越伊勢丹、伊藤忠、信越化学、三菱地所、SMBC日興証券、三菱ケミカル、富士フイルム、TDK、日本ガイシ、ユニ・チャーム、ダイキン工業、東京海上、日本電産、味の素、大和ハウス、大和証券、カルビー、富士重工。

 

下の表は、2016年の日経平均株価の、最高値と最安値予想です。その時期も予想しています。20人分です。

最高値(時期) 最安値(時期)
22500(12月) 18500(5月)
22000(12月) 18000(9月)
22000(10月) 18000(1月)
21000(5月) 17000(1月)
24000(12月) 18000(4月)
22000(12月) 18000(9月)
22500(11月) 18500(5月)
22000(12月) 18000(5月)
22000(6月) 18000(2月)
22000(6月) 18000(11~12月)
23000(12月) 18000(3月)
23000(12月) 18000(2月)
22000(8月) 18000(3月)
22500(6月) 17000(10月)
22000(11~12月) 18000(1~2月)
22000(12月) 18000(1~3月)
23000(6月) 18000(2月)
23000(7月) 18000(10月)
22500(12月) 19000(1月)
21000(7月) 18000(12月)

 

2016年5月17日終了時点で、日経平均株価は16600円ほどの水準です。今のところ、最高値は1月4日(初日です!)の18951円、最安値が2月12日の14865円です。

少なくとも最安値については、20人の経営者全員はずれです。

 

正月から不景気な予想はできないでしょうが‥‥

一応フォローしてみると、おめでたい元旦早々、安値の予想をして、「今年は不景気になる!」と主張するのは気が引けるでしょう。世間に先行き不安感を与え、景気にも悪影響ですし、自社の社員の士気も下がります。

株価の下落を予想するということは、政府の経済政策が失敗すると言っていることと同義なので、こちらも躊躇します。政権や政府に対し、率先して喧嘩を売ることになるからです。

まあそういう大人の事情で、楽観的な予想を出したくなるのでしょう。あと気付くのは、年後半に高値が来ると予想した人が多いことです。これは、2015年終盤の雰囲気のまま、予想をしたのだと思います。

 

予想はその時点の空気に流される

だいたい、アナリストとかストラテジストの予想も、その時点の雰囲気や空気に沿ったものになりがちです。

相場が急落したときには、「専門家に聞く下値のめど」のような記事が必ずありますが、それを1週間後にあらためて読むと、ほとんどはずれています。

逆に相場が堅調で、じり高が続いているときに今後の見通しを聞くと、相当な高値を予想しますが、それもかなり怪しいです。

 

 

株価予想の教訓は、当たらないと知っておくこと。

そういうわけで、今回の記事の教訓は、

「株価予想は当たらない。他人の株価予想は無視せよ。自分の先行き予想も当たらないことを前提に、リスク管理して投資しろ。」

ということです。

株式市場や金融市場がどうなるか、あるいは個別銘柄がどうなるか、こういった予想は当たらないと認識しましょう。予想が当たることもありますが、外れることを前提にリスク管理をしましょう。最大損失額こそ、予測しておくべきです。

 

最大損失額をコントロールする

今の自分の総資産(総資金量)、何にいくら投資しているかを把握しておくのが重要です。株価予想をするより、自分のリアルな資産状況を知っておくことの方が大切ですね。

そのうえで、自分がどれだけの損失なら受け入れられるか。株式市場が50%暴落するなど、最悪の場合に保有するリスク資産はどれだけ減るか、それに耐えられるか、そちらを予想するべきです。

逆に言うと、リスク資産への投資比率をコントロールできれば、かなり穏やかに暮らせます。自分で受け入れられる範囲内に損失が収まれば、納得できます。私はあまり損切りは使わず、レバレッジを低くする方向でやっています。

 

 

個人的には、日本株からは撤退しました

最後にどうでもいい個人的な話ですが、私は日本株投資から、ほぼ撤退しました。世界全体の株式市場にインデックス投資する、というのもやっていますので、TOPIX連動のETFなどはお付き合い程度で買っています。でも、積極的に日本株を買うのはやめました。

これは、今後の日本株が下がると思うから、ではなくて、政府の介入が多くなってきたためです。政治が介入してくるので、日本株への興味がほとんどなくなりました。

最近は、日本の株式市場の売買代金が落ちているようです。個人投資家や中長期の機関投資家は、けっこう離れてしまったのではないでしょうか。これだけ公的年金や日銀などに、滅茶苦茶に市場を荒らされると、うんざりしてしまいます。

 

国家資本主義下の市場には参加したくない

私はこれまで、まったく中国株やロシア株に興味がなかったのですが、それは政府が大株主だからです。政府が政治的要因で企業に直接介入する、そういう株は買いたくありません。残念ながら、日本株もだんだんそうなってきています。

4月に、日銀が追加緩和するかどうかで騒ぎになりました。追加緩和策の有力な候補で、ETFの買い増しというのもありました。日銀が1年で10兆円のETFを買う、とゴールドマンサックスの人が言い出して、私はびっくりしました。

 

4月は見送りましたが、いずれETFも日銀が買うのでしょう。

どうなんですかね、日経平均株価の採用銘柄になるような日本の上場企業は、超大企業ばかりですが。そんな会社の筆頭株主が日銀、2番目の大株主が公的年金、3番目がゆうちょ銀行、4番目が財務大臣。

そんなふうになって、日本は資本主義国家ですか?国家資本主義の統制経済ですか?私は、国家資本主義の統制経済に支配された会社の株は、買いたくないんですねー。

 

そういうわけで日本株は、お付き合いとして、TOPIX連動ETFを低比率で買うだけです。あとは、日経平均先物のミニを、低レバレッジで売買して遊んでいます。

2014

(当ブログで)今年もっとも検索された投資本・ビジネス書ランキング2014

このブログの記事は、SNSなどで紹介されて数多くの人に読まれる、ということはほとんどありません。ほぼすべてが、検索エンジンから来ていただく方です。

当ブログの書評記事については、書名や著者名、関連キーワードを検索することで訪問していただいております。そのためページビューのランキングは、関心の高さに比例すると考えてよいと思います。

