「ミネルヴィニの成長株投資法」 マーク・ミネルヴィニ(著)

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本書は株式投資の解説書で、成長株投資について書かれています。成長株投資は、急騰する銘柄を探し出して大きなリターンを狙う方法です。この手の本にしては結構新しく、リーマンショック後のマーケットについてまで含まれています。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

成長株投資について勉強したい人。難易度は入門書から初級者向けレベル。

 

要約

はじめに

急成長株への投資では、適切なノウハウや規律を身につけ、勝つための戦略が必要である。株式トレードで並外れたパフォーマンスを達成するには、成功したいという強い熱意を持たなければならない。

十分に研究してトレード戦略をつくり、準備を万全にして好機を待て。少額からでも始めて、自分で考え自分で調べて実戦で経験を積め。

・個人投資家は機関投資家より有利である。流動性に拘らず銘柄を選べるし、投資先を分散させなくてもよいし、機動的に取引でき、現金比率も自由に変えられる。

・普通のやり方では超絶したパフォーマンスを上げられない。普通の人ではできない努力をしなければならない。バリュー株投資、成長株投資、デイトレード、長期投資、何かに秀でるにはひとつのことに絞れ。自分の手法をはっきりと決め、目標をめざすためのルールをつくれ。

 

SEPA(Specific Entry Point Analysis)戦略 明確な買い場分析

特徴
①急成長の初期のトレンドを発見する。
②急成長局面の前に起こる、ファンダメンタルズの大幅な向上を予測する。
③上昇のきっかけを待つ。
④正しい買い場のタイミングを計る。
⑤利益確定と損切りを行い、利益を守る。

銘柄のランク付け(スクリーニング)
以下の順序でスクリーニングする。
①トレンドテンプレート(後述)を満たすか。
②ファンダメンタルズでスクリーニングする。
③残った銘柄は、リーダーシッププロファイル(過去の急成長株)との類似点を調べる。
④手作業での検討を行う(売上、利益、EPS、業績予想、会社のニュース、競合との比較、株価、出来高、流動性リスクなど)。売上や利益のサプライズな上方修正、機関投資家による買い、需給のアンバランス(買いが多い)があるか考慮する。

・典型的な急成長株は、上場してから日が浅く比較的小規模である。ただし、下落相場の時期には急上昇しにくい。

PERの高低で判断して株を買ってはならない。昔の株価で高いか安いかを判断してはならない。急速に売上を伸ばし、最も増益の見込みが高い会社を探せ。

 

トレンドテンプレート

上昇トレンドにあり、(特に大手機関投資家に)関心を持たれている株を買いたい。

株価のサイクルには4つのステージがある。
第1ステージ 横ばいの底固め局面(無関心)
第2ステージ 上昇局面(機関投資家の買い集め)
第3ステージ 天井圏(機関投資家の売り抜け)
第4ステージ 下落局面(投げ売り)

第1ステージ
株価は200日(または40週)移動平均線の近くで上下しトレンドはない。出来高は少なく、何カ月かあるいは何年も続く。底値拾いは不要である。第2ステージの上昇トレンドが形成されるまで買わないこと。

第1ステージから第2ステージへの転換
上昇はたいてい予告なく始まり、出来高がかなり増える。押し目になると出来高はある程度減る。
株価>150日移動平均線>200日移動平均線となる。
200日移動平均線は上向きで、高値と安値を切り上げてきている。商いを伴って下落した週よりも、商いを伴って上昇した週の方が多い。

第2ステージ
ファンダメンタルズの改善など追い風がある。機関投資家による買い集めの兆候がある(上昇局面での長大陽線と大きな出来高、押し目での出来高減少)。
株価>150日(または30週)移動平均線>200日(または40週)移動平均線となる。
株価は高値と安値を階段状に切り上げ、200日移動平均線も上昇トレンドである。短期の移動平均線は長期の移動平均線を上回っている。平均以上の出来高のときは、下落よりも上昇が多い。

第3ステージ
増益率が落ちてきて、天井圏で変動幅が大きくなり不安定になる。一部の機関投資家が売り抜け、買い手は弱い買い手に変わる。業績予想を上回ることができなくなり、上昇トレンドラインを下抜く。通常は出来高を伴って、大きく下にブレイクする。200日移動平均線は天井圏で数回上下し、横ばいとなり、下降トレンドへ転換する。

第4ステージ
下方修正などのネガティブサプライズもありえる。下降トレンドは続き、下げる日に出来高が増え、上げる日は出来高が減る。
200日(40週)移動平均線>株価となる。
株価は52週安値に近く、高値と安値を階段状に切り下げる。200日移動平均線は下降し、短期の移動平均線は長期の移動平均線を下回る。

