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「バーンスタインのトレーダー入門」 ジェイク・バーンスタイン(著)

 

トレードの要点を、30日で速習できる本です。トレードで利益をあげるための技術を、順番に素早く学びます。

おすすめ

★★★★☆☆☆☆☆☆

 

対象読者層

アノマリーを利用するトレードや、システムトレードの手法を、さっと知りたい人。

 

要約と注目ポイント

個人投資家が短期トレードで利益をあげられるように、投資ツールを30日で学習する。

30日の学習プログラム

・1~2日目
トレーディングの枠組みとなる、3つの条件を知る。
①セットアップ
②トリガー
③フォロースルー
仕掛けと手仕舞い、利益を伸ばし損失を小さくするルールを決める。パフォーマンスを検証する。

・3~5日目
季節性に基づくセットアップと、それに有効なトリガー。ストップロスなどのフォロースルーについて。

・6~9日目
モメンタム手法について。

・10~11日目
移動平均チャネルを使うトレード。

・12~14日目
価格パターンについて。

・15日目
移動平均線を使うトレード。

・16~19日目
COTリポートの利用法。

・20~21日目
S&P500のブレイクアウト手法。

・22~24日目
ポートフォリオの管理法。

・25~27日目
トレード手法を分散し、パフォーマンスを安定させる。

・28日目
まとめ。

・29~30日目
心理のコントロール。

トレードの基本を身につけたあと、いろいろな手法を順番に学んでいきます。

 

書評

トレード手法のつくり方の一例を、知ることはできそうです。このような方法で著者は成功したのか、とは思うのですが、今の自分には役立ちそうにはありません。10年以上前のアメリカ先物市場のデータなので、ちょっと使いにくい感じです。

まあこのような方法を真似て、自分がトレードする市場のデータを分析すればいいのかもしれません。合う人には参考になるでしょう。私にはちょっと合わない方法でした。

本書の内容では、パフォーマンス安定化のために、投資対象銘柄、タイミング、トレード手法を分散させるというのは、確かにいいと思います。自分もやっています。それから、心理のコントロールの大切さを解説していますが、これも妥当と感じました。
(書評2015/07/12)

「続マーケットの魔術師」 ジャック・D・シュワッガー(著)

 

「マーケットの魔術師」シリーズの第4作です。リーマンショック後に書かれており、今の市場環境で生き残ったトレーダーたちについて知ることができます。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

マーケットに勝ち、大きな利益をあげたい人。

 

要約と注目ポイント

主に1990年代から2000年代に成功している、ヘッジファンドのマネージャー15人にインタビューした。それぞれのトレード手法や投資哲学、相場観などが語られる。

リーマンショックを乗り越え、勝ち続けるトレーダーたち

スティーブ・クラーク

高卒で証券会社の雑用として仕事を始め、マーケットメーカーや裁定取引の経験を積む。イベントドリブン戦略のヘッジファンドを創設し、大成功する。

「得意なトレードに専念して、苦手なトレードはしない。」
「トレードサイズが重要。起きたときに気になるようでは、ポジションが大きすぎる。」
「自分の考えを柔軟に変えられる。」
「興奮した感情的なトレードをしない。」
「常に資産管理をする。」

トレードを始めると、調子に乗っていろいろな市場で売買したくなります。ですが、やはり相性と言うか、得手不得手はあります。得意なトレードに専念せよ、起きたときに気になるのはポジションが大き過ぎ、などはすごく納得です。

マーティン・テイラー

東欧株式ファンドを運用する。完璧にロシアのデフォルトを予測して、好パフォーマンスをあげる。そのあと新興国ファンドを設立し、高いリターンを出し続ける。

「ファンダメンタルズが最も良い国(市場)で、長期的に良い経済環境にあり、将来の成長と予想利益が素晴らしく、妥当な株価の会社を選ぶ。」
「暴落時も、自分が安心できる水準の買いポジションは保持する。すべて手仕舞うと、焦りから不適切な場面で買いに走る。」
「長期的な視点で、投資判断する。」

暴落時も買いポジションを少し残せ、と言うのは共感できます。全部売ると、焦って買いたくなります。

トム・クローガス

化学会社の役員の地位を捨て、ヘッジファンドを創業する。手法は平均回帰の考え方に基づく逆張り。株式の銘柄選択にも独自性がある。

「将来収益が期待されるが、現在の株価に織り込まれていない銘柄を買う。」
「トレードは結果では評価できない。勝率の高いトレードが良いトレードで、それを続けること。」

将来の利益から見て割安の株を買え、トレードは確率で有利な売買を続けるべき、も良い教えです。

ジョー・ヴィディッチ

ファンダメンタルズ分析で大局観を作り、個別銘柄を選択する。そしてイベントに対する値動きを参考に、マーケットのセンチメントを察知してトレードを行う。

「損切りは少しずつ行う。含み益があれば、下げ始めるまで売らない。」
「恐れに支配されて判断しないように、ポジションサイズを限定する。」
「考えを柔軟に変える。」
「損切りによる損失に慣れる。リスク管理には必要だから。」
「割高だからという理由だけで空売りし、割安だからという理由だけで買うのは危険。」

こちらも名言です。損切りはリスク管理に必要。割高だから空売りし、割安だから買うというだけでは危険。

ケビン・デーリー

株価が事業の本質価値を大きく下回っている会社を探す。ウォーレン・バフェットの投資哲学に従い、高いリターンを継続する。しかも、投資環境を判断し、現金化して損失を低く抑えることができる。

「本質価値に比べて割安な会社を買う。」
「割安でも、キャッシュフローを増やし本質価値を大きくできない会社は避ける。」

本質価値より安い株を買う、というのも全くその通りです。

ジミー・バロディマス

トレンドに逆らい、上昇相場で空売りし、下落相場でナンピンする。それでも15年間利益をあげ、損失は出していない。

ジョエル・グリーンブラッド

バリュー投資で長年にわたり、市場平均を大きく上回るパフォーマンスを達成する。企業分割や合併などのイベントを利用していた。近年は独自の指標に基づく、システマティックなバリュー投資に力を注いでいる。

「収益利回りで割安かどうか、有形資本利益率で良い会社かどうか判定する。割安かつ良い会社に長期投資する。」
「バリュー投資は儲かるが、短期的にはうまくいかないときもある。それは機関投資家が、ますます短期のパフォーマンスを重視するようになったからだ。」

バリュー投資は効果的な方法だと思います。ただ、時間がかかることがあるというのは、おっしゃる通りです。自信を持って値上がりを待てるかです。

コルム・オシア

低リスク水準のトレードで損失を最小限にとどめながら、20年間好パフォーマンスを続ける、グローバルマクロ戦略のマネージャー。

「ファンダメンタルが重要。ファンダメンタルがマーケットを動かすが、人々が気づき始めるまでトレンドは発生しない。」
「バブルの時期は、バブルを信じ切っている人が必ず勝つ。流動性のある投資対象でバブルに乗りながら、相場が転換するまでひたすら待つ。」
「今何かが起きていると気づいたら、それに従ってトレードはできる。」
「トレードのアイデアよりも、トレードを適切なやり方で実現することが重要。利益が大きくなり、判断を誤っても損失が限定されるトレードをする必要がある。」
「マーケットで重要なのは、成長率ではなく変化率。楽観主義者の力を過小評価してはならない。」
「自分の個性にあったトレード手法を使うのが大切。世界の変化をありのままに理解して、考えを柔軟に変える。」
「自分の仮説が間違いとわかる価格に、損切り注文をおく。」

個人的には、この方の話が本書で最も勉強になりました。先進国の中央銀行がつくった金融緩和バブルも、そろそろ終わりが近いです。このような投資の考え方が必要な局面が来ると、個人的には思っています。

