30年間トレーダーとして過ごした著者が、日経平均の本質を語ります。日経平均とは何か、勉強できる本です。
おすすめ
★★★★★☆☆☆☆☆
対象読者層
今後の日本株式市場が気になる人。難易度は、初級者レベル以上。
要約と注目ポイント
日本株式市場を代表する指数といえば、日経平均。日本経済とも深く関係するように思われ、国民にも馴染みのある日経平均だが、その実態を知る人はとても少ない。
日本株に投資をするなら、日経平均についてもっと知るべきだ。
日経平均の特徴
ボラティリティが高い。
時価加重平均でもNYダウ式単純平均でもない、ハイブリッド指数である。
先物の売買シェアは、外国人が7割。外国人の動きで方向が決まる。
日経平均とアベノミクス
2012年末以降の日経平均は、株価をきわめて重視する安倍政権のリフレ政策アベノミクスと、日銀の異次元緩和の影響が大きい。
だが株価が上がるかどうかは、リフレ政策が理論的に正しいかどうかは関係なく、ヘッジファンドの投機的資金が集まるかどうかで決まる。(2兆ドル以上の資産にレバレッジがかかる。)
FRBが金融緩和を止めたあと、ヘッジファンドが日本の株を買うのか?
日経平均とバブル
バブルは、壮大なテーマ、大きな投資主体、便乗する欲深い投資家の群れ、という要素の相互作用で発生する。
1980年代後半のバブル
テーマ:低金利と豊洲の再開発
投資主体:経験の浅い機関投資家と営業特金(事業法人の資金を証券会社が運用)とファントラ(信託銀行が運用)
バブル崩壊のきっかけ:不動産融資の総量規制と営業特金の廃止
現在進行形の相場
テーマ:デフレからの脱却
投資主体:外国人投資家
値動きの激しい日経平均先物は、外国人投資家の大好物となっている。歴史上、バブルは何度でも繰り返してきた。現在の相場も、バブルに至る可能性はある。
日経平均の歴史
日経平均株価指数、誕生から現在までの歴史を解説。
日経平均の性質は、銘柄入れ替えを境に変わった。
2000年に30銘柄の一斉入れ替えが行われた。このとき1週間の準備期間をおいたために、除外銘柄が極端に売られ、採用銘柄が極端に買われた。存続する195銘柄の合計株価より、新規30銘柄の合計株価の方が高かった。
このような歪みのため、入れ替え前後で日経平均は2000円下落し、存続銘柄の指数への寄与度はいきなり半減した。
2005年には、みなし額面方式へ移行した。これによって、分割銘柄の指数寄与度が上がり、除数も低下しなくなった。日経平均は上がりにくい、特殊な指数になってしまった。
日経平均の先物を理解する
(信用取引を含む)現物市場は株券が存在する有限の世界だが、先物市場は資金さえあれば無限に取引できる。
信用残は主体的な取引の結果なので分析の対象となるが、裁定残は裁定業者の受動的な結果なので分析の対象にはならない。
先物取引は短期トレードである。短期トレードで最も大切なのは、正しい思考法である。
『どちらに動くかわからないが、不定期にトレンドが発生するので、可能性があれば乗り、間違ったらすみやかに降りて、適切な期間トレンドに乗り続け、適切に資金管理を行う。』
はじめに身につけるべきは規律(損切り)。
日経平均先物で勝つ
短期トレーディングの鉄則は、弱いヤツを探し、彼らの行動を予測してその逆を行くこと。弱いヤツとは、決断が遅く行動が遅く、過去の実績やコンセンサスを求め、未来を見ず主体的に動けないため、窮地に陥っている人である。
外国人は素直にシンプルに考え、大胆に動く。市場を動かす外国人が大きく動き、弱いヤツが出遅れているときに、思い切って行動できるかが勝負だ。
市場パターンや外部環境の変化について経験を積み、機械的にトレードして規律を守りながらも、それらをすべて包括する直感を使うことが相場では必要。
先物市場では、時間枠で投機と実需を区別して考えるのが重要だ。反対売買できなかった投機が、新たな実需にぶつかるまで値が動く。需給を自分で見抜く力が要求される。
大口の投資家は、隠密に行動する(買い上げたり売り叩くことはない)。夜間は、裁定取引や国内機関投資家の実需が少なく、より投機で動く。
市場に関する解説で、よくある誤り
裁定残が多いと要注意で、少ないと好需給。
金利が上昇すると、解消売り。
外資系の決算期末には、解消売り。
市場の急変動はアルゴが原因。(順張り系アルゴが連鎖することはあまりない。)
オプション建玉の多い方に、相場が動く。
幻のSQは、相場の転換点。
VIXで相場の流れがわかる。
大口の手口情報。
そのほかの解説事項
裁定取引やレバレッジETFなど。
書評
日経平均の知識を得るために読みましたが、面白かったです。金融市場の現場にいる人にありがちな、ちょっと斜に構えたような、皮肉っぽい表現も多いのですが、面白いし、知らなかったことがたくさんありました。日経平均指数の性質の解説は、勉強になりました。
とはいえ、実戦の先物短期トレーディングは私にはさっぱりわかりません。そのため、需給を読めとか、板から情報を読み取れと言われても、どうにもなりません。そういうものなのか、としか言えないので、おすすめ度は★5個の普通にしてあります。
著者は金融市場(トレード)の世界で30年やってこられたようなので、あらゆることを考え体験し、一周回ってきたという感じです。淡々と市場を冷めた視線で眺めているような印象です。
(書評2015/05/29)