2014年1月1日から2014年12月30日の間の、ページビューによるベスト10です。なお、すべての書評記事が対象ですので、古い記事の方が有利です。2014年12月に紹介した本などは当然不利になりますが、その点は無視して集計しています。

第1位

書評はこちら

「新・投資信託にだまされるな! 買うべき投信、買ってはいけない投信」 竹川美奈子(著)

栄光ある第1位は、投資信託の解説本でした。昔ベストセラーになった本の改訂版で、初心者でも読める良識的な内容です。こちらは、年前半は全くアクセスがなかったのですが、年後半に検索数が増えてきました。

「今買うべき 投信」「買うべき 投資信託」のような語句での検索が多かったです。NISA口座の今年の非課税枠が年末で締切となるので、年末にかけページビューが増えたのかと推測します。

第2位

書評はこちら

「投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識」 ハワード・マークス(著)

こちらも年前半はさっぱりで、年後半にかけて検索が増えた本です。どこかで取り上げられたのでしょうか。書名そのままの検索か、「投資で一番大切」のような語句で検索されている印象です。

長年成功してきた投資家の著作です。内容は、金融商品の本質的価値を見抜き、市場の熱狂から離れることの重要さを説いています。ウォーレン・バフェット氏も推薦しています。

第3位

書評はこちら

「中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ」 遠藤誉(著)

これはかなり異色ですが、突発的にアクセスが増加してランキングに入った本です。具体的には、薄熙来氏の裁判直後や、周永康氏逮捕前後で急激に検索が増え、そのあと急減していました。

投資やビジネスの本ではないですが、日中関係は、日本の将来と日本経済に重大な影響を与えるので、気にして時々読んでいます。

本書にはアリババ創業者の馬雲氏が登場しますが、中国の巨大企業はますます国際的影響力を増大させますのでこちらにも注目です。

急速に成長している小米(シャオミー)の雷軍CEOは穏健な性格らしいのですが、小米に関しては、利用者の個人情報を当局に知らせているというニュースがあったり、日本メーカーの知的財産権を侵害しているという噂が立ったりしています。

中国の巨大企業は中国共産党の意向と無関係ではいられないので、英米の伝統的な巨大国際企業とは違う論理で行動するかもしれません。

第4位

書評はこちら

「コークの味は国ごとに違うべきか」 パンカジ・ゲマワット(著)

こちらは渋い経営戦略の本です。年間を通して、ばらつきなく関心を集めていた印象です。年央に何回かに分けて、日経新聞で取り上げられていたことが、かなり寄与したものと思われます。

エリートビジネスパーソンが、国を跨いだ経営戦略を考えるような本です。書名も優れていると思います。

第5位

書評はこちら

「ミネルヴィニの成長株投資法」 マーク・ミネルヴィニ(著)

自分で銘柄を選んで株式投資をアクティブに行う場合、大まかに割安株投資と成長株投資に分かれます。本書は成長株投資を扱います。成長株投資でも細かい取引のルールは人それぞれとなりますが、土台には成長株という考え方があります。

本書は、成長株投資の手法としては標準的な部類のように思われます。著者は外国人ですので、日本株式で成長株を探すときは、日本の株式市場に合わせて微調整も必要かもしれません。

第6位

書評はこちら

「資本主義の終焉と歴史の危機」 水野和夫(著)

今年かなり売れた本です。ベストセラーなので、当ブログにもその恩恵が及んだ形です。私がこの本を読んだきっかけは、なぜこれほど金利が低いのかという疑問からでした。あらゆる先進国で、これほどの低金利が継続するのはなぜか、それが知りたかったわけです。

しかし頭の半分では、米国がQEを終了すれば、さすがに金利も上がってくるだろうとも考えていました。ところが現在も全く金利は上がりません。

年初ドイツの長期国債は2%弱でしたが、現在は0.6%です。ヨーロッパは、デフレに陥る確率が相当高まっていると思われます。それに加えて、中国の経済成長率が低下しつつあることと、それでも過剰な生産設備の調整が進んでいないことは、世界経済の強烈なデフレ要因になるのではと危惧されます。

第7位

書評はこちら

「ワーク・デザイン これからの<働き方の設計図>」 長沼博之(著)

今の社会での働き方を考える本です。社会構造、産業構造、雇用環境を分析し、そこから個人はどう働けばいいのかを、自分の問題としてとらえています。

当ブログとしては珍しく、私の知らないところでSNSにより紹介されたため、ページビューが増えました。著者ご本人にも、ツイッターで触れていただきました。

社会は大きく動きつつも、個人の生活に関わる制度は、その変化に対応できていないところがあります。そのずれに足を取られても、個人は社会の変化に目配りして、適応への努力を怠ってはならない状況のようです。

第8位

書評はこちら

「金融機関がぜったい教えたくない 年利15%でふやす資産運用術」 竹川美奈子(著)

とても有利な制度である、確定拠出年金を解説した本です。第1位も竹川氏の本ですが、竹川氏は投資のトピックを、良識的でわかりやすく手堅い入門書に仕上げるプロだなと感じます。

今日の日経新聞が、確定拠出年金の加入資格を主婦や公務員にまで政府は広げる方針だ、と報じています。国家が国民全員の社会保障を担うのも、これから厳しくなってくるだろうと思われます。徐々に社会保障制度が貧弱になるでしょうから、徐々に自己防衛の準備を厚くした方がよさそうです。

第9位

書評はこちら

「相場の上下は考えない「期待値」で考える株式トレード術 サヤ取り投資が儲かる理由」 増田圭祐(著)

ほかではあまりランキングに入りそうにない本ですが、9位です。時期にばらつきなく、低位安定で検索にヒットしていました。

サヤ取りとはロングショート戦略の一部です。何かを買い、同時に何かを空売りすることで、その価格差から利益を得る戦略です。相場環境がどうであっても利益が得られる、絶対リターンを掲げます。

