アナリスト、そしてファンドマネジャーとして日本株を知り尽くす著者が、アベノミクス相場を解説します。「株が上がっても下がってもしっかり稼ぐ投資のルール」と合わせて読めば、効果倍増です。
おすすめ
★★★★★★☆☆☆☆
対象読者層
アベノミクス相場に乗れず、悔しい人。難易度は、初級者向けレベル。
要約と注目ポイント
個人投資家は、株価が相当上昇してから市場に参加し、売らずに下落相場に巻き込まれることが多い。「買い」も「売り」も遅れがちな個人投資家に、株式投資の基本を伝えるのが本書の目的である。
株式市場では、社会的常識が通用しない。自分に都合のよい仮定や、判断の遅れ、乗り遅れたという焦りは失敗のもと。投資について無知ならば、人生を失うことすらある。
投資の結果は、「気づく」か「気づかない」かで大きく変わる。
株式投資をはじめる前に覚えておくこと
投資で利益をあげるには、安く買って高く売る、高く売って安く買い戻す、のふたつしかない。
高値や安値を、正確にとらえることは不可能。投資では、時間も分散せよ(資金の余力を残せ)。
株は、安値をつけたら割安で高値をつけたら割高、とは限らない。(新安値はさらに下がりやすく、新高値はさらに上がりやすい。)
含み益は、売らない限り現実の利益ではない。含み損は、今すでに存在する損失である。
ポートフォリオのうち、含み益のある銘柄は残し(買い増し)、含み損のある銘柄は損切りするべきだ。
自分の投資行動パターンを認識し、誤りを修正せよ。
信用取引や先物取引は、レバレッジのかかったゼロサムゲームと認識せよ。
損失限定のリスク管理と、着実な利益確定のため、逆指値注文を利用する。
マネー雑誌などの大儲け話を、真に受けない。大儲けした人の裏側には、大損した人が多くいる。
投資を始めるときは、まず投資をする目的を考える。そして、お金を安定運用資金と長期運用資金に分ける。安定運用資金は、予定されている支出のためのもので、預金などで運用する。長期運用資金は、複利で殖えるように運用していく。
株価が上下する理由を知る
マーケット全体が上昇する理由(景気拡大、世界経済好調、景気刺激策、金融緩和策、円安、金利低下、市場の売買が活発)。下落はその逆。
個別銘柄が上昇する理由(業績拡大、業績回復、増配、自社株買い、ブームやテーマに該当)。下落はその逆。
銘柄の選び方
①会社四季報や日経会社情報を読む。
②気になる会社のホームページを見る。
③会社説明会資料を読む。
④決算短信を読む。
⑤PERとPBRで、投資判断をする。競合他社や、自社の過去の水準と比較する。
投資してはいけない会社の特徴
業績が不安定、業績見通しが甘い、ビジネスモデルが崩壊、事業計画が迷走、株主軽視、頻繁な社名変更や監査法人変更。
2015年現時点で有望な銘柄
インフラ(建設・不動産)、売上増(インバウンド関連)、値上げできる(食品など)、円安メリット(輸出関連)、原油安メリット(電力・運輸)、全国や世界に展開(小売など)、株主還元やROE改善、革新的新事業、新高値更新、忘れられている銘柄。
投資期間別の銘柄3分類
長期トレード銘柄:3年以上。景気とはほぼ無関係に、業績が安定して成長する。小売りやサービス業で、一般消費者相手に徐々に規模を拡大する会社。例はユニクロ。
スイングトレード銘柄:数カ月から数年。景気敏感株や市況連動株。大半の銘柄が該当する。例はコマツ。
デイトレード銘柄:デイトレードは専業でやらないと無理。テーマ株やブーム株はマネーゲームと心得る。
上昇相場での投資
パターンとして、マーケット全体が2~3段階にわたって上げる。
①初期:(景気で循環する)景気敏感株を買う。金融や不動産株を買う。
②中~後期:国策に売りなし。国策銘柄を買う。好業績(特に営業利益が伸びている)や上方修正銘柄を買う。
下落相場での投資
こちらもパターンとして、2~3段階下げるパターンが多い。下落相場でこそ、投資家として生死が分かれる。リスク管理が必須。ほとんどの投資家は対応できない。
下落相場では休むのが賢明だが、積極的な投資家なら、日経平均株価などのインバース型ETFを買うのもよい。必ず逆指値をつけて、個別銘柄を信用取引で売るのもあり。保有銘柄をつなぎ売りする方法もある。
投資における金言の紹介。
時間は運用の武器。分散投資の重要性。売買も時間的に分散する。リスク管理の大切さ。相場は循環する。バブルは繰り返し起こる。過去の好パフォーマンスは繰り返さない。大化け銘柄の特徴。などなど。
書評
読んでみると、そうだよなと感じることが多い内容です。でも、なかなか実行できません。利益を大きく損失を小さくするトレード、投資というのは簡単ではありません。買いから売りまで、会心の出来というのはほとんど記憶にないです。
本書の中身は結構「株が上がっても下がってもしっかり稼ぐ投資のルール」と被っていますが、本書の方が軽く読める仕上がりです。教訓的な話が多くなっています。
どちらを読んでもいいですが、自分で投資ルールをつくりたい場合は「株が上がっても~」が良いかと思います。こちらは今から市場に参加するなら、注意喚起として役立つかもしれません。
アベノミクス相場は終盤戦と思いますが、現時点でまだ終わりではないと考えています。まだバブルは膨らみきっていないと思っています。バブルは最後に大きく伸びるそうなので、欲深く日本株をまだまだ買っていますが、いきなりはしごを外されないように損切り覚悟です。本書にある、光通信を最高値で買った話などを聞くと、本当に怖くなります(そのあと20日連続ストップ安)。
投資は考え始めると本当に難しいです。長年プロとしてやってきた方の経験が詰まった本なので、自分で投資するときに助けとなる、良い「気づき」に遭遇するかもしれません。
(書評2015/05/25)