レイ・ダリオ

世界最大のヘッジファンド、ブリッジウオーターの創設者。40年間、市場で勝ち続ける。
「間違いからは、将来の間違いを減らす原則が学べる。」
「各マーケットは、それぞれの決定要因に従って動く。決定要因の異なる、相関関係のない資産でポートフォリオを構成するのが良い。」
「自分のトレード戦略が、異なる相場環境でも通用するか検証する。」

知る人ぞ知る、金融業界の巨人です。この方の制作した、「30分でわかる経済の仕組み」という動画は面白いです。

ラリー・ベネディクト

平均回帰の考え方に基づき、短期トレードを繰り返す。20年間、損失を小さくしながら利益をあげてきた。

スコット・ラムジー

ファンダメンタル分析でマクロの見方を決め、テクニカル分析に基づきトレードする。リスクと損失は低く抑えられ、好パフォーマンスを維持している。

ジャフリー・ウッドリフ

トレンドフォローでも平均回帰でもない、コンピュータを使う独自のシステムトレードを開発する。プログラムで運用する資産は50億ドル以上になっている。

エドワード・ソープ

数学の力でカジノに勝つ。オプションとワラントの市場でも勝ち、世界初のクオンツファンドを創立した。

ジェイミー・マイ

サブプライムローンの破綻に賭けた男として、「世紀の空売り」に登場する。だが実際は、もっと知的に洗練されたトレーダーである。創業したヘッジファンドの成績は、9年間の年平均純利益が40%に達する。

「既知のリスクに不確実性があると、マーケットは株価を割り引き過ぎることが多い。逆にマーケットは、はっきりと確認されていないリスクを過小評価しがちだ。」
「ある銘柄のボラティリティが非常に低いときは、ボラティリティの買いを検討するのに良い時期だ。」

「世紀の空売り」では素人のような扱いでしたが、本書を読んだら完全なプロでした。この方の戦略もすばらしいです。

マイケル・プラット

裁量によるトレードと、システマティックなトレンドフォローのトレードを行う。リスク管理は徹底しており、裁量のトレードでも最大損失(ドローダウン)は5%以下である。

「トレードするセクターと戦略を分散化する。運用単位の最大損失を3%に限定する。日々、トレードの方法、相関関係や戦略、ポジションの見直しをする。これらによりリスク管理を行う。」
「マーケットでは、どんなことも起こる可能性がある。マーケットが間違っていると考えてはならない。マーケットは常に正しく、損をするなら自分が間違っていると認識する。」
「相場で利益を出すために3つの必要なこと。ファンダメンタルズに関するまともなストーリー。今後も続きそうな良いトレンド。ニュースを自分の考えと同じように扱う市場。」

マーケットが間違っていると考えてはならない。これはその通りだと思います。安過ぎるとか高過ぎると自分が思っても、そのようにマーケットが反応しないことはよくあります。それを受け入れないと、大損害を食らいます。

 

書評

読んだ感想は、「マーケットの魔術師」とだいたい同じです。この本を読むだけでは儲かりません。日々相場の研究をし、自身のトレードの検証を行い、努力を続けている人が読むと、ヒントが見つかるかもしれません。

ただ2冊を比べると、本書の方が読みやすくて有益だと、個人的には思いました。難易度も上がっている印象ですが。

読みやすくなっているのは、単純に4作目で著者も慣れてきて、インタビューの内容や文章表現、解説やまとめが整理されているためかと推測します。最後にある40の教訓も、よくまとまっています。

有益と考えるのは、やはり情報として1作目の「マーケットの魔術師」は古く、4作目の方が新しいためです。トレーダーの話は、1作目だと30~40年前の内容になりますが、4作目では3~4年前までフォローされています。

「マーケットの~」では、登場するトレーダーはいかにブラックマンデーが悲惨だったかを話していました。しかし今考えると、ブラックマンデーは世界の終わりではありません。

株式市場が1日で20%以上下落するというのは、大惨事です。ただ1980年代から1990年代は、全体では幸せな上昇相場でした。ブラックマンデーの傷もすぐに回復します。長期の上昇相場で何回か起こりうる、大規模な調整と位置付けられるでしょう。

「続~」では、1997年からの新興国金融危機、2000年前後のITバブル崩壊、2008年のサブプライムローン危機をトレーダーは経験しています。このうちITバブルは、インターネットを材料にした典型的なバブルと言えます。

しかし1997年の金融危機は、グローバルに投資や投機の資金が動くことで起きました。現在、世界中の中央銀行が金融緩和を行い、マネーがじゃぶじゃぶです。アメリカの利上げなど、金融政策の変更で世界のマネーの動きが変われば、重大な事態を引き起こす可能性があります。その意味で、参考になる出来事です。

サブプライムローン危機は、典型的な不動産バブルとも言えますが、劣悪な資産を金融工学で最上級の資産と取り繕い、レバレッジで超巨額に膨らませたところが新しかったです。

あまりにもやりすぎたので、7年経った今も経済にダメージが残っています。7年経っても先進国がゼロ金利、マイナス金利という異常な状態のままです。サブプライムローン危機の後は、世界が低成長の時代に変わったようです。サブプライムローン危機が、長期上昇相場と長期停滞相場の境になったかもしれません。

これから投資やトレードを考える人は、サブプライムローン危機で何が起きたかを知るべきだと思います。中央銀行がゼロ金利の世界をつくり、債券バブルが発生しています。量的緩和の効果に限界が見えてきており、債券バブルの行く先が怪しくなっています。

またここにきて、世界第2位の経済大国である中国の様子が変です。中央銀行の債券バブル、中国のバブル、崩壊した場合はどちらも、サブプライムローン危機の規模を超えそうな予感です。

内容の難易度が上がっている、という印象も持ちました。「マーケットの~」は、プロのトレーダーに学んで個人投資家も億万長者になろう、というノリも感じます。

「続~」は、ヘッジファンドのマネージャーばかりなので、かなり理屈っぽいです。私が本書を買った目的はレイ・ダリオ氏のインタビューでしたが、これも難しいです。いろいろなマネージャーの理論を理解できれば、勉強になると思いますが。

「マーケットの魔術師」と「続マーケットの魔術師」は、両方とも文章量が相当多いです。どちらか1冊読むなら、私は上のような理由で、「続~」をおすすめします。
(書評2015/07/08)

「マーケットの魔術師」 ジャック・D・シュワッガー(著)

 

トレードに関する名著とされる「マーケットの魔術師」シリーズ。原点となる第1作です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

マーケットに勝ち、大きな利益をあげたい人。

 