ヘッジファンドに関係する本をいろいろ読むうちに、ロングショート戦略は超基本であることがわかりました。しかし買うべきと売るべきを判断する基準は、投資の生命線です。今後とも、永遠に議論されていくのでしょう。

第10位

書評はこちら

「国債リスク 金利が上昇するとき」 森田長太郎(著)

こちらも年間を通して、地味に検索された本です。日銀の追加緩和直後に、少し増えたりはしましたが。アベノミクス開始後、日本財政の持続可能性について書かれた本です。将来の経済指標や政治決定により、シナリオが分岐し、発生イベントとその生起確率を考察した面白い本です。

書かれてから約1年が経ちましたが、その間に、日銀の追加緩和と消費税増税延期という大きな出来事がありました。これらは財政破綻の可能性を高める要素と思われます。今回の記事を書くため、あらためて本書の将来シナリオを確認してみました。

すると、私が最もありそうと思う経路、実質GDP成長率がマイナス1~プラス1%で、消費者物価指数2%以上、2020年の消費税率が10%のシナリオの結末は。デフォルトかハイパーインフレーションの2択でした。うーん。(消費者物価指数が安定またはデフレでも、結末は「財政が劇的に悪化」です。)

bomb

ユナボマーと寂しい国の殺人、あいまいな楽観主義とアベノミクス

最近読んだ本から思いついたことと、昔考えていたことをつなげてみました。(2014年12月に投稿した記事です。)

今回の記事のまとめ

1、ユナボマーは、挑戦すべき目標が社会から失われたと考えた。挑戦すべき目標を再びつくるため、既存の社会を破壊しようとした。

2、現代を被う寂しさは、近代化という国家的な大目標が消えたためだ。(「寂しい国の殺人」村上龍)

3、1980年代以降、アメリカをあいまいな楽観主義が支配した。社会にビジョンは存在せず、金融バブルが発生した。リーマン・ショック以降も、ビジョンがないため危機対応は金融緩和策に終始した。(「ゼロ・トゥ・ワン」ピーター・ティール)

4、日本では、危機打開のビジョンをアベノミクスに決めた。

5、信用不安(債務危機)による大不況の解決には、①支出削減、②債務縮小、③富の再分配、④中央銀行の資金供給、を同時に行う。(「30分でわかる経済の仕組み」レイ・ダリオ)

6、アベノミクスは失敗し、日本株式を買い上げた外国人が日本売りに転じる可能性がある。円資産しか持たない日本人は、円資産の一部を外国資産に振り分けるべき。

1、アメリカには努力に値する目標がない?

1978~1995年にかけて、アメリカにユナボマーという爆弾を送り付ける犯罪者がいました。ずいぶん昔に名前を聞いたぐらいで、私は全く忘れていましたが、前回書評で紹介した「ゼロ・トゥ・ワン」の中に、いきなり登場します。

ユナボマーは1996年に逮捕されますが、その前年に犯行声明文を報道機関に送っています。犯行に及んだ理由について、「ゼロ・トゥ・ワン」によると、アメリカには努力に値する目標がなくなったから既存の社会を破壊しようとした、のだそうです。

ユナボマーの理屈ですが、
『人間が幸せになるには、(達成するのに努力を要するような)目標が必要である。
目標には3種類ある。
①最低限の努力で達成できる目標。
②真剣に努力しないと達成できない目標。
③どれほど努力しても達成できない目標。
現代社会はテクノロジーが発達しすぎたので、努力が必要な目標②はすべてなくなった。
残っているのは①と③なので、現代人は鬱屈と生きるしかない。
したがって、②をつくりだすため、既存の社会制度とテクノロジーを破壊する。
ゆえに、人々に爆弾を送る。』

こんなことで爆弾を送られてはたまりません。
ですが、1970年代になると、もはや努力して達成すべき目標はない、と考える人が現れるような社会状況になったようです。

2、日本からも、めざすべき目標が消えた。

1997年に村上龍は「寂しい国の殺人」で、ひたすら近代化をめざしそれを達成した日本は、国家的な大目標を失い、寂しさに被われている、と指摘しました。豊かになりたいと欧米諸国を手本にただ近代化だけに集中し、ついに近代化がなされると、目標が消え喪失感に沈むことになったのです。

しかも、近代化を達成したことによる喪失感は、近代化以前には存在しないものです。現在抱えたこの喪失感は、過去を振り返っても決して解消する方法は見つかりません。この問題の答えは、過去にはありませんでした。

1990年代には、経済が低迷して閉塞感がありました。おそらく、バブル崩壊という失敗は何だったのか、という問いかけが人々の意識の底にあったとは思います。無意識レベルですが。
(でも実は、バブル崩壊はただの不況で、また好景気が来ると考える人も多くいました。日本経済の実態が明らかになり、さらにどん詰まりの閉塞感が充満するのは、失われた20年になってからです。)

さてそんな1990年代ですが、そのころメディア(新聞・雑誌・テレビ)では、
「もういちど戦後直後のように、焼け野原の状態からやり直せばいい。焼け野原の何もない状態から始めれば、すっきりする。」
のようなことをいう評論家の類が結構いました。
こういった発言は、阪神大震災やオウム真理教事件、神戸の児童殺傷事件、金融危機(長銀破綻など)のような、どう考えればよいか難しい問題に対し頻繁に出現しました。
今はいませんけど、当時は本当にそんなことをいう知識人がそこそこいました。

馬鹿かと。
メディアにそんなコメントが掲載されるたび、私はいちいち怒っていました。(まだ若かったので。)

このコメントを噛み砕くと、
『日本は戦後、ひたすら豊かになりたい、お腹いっぱいご飯が食べたい、ぼろぼろでない服が着たい、快適な家に住みたい、たくさん電化製品が欲しい、車が欲しい、いい学校に通いたい(学歴)、いい会社に入りたい(地位)、着飾るブランド商品が欲しい、海外旅行に行きたい、と言ってそれしか考えず突き進んできた。』
『ついに物質的に豊かになり、欲しいものがなくなった。欲しいものがなくなったら、何をしていいかわからなくなった。どこに向かえばいいか、どう生きればいいか、何が大切か、何をしたいのか、何に価値があるのか、すべてわからない。』
『寂しく不安で満たされない。』
『今持っているものを捨て、空腹で裸で住む家のない状態に戻ろう。そうすれば、お腹いっぱいご飯が食べたい、ぼろぼろでない服が着たい……、何をすればいいかわかる!』

