「長期投資の方法」カテゴリーアーカイブ

「敗者のゲーム 原著第8版」 チャールズ・エリス(著)

「敗者のゲーム」は、インデックス運用で長期投資を行う個人投資家にとってバイブルと言える本です。最新の第8版を読んでまとめました。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

対象読者層

一生を見据えた、数十年単位での長期投資について考えたい人。

要約と注目ポイント

プロの投資家が集まる市場では、長期間勝ち続けることはできない。1年以上の成績では7割のファンドが、市場平均に負ける。10年では8割、15年では9割のファンドが市場平均に負ける。

優秀なプロが集まり競争する市場では、ミスを減らすことが最も重要なのだ。長期にわたり市場に勝ち続けるファンドはほとんどないし、事前にそのファンドを見つけることもできない。

市場の参加者はほとんどが優秀なプロなので、勝つことよりコストを下げることが大切になる。(勝つために手数料の高いアクティブファンドを選ぶより、低コストのインデックスファンドを選ぶ方が、長期的な成績はずっと良くなる。)

市場に勝つことをめざすのではなく、長期投資の目的を設定し、目的達成のための合理的で現実的な投資政策を選ぶことに注力せよ。そしてその投資政策を、規律を持っていかなるときも守ることが重要だ。長期間の投資で成功したいなら、目的のために投資行動のルールを辛抱強く守り続けよう。

投資とは

ファンドの短期的な成績に目を奪われたり、勝てるはずのない市場に勝とうとしてはならない。長期的な視野を持て。

市場に勝つには、①タイミングの選択で勝つ、②投資対象(銘柄)の選択で勝つ、③資産配分の選択で勝つ、④長期間勝ち続ける投資戦略を開発する、のどれかが必要である。いずれもほぼ不可能だ。

株式市場はときどき大暴落するが、そのあと極めて短い期間で急上昇するタイミングがある。そのタイミングを逃がすと長期のパフォーマンスはとても悪くなる。しかし、その急上昇の期間を事前に知ることは不可能なので、常に市場にいなければならない。(いかなる状況でも投資を続けること。)

投資の基本原則は、いつお金が必要になるか考慮したうえで、長期の資産配分(株式・債券・不動産など)を決めることだ。投資対象は幅広く分散し、投資の方針を(暴落のときも)一貫して守ること。

一時的なマーケットの上下に一喜一憂せず、投資政策を遵守することが大切だ。マーケットの動きに惑わされないためには、歴史に学ぶこと。

インデックスファンドの利点

投資で成功したいなら、インデックスファンドを買おう。

①長期的に大半のアクティブファンドに勝つ。
②低コストである。
③運用目的や長期の投資方針という最重要事項に専念できる。

証券市場は、ほぼ効率的である。効率的な市場では、低コストで、すべての優秀な投資家の平均となるインデックスファンドが優れた結果をもたらす。

低コストで広く分散投資された株式のインデックスファンドは、長期投資に最適だ。

データから投資の方法を知る

個人投資家は人間なので、常に合理的な行動をとることはできない。感情的な売買による損失を防ぐには、インデックス投資が最適だ。

運用期間が長くなるほど、ポートフォリオ全体の実際の収益率は平均収益率に近づく。長期投資では、データが「平均への回帰」に従う。適切なポートフォリオを長期間保つことで、高いリターンが得られる。

普通株の価格の評価は、①将来の企業収益と配当金額、②割引率、というふたつの要素で決まる。長期投資家にとっては①が重要となる。

過去のデータでは、
平均収益率:普通株>債券>短期資産
収益率の変動幅:普通株>債券>短期資産
となる。

インフレ調整後の投資収益率は、
株式>債券>短期資産
となる。

予想インフレ率の変化は、投資収益率に大きな影響を及ぼす。予想インフレ率が上昇すれば株価は下落し、予想インフレ率が低下すれば株価は上昇する。

小さな投資収益率の差も、長期間にわたり複利で運用されると、非常に大きな差となる。長期間の投資では、株式に投資すべきである。インフレを考慮しても、株式投資が良い方法となる。

市場のリスクを引き受けることで、高いリターンを得られる。

長期投資家は、市場のリスクだけを負うべきである。個別株式や特定のセクター、市場セグメントのリスクを取っても、追加収益は得られない。

市場のリスクこそがポートフォリオの収益の源泉なので、市場リスクの管理が長期投資家にとって重要である。市場の極端な暴落期にどれだけ耐えられるかを、リスク許容度と考えること。

個人投資家へのアドバイス

個人投資家にとって問題となるのは、インフレと人生設計上の支出である。予定の決まっている支出と、非常時の支出に備えて貯蓄をする。貯蓄以外の資金は、株式に長期投資する。特に、株式市場の低迷期に投資を続ける。年金収入なども考慮し、インフレに耐えられる老後の計画を立てる。インフレは投資家にとって脅威となる。

長期投資家ならば、債券よりも株式に投資することを勧める。特に最近(本書出版時の2020~2021年ごろ)は、債券の利息がとても低く不利である。

株式市場が大暴落すると、投資方針が揺らぐ。だからこそ、運用の基本方針が大切となる。2020年や2008年の大暴落、またそれ以前の市場の歴史から学ぶこと。

投資に成功した後

投資計画を守りインデックス運用で成功したあとの、子や孫に対する贈与や遺産相続、寄付などについての話。

さらに大きく資産を築けた人のための、社会貢献や慈善活動についての話。資産管理団体や財団の活動や運営に関する話。

書評

「敗者のゲーム」は、インデックス運用を行って長期投資をするのが最良だ、と考える個人投資家たちに熱い支持を受けている本です。私も第5版と第6版を読みまして、それぞれ書評(第5版書評第6版書評)を書きました。