要約と注目ポイント

敏腕トレーダーである著者が、非常に優れたパフォーマンスのトレーダー18人にインタビューし、トレードの秘密に迫った。

聖杯を見つけた偉大なトレーダーたち

マイケル・マーカス

商品先物トレーダー。

ブルース・コフナー

主に為替取引を行うトレーダー。

リチャード・デニス

商品先物取引から出発し、成功を収めたトレーダー。

ポール・チューダー・ジョーンズ

長年にわたり、驚異的なリターンをあげ続ける先物トレーダー。

ゲーリー・ビールフェルド

穀物相場で集中的に取引し成功する。そののち債券取引を行う。

エド・スィコータ

開発したトレーディングシステムで、最高のパフォーマンスを出す。

ラリー・ハイト

役者と脚本家から転職し、徹底したリスク管理を特徴とするファンドを創設する。

マイケル・スタインハルト

株式市場を特異な洞察で見るファンドマネージャー。

ウィリアム・オニール

独自の手法で急騰する成長株を発掘する。

デビット・ライアン

ウィリアム・オニールの弟子で、成長株投資を行う。

マーティ・シュワルツ

10年間負け続けたあと、圧倒的なリターンを生むトレード手法を編み出した。

ジム・ロジャース

ジョージ・ソロスと設立したクオンタム・ファンドで、最高のパフォーマンスをあげる。その後は自身の資産を運用している。

マーク・ワインスタイン

徹底したテクニカル分析、多くの経験と優れたセンスにより、ほぼ100%の短期トレード勝率を誇る。

ブライアン・ゲルバー

ブローカー出身の、市場心理を読むのに長けたトレーダー。

トム・ボールドウィン

個人で巨額の資金を動かす、超短期トレーダー。

トニー・サリバ

巨額の利益をあげるオプショントレードを成功させながら、安定的なパフォーマンスも長く維持する。

バン・K・タープ

トレードで成功するための心理学を研究している。

エドワード・ソープ

確率の力でカジノに完勝した数学者。世界初のクオンツ・ヘッジファンドを創設。

勝利を収めてきたトレーダーたちは、何を考え、どのようにトレードしてきたのか。貴重なインタビュー集です。

 

書評

たくさんの成功者が出てきて、それぞれのトレード手法や投資哲学を語ります。知らない人もいますが、有名人もいます。

ジム・ロジャースは、日本のメディアにもよく登場します。私が書評を書いた本と、関わりのある人たちもいました。

「オニールの成長株発掘法 第4版」の著者ウィリアム・オニール。「ヘッジファンドⅠ・Ⅱ 投資家たちの野望と興亡」で取り上げられた、マイケル・スタインハルトとポール・チューダー・ジョーンズ。

18人のトレーダーが、成功の秘訣を語ります。なるほど、役に立つ教訓だと思うことはあります。

1回のトレードでの最大損失を限定する。ポジション全体のリスク管理。損切りは早く、利食いは遅く。感情的なトレードをしない。トレードがうまくいかないときは、トレード額を落としていく。規律を守る。などなど。

大成功するトレーダーは個性が強い人が多いので、インタビューでも面白い言い回しや例えなどをします。奥深いような発言をたくさん読んでいくと、自分も何かすごいことがわかったような気持ちになりやすいです。

しかしトレードを始めたばかりの人が、この本を読んでうまくいくとはあまり思えません。こういう本を読むと、自分も大儲けできるような気になりますが、読んだだけでは勝てません。

本書が役に立つのは、毎日相場の研究を重ね、自分のトレード結果をずっと検証しているような人でしょう。そんな人なら、多種多様なトレーダーの話の中に、自分の売買手法に合うヒントを見つけることもあると思います。

各トレーダーで手法が違うので、教訓も異なります。

損切りの基準を決めている人もいれば、損切りポイントを決めていない人もいます。1つのトレードを、必ず資産全体の一定比率以下に限定する人もいます。チャンスと考えたトレードに、とても大きな比重をかける人もいます。

そのようなわけで、かなり分量のある本ですが、各読者にとって有益な部分はそれほど多くないような気もします。
(書評2015/07/02)

「お金は「歴史」で儲けなさい」 加谷珪一(著)

 

人間の世界では、過去に起こったことが再び繰り返されることがあります。本書を読んで、歴史から学び未来を見通し、お金持ちになりましょう。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

お金持ちになりたい人。歴史から投資戦略を考えたい人。

 

要約と注目ポイント

人間社会では、同じようなことが繰り返し起こる。長い年月にわたり資産を維持している富裕層は、とても歴史を重視している。本書では歴史から学んだ知見をもとに、株価の動き(戦争の影響)、インフレ、バブル、イノベーション、商品価格、長期投資、今後の投資戦略を考察する。

 

株価を予想する

日本の株価は、過去130年間で年間収益率が平均7%だった。ただし大きく上昇する時期と、長期に低迷する時期があった。約20年の単位で、超長期のトレンドが発生していた。

第1次世界大戦の戦時需要で大正バブルが発生したが、そのあと崩壊しデフレとなった。デフレと関東大震災による不況に対し、日銀の国債引き受けという金融緩和策がとられた。敗戦後に巨額の債務のため準ハイパーインフレになった。このバブル崩壊から長期デフレ、震災、超金融緩和までの流れは現在と同じである。

人は自分が経験した範囲の感覚で、取引しがちである。株価の歴史的推移を見ておくべきだ。15~20年単位の長期トレンドは、そう簡単に止まらない。だが、永遠に続くこともない。

今の長期停滞は25年続いてきた。現在が、長期トレンドの転換点である可能性は高い。アベノミクスの結末は株高と好景気、インフレが考えられる。

良くも悪くも、アベノミクスは日本の戦後史の転換点になりそうです。

 

インフレ

アメリカ経済は将来も堅調で、ドル高が予測される。日本の経常収支は恒常的に赤字となり、円安となる。したがってインフレとなるが、仮に経済成長が伴わなければスタグフレーションとなる。

インフレやスタグフレーションに備えるには、預金をやめて株を買う。基礎体力があり、グローバル展開していて、需要が減りにくい商品を提供する会社の株が候補となる。優良な不動産を借金で買うのもひとつの方法。他のヘッジ手段は外貨や金など。

過去のドイツや日本でインフレが発生したとき、物価は急激に上がるのに、不動産価格や株価の上昇は遅れた。ドイツのハイパーインフレでは、価格の上昇は①為替、②金、③物価、④不動産、⑤株価、の順番だった。

日本人はオイルショック以降、生活物資のインフレを体験していません。30~40年ぶりに本格的なインフレが起これば、ほとんどの日本人は対応できないでしょう。野心のある人には、チャンスでもあります。

 

バブルとイノベーション

バブルには、マクロ的な市場全体がバブルになる場合と(1980年代後半の日本など)、イノベーションを材料とした個別のバブルの場合(2000年頃のITバブル)がある。

マクロ的バブルは、資産間のお金の移動で発生する。株式、債券、不動産のうちで、過剰にマネーが流れ込んだ資産がバブルとなる。現在は債券バブル。

イノベーションでは巨大な利益が期待されるので、イノベーション関連企業の株価は高騰し、バブルとなる。テクノロジーを材料とするバブルは、再現性がある(鉄道、自動車、半導体、インターネット)。

テクノロジーがバブル化するのは、投資家が理解しやすいとき。次の有力な候補は、人工知能とロボット。テクノロジーの評価は、黎明期、過度な期待、失望、安定的な成長、と移り変わる。投資するのに適切な時期がある。

バブルは何回でも繰り返されるのですが、それでも毎回、たいていの投資家はとんでもないことになります。バブルと、ブームのもとになるイノベーションの歴史的関係は、知っておくと良いでしょう。

 

コモディティ

金などの実物資産は、通貨に対する不安が高まると買われ、通貨への信頼が高まると売られる。

ビットコインは、金本位制に影響を受けて設計されている。世界の一定数の人が価値を認めれば、ビットコインは通貨になる。

原油価格は、1970年代のオイルショックでピークをつけた。リーマンショック前から再び高騰し、高値で推移していたが、アメリカのシェール革命により2014年後半から下落している。今後も供給過剰で、価格は低く抑えられる可能性がある。

資源価格の推移は、アメリカの金融政策の影響を受けます。資源価格が下がれば新興国経済は減速し、その打撃は金融市場に返ってきます。

 

長期投資

株式への長期投資は、年平均7%の高い利回りと複利効果が見込まれる。ただし毎年の利回りは、リスク(標準偏差)の大きさに応じて上下に振れることに注意する。現実的な投資リターンは、べき分布で想定される。長期投資でもリターンの幅は大きい。

