金融市場のさまざまな事柄を解説する、教科書的な本です。現役の銀行員が執筆しており、投資にまつわる広い範囲を勉強できるテキストです。
おすすめ
★★★★★☆☆☆☆☆
対象読者層
勉強熱心な個人投資家、金融関係の仕事を始めた社会人、金融業界へ就職希望の学生など。
要約と注目ポイント
この「投資家のための金融マーケット予測ハンドブック」という本は、日本人が金融市場を勉強するときに、割と定番なテキストのひとつになっていそうです。私は金融業界の人間ではないので、あくまで想像ですが。
20年以上もこのシリーズは刊行され続けているので、こういう本を必要とする人が少なくないのでしょう。私は第5版も読みまして、勉強させてもらいました。読み通せば、確かに読了した分だけ賢くなります。
専門家には常識でやさしい本ですが、勉強したい新社会人や学生、個人投資家には良い本だと思われます。
(第5版の書評記事はこちら ⇒ 「投資家のための金融マーケット予測ハンドブック 第5版」 三井住友信託銀行マーケット事業(著))
解説されている事柄について
本書は、金融市場や投資について、すごく広い範囲をとにかく堅く説明していきます。そのため、要約は書けません。読み通して自習する本です。
どういう内容について解説されているかをまとめました。
金利や為替の予測をするには。
- 金利の概要。
- 予測をするための理論(理屈)。
日本経済について。
- 過去の景気循環。
- 日本の経済統計や指標。
- 日本の金融政策と金融統計。
- 日本の金融市場。
米国経済について。
- 過去の景気循環。
- 米国の経済統計や指標。
- 米国の財政収支。
- 米国の金融政策。
- 米国の金融市場。
ユーロ圏経済について。
- 統一通貨ユーロや欧州債務危機の解説。
- ユーロ圏の経済指標。
- ユーロ圏の金融政策。
英国経済について。
- 英国経済の概要。
- 英国の金融政策。
オセアニア経済について。
- オーストラリアの経済と金融市場の概要。
- ニュージーランドの経済と金融市場の概要。
新興国経済について。
- 中国の経済と金融市場の概要。
- インド、ロシア、ブラジル、アセアン(インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナム)各国の経済の概要。
商品市場(コモディティ)について。
- 商品市場の概要。
- 原油について。
- 金について。
為替市場について。
- 為替市場の概要。
- 為替需給について。
- 為替レートの決定理論について。
- 国際通貨制度の歴史と概要。
- 各国の為替政策について。
テクニカル分析について。
- テクニカル分析の概要。
- テクニカル分析の方法論。
以上のような内容を、地味に解説していきます。本書では、2015年後半までの市場動向が反映されているので、割と直近までの金融市場に関して、基礎知識を勉強できます。
書評
私はこのシリーズの第5版も読みましたが、難易度や、ターゲットとなる読者層についての感想は、第5版と同じでした。
勉強熱心な個人投資家や、これから金融業界で働いていこうというレベルの学生や社会人にちょうどいい本です。現在の金融市場と関わるにあたり、広くざっと勉強したい人に適しているでしょう。
投資や経済に興味のない、日常生活が忙しい普通の人が読むには内容が多く、濃すぎます。500ページもありますし。普通の人が金融リテラシーを身につけたいときは、もっと易しめの入門書が良いと思われます。
本書はとにかく堅くて真面目なのですが、最後のテクニカル分析の章だけは、山師的要素も盛り込まれています。このへんも楽しめる人は、楽しく読めるでしょう。
個人的な感想としては、第5版を読んだときより、知識が増えていることが実感できました。解説もすんなり頭に入りやすく、既に知っている事柄も増えていたので、前作を読んでから金融知識は蓄積されたんだなと思いました。
当ブログの書評にもあるように、この3~4年で経済や投資などの本を、100冊くらいは読んでいます。確かに知っていることは増えました。
ただ残念なのは、別に投資で儲かるようにはなっていないことですね。特に、自分が勝手に相場見通しを立て、投機的なトレードをした収支については、まったく儲かっていません。
2009年以降は基本的にずっと上げ相場だったので、何も考えずに保有している株式指数連動のETFに、自己売買の成績は完敗です。
(書評2016/11/24)