本書は個人投資家にとって有益な本だと私も思います。ただし、本書を読む意義は少しずつ低下してきたかな、というのが正直な感想です。

本書の主張は、数十年~五十年・百年という超長期で見れば、市場から得られるリターンを完全に享受できる(株式の)インデックス運用が、最も良い結果を生むということです。目先の景気循環や経済ニュースに惑わされず、低コストで市場平均のリターンを得られるインデックス運用を続けろ、と訴えます。

これは普通の個人にとって良いアドバイスなので、しっかりと理解して実行すると、人生を通した資産運用で失敗を避けられると思います。低コストの(株式の)インデックスファンドに継続して投資することの意義を明らかにしたのは、本書の輝かしい業績でしょう。

しかし、本書の初版や「ウォール街のランダム・ウォーカー」の初版が出たころと、現在では投資の環境が変わってきました。本書の初版が出版された40年ほど前では、インデックス運用の素晴らしさはほとんど知られていませんでした。個人投資家も全くインデックス運用をしていませんでした。

現在では、個人投資家にもインデックス運用の有益性は浸透し、実際に継続的に投資する人は増えました。ですので、あえて今、日本人が「敗者のゲーム」を読む必要はないと思います。

敗者のゲームは歴史的に価値のある本です。ただアメリカの本なので、日本人には関係ない記述も多く(確定拠出型年金の401kなど)、日本の税制と違うので読み飛ばしてよいページもあります。逆に日本人の個人投資家にとって極めて重要な、iDeCoやNISAの効果的な利用法などはないので、それを知るには日本人が書いた投資本を読む必要があります。

結論としては、今の普通の日本人投資家はあまり読む必要がない本と思われます。投資に興味がある人には、1度読んでおくと良い本と言えるでしょう。(書評2022/7/27)

「全面改訂 第3版 ほったらかし投資術」 山崎元/水瀬ケンイチ(著)

投資に時間や労力をかけずに、ベストに近い運用成績を得よう。人気経済評論家の山崎元氏と、有名インデックス投資ブロガーの水瀬ケンイチ氏が教える、ほったらかしでできる投資術です。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

対象読者層

人生の終わりまでを見すえた長期投資を、時間や労力をかけずに行いたい一般人。

あるいは、インデックス投資マニア。

難易度は初級者以上。入門書とは言えない。

要約と注目ポイント

著者らは、普通の人でもできる手間のかからない、簡単で無難で負けにくいお金の運用法を考えてきた。

それは、2010年に出版された「ほったらかし投資術」と、2015年に出版された「全面改訂 ほったらかし投資術」で提示した。

2022年になり投資をする環境がまた変化してきたが、ここで最も簡単にできる「ほったらかし投資」の公式本をつくろうと考え第3版を書いた。

「ほったらかし投資術」とは、機関投資家のようなプロに近い運用成績が期待できて、個人でも簡単にできる資産運用の具体的な方法論だ。

ほったらかし投資は、インデックスファンドを使う。

インデックス投資ブロガーの体験から

約20年インデックスファンドに投資を続けたブロガー水瀬氏の体験から。

・20年のインデックスファンドへの積立投資で約1億円の資産を築けた。(年率6%程度の収益率)

・資産をつくると経済的に独立し、人生において自由な選択ができる。

・個別株投資に熱中していた時期は、時間もお金も浪費していた。インデックス運用に切り替えることによって、人生に余裕が生まれた。

・インデックス投資のいいところは、誰でも簡単に同じ運用ができること。

ほったらかし投資の実践法

1、3~6ヵ月分の生活費を普通預金に確保する。それ以外のお金は運用資金。

2、運用資金の中から、実際に投資する金額を決める。(1年で3分の1ほど価格が下落するリスクを受容できる金額)

投資対象は、全世界の株式に投資する低コストなインデックスファンド。

3、投資では、(NISAやiDeCoなど)税制上有利な運用口座を利用する。

4、投資しない運用資金は、銀行預金か個人向け国債変動金利型10年満期にする。

投資のポイント

・損失の可能性のある株式などは、短期国債のように損失のおそれがない無リスク資産より高いリターン(リスク・プレミアム)が得られる。

・若い人も高齢者も、最大損失を想定しておけばリスクを大きめにとってかまわない。

・投資すべき全世界株式インデックスファンドは、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)。もしくはそれに類似するもの。

・「個人向け国債変動金利型10年満期」の優位性や、銀行預金のペイオフなどの説明。

・NISAやiDeCoの具体的な説明。

・投資の三原則は、長期・分散・低コスト。ずっと長期で保有し続けること。広く世界の株式に分散投資すること。手数料の低いインデックスファンドやETFを選ぶこと。

・投資すべきインデックスファンドの具体例。

手数料の目安は、年率0.25%未満(低コスト)。純資産が少なすぎないこと(100億円以上)。インデックスとの乖離が小さいこと。

インデックスファンドは、全世界株式(日本含む)、全世界株式(日本除く)、先進国株式から選ぶ。

・投資するにはネット証券がおすすめ。(楽天、SBI、マネックスの解説)

・インデックス運用の説明。インデックス運用の優位性の解説。

・割引率とリスク・プレミアムの解説。リスクを引き受けてリターンを得るのだから、高成長の国や企業でも、低成長の国や企業でも、同じように投資はできる。

・そのほか、質疑応答。バンガードに勤務していた方のインタビュー。

書評

本書は第3版ですが、投資に関する考え方は変わっていないので、前著からブレはありません。ただし、投資対象に選ぶインデックスファンドを1つだけにすると言う方針転換があったので、表面上はやり方が変わっています。

前の著作から7年経って、けっこう投資の環境も社会も変わりましたので、知識のアップデートという意味で、読むと勉強になります。

ほったらかし投資は簡単です。非常用の生活費として預金を一部残し、それ以外を運用資金にする。最大損失を想定してそれに耐えられる範囲で、コストの低い全世界株式インデックスファンドを買う。積み立て続ける。持ち続ける。終わり。

