内藤忍氏による、資産運用のベストセラーの第4版です。長期投資のテキストとして読むことができます。
おすすめ
★★★★★★★☆☆☆
対象読者層
経済面の人生設計を考えたい人。
長期の投資について勉強したい人。
難易度は、初級者向けレベル。
要約と注目ポイント
人生を国家や会社に頼れない時代になった。お金の知識が必要だ。
日本人の保有する資産は、円資産の預貯金に偏り過ぎでリスクがある。現在、円安とインフレという2つのリスクがある。これに対処するためには、資産の現状把握、投資の目標設定、資産配分の決定という順に行動していく。
資産運用の前に
お金は目的でなく手段である。人生の目標を考え、いつまでにいくらのお金が必要か数値化する。環境変化に応じ、目標は柔軟に修正する。
企業経営者のような視点で、長期計画を立て運用方針を決定し、分散投資でリスク管理をし、定期的にモニタリングしていく。
情報収集し、環境変化に対応する。自分の頭で考え、自分で決める。わからないものには手を出さない。投資は楽しむものではないので、効率的に。長期で続ける。
資産運用の基礎知識
まずリスクとリターンの関係を考える。特に最大損失を想定する(標準偏差の2倍程度)。リスクは分散投資で減らせる。
投資の成果の約8割は、資産配分(アセットアロケーション)で決まる。資産配分が一番大切なので、これに最も気をつかうこと。
長期と短期を考えて投資をする。長期投資は、主に経済全体の成長を享受する。ベータの部分のリターン(インデックス投資)が該当する。アルファの部分のリターンは、特定の資産への投資(アクティブ投資)で得られる。
インデックス投資が主役。アクティブ投資は脇役(補完的)。
個人投資家は積立投資から始めよう。(大失敗は避けられる。)
リスクを減らすため、外貨資産も保有しよう。
行動心理学を知って、感情的な投資行動を避けよう。
金融商品のリスク
金融商品には5つのリスクがある。
(価格リスク、金利リスク、為替リスク、信用リスク、流動性リスク。)
価格、金利、為替のリスクは、マーケットに付随したものである。信用リスクは株式で取り、債券では取らない。流動性リスクは取らない。
リスクを考慮し、金融資産を6タイプに分ける。
(流動性資産、日本株式、日本債券、外国株式、外国債券、その他。)
それぞれの金融商品の解説
投資信託の解説。資産運用の基本となる。
ETFの解説。海外ETFの解説。
日本株式の解説。
日本債券の解説。現状では、個人向け国債の変動10年が良い。
外国債券の解説。
FXの解説。
リートの解説。
オルタナティブ投資の解説。プライベートエクイティとヘッジファンドのこと。
資産運用の方法
運用を継続できる最大損失はどこまでかという、自分のリスク許容度を知る。標準偏差の2倍程度のマイナスは、平常時もありうると覚悟する。アセットクラス同士の相関関係を理解する。
資産を6つに分類する。
流動性資産、日本株式、日本債券、海外株式、海外債券、その他(不動産や商品など)。
現在保有する資産の運用と、これから積み立てる資産の運用を合計して計画を立てる。大まかな運用利回りと、予定が決まっている支出を考える。時間の経過とともに、計画は修正していく。
計画から資産配分を考える。10万円から1000万円までのポートフォリオの例。
現在保有する資産を洗い出す。資産配分の計画と比べる。少しずつ差を埋めて、計画に近づける。
3カ月に1回、資産状況をチェックする。1年に1回、計画からのずれをリバランスする。
実物資産を含めた運用
実物資産は、金融商品とは異なり価格の歪みが大きく(市場が非効率)、利益が狙える。実物不動産は、減価償却という税制上のメリットがある。
海外不動産の解説。日本の不動産の解説。
ワイン投資の解説。
貴金属の解説。
実物資産を組み込んだポートフォリオの例(3000万円から1億円)。
その他の解説事項
海外口座のメリットとデメリット。
NISAの活用法。
マイホーム購入と住宅ローン。
保険について。
市場の暴落時。
などなど‥‥
書評
このシリーズは、表紙が著者の内藤氏のお写真で派手な印象ですが、中身は地味です。本の内容は、堅実でスタンダードな解説になっています。
前著でも思ったのですが、普通の個人投資家が投資対象にするような資産(投資信託とか株式とか債券とか)が網羅されていて、すごく手堅い説明でまとめられています。投資に興味を持ってやさしい入門書を数冊読んだ後の人が、投資の全体像を勉強するのに適していると思います。
長期投資の基本を知るのに、良い本だと思います。ただ著者は最近、ワイン投資や海外不動産を推しているらしく、そういった方面の本も書かれています。(本屋で見かけただけで、私は読んでいないのですが。)
フツーの個人投資家は特殊なことに資産を集中させるべきではない、と私は考えますので、ワインや海外不動産の解説は参考程度でいいかなと思います。
それから、資産ポートフォリオの例がちょっと気にかかります。資産額の多い例では、実物資産が組み込まれていますが、実物資産の比率が高過ぎるように思います。これは個人的な好みもあるのですが、私は身軽な方が良いので、実物不動産の比率が高いのはやや躊躇します。
(書評2015/06/13)