投資家は株式投資に高いリターンを求めるので、将来も株価は継続的に上昇すると考えられる。

株価や経済の動向は、人間の心理による影響も大きい。

 

今後の投資戦略

今後の投資戦略を考えるために、大切な基本事項を解説します。そのうえで、有利と考えられる投資戦略を提示しています。

円安やインフレも想定しつつ、有効な投資戦略を考えています。自分が投資するときにも、参考にできるのではないでしょうか。

 

書評

著者には「大金持ちの教科書」という著作があります。このなかで、時代の流れを見極めることが、お金儲けにとって重要と述べています。この時代の流れを読むという部分を拡大し、歴史から学ぶという要素を加えて1冊の本になったのが、本書「お金は「歴史」で儲けなさい」であるような印象です。

そのため、「大金持ちの~」と重複する解説もあります。本書は、歴史的なデータから現状を分析し、将来のシナリオを予測するという点が特徴です。

読んでみて、いろいろ勉強になりました。私とけっこう似た考え方だなと思いました。今後に使えそうな点を、いくつか整理してみます。

日本株式の過去の平均利回りは、年7%としています。「株式投資 第4版」によると、過去200年のアメリカ株の年平均利回りが7%なので、これはだいたい妥当と思われます。株式に数十年単位で投資することは、収益の面でもインフレ対策の面でも悪くない方法だと考えられます。

日本の将来シナリオとして、インフレ(スタグフレーション)は有力と考えます。まだ物価は上がっていませんが。

日本の国家債務を処理するのに、物価上昇率より長期金利を低く保つ、金融抑圧的な政策がとられるだろうと私は予想します。ですから、アメリカの優良株を買う、外貨建て資産を持つ、優良不動産に投資する、といった方法には賛同します。

インフレのとき、資産によって上昇する時期がずれることは勉強になりました。はじめに外貨や貴金属に逃げ、そのあと相対的に安く売り込まれた株や不動産を買うと、お金持ちになれるようです。(上手くいくか、保証はできませんが。)

バブルの分類も、学ぶところがありました。マネーが過剰に流れるところを、冷静に探そうと思います。イノベーションによるバブルの場合、ブームのピークの前に株を買っておきたいのですが、私はたいてい出遅れます。

なので、失望され忘れられたテクノロジーが、本格的に普及してきて復活する前の、横ばいの時期に買うのもありかと思います。

人工知能やロボットは本当に有望と思いますが、今のところ勝者ははっきりしません。アップルやグーグル、フェイスブックやIBMなどは力を入れていますが。
(書評2015/06/29)

「大金持ちの教科書」 加谷珪一(著)

 

お金持ち特有の思考と行動原理を明らかにした、ベストセラー「お金持ちの教科書」。本書はその続編であり、お金持ちになるための普遍的な考え方や、時流の見方を解説します。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

お金持ちになりたい人。

 

要約と注目ポイント

儲けの才能を持たない普通の人がお金持ちになりたいなら、お金持ちの普遍的な考え方や、時代の流れを見抜く方法を学ぶ必要がある。

本書では、お金持ちになるための方法と必要な能力、精神性を論じる。また時代の見方、イノベーション、日本の今後についても考察する。

 

お金持ちになる方法

お金持ちになる方法は、①高給をもらう、②事業を行う、③投資する、しかない。超高給取りはほとんどいないので、仕事をしながら、事業、投資、副業を組み合わせるしかない。

資本主義社会では、投資家(と経営者)が利益の大部分を取る。最も稼げるのが、自分で投資して自分で経営するオーナー経営者である。

事業で稼いだお金を再投資せよ。

お金を儲けるには、不特定多数から広く浅く集めるか、身近なところから搾取するかの2通りがある。

節約は重要。お金持ちの言う節約とは、事業や投資にかかる出費を最小限にすることだ。

速くお金を儲けるには、借金によるレバレッジ効果が必要となる(特に不動産業)。

などなど‥‥

非常に実践的で、合理的な方法論です。このような思考は、誰かが教えてくれることは基本的になく、自分で学ぶしかありません。そういった意味でも貴重な教えです。

 

お金持ちになるための能力

天賦の商才を持つ人もいる。そうではなかった多くのお金持ちは、野心を持ち、努力し、試行錯誤を続けた。

学歴ではなく、「頭がいい」ことは必要。お金儲けのセンスも必要。

極限まで努力したあとで、運が重要となってくる。未開拓の世界では、ルールが定まっている既存の世界での「実力」を超えるものが必要となる。

などなど‥‥

 

お金持ちになるためのメンタリティ

必要なときに、果敢に素早くリスクを取る。

世間一般のお金の価値観から脱却し、お金に対し中立的に行動せよ。

「すべき」や「であるべき」ではなく、合理主義に徹する。

などなど‥‥

教訓となる事例がたくさんあります。身につけるべき能力やメンタルとして、目標になります。

 

時代の見方

好景気のときに、格差は拡大する。実は不景気の方が、格差は縮小する。お金持ちになりたいなら、景気が拡大するタイミングを絶対に逃してはならない。

経済の成長は、資本、労働(人口)、イノベーション(生産性)で決まる。日本は労働力人口が減少し、イノベーションは停滞している。人口動態を見ることは、将来を考えるために必要だ。

お金の総量が増えると、経済成長を促進したり、バブルを発生させたりする。資本が過剰となっている現代では、いろいろなところでバブルが生じている。お金持ちになるためには、次にお金が向かう先を読み、バブルを利用すること。

などなど‥‥

 

イノベーション

イノベーションが起きると、お金儲けのチャンスが生まれる。変化に対応できないと、富を失う。

社会の動き、登場してくる製品やサービスを注意深く見続けていると、大きな動きは予測できる。

お金(通貨)は共同幻想である。ビットコインには、金本位制や金融マーケットの覇権争いという背景がある。

ロボット(人工知能)の高度化が、人間の仕事を奪う。工場の製造現場だけでなく、ホワイトカラーの仕事でも単純作業はロボットが担うようになる。

などなど‥‥

 

将来の日本でお金を儲けるには

日本の将来では、

人口が減少し、若年労働者が不足する。
都市部に人口が集中。
共働きが普通、働ける限り生涯働く。
仕事の外注化。ブルーカラーは不足し、ホワイトカラーは余る。
脱工業化し知識産業化の時代になる。
知識産業化とは、個人情報をすべて収集すること。
個人情報を集めれば、行動などが予測できる。
‥‥
といったことが予想される。

そこからお金を儲ける方法、資産を守る方法を考察する。

これからの時代の流れを読み、イノベーションが社会をどう変えるか考え、日本の将来を見ていきます。そこから自分はどう行動すべきか、とても参考になります。

 

書評

かなり良いです。教訓になる話、勉強になる解説が充実しています。貧乏人の私が評価するのも微妙ですが、良い本です。

前作の「お金持ちの教科書」は、割と間口を広くとっていました。それほど経済やビジネスに関心がなくても、お金持ちってどういう人だろう程度の読者でも、受け入れていました。ただ著者が上級編と述べるだけあり、本書はお金持ちになるための方法論が直球勝負です。

お金を儲けるためには、合理的な思考が必要です。ありのままの現実を、直視しなければなりません。私が漠然と不思議に感じていたいくつかの事象を、説明してくれていたので勉強になりました。(以下のさわかみファンドの例など。)

事象のひとつとして、儲かるビジネスモデルがありました。著者は、儲かる事業のモデルを2つに分けます。1つはブラック企業的なモデルで、身近な弱者から搾取します。ただ実は、搾取モデルは大きな利益にはならないと述べます。弱者はあまりお金を持っていないからです。