ということで、投資術は簡単なのですが、なぜそうするのかを自分で納得するのはなかなか難しいです。

この本は投資初心者向けであり、投資に時間と労力をかけたくない人のための本です。しかし、なぜこのように投資するのかと自分で理解するには、もっと易しい入門書を何冊か読まないと無理です。

そういうわけで、この本の実践法に従い投資することは私も正しいと思いますが、やはり誰でも納得して投資したいので、投資に対する勉強は必要です。

この本は読む価値があると言えますが、初心者の方は、もっと易しい本をとりあえず4~5冊は読んでからじっくり読み込んでみるといいでしょう。
(書評2022/07/23)

「全面改訂 ほったらかし投資術」 山崎元/水瀬ケンイチ(著)

 

毎日忙しい人でもできる投資の方法を、人気経済評論家の山崎元氏が教えます。インデックス投資ブログで有名な、水瀬ケンイチ氏の実践的なアドバイスもあります。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

なるべく手間をかけずに、投資で成果を上げたい人。
インデックス投資マニア。
難易度は初級者以上。入門書とは言えない。

 

要約と注目ポイント

手間のかからない、簡単で無難で負けにくいお金の運用法を、前著「ほったらかし投資術」で提示した。4年経ち、環境変化もふまえて全面改訂したが、投資の基本姿勢に変わりはない。

投資はインデックス運用で行う。

インデックス投資がおすすめな理由

インデックス運用の利点は、

①手数料コストが安い。

②シンプルでわかりやすい。
(資産の価値が指数でわかるので、理解しやすい。ポートフォリオが管理しやすい。)

③負けにくく無難である。
(インデックスファンドは過半のアクティブファンドに勝つ。そして、勝てるアクティブファンドを事前に知ることはできない。)

長期投資では、コストの低さ、管理のしやすさ、安定性は重要です。

インデックス投資ブロガー水瀬氏の投資体験談

将来のため資産をつくろうと投資を開始。ファンダメンタルやテクニカルの分析に、時間と労力を費やして株を買う。

精神的にも疲れるが、それほど努力しても儲からない。市場全体の下落にも巻き込まれる。

そんなときにインデックス投資を知って始める。自分の性格にも合い、継続できた。12年続けたら、良い結果が出ている。

個人がお金を運用する正しい手順

①家計の状態を把握する。

②資産配分を考える。

③個々のアセットクラスに、どの運用商品がベストか考える。

④どの金融機関で投資するか選ぶ。

⑤DC(確定拠出年金)とNISA(少額投資非課税制度)が使えるなら、③と④のところで組み込む。

⑥ときどきモニタリングとメンテナンスをする。

資産運用の簡単な方法

①非常用生活費と運用資金を分ける。

②ネット証券に口座開設。

③リスク資産の投資額決定。

④リスク資産に配分したお金で、国内株式(MAXISトピックス上場投信)50%と外国株式(ニッセイ外国株式インデックスファンド)50%を買う。

⑤DCとNISAから先にリスク資産を割り振る。

⑥運用以外のお金は、個人向け国債変動金利10年型か預金、MRFで保有する。

⑦モニタリングとメンテナンスをする。

⑧お金が必要になったら、必要な分だけリスク資産を売却する。

資産運用の方法論としては、骨格になります。細かいところ(何の投資信託を買うかなど)は数年で変わる可能性がありますが、長期投資の方針は変えるところは少ないです。

投資対象の資産の解説

アセットアロケーションは、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券、現金の5つが基本となる。

ただし現在、先進国は歴史的低金利なので、国内債券を持つ意味はほとんどない。国内債券は現金で良い。外国債券も為替リスクがある上、金利の低下余地は小さいので保有しない。

結果、国内株式と外国株式と現金を適切な比率で持つことにする。

中長期的には、金利の動きは要注意です。

資産運用の各手順を説明

非常用の生活費はいくら必要か

ネット証券の選び方

口座開設の仕方

DCとNISAの説明

リスク資産に投資する額の決め方

積み立て投資と一括投資について

国内株式と外国株式の比率

インデックスファンドの銘柄選択

無リスク資産について

モニタリングとリバランス

などなど‥‥

そのほか、投資の勉強になるトピックなど

インデックス投資を学べる本、サイトの紹介など。

おすすめのインデックスファンド、ETF銘柄の解説。

ETFマネジャーへのインタビュー。

 

書評

前著の「ほったらかし投資術」や、山崎元氏の「全面改訂 超簡単 お金の運用術」などを読んでいると、運用方法に違いはほとんどありません。投資の考え方も同じなので(当然ですが)、どれかを読んでいれば十分だろうと思います。

正しい投資の方法は簡単です。一部に非常用の生活費を残し、最大損失を想定してそれに耐えられる範囲で、日本と外国のコストの低い株式インデックスファンドを買う。積み立て続ける。持ち続ける。終わり。

インデックス投資の優位性や、それを実現する手法も書かれています。ですので、この本1冊ですべて済むはずなのですが、なかなかそうでもないように思われます。

インデックス投資は凄い、保有し続けることは威力がある。これらは、自分なりに投資を勉強して、下手くそなアクティブ投資を実行したあとに、身に染みてわかるものだからです。

結局、ある程度は自分で投資の本などを読み、投資経験を持たないと、インデックス投資に移行しないと思います。

前著から新しくなったところは、DCとNISAの解説および活用法が加わったことです。あともう1点は、債券についてです。先進国の金利低下が極まったので、国内債券に投資する必要は特にない、と述べています。これには私も同感です。

本書の特徴のひとつに、ファンドマネジャーへのインタビューがあります。今回もありまして、ETFマネジャーです。興味のある方はどうぞ。

まとめると、前著や山崎元氏の著作を読んでいる人は、特に読む必要はありません。付け足すのは、確定拠出年金やNISAの知識をアップデートすることと、低金利が今後どうなるかに注意することです。