馬鹿かと。
物がないので物欲全開で生きて、物を集め終わったらやることが見えない。だから物をすべて捨てて、再び物欲全開で生きる。

マズローの欲求段階説ってありますが。それで例えれば、生理的欲求と安全の欲求が満たされたらどう生きればよいかわからなくなったので、衣食住を捨て、生理的欲求の段階から再開するってことです。

いやしくも評論家や知識人を名乗るなら、先進国並みの生活水準に達したあとは何が大切なのか、(間違っていても)提示してみろと思ったものでした。

今になって考えると、1990年代はまだ日本経済に余力があったので、もう一度焼け野原になればよいなんて言えたわけです。もうそんなことを言う人がいないのは、2014年の日本経済に、もはや余力がない表れでしょう。
日本は高度経済成長後、近代化を達成しましたが、そのあとの目標を見つけられませんでした。バブル期も、バブル崩壊後の停滞期も、やっぱり目標(大切なこと)はわかりませんでした。

3、あいまいな楽観主義。ビジョンはないが、きっと幸せになれる。

(3、は前回紹介の「ゼロ・トゥ・ワン」を参考にしています。)
1982年以降、アメリカは株式相場が右肩上がりとなり、人々は金融が明るい未来を約束すると考えました。あいまいな楽観主義の始まりです。

あいまいな楽観主義は、『未来は予測できないが、未来は今より良い』です。
なぜ予測できないのに未来は明るいのか。こういう認識が生まれた背景には、ベビーブーマー世代があります。ベビーブーマー世代に生まれれば18歳になるまで、自分とは全く関係なく、何もしなくても生活は良くなっていきました。

何もしなくても、具体的な計画を持たなくても、テクノロジーは進歩し自動的に生活は年々良くなりました。そうすると、計画を軽視し偶然を重視するようになります。ビジョンとそれを実現させるための計画が、必要とは思えません。

何もしなくても未来は明るいなら、何も探す必要はありません。この世界でまだ発見されていない本質的なこと(隠れた真実)も、別に必要ない。必要ないと思っていると、最後にはその存在の可能性すら忘れてしまいます。

この世界に隠れた真実は残っていないと考えると、この世界にあるのは既知の定説か、知ることが不可能な謎だけになります。

あいまいな楽観主義の世界では、金融は最高です。
未来は明るいから投資します。でも本質的なことはわからないから、何に投資していいかわかりません。だから選択肢を増やし、分散投資します。そこで各企業に金が集まりますが、企業も投資先がわからないので、自社株買いと配当に使います。すると投資家は儲かります。でも儲かった金の使い道がわかりません。だから分散投資します……

未知の本質的なことは市場に存在しない、と考えるのが効率的市場です。効率的市場では、価格はすべて正しいと考えます。どんな価格でも正しいと考えるので、バブルが発生します。(割高な資産など存在しないと考え投資する。しかし資産価格の高騰は歴史上何度もあった。)効率的市場への信仰は、金融バブルをより大きくし、バブル崩壊の破局を深刻なものにします。

市場は効率的なのに、隠れた真実はないはずなのに、サブプライムローン危機とリーマン・ショックが発生しました。100年に1度の危機です。どうしよう。ビジョンはなく、具体的な計画もなく、どうすればよいかわからないときの解決法は、金融緩和策です。

何をめざせばよいかわからないので、バブル崩壊による含み損を、緩和策で資産を買い上げ再び含み益まで持ち上げることで、解決することにしました。

4、皇国の興廃、このアベノミクスにあり。国民は一層、消費・投資せよ。

アメリカでは目標がなくなったので金融が栄え、金融バブル崩壊のツケは金融緩和策で払うことにしました。日本でも目標が消えたあとに金融バブルが発生し、崩壊後は低迷しています。

さて、日本の低迷・衰退をどう解決するのか。バブル崩壊後もずっと、目標や大切なことはわからないままだったのですが、割と切羽詰まってきました。失われた20年ということなので、平成5年度と25年度を比較してみます。

平成5年度 税収54兆円 公債残高193兆円

平成25年度 税収43兆円 公債残高750兆円

これは財務省の資料の数字で、まあ、いろいろあるかと思います。国の借金は1000兆円以上だし、GDP比で240%だと言う人もいるでしょう。逆に、日本国債は国内で消化されているし、民間の金融資産は1600兆円だし、自国通貨建ての国債でデフォルトはないと言う人もいるでしょう。今年度の税収はもう少し高いです。

しかし20年間、税収が右肩下がりで歳出が右肩上がり、債務残高は指数関数の曲線みたいに増えています。歳出の半分しか税収で賄えず、債務残高が年々積み上がるのを見ると、何らかの決着が近いように思います。

そこで日本国民は、アベノミクスを最後の解決策に決めました。

いやいや、別に最終手段をアベノミクスに決めてないよ、と言う日本国民は多いと思います。ですが、もう決まりました。財政状況的には土俵際ですし、そもそも日銀の異次元緩和には出口はありません。

日銀はすでに国債を200兆円保有しており、これから1年に80兆円ずつ買います。日本の株式も8兆円保有し、毎年3兆円ずつ買います。これほどの額を、真っ当な方法で縮小できるとは思えません。日銀が国債の購入をやめるとか、保有証券を市場で処分するとか、もはや言うことはできません。言った瞬間に、円と株式と国債は暴落です。アベノミクスは、日本男児らしく片道燃料で出撃です。

デフレマインドは日本の敵であり、消費と投資は国民の義務です。贅沢は、素敵です。

5、世界最大のヘッジファンド創業者が発見した答え。

アベノミクスを選び、異次元緩和が始まった以上、行き着くところまで行くでしょう。日本に住んでいる限り、日本国民はその結末から生じる影響を避けられません。

ところでアベノミクスの復習をすると、3本の矢です。
第1の矢:金融政策(異次元緩和)でインフレ率を(2%まで)上げる。
第2の矢:財政出動で景気を刺激し、短期的に経済を持ち上げる。
第3の矢:成長戦略で潜在成長率を上げ、長期的に経済を成長させる。