日本は搾取モデルの事業者の方が多いのですが、それは非合理な市場が存在するからでもあり、搾取モデルは参入障壁が低いからでもあります。

消費者のニーズを汲み取った、不特定多数から広く浅くお金を集められるモデルの方が、大儲けできます。著者はこのモデルを薦め、消費者に魅力的なサービスとして「見える」ことが、きわめて重要だと説きます。

この例として、グーグルのサービスがあります。グーグルはいいのですが、そのほかに、あるファンドマネージャーの例も挙げます。本文中で実名は出ていませんが、私が推測するに、多分さわかみファンドです。

さわかみファンドは、短期的な市場変動を狙わず、優良な日本企業に超長期で投資することで利益をあげるとしています。このような長期的な視点の投資が、会社にも投資家にも日本社会にも利益をもたらすのだと訴えます。これが実現するなら、確かに美しい物語です。

ただ私は昔から、さわかみファンドは手数料が安くなく、パフォーマンスもあまり良くないので、どのあたりが長期投資に向いているのかさっぱりわかりませんでした。このパフォーマンスなら、手数料が格安の株式インデックスファンドを買うべきだと思っていました。

しかしさわかみファンドは、(一般大衆が優良だと思う)日本企業への長期投資が、すべての人の利益になるという、美しい物語、コンセプトを売っていたのでした。それも消費者が大歓迎する形で。このようなビジネスが強いということです。

このような感じで、時代の動きの読み方、リスクの取り方など、大切な事柄が次々と解説されています。前著と比べると、とにかくお金持ちになるための探求心が強く表れています。まずは小さくてもお金が稼げる事業をつくりたいと、あらためて考えさせられた本でした。
(書評2015/06/28)

「お金持ちの教科書」 加谷珪一(著)

 

長年たくさんのお金持ちに接してきた著者が、お金持ちの思考や行動を観察してまとめた本です。お金持ちになれるヒントが詰まっています。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

お金持ちになりたい人。
お金持ちの特徴を知りたい人。

 

要約と注目ポイント

著者は金融機関勤務と経営コンサルの経験がある。その経験から、お金持ちには思考パターンや行動原理、キャリアに特有の傾向があることを知った。これを応用し、著者自身も富裕層に入ることができた。

本書では以下の3点を解説する。
①お金持ちの実像とその生活
②お金持ちの習慣・思考と行動原理
③お金持ちになるには

 

お金持ちの実像とその生活

社会的地位の高さ、年収の高さ、持っている資産の多さ、これらは世間では混同されるがそれぞれ別のもの。

お金持ちが何代も資産を維持できることは少ない。どんなお金持ちにも、成金の要素はある。(誰にとっても成金になれる可能性はゼロではない。)

日本の(億レベルの)富裕層は、土地持ちタイプ、羽振りのよい商売成功タイプ、ひたすら貯金したタイプが典型的。実業家では、地域密着企業を継承した保守的タイプと、外資系タイプがある。

日本の富裕層数が多いのは、円高と過大評価な不動産のため。外国のお金持ちの資産は、金融資産。

住む場所の話。時計と靴の話。プライベートバンクの話。

1億ドル以上の超お金持ちの話。資産を守って他国に居住することはたいへん。

お金持ちは、お金を失う恐怖を常に感じている。

お金持ちと言えるのは、資産3億円以上か年収3000万円以上のクラス。ただ資産5000万円を超えると、資産を絶対に失いたくないというお金持ちの思考を始める。年収1000万円はお金持ちではない。

ひとまとめにお金持ちといいますが、実は種類があります。日本のお金持ちを分類し、説明します。

 

お金持ちの習慣・思考と行動原理

お金持ちの習慣、思考、行動を具体的に説明する。

わがまま?
ありがとうとよく言う。
ケチ?
食事代はもつ。
価値観が変わり昔の友人と話が合わなくなる。
感謝せずお礼をする。
すべて自分の責任と考える。
人を見抜く、数字を見抜く。
効率的、混雑を嫌う、コストパフォーマンス重視。
リスク管理をする。
見栄を張る効果を知る。

などなど‥‥

お金持ちはなぜ、そのような思考をするのか。お金持ちの習慣や、そのように行動する理由が、具体例を通して見えてきます。

 

お金持ちになるには

それでは、お金持ちになる方法とは。お金持ちになるための、さまざまな視点を説明する。

お金の話ばかりをする。
日本では安心を求める人が多い。これを使う。
元手が少ないなら、リスクを取って集中投資することも必要となる。
自分の目で確かめ、自分の基準を絶対に譲らない。
お金持ちになれるかは、20代の過ごし方で決まる。
年寄りの説教は無視しろ。
貧乏人と付き合うな。
人に使われてはならない。

などなど‥‥

普通の人とは違うところがあるから、お金持ちはお金持ちになったわけです。そのあたりが実例を挙げて、解説されています。なお、普通の人でも今から実行可能な、お金を貯めるアドバイスもあります。

 

書評

本書の内容は、自己啓発と資産運用で半々となっています。お金持ちになれるような、思考や行動原理を身につけるための自己啓発が半分。実際にお金はどう使うべきか、数字の読み方、投資のやり方などが半分という感じです。

これらがきっちり分けて説明されているわけではなく、混在一体となっています。思考や行動、事業や投資のやり方はつながっているので、混ざっています。

お金持ちがどういう生活をしているか、といった話もありますが、私にとってはその部分は割とどうでもよかったです。私はひたすらお金を儲けたいだけなので。その部分も読み物としては楽しめます。

私は投資やお金の本をかなり読んでいるので、大切だと著者が述べている事柄は知っていたものが多いです。やはりそうですよね、とだいたいのところで納得しました。知っているだけでなく実行できるかが、凡人と金持ちの分かれ目だと本文中でも指摘されていますが。実行が大事です。

面白いと思ったのは、いつもお金の話をしていると、周りの人をスクリーニングできるということです。お金の話ばかりすることで、金持ちを妬む人や合理的な思考のできない人が遠ざかります。

さらに自分の目で見て、詐欺師みたいな人たちを排除すれば、付き合えば稼げたり儲けたりできる人が残るとのことです。笑えたうえで、なるほどと感じました。

島田紳助氏の不動産投資の話も、教訓になります。スターとなり、分刻みのスケジュールの中、すべて自分で不動産物件を見て回り、選択して投資したそうです。投資では、そこまでやらなければ儲からない。逆に、そこまでする根性の人は少ないので、そこまで徹底すれば勝てるということです。

世間で繰り返し聞く話についても、勉強になりました。聞き手が快感を覚えるから世間で流布するので、聞き手をその気にさせるサービスをつくれば儲かる。あるいは、本当の真理であるから、本当に実行すれば儲かる。これも素晴らしいです。
(書評2015/06/26)

「改訂版 金持ち父さん貧乏父さん」 ロバート・キヨサキ(著)

 

日本でシリーズ累計350万部、全世界では3000万部という超ベストセラー「金持ち父さん貧乏父さん」。日本語版発売から13年、根本となる「金持ち父さん」の教えはそのままに、最新状況に合わせて改訂版が登場しました。

おすすめ

★★★★★★★★☆☆

 

対象読者層

お金持ちになりたい人。社会に出る前の若い人。

 

要約

・学歴は高いがお金に苦労した父さんと、高い学歴はないがお金持ちになった父さんから、少年のころ相反する教えを受けた。2つの異なる教えに接したことで、学校では学ばないお金持ちになる考え方を発見できた。金持ちになるか貧乏になるかは、考え方や行動の仕方が原因なのだ。