本書は、投資に興味がない一般人に、手間のかからない合理的な運用方法を教えることを目的にしています。しかし、それにしては難易度が高過ぎます。

著者たちには物足りないでしょうが、投資の基本や運用方法をもっとやさしく説明しないと、一般人には理解できません。実質的には、本書はインデックス投資マニアのための本です。
(書評2015/06/21)

「内藤忍の資産設計塾 第4版」 内藤忍(著)

 

内藤忍氏による、資産運用のベストセラーの第4版です。長期投資のテキストとして読むことができます。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

経済面の人生設計を考えたい人。
長期の投資について勉強したい人。
難易度は、初級者向けレベル。

 

要約と注目ポイント

人生を国家や会社に頼れない時代になった。お金の知識が必要だ。

日本人の保有する資産は、円資産の預貯金に偏り過ぎでリスクがある。現在、円安とインフレという2つのリスクがある。これに対処するためには、資産の現状把握、投資の目標設定、資産配分の決定という順に行動していく。

 

資産運用の前に

お金は目的でなく手段である。人生の目標を考え、いつまでにいくらのお金が必要か数値化する。環境変化に応じ、目標は柔軟に修正する。

企業経営者のような視点で、長期計画を立て運用方針を決定し、分散投資でリスク管理をし、定期的にモニタリングしていく。

情報収集し、環境変化に対応する。自分の頭で考え、自分で決める。わからないものには手を出さない。投資は楽しむものではないので、効率的に。長期で続ける。

お金はただの道具です。自分の人生をよりよくするための。ですのでお金は、長期で計画を立て、長期で運用します。

 

資産運用の基礎知識

まずリスクとリターンの関係を考える。特に最大損失を想定する(標準偏差の2倍程度)。リスクは分散投資で減らせる。

投資の成果の約8割は、資産配分(アセットアロケーション)で決まる。資産配分が一番大切なので、これに最も気をつかうこと。

長期と短期を考えて投資をする。長期投資は、主に経済全体の成長を享受する。ベータの部分のリターン(インデックス投資)が該当する。アルファの部分のリターンは、特定の資産への投資(アクティブ投資)で得られる。

インデックス投資が主役。アクティブ投資は脇役(補完的)。

個人投資家は積立投資から始めよう。(大失敗は避けられる。)

リスクを減らすため、外貨資産も保有しよう。

行動心理学を知って、感情的な投資行動を避けよう。

日本と外国の資産に分散して、インデックス投資を続けるのが基本です。投資に関心があるなら、自分で投資対象を選んで、少しずつアクティブ投資もしてみましょう。

 

金融商品のリスク

金融商品には5つのリスクがある。
(価格リスク、金利リスク、為替リスク、信用リスク、流動性リスク。)

価格、金利、為替のリスクは、マーケットに付随したものである。信用リスクは株式で取り、債券では取らない。流動性リスクは取らない。

リスクを考慮し、金融資産を6タイプに分ける。
(流動性資産、日本株式、日本債券、外国株式、外国債券、その他。)

インデックス投資にもマーケットに付随したリスクはありますが、投資をする以上、このリスクは取るしかありません。投資対象が破綻する信用リスクを取るなら、債券ではなく株式で取る。売りたいときに売れなくなる流動性リスクは、どんな投資対象でも取らない。ということになります。

それぞれの金融商品の解説

投資信託の解説。資産運用の基本となる。

ETFの解説。海外ETFの解説。

日本株式の解説。

日本債券の解説。現状では、個人向け国債の変動10年が良い。

外国債券の解説。

FXの解説。

リートの解説。

オルタナティブ投資の解説。プライベートエクイティとヘッジファンドのこと。

個人投資家に関係ありそうな金融商品は、きっちりと解説されています。

 

資産運用の方法

運用を継続できる最大損失はどこまでかという、自分のリスク許容度を知る。標準偏差の2倍程度のマイナスは、平常時もありうると覚悟する。アセットクラス同士の相関関係を理解する。

資産を6つに分類する。
流動性資産、日本株式、日本債券、海外株式、海外債券、その他(不動産や商品など)。

現在保有する資産の運用と、これから積み立てる資産の運用を合計して計画を立てる。大まかな運用利回りと、予定が決まっている支出を考える。時間の経過とともに、計画は修正していく。

計画から資産配分を考える。10万円から1000万円までのポートフォリオの例。

現在保有する資産を洗い出す。資産配分の計画と比べる。少しずつ差を埋めて、計画に近づける。

3カ月に1回、資産状況をチェックする。1年に1回、計画からのずれをリバランスする。

堅実な方法なので、読むと勉強になります。

 

実物資産を含めた運用

実物資産は、金融商品とは異なり価格の歪みが大きく(市場が非効率)、利益が狙える。実物不動産は、減価償却という税制上のメリットがある。

海外不動産の解説。日本の不動産の解説。

ワイン投資の解説。

貴金属の解説。

実物資産を組み込んだポートフォリオの例(3000万円から1億円)。

 

その他の解説事項

海外口座のメリットとデメリット。

NISAの活用法。

マイホーム購入と住宅ローン。

保険について。

市場の暴落時。

などなど‥‥

 

書評

このシリーズは、表紙が著者の内藤氏のお写真で派手な印象ですが、中身は地味です。本の内容は、堅実でスタンダードな解説になっています。

前著でも思ったのですが、普通の個人投資家が投資対象にするような資産(投資信託とか株式とか債券とか)が網羅されていて、すごく手堅い説明でまとめられています。投資に興味を持ってやさしい入門書を数冊読んだ後の人が、投資の全体像を勉強するのに適していると思います。

長期投資の基本を知るのに、良い本だと思います。ただ著者は最近、ワイン投資や海外不動産を推しているらしく、そういった方面の本も書かれています。(本屋で見かけただけで、私は読んでいないのですが。)

フツーの個人投資家は特殊なことに資産を集中させるべきではない、と私は考えますので、ワインや海外不動産の解説は参考程度でいいかなと思います。

それから、資産ポートフォリオの例がちょっと気にかかります。資産額の多い例では、実物資産が組み込まれていますが、実物資産の比率が高過ぎるように思います。これは個人的な好みもあるのですが、私は身軽な方が良いので、実物不動産の比率が高いのはやや躊躇します。
(書評2015/06/13)