4つのステージ分類は、株価がサイクルのどこにあるか見通すために使う。株を買ってよいのは第2ステージのみ。

トレンドテンプレート(以下のすべての基準を満たすこと)
①株価>50日(10週)移動平均線>150日(30週)移動平均線>200日(40週)移動平均線
②200日移動平均線が少なくとも1カ月(4~5カ月以上が望ましい)上昇トレンドである。
③現在の株価が52週安値より30%以上高い。(良い候補では52週安値から100~300%以上も高い。)
④現在の株価が52週高値から25%以内にある。(新高値に近いほど良い。)
⑤レラティブストレングス(株価指数と比べてどれだけ強いかの指数)のランキングが70以上。(80台か90台なら望ましい。)

・第2ステージの途中で3~5回ほど、5~26週続く横ばいのベースが形成される。ベースの数で、第2ステージがどれだけ進んだか目安にできる。

ファンダメンタルズより株価のトレンドを目で確認すること。ファンダメンタルズの悪化がわかるより、株価の下落の方が早いことがある。

 

カテゴリーと業種

会社は6つのカテゴリーに分類できる。
①先導株
業界で最も増益率が高く、売上や利益は1位もしくは2位か3位である。相場の上昇初期に最も上昇率が高い。競争優位性があって急成長できそうかを見る。小売業なら、既存店売上高が健全に伸びているかを見る。急成長している先導株は割高に見えるが、比較的初期のうちにこれを見つけて投資することが目標である。

②大手ライバル企業
業界トップの2~3社の動向は常に見ておく。大手ライバル企業がトップを追い抜いて、シェアを奪うこともある。

③機関投資家好みの銘柄
コカ・コーラ、ジョンソン・アンド・ジョンソン、ゼネラル・エレクトリックのような実績のある成熟企業である。

④業績回復銘柄
業績回復した銘柄は、直近2~3四半期の決算が極めて良く、大幅な増益か過去の最高益に近い場合に買う。コスト削減以外で利益を上げているか、財務状況はどうかチェックする。株価が順調に上げているかと、ファンダメンタルズが強くなっているかを見る。

⑤循環株
自動車・鉄鋼・化学などの景気に敏感な銘柄が循環株である。循環株は株価の上昇前にPERが高く、上昇の終わりごろにPERが低くなる。循環株では在庫と需給を見ること。増益が続き良いニュースがあり増配されPERが低くなると天井で、減益が続き悪いニュースがありPERが高くなると底入れの時期である。

⑥かつての先導株と出遅れ株
出遅れ株は、売上や利益の伸び、株価の動き、すべてで劣る。手出ししないこと。

・下落相場の底入れは、特定のいくつかのセクターから始まる。市場全体が大底をつける前に強気相場の上昇を始めることもある。個別銘柄を監視して相場を主導するセクターを見つける。相場を主導するセクターに投資するのが良い。

・あるセクターの先導株(トップ企業)の業績が悪化したときは、業界全体が悪化する前兆のおそれがある。

 

ファンダメンタルズ

利益こそが重要である。利益の大きさ、収益の持続性、利益の見通しの確かさが株価にとって重要である。ポジティブサプライズがあり、業績予想を上回っている会社を買え。
過去2~3四半期に、前年同期比で最低でも20~25%は増益となっていること。本当に成功している会社は、40~100%以上の増益率となる。利益の伸びが四半期ごとに加速していると望ましい。売上も増加していることを確認する。年間EPSが伸びていたり、過去最高益であると機関投資家は好む。

急成長してきた会社の増益率が減速したら、危険な兆候だ。

・営業外収益や一時所得ではなく、中核事業からの利益か確認せよ。会計を取り繕って好調を装っていないか、見極めよ。経費削減のみで利益を上げている場合、それは続かない。売上と利益率が増大していること。また、市場全体や会社のシェアが拡大していること。

・利益率を見る。業界平均と比べて純利益率が高ければ、競争優位性がある。

・決算発表後、株価の動きを見て市場の反応を確かめる。
①最初にどう反応したか。
上昇したか下落したか?下落後は元の水準まで戻したか?自律反発後に再び下落したか?
②その後の抵抗は。
上昇はどのくらいの期間持ちこたえて、利食い売りに抵抗したか?
③反発力は。
調整後に素早く力強く反発したか?それとも下落後に上昇できないか?

・会社発表の業績予想は、経営陣の公式な見通しである。求めているのはポジティブサプライズな決算と、非常に高い業績予想である。

・売上高に対する在庫の増減を確認する。売上の増加以上に在庫が増加していれば、注意する。売上より売掛金の増加が速いときも注意。

売上、EPS、純利益率の3つが3四半期連続で加速している会社を探せ。

 

先導株

強気相場での利益のほとんどは、最初の12~18カ月で得られる。最も良い銘柄の上昇を逃さないために、先導株を追うこと。
弱気相場が底入れすると、最も下落に抵抗していた先導株が最初に転換する。主要株価指数が上昇を始めるころには、先導株は新高値圏にある。相場が下げている間に調べておくことが重要だ。
先導株は下落相場への転換も早い。主要株価指数が天井に達するころには、先導株の多くは下落を始めている。