お金がどのように動くかを知る、お金に関する教育が大切だ。(給料をもらうため)自分がお金のために働くのではなく、(事業などで)お金を自分のために働かせることが、金持ちと貧乏を分ける。

 

金持ち父さんの教えは、6つの指針にまとめられる。

①金持ちはお金のためには働かない。
②お金の流れの読み方を学ぶ。
③自分のビジネスを持つ。
④会社を作って節税する。
⑤金持ちはお金を作り出す。
⑥お金のためではなく学ぶために働く。

①金持ちはお金のためには働かない。
不満や困難な状況になったとき(人生につつきまわされたとき)が学ぶチャンスだ。
学校はお金のために働く方法を学ぶところ。
たいていの人間は、お金がなくなる恐怖と消費の欲望に動かされて働く。
恐怖と欲望という感情に支配されず、感情を観察して自分の頭で考えろ。
自分を知るための情報と知識を求めなくなると、無知にとらわれる。無知が恐怖と欲望を大きくする。
自分がその場にいなくても事業自体がお金を生み出す仕組みをつくること(ビジネス)が、お金が自分のために働くということだ。

②お金の流れの読み方を学ぶ。
金持ちになるには、そして金を持ち続けるためには、お金について学ばなければならない。
資産と負債の違いを知ること。金持ちは資産を手に入れる。中流以下の人は負債を資産と思いこむ。
資産は自分に金を与え、負債は自分から金を持ち去る。
貧乏、中流、金持ちの金の流れの説明。
お金をどう管理するか、勉強する必要がある。
何も考えず他人と同じ行動をとるのは、恐怖に負けている。
大きな持ち家は負債である。金持ちは、収入を生む資産への投資を優先する。
中流の人は、働いて得た収入が他者のふところに入ることに気付いていない。(給料のために働くことは会社のオーナーと株主の利益、支出の税金は政府の利益、負債の住宅ローンは銀行の利益。)働いて努力した分が、そのまま自分の利益になる方法を学べ。
資産の生むお金(キャッシュフロー)が支出を上回り、余ったお金を再投資できるようになれば、お金持ちになれる。

③自分のビジネスを持つ。
利益を生む本当の資産やビジネスを持て。
本物の資産とは、自分がその場にいなくても収入を生むビジネス、株、債券、収入を生む不動産、手形や借用証書、著作権、特許権、そのほか収入を生み出すもの。

④会社を作って節税する。
現代では、税負担が最も重いのが中流。金持ちは会社を利用して節税する。会社を作り、自分のビジネスを持つこと。
会社の利点は、収入から経費を差し引けることと訴訟から身を守れることだ。
中流と金持ちを分けるのは、知識の力だ。会計、投資、市場の理解、法律という4つの知識の力を持て。

⑤金持ちはお金を作り出す。
社会的成功には、「大胆さや度胸」が必要となる。過度の「恐怖心」と「自信のなさ」が、成功の邪魔となる。
現代は、情報が価値を持つ変化の時代だ。いろいろな選択肢を考えつく能力を持つこと。
金持ちは、何もないところからお金を作り出す。お金は実際には存在しない。お金を動かすのではなく、人々の「同意」を動かすのだ。著者が破産した物件を転売して、お金を作った例。
会計、投資、市場の理解、法律という、ファイナンシャル・インテリジェンスを高めよ。
ファイナンシャル・インテリジェンスが高ければ、安全だが儲けの少ない投資ではなく、儲けの大きい取引の有利不利を見極められる。
優れた投資家には、他の人が見逃すチャンスを見つける技術、資金を集める技術、賢い人を集めて組織にする技術、がある。

⑥お金のためではなく学ぶために働く。
「給料をもらって支払いをする」というラットレースにはまる前に、何を学べるかを考えて仕事を探すこと。
広く浅く学べ。新しいことを学べ。セールスを学べ。
長い目で見て学べ。いま毎日やっていることを続けると、最後はどこに行き着くのか?

 

実践するために必要なこと。

①お金を失う恐怖心を克服せよ。
失敗をバネにする。一点集中する。

②悪いことばかり考えて臆病になるな。
臆病者は批判をし、勝者は分析をする。「~はいやだ」という状況を抜け出す道を考えることが成功の鍵だ。

③忙しさを理由にして、本当に大切なことから逃げるな。
忙しいと言って、心の底では大切とわかっていることから逃げるな。理由(忙しい)や罪悪感(やるべきではない)は、感情を殺す。欲望を持つことや、どうすれば実現できるかと考えることは、魂を活性化する。

④自分への支払いを最初にせよ。
税金や他人への支払いを後にすることで、自分にプレッシャーがかかる。何とかしようと、より努力し考えるようになるので、自分が鍛えられる。

⑤無知を隠すために傲慢になるな。
無知を取り繕うため、傲慢になる人がいる。知識を軽視し傲慢にふるまうと、損をする。専門家を探すか、自分で勉強すること。

 

スタートを切るために。

①強い目的意識があるか。
②謙虚に偉大な投資家や専門家から学び、自分にとって新しい考えを受け入れる。
③金持ちの話から学び、中流や貧乏の人の話を反面教師とする。
④いろいろな新しいことを速く学ぶ。
⑤自己抑制能力をもつ。お金・人・自分の時間の管理をする。
⑥能力のある専門家に、報酬をたっぷり払う。
⑦元手は(資産が増えた形で)必ず回収する。
⑧ぜいたく品は、資産が生むキャッシュフローで買う。
⑨与えよ、さらば与えられん。教えよ、さらば与えられん。

・具体的な行動のヒント。

 

書評

3~4年前に、改訂版ではない初版本を読みました。薄い記憶がよみがえりまして、内容はおそらくほぼ同じだと感じました。しかしあらためて読むと、名著と言ってよいのではないでしょうか。特に若い人に読むことをおすすめします。自分ももう少し早く読んでおけばと残念です。

初めて読んだときは、何となくこんなものかと思っただけでした。著者の説明や主張も、あまりわかりませんでした。そのあと、働きながらいろいろと考え、投資や経済の本を読み、少しずつ投資の経験を積んできました。そしてもう一度読むと、著者のひとつひとつの教えの意味が、わかるようになっていました。

インパクトの強い形で大ベストセラーになったので、影響力のある本です。お金を貯めるハウツー本や、自己啓発系の本に書かれていることと共通点は多いです。読みやすく、その後の同じ系統の本にも影響を与えているので、原点である本書を読むのは勉強になるでしょう。

私がこの本を初めて読んだのは、30歳過ぎだったように思います。そしてその意味がつかめたのは、さらに遅かったです。正直、初めに読むのが10年は遅かったと感じます。出遅れました。ただ本書でも例が出てきますが、カーネル・サンダースがケンタッキー・フライド・チキンを創業したのは66歳のときです。過去を振り返っても、過去はもう変えられません。今から頑張るしかない。とにかく若い人に、1日でも早く読むことをおすすめします。
(書評2015/06/24)

「全面改訂 ほったらかし投資術」 山崎元/水瀬ケンイチ(著)

 

毎日忙しい人でもできる投資の方法を、人気経済評論家の山崎元氏が教えます。インデックス投資ブログで有名な、水瀬ケンイチ氏の実践的なアドバイスもあります。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

なるべく手間をかけずに、投資で成果を上げたい人。
インデックス投資マニア。
難易度は初級者以上。入門書とは言えない。

 

要約と注目ポイント

手間のかからない、簡単で無難で負けにくいお金の運用法を、前著「ほったらかし投資術」で提示した。4年経ち、環境変化もふまえて全面改訂したが、投資の基本姿勢に変わりはない。

投資はインデックス運用で行う。

インデックス投資がおすすめな理由

インデックス運用の利点は、

①手数料コストが安い。

②シンプルでわかりやすい。
(資産の価値が指数でわかるので、理解しやすい。ポートフォリオが管理しやすい。)