「敗者のゲーム 原著第6版」 チャールズ・エリス(著)

 

「敗者のゲーム」は、インデックス運用による長期投資派にとってバイブルと言える本ですが、その最新版です。本書と「ウォール街のランダム・ウォーカー」が、インデックス積立投資主義の二大聖典と思われます。インデックス投資の真髄をまとめました。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

一生を見据えた、数十年単位での長期投資について考えたい人。

 

要約と注目ポイント

プロの投資家が集まる市場では、長期間勝ち続けることはできない。年間成績では6割のファンドマネジャーが、市場平均に負ける。10年では7割、20年では8割のマネジャーが市場平均に負ける。

市場では、ミスを減らすことが最も重要なのだ。長期にわたり市場に勝ち続けるファンドはほとんどないし、事前にそのファンドを見つけることもできない。

市場に勝つことをめざすのではなく、長期投資の目的を設定し、目的達成のための合理的で現実的な投資政策を選ぶことに注力せよ。そしてその投資政策を、規律を持っていかなるときも守ることが重要だ。

長期間の投資で成功したいなら、目的のために投資行動のルールを守り続けることが大切です。

投資とは

市場に勝つには、①タイミングの選択で勝つ、②投資対象(銘柄)の選択で勝つ、③資産配分の選択で勝つ、④長期間勝ち続ける投資戦略を開発する、のどれかが必要である。いずれもほぼ不可能だ。

投資の基本原則は、いつお金が必要になるか考慮したうえで、長期の資産配分(株式・債券・不動産など)を決めることだ。投資対象は幅広く分散し、投資の方針を(暴落のときも)一貫して守ること。

一時的なマーケットの上下に一喜一憂せず、投資政策を遵守することが大切だ。マーケットの動きに惑わされないためには、歴史に学ぶこと。

投資が成功するかは、投資家の知的能力(情報収集と活用、分析力、判断力)と情緒的能力(暴騰・暴落時に冷静かつ合理的に行動する)に依存する。

長期投資家は、市場に勝つことをめざすべきではありません。いかなるときも冷静さを保つことが重要です。

インデックスファンドの利点

①8割のアクティブファンドに勝つ。
②低コスト。
③運用目的や長期投資方針という最重要事項に専念できる。

証券市場は、ほぼ効率的である。効率的な市場では、投入する労力やコストに対し、インデックスファンドが優れた結果をもたらす。

低コストで広く分散投資されたインデックスファンドは、長期投資に最適です。

データから投資の方法を知る

運用期間が長くなるほど、ポートフォリオ全体の実際の収益率は平均収益率に近づく。長期投資では、データが「平均への回帰」に従う。

普通株の価格の評価は、①将来の企業収益と配当金額、②割引率、というふたつの要素で決まる。長期投資家にとっては①が重要となる。

過去のデータでは、
平均収益率:普通株>債券>短期資産
収益率の変動幅:普通株>債券>短期資産
となる。

インフレ調整後の投資収益率は、
株式>債券>短期資産
となる。

予想インフレ率の変化は、投資収益率に大きな影響を及ぼす。予想インフレ率が上昇すれば株価は下落し、予想インフレ率が低下すれば株価は上昇する。

小さな投資収益率の差も、長期間にわたり複利で運用されると、非常に大きな差となる。

長期間の投資では、株式に投資すべきとなります。インフレを考慮しても、株式投資が良い方法です。

ポートフォリオ

長期投資家は、マーケットリスクだけを負うべきである。個別株式や特定のセクター、市場セグメントのリスクを取っても、追加収益は得られない。

マーケットリスクこそがポートフォリオの収益の源泉なので、マーケットリスクの管理が長期投資家にとって重要である。市場の極端な暴落期にどれだけ耐えられるかを、リスク許容度と考えること。

ポートフォリオを管理する目的は、意図した水準のマーケットリスクを引き受け、期待リターンを最大化することである。

長期に投資を続けるなら、投資対象をいろいろ探すより、暴落時に耐えられる資産管理を最優先にします。

個人投資家へのアドバイス

個人投資家にとって問題となるのは、インフレと人生設計上の支出である。予定の決まっている支出と、非常時の支出に備えて貯蓄をする。貯蓄以外の資金は、株式に長期投資する。特に、株式市場の低迷期に投資を続ける。年金収入なども考慮し、インフレに耐えられる老後の計画を立てる。

2008年の大暴落も、限界を超えた借り入れと過剰な楽観のために発生した。長期投資家は、直近の経験にとらわれ過ぎないように注意すべきだ。

個人は貯金をつくって非常時に備え、それ以外のお金は株式に長期投資するのが良い。という結論です。

 

書評

本書の主張は、数十年という超長期で見れば、市場の成長を完全に享受できるインデックス運用が、最も良い結果を生むということです。目先の景気循環や経済ニュースに踊らされず、低コストで市場平均のリターンを得られるインデックス運用を続けろ、と訴えます。

確かに、日々の情報に惑わされて、すぐに売ったり買ったりするのは避けた方がよいです。売買手数料がかさんで、利回りを低下させます。また、高値で売って安値で買うという、正しいタイミングでのトレードをずっと続けるのも困難です。

安いところで渋々売り、高くなったところで焦って買うのもよくあることで、これも利回り低下の原因です。勝ち組プロ投資家並のトレードはできないので、インデックス資産を我慢して保有し続けるのも一理あります。