・新しい上昇相場が始まると、最初の上昇局面は力強く、買い場はない。押し目買いの機会はほとんどない。大底からの上昇初期に先導株に注目せよ。
強気相場では先導株、同じセクターの株、市場平均、出遅れ株の順に上昇する。下落相場でも持ちこたえて、新たな強気相場の最初の4~8週間で新高値をつける先導株を逃さないこと。

相場の底入れの印
①先導株の第1波が現れて、階段状にベースをつくる。
②先導株は少ししか下げず、下げても素早く回復する。
③大半の先導株は安値を切り下げることがない。
④主要株価指数の出来高が、下げる日より上げる日の方が多い。

先導株は最も強いものから買うこと。高値圏に最初に入り、強い値動きをする銘柄から順に買え。何に投資すべきかは、個人的な相場観ではなく相場の強さで決めること。

急成長株には利食い売りの計画が必要である。急上昇局面が終わると、上昇幅のほとんどを失う可能性がある。先導株は下落局面では厳しいので、損切りして手仕舞う計画も必要だ。強気相場で先導株となった銘柄は、通常は次の強気相場では先導株にならない。

 

チャート

チャートは買い手と売り手のすべての動きを表している。チャートはトレードのタイミングを計り、リスクを管理して利益を得る確率を高めるために使う。
チャートではまず長期トレンドを見る。第2ステージの上昇トレンドの、適切なベースを探す。適切なベースでは、左から右に向かってボラティリティが低下する(出来高も減る)。横ばい期間で弱い保有者が取り除かれ、売りが枯れる。

・高値から50%下げたからといって、割安とは限らない。ファンダメンタルズに問題があるかもしれないし、大量の戻り売りも発生する。調整幅が小さい銘柄の方が、成功の可能性は高い。

・適切なベースが形成されるまで待った方が良い。また、1~3回振るい落としがあるまで待った方が良い。出来高を伴う株価の突出高は、機関投資家による買い集めの兆候である。最適な買い場では、出来高は少ない。

・急成長株として、新規事業から1~2年以内の若い会社を狙う。ただし、上場後に健全な第1ベースが形成されていること。

 

リスク管理

株式市場で一貫して成功するために、最も重要なのはリスク管理である。毎日大引け後、自分のポジションを率直に評価する。今とっているリスクと、将来期待できるリターンを評価する。リスク管理という基本原則を怠ってはならない。

・損切りは早くすること。株価が50%下落したら、100%上昇しないと損失は取り戻せない。10%の下落なら11%の上昇、5%の下落なら5.26%の上昇で損益ゼロとなる。1トレード当たりの平均利益を求め、その2分の1の水準で損切りすべきである。ただし損切りの水準は、10%を超えないこと。

・永遠に倒産しない、値下がりしない安全な優良株は存在しない。

・負けトレードの損失より勝ちトレードの利益が長期で大きくなれば、成功できる。株式市場では確率に賭ける。規律を守り、確率の高い状況でのみトレードをする。

感情に従わず、規律を守って自分の戦略を遂行しなければならない。良いトレードは退屈だが、悪いトレードは刺激的である。事前に緊急時の対策を考えておき、常に更新しておく。混乱や驚きなしにトレードすることが目標である。
①株を買う前に損切りの水準を設定する。上昇したら手仕舞う水準を引き上げる。
②損切りした株でも、セットアップが再び整えば仕掛け直す。
③利食いの計画も立てる。急上昇後に買い疲れが起きそうなときか、相場に弱さが見えた直後に売る。
④災害対策をする。インターネットの接続が切れたり、停電したらどうするか?

・負けが続く(損切りに繰り返し引っかかる)ときは、銘柄選択に問題があるか、市場環境が厳しいかである。失敗が続く間は、取引額を減らすこと。

・ナンピン買いをしてはならない。正しい買い場で買った後に下げているなら、それは危険信号である。

・現金から株へポジションを移すときは、徐々に進めるべきだ。小さなポジションから始め様子を見て、うまくいけばポジションを大きくしていくのが良い。

・ボラティリティが大きくなっているときは、市場環境が厳しいときがほとんどなので、損切り水準を狭くする。利食いも早くする。

・ポートフォリオの持ち株は4~6銘柄、多くても10~12銘柄までが良い。

 

書評

成長株投資の解説書です。著者は30年以上の経験がある個人トレーダー出身で、高パフォーマンスを記録した方です。成長株投資についての本は、以前に数冊読んだことがありますが、大筋では似た内容でした。投資戦略としては、標準的な成長株投資手法のように感じました。

トレードを行う水準を部分的に数値で記述していますが、文章での解説も多いです。トレードのルールを完全にマニュアル化しているわけではないので、自分で考えて取引ルールをつくらなければなりません。

著者はまだ現役のようで、2012年頃の米国株まで話が出てきます。近年はアルゴリズム取引や超高速取引などが幅を利かせていて、個人が手作業でする取引に勝ち目があるのかと考えることもありますが、まだやっていけるようです。アベノミクス相場を体験したあとで、本書の弱気相場と強気相場の解説を読むとかなり正確だと思いました。
(書評2014/05/05)

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