「コークの味は国ごとに違うべきか」 パンカジ・ゲマワット(著)

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世界はフラット化するとか、あらゆる産業でグローバル化は必須、というのが現代日本の常識になっています。で、それってホントに常識なの?と考えるのが本書です。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

(大企業で)事業の海外展開を考える人。海外市場の分析と事業戦略を考える人。

 

要約

経営者はグローバル戦略の策定や評価にあたり、国ごとに根強く残る差異を真剣に考慮すべきだ。

・現在の世界は、グローバリゼーションにより同化しフラット化した世界ではない。完全な統合には程遠いセミ(半)・グローバリゼーションの状態で、今後数十年はそのような状態が続く。
世界はセミ・グローバルな状態と認識し、海外進出による成長や市場拡大、国境の消滅による画一的戦略などの幻想に惑わされないこと。

セミ・グローバリゼーションのため、クロスボーダー戦略は単一国向け戦略と大きく異なるものとなる。

・セミ・グローバル化した市場では国ごとの差異も類似点もともに考慮すべきだが、差異が及ぼす影響の方が大きい。

国ごとの文化的(Cultural)、制度的(Administrative)、地理的(Geographical)、経済的(Economic)な差異を分析し、隔たりを重視せよ。これをCAGEの枠組みと呼ぶ。

・国ごとの隔たりの重要性は業種によって異なるので、CAGEの枠組みは業種レベルで最もうまく機能する。CAGEの枠組みで海外の競合他社を理解できる。隔たりで市場規模を調整(割引く)ことで市場の比較ができる。

価値創造のロジックをクロスボーダーの状況に応用する。(ADDING価値スコアカード)
販売数量の向上(Adding Volume)
コストの削減(Decreasing Cost)
差別化(Differentiating)
業界の魅力の向上(Improving Industry Attractiveness)
リスクの平準化(Normalizing Risk)
知識およびその他の経営資源の創造と応用(Generating Knowledge)

・単一国戦略におけるマージンとは
マージン = 業界マージン + その企業の比較優位性
比較優位性 = 企業にとっての(支払意志額-費用) - 競合他社にとっての(支払意志額-費用)
となる。

・ADDING価値スコアカードで、ADDIという4つの要素は単一国戦略と同じ。リスクの平準化(N)と知識その他の経営資源の創造(G)については、国ごとに違いがある。

・国ごとにさまざまな差異がある中で付加価値を生み出すには、
適応(Adaptation)
集約(Aggregation)
裁定(Arbitrage)
3つのA戦略がある。

適応戦略について。
完全な現地化と完全な標準化の間には、多様化・絞り込み・外部化・設計・イノベーションなどの適応のためのツールがある。
業種の特徴は、最適な適応レベルに大きな影響を与える。そのレベルは時とともに変化するが、実際の適応度を変更するには、柔軟で現実的で開放的な考え方が求められる。
適応の意思決定は、集約や裁定の意思決定を考慮に入れて行うこと。

集約戦略について。
国ごとの類似点を、一般的な適応戦略よりも深く、完全な標準化ほど深くはなく追求するのが集約の目的である。
世界は地域化された状態(セミ・グローバリゼーション)が続き、多くの企業が売り上げの大半を本拠地から得ている。
集約の基準には地理のほか、販売経路、顧客の業種、事業部門、製品部門などがある。CAGEの枠組みとADDING価値スコアカードは集約の基準の選択に有効だが、手続きも重要であり、基準の実装には数年は必要である。

裁定戦略について。
国境を越えた差異を活用し、絶対的な経済性を追求する。
裁定の基盤には、文化的・制度的・地理的・経済的などの複数の要素がある。そしてとりうる裁定戦略も多様だが、管理すべき多くのリスクがある。
裁定を持続可能な競争優位としたい場合は、自社独自の能力の開発に長期的に取り組む必要がある。

・グローバリゼーションに対する期待は、1980年代における市場のグローバリゼーションから、現在の生産のグローバリゼーションへと移った。

3つのA戦略のうち、経営者は自社の比較優位がどれか具体的にとらえ、戦略の優先順位を決めてAを少なくとも1つは確保しなければならない。
対売上高比で宣伝広告費が高い場合は適応、研究開発費が高い場合は集約、労働費用が高い場合は裁定が重要として代理変数をおき、AAAトライアングル分析ができる。

グローバル戦略を策定するために。
①業績の評価(そもそもグローバル事業がうまくいっているか)
②業界と競争力の分析
(売上高上位が占める比率、業界内順位、シェアの変動、国際統合の尺度、クロスボーダーでの標準化、実質価格の変動、収益性、業界の分類など)
③差異の分析(CAGEな隔たりの枠組み)
④戦略オプションの策定(AAA戦略)
⑤価値の評価(ADDING価値スコアカード)

 

書評

世界が完全に統一されるというグローバリゼーション信仰を批判し、現実はその半ばのセミ・グローバルな状態にあり、企業はその現実に対応せよと説く本です。

著者は史上最年少でハーバードビジネススクールの教授になった俊英で、読みながら非常に頭の良い人が書いているなという印象を受けます。ただしわかりやすく書いたと著者も述べており、読者に配慮して読みやすくなっています。

本書は大企業で経営戦略を考えるような人に役立ちそうです。私には直接は関係ない本でした。個人的には裁定戦略が興味深く読めました。裁定といえば新興国で安く作った商品を先進国で売るという程度の認識でしたが、包括的な解説がなされています。

経営学を学んでいて、世界的な事業戦略にも興味がある人は読む価値があるかと思われます。
(書評2014/01/03)

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