ただひとつ気になるのは、本当に世界がこれから、それなりに高いレベルで経済成長を長く続けられるのかということです。

現在の日本人に長期投資を勧める理屈としては、次のようなものがあります。

『バブル崩壊以後の1990年から日本の株式に投資していたら、確かに報われなかった。例えば、1990年から日経平均やTOPIXに連動するインデックス投信に、ドルコスト平均法で積立投資していたら、元本割れしている期間の方が長かった。でもそれは、日本に集中投資していたからだ。1990年以降に、アメリカやその他先進国の株価は何倍にもなっている。世界全体では経済成長してきたので、世界に分散投資した株式投信をずっと保有していたら、資産はとても順調に増えていた。だから日本人も、預金ではなくインデックス運用による長期の積立投資をするべきだ。』

この理屈は、過去のデータを見れば正しいです。でも将来はどうなのか?最近はサマーズ元財務長官などが、米国(先進国)長期停滞説を主張しています。これをどう考えるか。

このような長期停滞説も単なる目先のノイズと処理して、インデックス投信をドルコスト平均法で積み上げていくのもひとつの投資戦略です。あらゆる情報を気にせず積立投資するという姿勢こそ、この戦略の核心ですから。

世界は経済成長を続けるという原理を信じる人が、この戦略をとることができます。そのため、何があっても長い目で見れば世界経済は成長する、という原理に疑念を持つ人は、この戦略に手を入れる必要があるでしょう。

どんなことがあっても長期的には世界は経済成長を続ける、という原理に、最近私は若干の疑念を持っています。「ウォール街のランダム・ウォーカー第10版」の最後に、2000~2010年にかけて米国株式のインデックス投信に投資した場合、元本割れしたと書かれています。

そのあとで、債券・米国株・先進国株・新興国株・不動産すべてにインデックス投信で分散投資していれば、資産は大きく増えていた。めでたしめでたし。インデックス分散投資は不滅だ。と続くのですが、ちょっと待てよ、とも思います。

1990年以降、日本の株式に分散投資しても報われないのは、米国株や他の先進国株まで分散しなかったのが悪い、ということでした。2000年代、米国の株式に分散投資しても元本割れしたのは、世界全体の株式や債券、不動産にまで分散しなかったのが悪い、となりました。

これからはどうなのでしょう。米国経済はそこそこですが、日本と欧州は低成長になりそうです。すると、先進国株すべてに分散投資しても、報われないかもしれません。ほかに加えられる資産は、債券と新興国(あるいはフロンティアという範囲の国々)、不動産などです。

債券は、金利がゼロに近い状態です。新興国には、資源安と中国減速の問題があります。不動産は、金利がゼロから上昇したときどうなるか。ヘッジファンドの成績もずっと悪いですし、コモディティも値下がりしています。保有し続ければリターンが確実に期待できる資産があるのか、よくわからなくなってきました。

大恐慌から第二次世界大戦終了までの20年弱、あるいは1970年代の10年、アメリカの株式は値上がりしませんでした。10年単位で株価が低迷することは、ありうることです。

先進国の株式がこれから10年や20年の間、値上がりしなかったらどうでしょう。がっつり働いて掛け金を払っている期間のうち、10年単位で株価が低迷したら最終的な運用成績はどうなるのか。退職して資産を取り崩し始める時期に、株価がどん底に低迷していたら受取額はどうなるのか。

要するに、バブル崩壊以降の日本株式のように、低迷期の安値で買い、景気が良くなったような気がする高値では買わない、という手法が望ましいのではないでしょうか。

「自分でやさしく殖やせる確定拠出年金最良の運用術」で紹介されていた、バリュー平均法のような考え方も取り入れた方がよいかもしれません。長期で積立投資はするのですが、安値や押し目で大きく買い、高値ではほとんど買わない(あるいは全く買わない、さらには少し売ってしまう)方法です。

これは、市場変動のタイミングに合わせて買いを調節しようという考えです。本書の主張は、市場の変動は無視せよ(タイミングは個人投資家には見極められない)というものです。どちらの立場をとるかは、投資家の自己責任です。世界経済の将来の見方で、立場が決まるでしょう。

運用について理解し、自分にとっての運用目的を認識し、基本方針を自分で決め、どのような市場環境でも適切な投資政策を堅持することが重要だという、本書の主張には同意します。ドルコスト平均法によるインデックス運用が最高なのか、変更の余地があるかを決めるのは投資家です。
(書評2015/02/01)

「資産運用実践講座Ⅱ 株式投資と金融商品編」 山崎元(著)

 

前回紹介した「資産運用実践講座Ⅰ 投資理論と運用計画編」の続きです。上下巻の下巻にあたります。

おすすめ

★★★★★★★★☆☆

 

対象読者層

正しい資産運用について勉強したい人。難易度は初級者から中級者あたりが適当です。

 

要約

株式投資

株式のリターンが債券のリターンより長期で見て高いとは、必ずしも言えない。過去のデータ(特に外国のデータ)を引いて、リターンでは株式が債券を上回るとする主張が多い。しかし過去のデータから、今後も絶対に株式が有利と断言はできない。ただ株式投資は、大きなリスクをとって生産活動に資本を提供する行為なので、一般論として大きなリターンを期待することはできる。

・株式の理論価格は、
現在の理論株価 = 現在の1株利益 ÷(投資家の要求リターン - 利益成長率)
であり、変形して、
投資家の要求リターン = 益利回り + 利益成長率
名目金利 + リスクプレミアム = 益利回り + 利益成長率
となる。
すなわち、実質利益成長率が実質金利より高ければ株式投資は有利であり、実質利益成長率が実質金利より低ければ株式投資は不利である。インフレ初期は株式投資が有利となり、インフレ後期は株式投資が不利となる可能性がある。しかし投資家の予想と現実がずれることもあり、株式でインフレヘッジできるかはわからない。

株式のリスクプレミアムは、直接測定することはできず、一致した学説もない。だいたい5~6%と考えられることが多かった。

チャート分析だけで儲けることはできないと考えるのが、学術研究と運用業界の主流である。チャート分析が有効であると考えて頻回に取引することは、個人投資家にとって弊害がある。