アベノミクスが成功すると、長期で3%程度の経済成長が持続的に達成され、財政も健全化するはずです。

国民としては、備えるのは失敗した場合です。失敗したらどういう状況になるのでしょうか。それを考える前に、レイ・ダリオ氏の『30分でわかる経済の仕組み』と言う動画を参考にしてみます。金融バブル崩壊後に訪れる大不況への対策を考える動画です。1990年代の日本や2008年以降の欧米に、適応できそうです。
(レイ・ダリオ氏については、以前の記事「リスク・テイカーズ」に言及あり。)

レイ・ダリオ氏によれば、巨額の債務による信用不安下の大不況では、解決策は
①支出の削減。
②債務の縮小。
③富の再分配。
④中央銀行が紙幣を印刷して資産を買う。
となります。債務負担の増加率より、所得の増加率を高くする必要があります。いかに①~④をバランスよく組み合わせられるかが、政策立案者の腕の見せ所です。また、ここで重要なのは、
❶債務より所得が速く増えること。
❷所得より生産性が速く増えること。
❸生産性の向上に努めること。
です。

これをアベノミクスに当てはめてみると、
④は合格、③は微妙、①、②は不合格。❶、❷、❸も不合格です。

内閣官房参与の浜田名誉教授も、金融政策はA、財政政策はB、成長戦略はEとアベノミクスを採点していました。アベノミクスは、金融政策と財政出動のみにとどまり、成長戦略(特に規制緩和・構造改革)は進まないと思われます。

ここまでアベノミクスに批判的な記事を書いてきましたが、私は金融緩和策には消極的賛成でした。異次元緩和を始めたときは消極的賛成であり、今から振り返っても消極的賛成です。私としては、金融政策は単なる時間稼ぎなので、中央銀行が時間を稼いでいる間に、政権が責任を持って構造改革をやれ(規制緩和と社会保障制度改革)と思っていました。

私の意見はどうでもいいのですが、もう成長戦略は成し遂げられないでしょう。

選挙で自民党が大勝すれば、政権基盤が強化され、政策実行期待が高まる(ので株価が上がる)と言う人がいます。選挙で自民党が勝利すれば、しばらく株価は堅調でしょうが、成長戦略という政策が実行されるとは、私にはまったく思えません。

安倍総理は、2012年12月の総選挙で300議席弱の大勝利を収めました。内閣発足後は高い支持率をずっと保ち、2013年5月まで株価は上昇を続け、国民の間でも景気が良くなるという明るい雰囲気が感じられていました。政権としては、政策を実行するのに絶好機でした。

しかしこれだけチャンスがあった、2012年12月から2014年12月までの2年間で実行したのは、靖国神社参拝だけです(あとオリンピック招致?)。TPP参加、法人税減税、雇用規制緩和、医療規制緩和、農業規制緩和、社会保障費抑制、カジノ立法、といった政権発足時に挙がっていた事案は全く何もなされていません。

ここでは靖国参拝やTPPなどの事柄の、政治的正誤や倫理的善悪を論じません。ただ安倍総理は、靖国参拝はきわめて重視するが、規制緩和や構造改革には関心が低いことがわかります。第一次安倍内閣の躓きも、郵政民営化に反対した造反議員の復帰からでした。たとえ総選挙で300議席を獲得しても、憲法改正には動くでしょうが成長戦略には動かないと予想します。

というわけで、安倍政権はお金はばらまくが、痛みを伴う支出の削減はやらないし、生産性も向上できない。とまとめられます。

6、アベノミクスは失敗する可能性が高い。円資産しか持たない人は、外国の資産を持つべき。

これまではずいぶん大きな天下国家の話でしたが、この節は資産防衛という小物の臭いのする話です。私の器が小さいので、最後の結論はみみっちいお話です。

さて、債務に押し潰されそうになったときは、支出と債務を削減し、紙幣を刷って所得を上げ、生産性を向上させることが必要でした。アベノミクスで達成したのは、紙幣を刷ることだけです。財政再建も潜在成長率底上げも、やりませんでした。

ところでアベノミクスの好循環として、資産効果(トリクルダウン)が指摘されます。確かに資産価格が上昇すると、富裕層の消費活動が活発になり、景気を刺激します。2013年の半ばまでは効果がありました。しかし日本では株式投資をする人が少ないので恩恵は広がらず、また実質所得がずっとマイナスだったことから、消費は息切れしてしまいました。

そもそも、現在、日本の株式を買っているのは、
外国人(2013年は15兆円、2014年は2兆円ぐらい)
日銀(毎年1兆円、来年から3兆円)
年金(保有比率が12%から25%に)
だけです。

外国人は、バイ・マイ・アベノミクスに応えて買ってきました。しかし、アベノミクスが旧来の自民党的バラマキと見切ったら、買わなくなります。年金と日銀の買いに限界が来た段階で、外国人は売りに転換します。そうなったら、日本株を買う人は存在しません。

日本買いポジションの人が消滅したとき、怒涛の日本売りが始まります。ジョージ・ソロスがイングランド銀行を打ち倒したように、世界中の投機家が全力で攻撃してくるでしょう。

もう日経新聞にも、
『万が一、金利の急騰やハイパーインフレが起きたとき、(増税を延期した)すべての政党が責任から逃れられないことを意味する。既存の政党が国民の信を失い、極端なナショナリズムや耳に心地よい政策だけを掲げる新たな政治勢力が表舞台に出てきてもおかしくない。ドイツでナチスが台頭したときはそうだった。』(2014年11月23日朝刊2面コラム風見鶏)、
『多くの経済専門家の関心は今や、財政破綻や高インフレが「来るかどうか」ではなく「いつ、どんな形で来るか」に移っている』(2014年11月24日朝刊4面コラム核心)
などと連日書かれる始末です。