③負けにくく無難である。
(インデックスファンドは過半のアクティブファンドに勝つ。そして、勝てるアクティブファンドを事前に知ることはできない。)

長期投資では、コストの低さ、管理のしやすさ、安定性は重要です。

インデックス投資ブロガー水瀬氏の投資体験談

将来のため資産をつくろうと投資を開始。ファンダメンタルやテクニカルの分析に、時間と労力を費やして株を買う。

精神的にも疲れるが、それほど努力しても儲からない。市場全体の下落にも巻き込まれる。

そんなときにインデックス投資を知って始める。自分の性格にも合い、継続できた。12年続けたら、良い結果が出ている。

個人がお金を運用する正しい手順

①家計の状態を把握する。

②資産配分を考える。

③個々のアセットクラスに、どの運用商品がベストか考える。

④どの金融機関で投資するか選ぶ。

⑤DC(確定拠出年金)とNISA(少額投資非課税制度)が使えるなら、③と④のところで組み込む。

⑥ときどきモニタリングとメンテナンスをする。

資産運用の簡単な方法

①非常用生活費と運用資金を分ける。

②ネット証券に口座開設。

③リスク資産の投資額決定。

④リスク資産に配分したお金で、国内株式(MAXISトピックス上場投信)50%と外国株式(ニッセイ外国株式インデックスファンド)50%を買う。

⑤DCとNISAから先にリスク資産を割り振る。

⑥運用以外のお金は、個人向け国債変動金利10年型か預金、MRFで保有する。

⑦モニタリングとメンテナンスをする。

⑧お金が必要になったら、必要な分だけリスク資産を売却する。

資産運用の方法論としては、骨格になります。細かいところ(何の投資信託を買うかなど)は数年で変わる可能性がありますが、長期投資の方針は変えるところは少ないです。

投資対象の資産の解説

アセットアロケーションは、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券、現金の5つが基本となる。

ただし現在、先進国は歴史的低金利なので、国内債券を持つ意味はほとんどない。国内債券は現金で良い。外国債券も為替リスクがある上、金利の低下余地は小さいので保有しない。

結果、国内株式と外国株式と現金を適切な比率で持つことにする。

中長期的には、金利の動きは要注意です。

資産運用の各手順を説明

非常用の生活費はいくら必要か

ネット証券の選び方

口座開設の仕方

DCとNISAの説明

リスク資産に投資する額の決め方

積み立て投資と一括投資について

国内株式と外国株式の比率

インデックスファンドの銘柄選択

無リスク資産について

モニタリングとリバランス

などなど‥‥

そのほか、投資の勉強になるトピックなど

インデックス投資を学べる本、サイトの紹介など。

おすすめのインデックスファンド、ETF銘柄の解説。

ETFマネジャーへのインタビュー。

 

書評

前著の「ほったらかし投資術」や、山崎元氏の「全面改訂 超簡単 お金の運用術」などを読んでいると、運用方法に違いはほとんどありません。投資の考え方も同じなので(当然ですが)、どれかを読んでいれば十分だろうと思います。

正しい投資の方法は簡単です。一部に非常用の生活費を残し、最大損失を想定してそれに耐えられる範囲で、日本と外国のコストの低い株式インデックスファンドを買う。積み立て続ける。持ち続ける。終わり。

インデックス投資の優位性や、それを実現する手法も書かれています。ですので、この本1冊ですべて済むはずなのですが、なかなかそうでもないように思われます。

インデックス投資は凄い、保有し続けることは威力がある。これらは、自分なりに投資を勉強して、下手くそなアクティブ投資を実行したあとに、身に染みてわかるものだからです。

結局、ある程度は自分で投資の本などを読み、投資経験を持たないと、インデックス投資に移行しないと思います。

前著から新しくなったところは、DCとNISAの解説および活用法が加わったことです。あともう1点は、債券についてです。先進国の金利低下が極まったので、国内債券に投資する必要は特にない、と述べています。これには私も同感です。

本書の特徴のひとつに、ファンドマネジャーへのインタビューがあります。今回もありまして、ETFマネジャーです。興味のある方はどうぞ。

まとめると、前著や山崎元氏の著作を読んでいる人は、特に読む必要はありません。付け足すのは、確定拠出年金やNISAの知識をアップデートすることと、低金利が今後どうなるかに注意することです。

本書は、投資に興味がない一般人に、手間のかからない合理的な運用方法を教えることを目的にしています。しかし、それにしては難易度が高過ぎます。

著者たちには物足りないでしょうが、投資の基本や運用方法をもっとやさしく説明しないと、一般人には理解できません。実質的には、本書はインデックス投資マニアのための本です。
(書評2015/06/21)

「いちばんやさしい新しいSEOの教本」 安川洋/江沢真紀/村山佑介(著)

 

SEOの基本をはじめから、わかりやすく学べる教科書です。この本を学ぶことで、サイトの集客力の改善が期待できます。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

SEOをはじめから勉強したい人。

 

要約

SEOで重要なのは、どのキーワードを使い、どういう構造のサイトをつくるのかということ。すなわち、お客さんがどんな気持ちで検索するのかを知り、その気持ちを満たすサイトとコンテンツを用意することだ。

・どういう人に訪問してもらいたいかで、サイトのタイトルを決める。

・サイトに来る人が、どういうキーワードで検索しているかで、その目的がわかる。目的に合わせたコンテンツや構造を準備する。それらのキーワードで検索したら、どんなサイトが表示されるべきかを考える。

・検索エンジンに何のテーマのページとしてインデックスされるか、は重要だ。サイトのテーマは明確にする。検索結果画面にはどう表示されるか、クリックされやすいか?

訪問者が使うキーワードを自分も使うこと。キーワードには「濃さ」がある。キーワードウォッチャーやキーワードプランナーなどの、キーワードツールを利用する。

・サイトをつくった目的とそれが達成されるサイト行動。訪問者の目的と検索キーワード、目的を満たすコンテンツ。これらを書き出す。
訪問者の目的、キーワード、コンテンツ、サイト行動、サイトの目的、これら5項目を表にまとめ、1直線につなぐことでサイトマップが完成する。

キーワードの選び方。
1ページにつき1個のキーワード。人気の言葉同士は近くに配置する。言葉は絞り込んで訪問者の目的に合わせる。キーワードの派生語から目的を知る。

・サイトがターゲットとする訪問者と、想定されるいろいろなキーワードを書き出す。リストアップした言葉の人気度(検索数)を、ツールで調べる。人気度、一緒に検索される言葉、派生語の傾向などを分析する。

サイトでは、検索エンジンに好まれるカテゴリをつくる。
キーワードをカテゴリ名にする、人気キーワードを1ページ目に集める、カテゴリを細分化する、重要なキーワードは浅い階層にする、人気のカテゴリから順に並べる、など。

・カテゴリに取り入れるべき機能。
マルチアサイン、重要度フラグ、エイリアス機能。

業種別のサイト構成例。
ECショップ、ブランド、ブログ、メディア、美容・健康、不動産、旅行・宿泊施設、習い事・資格、B2B。

・サイトを作成するとき、新規ドメインを使うか、それとも既存サイトに付け加えるか。それぞれのメリットとデメリットについて。

テンプレートページで、効率的にサイトを作成する。
必要となるトップページ、カテゴリページ、リスト一覧ページ、詳細ページについて。

サイトの評価を上げるためには。
①外部の良質なサイトからリンクを張ってもらう。ページランクが高く、情報の関連性が強く、リンクをあまり張っていないサイトからリンクしてもらえると良い。
②注目のコンテンツをつくり、リンクを張ってもらう。
③グループや提携先のサイトにリンクしてもらう。
④ディレクトリサイト(Yahoo!ディレクトリ)に登録する。
⑤ガイドラインを守り、ペナルティを避ける。