証券会社のアナリストの投資判断が、リターンを改善することはないだろう。

株価は、将来の利益を予想して形成される。利益予想の変化が株価に影響を与えるので、決算情報や、会社四季報などの業績予想の推移を調べることは有意義である。1回目の上方修正の段階では株価は割安(買い)で、3~4回上方修正が続くと株価は割高(売り)となっていることが多い。

PER、PBR、ROE、日経平均株価、TOPIXについて。

個別銘柄に投資する場合は、業績予想の変化(推移)はどうなっているか、株価は割安か割高か、流動性など取引の状況はどうか、を確認する。損失が許容できる範囲の金額で、業種の異なる3銘柄以上に分散投資を心掛けるのがよい。

時間を分散して株式を売買することに意味はない。取引回数が増えコストがかかることや、最適なポートフォリオをつくるのが遅れる機会損失がある。

成長株投資について。
成長株投資で高いリターンを上げるには、他人より早く高成長に気付き、自分が株を買い終わったころに他人が高成長を知ることが必要である。これはなかなか難しい。また、成長株は期待外れ(成長鈍化など)になると、株価を大きく下げる。

割安株投資について。
将来の利益の予測とPERから、またPBRから、割安か判断する。割安株は相対的に値動きが安定しており、銘柄選択基準もわかりやすいことから、割安株投資は個人投資家に向いている。

イベントドリブンについて。

株式を売却するときは、
①お金が必要になったとき。
②資産配分で、株式の比率が変わったとき。
③その銘柄のウェイトが大きくなり過ぎたとき。
④買った理由がなくなったとき。

議決権行使について。

 

投資信託

アクティブファンドは、市場平均に勝てない場合が多い。また、市場平均を上回る優良なアクティブファンドを、事前に見分けることはできない。手数料の差は、ファンドの優劣の大きな要因となる。

・パッシブファンドは、コストが低く個人投資家に適した金融商品だった。近年は、銘柄入れ替えなどに便乗する、コバンザメ投資や引値ギャランティといった現象が見られる。これらはパッシブファンドのリターンを低下させる。ただ現在でも、パッシブファンドはアクティブファンドより高いリターンを示す場合が多いので、パッシブファンドは優位性のある投資対象と考えられる

バランス型ファンドは、コストが高めで運用の中身が把握しにくいという欠点がある。ファンド・オブ・ファンズやライフサイクル型ファンドにも、同様の問題がある。本来は、投資家が資産配分を決定し、それぞれ適切な資産を組み合わせる方が望ましい。投資家自身が行うことで、コストが下がり、管理も容易となる。

毎月分配型ファンドは、課税のタイミングが早くなるので損である。インカムゲインに対する心理的満足のほかに、長所はない。

元本確保型商品は、投資家にとって利点はない。SRIファンドなどは投資の面で優位性はないので、投資家の価値観による。タクティカル・アセットアロケーションのシステム運用は、うまくいく時期といかない時期があり、また投資家がリスクの把握や管理をしにくくなるので勧められない。

トップダウンとボトムアップについて。定量評価と定性評価について。

シャープ・レシオとインフォメーション・レシオについて。

 

預金と債券

利回りが確定している預金や債券では、運用期間と信用リスクの2面から考慮して、利回りを比較するのが原則である。このとき、利回りは複利で比較する。銀行預金の場合は、銀行の格付けも参考にできる。社債を個人投資家がリスク評価することは難しい。

デフレで超低金利(ゼロ金利)の環境では、普通預金が安全で利便性もあるので良い。このような環境下では、運用期間や信用度に問題のある金融商品の利回りもゼロに近づくので、相対的に普通預金が優位となる。名目の利回りがゼロでも、普通預金が十分に有利である。

金利が変化するときの金融商品の比較では、以下の点を考慮する。
①名目金利ではなく、インフレ率を考慮した実質金利で損得をはかる。
②長短の金利差を見て、得な方を選ぶ。
③今後の金利動向も考える。長期の債券では、金利上昇でキャピタルロスの可能性がある。
10年満期の変動金利個人向け国債は、運用リスクが小さく、検討してみる価値はある。手数料の高い外貨預金や外国債券は、常に不利である。

・銀行預金にもさまざまな種類があるが、どれだけの期間でいくらになって戻ってくるかを具体的に確認すること。外貨建てである、オプションが組み込まれている、対象者や期間が限られている、手数料の高い商品と抱き合わせである、などの問題がある場合もみられる。

債券の解説。
①利回りが高くなれば、債券の価格は下がる。利回りが上がるということは、将来価値が不変ならば現在価値が下がるということである。
②インカムゲインとキャピタルゲインを両方合わせて、利回りを検討しなければならない。債券の期間が長いほど、価格が変動するリスクが大きくなる。
③利回りの比較は、複利で行う。
④デュレーションについて。
⑤債券の信用リスクは、格付け情報を参考にする。しかし個人投資家が債券の評価をするのは、極めて難しい。

物価連動国債について。

 

その他の金融商品

自分が理解できない金融商品は、購入してはならない。利益が出る仕組みや、売り手の取り分となる手数料、価格条件から見た損得などがわからないなら、理解できていない。

為替レートについて(購買力平価、需給、資本取引)。

外国株式、外国債券について。
その株式や債券がよい商品かと、その国の通貨がよいかは別々に考えるべきである。運用資産全体のうち、どの通貨をどれだけの比率で持つべきかを考える。外国の株式や債券でも、大半の為替リスクはヘッジできる。

・外国債券をどの通貨で運用しても、円建てでは円の金利と大きくは変わらない。基本的な期待リターンは自国通貨で運用した場合と同じだが、分散投資としての意味はある。

外国株式では、金利や利益成長率、求められるリスクプレミアムの水準が日本と異なることに注意する。

FXについて。

先物、オプションについて。

投機と投資とは。

 