バブル崩壊や金融危機発生の時期を、ピンポイントで予測するのは不可能ですが、もうそろそろ限界が近いようです。アベノミクスは持ってせいぜいあと1~2年。本丸の国家財政も、5年か10年で限界が見えるでしょう。対策はひっそりと進めるべきです。危機が露わになってからでは、冷静な行動はとれません。2012年12月以降、自分の金融資産を日本株や外貨に大きく変換できましたか?普通の人には、機を見て素早く投資行動を変えることは難しいです。あらかじめ、外国の資産を含んだポートフォリオをつくっておくべきです。

アベノミクス失敗後に何が起こるか。大きくは2つに分けられると思います。
①誰の目にも明らかな破綻。国債の債務不履行やハイパーインフレ。
②長く続く気付きにくい破綻。金融抑圧。第二次世界大戦後の英国。

①は誰にでもわかるような、大騒ぎになります。円預金の価値が急激に失われるので、外国の資産や実物資産を保有することで、資産価値を守る必要があります。
②では物価上昇率が高くなりますが、名目金利は低く抑えられます。気付きにくいですが、インフレによりじわじわ円預金の価値が低くなります。長い年月をかけて、債権者から債務者へ富が移転します。国民の預金で国債を買っているので、ここでは国民が債権者で、日本政府が債務者です。円預金はインフレ税として国家に徴収されます。この場合も外国の資産や実物資産で、資産の価値を保つことが必要です。

要約すれば、どういう形で破綻しようが円預金の価値は低下するので、外国の資産か実物資産を持ちましょうという話です。破綻の間際になると、破綻するぞ詐欺も増えると思います。平時より落ち着いて、外国資産や実物資産を組み込んだポートフォリオをつくっていきましょう。投資で大儲けを考えるよりは、長期投資(資産防衛)の観点で考えましょう。

敗戦直後、日本でハイパーインフレや預金封鎖があったようですが、体験して覚えている人はほとんどいません。天災は忘れたころにやってきます。備えあれば患いなしです。

潮が引いたら裸

(2014年7月に書いた記事です)

株は割高な時期に入ってきたが

アメリカの株価がずっと高値圏です。PERは15~16倍あたりで割安感はもうありません。2014年7月15日の日経夕刊の記事では、「S&P500は現時点で1928年以降の平均比で30~45%過大評価されている」とありました。

「投資で一番大切な20の教え」という本を読んでいます。とてもいい本で書評も書きますが、すぐれた教訓がいろいろあります。実はこのブログを始める前に一度読んでいたのですが、再読すると以前わからなかったことがわかりました。

株高のときにはリスクを忘れる

リスクの話があるのですが、リスクに対して適切なリスクプレミアムが乗せられていないときに高リスクだという解説がなされます。

例えば、リスクとリターン(リスクプレミアム)の関係は以下のようになります。
MMF 4%
5年物米国債 5%
10年物米国債 6%
高格付け債 7%
S&P銘柄株式 10%
ハイイールド債 12%
小型企業株式 13%
不動産 15%
企業買収ファンド 25%
ベンチャーキャピタルファンド 30%

ところが金利水準が低くリターンが平坦化すると、
MMF 1%
5年物米国債 3%
10年物米国債 4%
高格付け債 5%
S&P銘柄株式 6-7%
ハイイールド債 7%
小型企業株式 7-8%
不動産 8%
企業買収ファンド 15%
ベンチャーキャピタルファンド 20%
のように変化し、投資家がリスクを低くとらえ高リスク環境を生み出します。

少しでも高い利回りを求めていると

著者は顧客向けレターで、
「投資家は低リスク・低リターンの投資を避けようとしゃかりきとなっている」
「投資家はリスクがきわめて限定的だと考えている」
「伝統的で安全性の高い投資では雀の涙ほどのリターンしか得られそうにない」
「ほとんどの人がリスクの高い投資を進んで行っている」
「プラス材料で上昇し、マイナス材料が生じてもすぐに回復する」
「価格は高騰し、リスクプレミアムはきわめて小さくなっている」

と述べています。

いかがでしょうか。まったく現在のことを言い表しているようです。しかも、このレターは2004年や2007年に書かれたものです。2004年や2007年当時と比較しても、現在は圧倒的な低金利と超金融緩和状態です。

ゼロ金利下で投資家はリターンの得られる投資先を必死で探しています。南欧諸国の国債も、世界中の低格付け債券も低金利です。各国の株価は高値を更新しています。

中央銀行が金利を低く保つだろう。
中央銀行が金融緩和により株価を上昇させるだろう。
中央銀行が欧州の債務危機を収束させるだろう。
中国政府が不動産バブルのハードランディングを防ぐだろう。

全部他人任せなのですが、リスクは適切に評価されているのでしょうか。

最後はバフェットの言葉で。
「潮が引いて初めて、誰が丸裸で泳いでいたのかがわかる。」

survival

サラリーマンがこの先生きのこるには?はじめの1歩は棚卸・掛け算・全方位外交だ!

(2013年12月に書いた記事です)

サラリーマンが生き残るための3つの武器

起業しようとあれこれ考えつつ、会社を辞めて起業に失敗したらそのあと生きていけるかと、悶々と毎日を過ごしております。

ただ終身雇用に絶対の自信のある人はともかく、私はそもそも会社に自分の人生の面倒を見てもらえそうにはありません。そこでサラリーマンが現在の会社を離れても生きていける道を考えてみます。

すごく平凡な対策ですが、3点あります。

キャリアの棚卸し

1点目はキャリアの棚卸しです。

自分が過去にやってきた仕事を具体的に整理します。まあ職務経歴書を書く要領です。自分がどのような問題をどのように解決してきたか考え、自分が提供できる価値を再確認してみましょう。自分を雇うとどんな価値が会社にもたらされるのか考えます。

そして自分が今後やりたいことや重視する価値観も押さえて、現在の自分と5年後などの理想の自分とのギャップを想像し、達成できるように戦略をたてます。

技能の掛け算

2点目は技能の掛け算です。

人材の価値を高めるには自分の専門性を極めろと言われることがあり、実際にそうだと思います。しかし1つの領域でトップレベルになるのは大変ですし、社会環境の変化が速いので専門性が陳腐化する恐れもあります。