ソーシャルメディアを利用してサイトに集客する。
検索はしないが潜在的なお客である人に、サイトをアピールできる。興味を引くコンテンツをつくり、継続的な関係を築く。ソーシャルメディアに適したタイトルや表示にする。

Webサイトで考えるべき技術的な問題について。

・訪問者を増やすためには、アクセス解析を行ってSEOの効果を分析し、改善点を見つける。Googleアナリティクス、ウェブマスターツールなど。

・付録として、業種別キーワード、テンプレート一覧管理表、提案要件書の例。

 

書評

お客のニーズを汲み取り、ニーズに合った求められているサービスを提供するのが、ビジネスの基本です。Webサイトの運営も同様です。とは言え、当ブログはまったく何も考えず、自分の好きなように自分の都合でつくってきました。ビジネスとしては最悪です。

はじめてSEOのテキストを読んでみて、ひとつひとつが勉強になりました。記述もやさしく、具体例も多くて理解しやすい、良い教本でした。確かに言われてみると、サイト運営では当たり前にやるべきことばかりでした。しかし私はこの程度の超基本的事項も気にしていなかったので、とても役立ちました。

お客さんがどういう気持ちなのか、どういうことを求めているのか、考えることが本当に大切なことだと感じました。SEOに詳しい人にはやさしすぎるのでしょうが、最初の一歩として適した教科書です。この本を読み、試行錯誤して改善して、さらに詳しい本で勉強していけば、力がつけられそうです。
(書評2015/06/19)

「内藤忍の資産設計塾 第4版」 内藤忍(著)

 

内藤忍氏による、資産運用のベストセラーの第4版です。長期投資のテキストとして読むことができます。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

経済面の人生設計を考えたい人。
長期の投資について勉強したい人。
難易度は、初級者向けレベル。

 

要約と注目ポイント

人生を国家や会社に頼れない時代になった。お金の知識が必要だ。

日本人の保有する資産は、円資産の預貯金に偏り過ぎでリスクがある。現在、円安とインフレという2つのリスクがある。これに対処するためには、資産の現状把握、投資の目標設定、資産配分の決定という順に行動していく。

 

資産運用の前に

お金は目的でなく手段である。人生の目標を考え、いつまでにいくらのお金が必要か数値化する。環境変化に応じ、目標は柔軟に修正する。

企業経営者のような視点で、長期計画を立て運用方針を決定し、分散投資でリスク管理をし、定期的にモニタリングしていく。

情報収集し、環境変化に対応する。自分の頭で考え、自分で決める。わからないものには手を出さない。投資は楽しむものではないので、効率的に。長期で続ける。

お金はただの道具です。自分の人生をよりよくするための。ですのでお金は、長期で計画を立て、長期で運用します。

 

資産運用の基礎知識

まずリスクとリターンの関係を考える。特に最大損失を想定する(標準偏差の2倍程度)。リスクは分散投資で減らせる。

投資の成果の約8割は、資産配分(アセットアロケーション)で決まる。資産配分が一番大切なので、これに最も気をつかうこと。

長期と短期を考えて投資をする。長期投資は、主に経済全体の成長を享受する。ベータの部分のリターン(インデックス投資)が該当する。アルファの部分のリターンは、特定の資産への投資(アクティブ投資)で得られる。

インデックス投資が主役。アクティブ投資は脇役(補完的)。

個人投資家は積立投資から始めよう。(大失敗は避けられる。)

リスクを減らすため、外貨資産も保有しよう。

行動心理学を知って、感情的な投資行動を避けよう。

日本と外国の資産に分散して、インデックス投資を続けるのが基本です。投資に関心があるなら、自分で投資対象を選んで、少しずつアクティブ投資もしてみましょう。

 

金融商品のリスク

金融商品には5つのリスクがある。
(価格リスク、金利リスク、為替リスク、信用リスク、流動性リスク。)

価格、金利、為替のリスクは、マーケットに付随したものである。信用リスクは株式で取り、債券では取らない。流動性リスクは取らない。

リスクを考慮し、金融資産を6タイプに分ける。
(流動性資産、日本株式、日本債券、外国株式、外国債券、その他。)

インデックス投資にもマーケットに付随したリスクはありますが、投資をする以上、このリスクは取るしかありません。投資対象が破綻する信用リスクを取るなら、債券ではなく株式で取る。売りたいときに売れなくなる流動性リスクは、どんな投資対象でも取らない。ということになります。

それぞれの金融商品の解説

投資信託の解説。資産運用の基本となる。

ETFの解説。海外ETFの解説。

日本株式の解説。

日本債券の解説。現状では、個人向け国債の変動10年が良い。

外国債券の解説。

FXの解説。

リートの解説。

オルタナティブ投資の解説。プライベートエクイティとヘッジファンドのこと。

個人投資家に関係ありそうな金融商品は、きっちりと解説されています。

 

資産運用の方法

運用を継続できる最大損失はどこまでかという、自分のリスク許容度を知る。標準偏差の2倍程度のマイナスは、平常時もありうると覚悟する。アセットクラス同士の相関関係を理解する。

資産を6つに分類する。
流動性資産、日本株式、日本債券、海外株式、海外債券、その他(不動産や商品など)。

現在保有する資産の運用と、これから積み立てる資産の運用を合計して計画を立てる。大まかな運用利回りと、予定が決まっている支出を考える。時間の経過とともに、計画は修正していく。

計画から資産配分を考える。10万円から1000万円までのポートフォリオの例。

現在保有する資産を洗い出す。資産配分の計画と比べる。少しずつ差を埋めて、計画に近づける。

3カ月に1回、資産状況をチェックする。1年に1回、計画からのずれをリバランスする。

堅実な方法なので、読むと勉強になります。

 

実物資産を含めた運用

実物資産は、金融商品とは異なり価格の歪みが大きく(市場が非効率)、利益が狙える。実物不動産は、減価償却という税制上のメリットがある。

海外不動産の解説。日本の不動産の解説。

ワイン投資の解説。

貴金属の解説。

実物資産を組み込んだポートフォリオの例(3000万円から1億円)。

 

その他の解説事項

海外口座のメリットとデメリット。

NISAの活用法。

マイホーム購入と住宅ローン。

保険について。

市場の暴落時。

などなど‥‥

 

書評

このシリーズは、表紙が著者の内藤氏のお写真で派手な印象ですが、中身は地味です。本の内容は、堅実でスタンダードな解説になっています。

前著でも思ったのですが、普通の個人投資家が投資対象にするような資産(投資信託とか株式とか債券とか)が網羅されていて、すごく手堅い説明でまとめられています。投資に興味を持ってやさしい入門書を数冊読んだ後の人が、投資の全体像を勉強するのに適していると思います。

長期投資の基本を知るのに、良い本だと思います。ただ著者は最近、ワイン投資や海外不動産を推しているらしく、そういった方面の本も書かれています。(本屋で見かけただけで、私は読んでいないのですが。)

フツーの個人投資家は特殊なことに資産を集中させるべきではない、と私は考えますので、ワインや海外不動産の解説は参考程度でいいかなと思います。

それから、資産ポートフォリオの例がちょっと気にかかります。資産額の多い例では、実物資産が組み込まれていますが、実物資産の比率が高過ぎるように思います。これは個人的な好みもあるのですが、私は身軽な方が良いので、実物不動産の比率が高いのはやや躊躇します。
(書評2015/06/13)