そんなわけで、それなりに戦える専門分野を複数用意し、掛け算で自分の稀少性を上げていきましょう。自分が働く領域は大まかに理解できており、自分が担当する狭いニッチな分野を2つぐらいもっていて、あとは語学を上乗せし、さらに全く違う分野の知識などを組み合わせて掛け合わせれば、割と見つけにくい人材になれるかも。

広く緩くつながる

3点目はアイデンティティーの全方位外交です。

昭和の仕事人間タイプが定年を迎えると、何をしていいのかわからなくなるという話は時々見聞きします。そういう人は会社と家族しかアイデンティティーがないので、会社から定年で切り離され家族から見捨てられると、何もなくなってしまうわけです。私は人付き合いが悪いので、書いていて自分も怖くなります。

そこで自分の存在意義を会社にすべて預けないように、社会的な関係性を全方位に広げておきましょう。

会社の人脈にとどまらず、仕事関係では薄い付き合いだけど面白い考えをもつ人、今後勉強していきたい方向で出会う人、趣味が同じ人、ボランティアとか社会貢献系で自分が興味を持てる方面の人、地元の地域で付き合ってみたい人、過去の友人もたまには連絡を取ってみて、全方位で交流をしてみるのが理想です。

自分に役立つ人脈をつくろうみたいに、あまりガツガツしないのが吉、かと思われます。

ネットとリアルを組み合わせて、いろいろな方向に自分とつながる線が引ければいいなあと思います。

世間でよく聞く意見を融合して、上記3点にまとめてみました。サラリーマンの生き残り戦略のはじめの1歩としていかがでしょうか。

newspaper

広告媒体の競争と政治

(2013年10月に書いた記事です)

第四権力

前回「リクルートのDNA」を紹介しました。

書評では触れませんでしたが、リクルートと新聞業界との関係を述べた部分があります。

リクルートと新聞業界

江副氏が昭和61年(リクルート事件の2年前)に、日本新聞協会で講演をする話があります。

このとき、懇親会の場でリクルートの情報誌が新聞広告の顧客を奪っていると苦情を受け、冷ややかな雰囲気になったそうです。

また、江副氏が朝日新聞の関連会社社長会に招かれて講演したとき、企業の役割として社会貢献と収益を上げて納税することの重要性を強調しました。するとそのあとの懇親会では次のように言われたそうです。

自分たちは長年新聞記者をやってきて人に頭を下げてこなかった、だからなかなか頭は下げられない(頭を下げられないから儲からないという意味)。

これらの体験から、リクルートは新聞業界の不興を買っていると感じたそうです。

その後リクルート事件が起こり、すさまじい批判が巻き起こりました。私は当時子供でしたので、江副という人間はとんでもない悪党で、自民党代議士は金の亡者だ、と思ったものです。

報道機関の矛先

ただ年月がたって、大手メディアや捜査機関の独善性を知るようになると、そんなに悪い人だったのだろうかと考えるようにもなりました。(それにしても新聞記者は、取材対象者に頭を下げないで、どうやって話を聞くつもりなのだろう。)

近年にはライブドア事件もありました。独占的な地位にある既存メディア(大新聞社と在京のテレビ局)は、ネットなどの新規メディアに対し、とても大きな敵意を持っているようです。

リクルート事件の背景に、そういう要素も多少はあったかなあと今ごろ思います。

airport

医療ツーリズムおもてなしウェブサービス

(2013年9月に書いた記事です)

海外富裕層を日本の医療でもてなそう

妄想レベルのビジネスモデルを思い付いたので記録しておきます。日本の医療機関を訪れたい、海外富裕層向け案内ウェブサービスです。

国策として医療分野の規制緩和が謳われています。医療ツーリズムでの外国人受け入れも、推進されようとしています。

まだまだ事業として(富裕層の)外国人を受け入れる医療機関は少ないですが、今後増えるでしょう。観光振興も国策ですし、オリンピックも決まりました。

どうやって呼び込むのか

ただ、外国人は日本の医療機関のことは知りませんので、案内が必要です。そこで、日本のトップレベルの医療機関を網羅して、外国人に紹介するウェブサービスはどうでしょう。当然もう存在するとは思いますが。

しかし、医療機関を比較するサイトは、結構難しいと思われます。家電製品のようなコモディティを比較するみたいにはいきません。

日本でも、雑誌などが病院ランキングをつくっていますが、これは非常に評価が難しいでしょう。医療は専門性が極めて高く、安易に素人が優劣を判定できません。

評価して売り込む

つまり、この比較サイトでは、2項目の公正で正確な評価を売りとします。

1つめはおもてなしレベルの評価。ホテルや高級レストランのように評価します。滞在環境、施設、ホスピタリティ、外国語や宗教や慣習への対応力などです。

2つめは医療技術の評価。医学全分野のありとあらゆる疾患に応えます。それぞれの医療機関や担当医が得意とする、領域や手術法や治療法を完全にデータベースとして押さえ、治療成績を公正に評価して利用者に提示するのです。かかった病気の症状を最も得意とする、名医と病院を紹介するのです。

おもてなし力の評価と治療成績の評価を高いレベルで両立できれば、日本で随一の医療ツーリズム比較サイトになると思うのですが。

だれがやるの?

ここまで長く述べてきましたが、実はもう最適な会社があると思われます。
エムスリーです。

エムスリーは医師向け情報サイトを運営する会社です。エムスリーは日本の相当数の医師に食い込んでいますので、医療機関と関係をつくるノウハウはかなりありそうです。各疾患に対して、最適な医療機関を紹介できる潜在能力がありそうです。

さらにネットサービスも得意ですから、医療ツーリズム受け入れサービスのサイト構築もお手のものでしょう。
あとはおもてなし方面の評価のノウハウだけ、と思いますが。
エムスリーの方、いかがでしょうか。

(ここまで書いておいてですが、調べたらシップヘルスケアHDの子会社で、すでに医療ツーリズムを扱う会社がありました。でも病院の評価サイトではないか。)

illness

病時おひとりさま支援サービス

(2013年9月に書いた記事です)

無駄に思い付いたビジネスアイデア

起業について考え続けていると、無責任にビジネスを思い付くことがあります。本日のブログのネタは、無駄に思い付いたビジネスです。

それは、病気で寝込んでいるおひとりさまを支援するサービスです。

ひとり暮らしをしていて困るのは、病気になったときです。39度ぐらい熱が出て、布団で寝込んでいて何もできず、食料や薬がなくなったりすると困ります。

救急車を呼ぶほどヤバくはないが、自力でコンビニに行ったり台所で家事をするのは無理、ってレベル(インフルエンザ程度)を想定します。

学生ならまだしも社会人ともなると、友人知人の類いも忙しいので頼りにくいです。彼女もいないし。

しかたなくひとりで熱にうなされながら寝ていても、回復してきているのか、よくわからないときは不安になります。あと一日寝れば熱が下がるのか、あるいはさらに助けも呼べないほど悪化するのか。

食料の宅配

ネットスーパーやコンビニ宅配で、食料など運んでもらえるかもしれませんが、病気になったときに注文するのはしんどいかも。

そこで病時に、スポーツドリンクやゼリータイプの栄養補助食品、食欲がなくても食べられそうなレトルト食品、風邪薬、栄養ドリンクなどを宅配してもらうサービスってどうかなあ。

寝込んでいるときって、宅配の受け取りすらしんどいので、配達のお知らせもメールか電話かインターホンを選べるようにします。

メールや電話の場合は、玄関のドアの横に置いてもらいます。女性は臥せっているときは、宅配の応対で外に出るのは嫌なのではと思うのですが。

安否確認

食料などを届けるだけでなく、病状が悪化していないか、8時間とか12時間おきに安否確認してもらう追加のサービスはどうでしょう。

放置してもらってOKか、追加の宅配が必要か、病院の手配が必要かなど、本人がスマホのワンタッチで選択できるようなシステムをつくってみる。

ビジネスに合う事業者は?

宅配と安否確認だけで事業をやるのは難しいので、本業がある事業者が追加収益を狙う形だとよいと思います。

事業主体としてはピザチェーンや宅配寿司チェーンなどを想定し、食品や薬の宅配をします。この配達は例えば30分以内でやらなくても、2~3時間以内ぐらいで配達すればよいでしょう。あるいは、衰退してきている新聞販売店が、新聞配達や新聞の集金の業務に加えて宅配すると。

もうちょっと、通院の補助をするとかケア主体の事業にするなら、訪問介護や訪問看護の事業者が追加でやるのはいけるかも。

人のケアのノウハウもあるし、これは報酬が保健行政に決められている介護や看護のサービスではないので、高めの料金設定でいけるんじゃないかなあ。

book

無料の書籍

(2013年7月に書いた記事です)

価値を持つ、無料の商品

最近、短期間で大金を用意しそれを元手に会社をつくる、という分不相応な野心を抱きました。

しかし本質的には、私はひきこもりタイプです。小金が貯まったらひきこもって、毎日読書していればだいたい満足な人間です。

タブレットを買ってみて、電子空間に無料で読める大量の古典があることにあらためて気付きました。これはやばい。小銭を貯めて引退したとすると、一生読む本には困らない。廃人になってしまう。

それにしても、ビジネスや商売の面から考えると、これら古典の書籍が無料で配布されている事態は興味深いものです。

今でもリアル書店では、夏目漱石や太宰治や芥川竜之介や森鴎外などの、物質的に存在するリアルな文庫を販売しています。1冊数百円で。

無料で手軽に配布されている書物がある。それと同内容の書物を、お金を払って買う人はどういう人なんだろう。

私のような時代遅れの人間まで、端末に無料の書物を取り込むようになったわけで。著作権が切れた古典は、解説が詳しいとか装丁にこだわるなどの付加価値がないと、売れないようにも思われます。

著作権切れの書物が普及すれば、リアル書店で販売されていた古典の文庫は淘汰されるはずです。すると、古典の文庫に関わる仕事やお金が消えるのでしょう。

紙を作ったり輸入したりする仕事。製本する仕事。校正や編集をする仕事。書店に輸送する仕事。書店で販売や管理をする仕事。

そして消費者も、古典に支払っていた代金が無料になったので、そのお金は違う用途に使われるかもしれないです。

これらの消えた仕事やお金は、何に変わったのだろう?

school

プロに学ぶ

(2013年7月に書いた記事です)

プロには、それぞれ独自の勝ちパターンがある?

以前に、林則行氏の著書を紹介しました。いろいろ参考になるなと思ったのですが、株は安値で買おうとするなとか、悪材料で売れなどの指針がありました。

逆にバフェットやグレアムは、十分な安値で買えとか、悪材料で暴落したところを買え、などと語っているはずです。

どちらも正解?

これらは真逆なようですが、意外と整合性はあるのではないか、と考えています。取引で想定している期間が違うのでは、と思います。

林氏は、1年か2年以内で利益を求めるのに対し、バフェットはさらに長期での取引を考えているのではないでしょうか。

バフェットはとにかく優良株を安値で買って、持ち続ける。

そうすれば銘柄選択に間違いがなければ、さすがに3年4年と経てば、上昇してくるでしょう。市場が銘柄を評価すれば、十年単位で持つことで素晴らしい収益が得られます。

林氏の戦略では、底値で数年持ち続けるのは、たとえ優良株でも機会損失ととらえるのでは?

市場が銘柄を評価し始めたと思われる、高値更新時点で買う方が、利益を得るまでの時間が短いと考えるのではないでしょうか。

悪材料で売るのも、その後株価が回復するのに数か月から数年かかるので、持ち続けると機会損失となるからかと思います。

以上はド素人の、私の勝手な解釈ですが。

そんなわけで、いろいろなタイプのプロから謙虚に学んで、自分なりの勝率の高い戦略を、これからも模索していきます。