書評

基本的には、1冊目と同じです。入門書のレベルは卒業した人が、もっと理論的に資産運用を独力で行うための本です。専門書まではいかない、中級者向けです。

これを通して読むと、投資の全範囲に目配りできるので本当に勉強になります。でも素人にはかなり難しいです。私も債券や為替のところは、厳しい箇所がありました。株式は興味があるので多少は勉強していて、本書もまあまあ理解できたのですが、債券と為替は勉強が必要です。

本書は合理的なので読むと納得するのですが、それでも他の良書とされる本と主張が異なる部分もあるので、投資とは方法論が確立していないものだと感じました。

「ウォール街のランダムウォーカー」「敗者のゲーム」では、長期の株式パッシブ運用こそ最高と主張します。私も長期の株式投資が有利と思っています。しかし本書で、過去のデータをもとに絶対に将来も株式が債券を上回るとは言えないとか、パッシブファンドに及ぶ悪影響などを読むと、確かにそういう視点もあると気付きます。(ただし本書も株式を期待できる投資としています。)

最近は、先進国経済が長期に停滞するとも言われています。ヨーロッパでは景気後退、さらにはデフレの可能性が出てきました。これまで外国では長期の株式投資が報われてきましたが、日本では20年間、株式投資にいいところはありませんでした。もし今後、先進国経済が、あるいは世界経済が日本のように停滞するなら、株式投資にも疑問が湧いてきます。

そうすると、ただ株式をパッシブ運用するだけでは、賢い投資法ではないかもしれない(平均レベルは期待できますが)。ならばタイミングを見て、不況のときに株式を多く買い、好況のときに投資を抑えたくなります。でも景気の波を正確に認識するのは、極めて難しい。自分が景気の波を捉えられないなら、どうすべきか。そもそも市場のタイミングを見極めるのが無理だと考えるのが、パッシブ運用です。するとパッシブ運用に戻ります。今のところ、答えが見つかりません。
(書評2014/10/16)

「資産運用実践講座Ⅰ 投資理論と運用計画編」 山崎元(著)

 

著者いわく、中級者のために書かれた本です。入門書では物足りない、資産運用を理詰めでしっかり勉強したいという人向けの本です。

おすすめ

★★★★★★★★☆☆

 

対象読者層

正しい資産運用について勉強したい人。難易度は初級者から中級者あたりが適当です。

 

要約

本書は、投資の入門書では飽き足らない個人が、正しい理論を理解して、自分で資産運用を実践できるようになるための独習用テキストである。

 

資産運用計画作成の概略

①計画作成の前に、家計の状態を把握する。
②借金や年金の条件が現在どうなっているか、確認する。
③どれだけの損失まで許容できるかをつかみ、最大損失許容額を設定する。それに従い資産配分を決定する。
④決定した資産配分比率のそれぞれの資産に、どの金融商品をあてるか選ぶ。金融商品を選択したら、適切な窓口から購入する。
⑤年に1回程度、もしくは経済環境の急変時に、資産のリバランスなどのメンテナンスと運用計画の点検を行う。

 

資産運用計画の各論

投資計画をつくる前に、資産や借金、収入と支出など家計の状態を把握する。家計の状態を知るのに、簡易のバランスシートと損益計算書をつくってみる。
バランスシート:金融資産(時価)、実物資産(時価)、短期ローン、長期ローン、自己資本。
損益計算書:年間収入、年間支出。

短期ローン、長期ローン(住宅ローン)とも、すみやかに金融資産で返済するのが有利である。借金の返済は、リスクフリーで市場金利にスプレッドが乗った金利で運用しているのと同じである。

生活費の3カ月~2年分ぐらいを普通預金などで貯めてから、投資を始めるのが無難ではある。ただし個人の状況を考慮しつつ、少しずつリスク資産に投資するのも(勉強になるので)よい。

高齢者(年金生活者)の資産運用で注意すべきは、運用に失敗しても働いて損失分を埋めることが難しいことである。余命を長めにとって金融資産を取り崩す年数を決め、1年当たりの取り崩す額を概算する。以下のように計算する(すべて1年当たりの額。)
年金 + 取り崩し額 + (稼ぎ) - 生活費 = 余裕金
この余裕金から逆算して、とれるリスク資産の額が決まる。これは1年ごとに計算を仕直して調整する。なお、金利やインフレ率が大きく変化したら前提条件を変える。また資産家の高齢者は、よりリスクをとることが可能。

インカムゲインとキャピタルゲインは、区別して扱うべきではない。インカムゲインが高齢者に適しているという考えは誤り。

個人型の確定拠出年金に加入できるならば、税制上メリットが得られる。60歳まで引き出せないことに注意。運営管理機関と運用商品は、よく調べて適切なものを選ぶこと。運用する確定拠出年金は、資産運用全体のなかの一部として位置付ける。全体が最適化されるように資産を配分する。

資産の運用では、あらかじめ最悪の場合(最悪の損失額)を考えておくことが大切だ。期待リターンから2標準偏差を引いた額くらいを想定するのが普通(2.5%の確率で発生)。

資産配分を簡便にするには、リスク上限を決めて、その範囲内でリスクとリターンの組み合わせを選ぶのがよいだろう。リスク許容度が理解できるなら、最適化計算をする。資産配分は、リスクとリターンを同時に考えながら決める。先に運用の目標利回りを決めてはいけない。

簡易なアセットアロケーションの方法。
①1年間での許容損失額の上限を決める。
②リスク資産のリスクを、年率標準偏差X%と仮定する。
③マイナス2標準偏差を損失許容額の上限とし、とりうるリスク資産の割合を逆算する。
④リスク資産の期待収益率をY%、リスクフリーの期待収益率をZ%と仮定し、③の上限までの範囲内でリスク資産の割合を考える。
⑤上の④で決めたリスク資産を、さらに国内株式、外国株式、外国債券などに(機関投資家の運用計画を参考に)振り分ける。

運用パフォーマンスは、資産配分のやり方で9割程度決まる。資産分類内でどの程度アクティブリスクをとるかで、多少パフォーマンスは変化する。

資産ごとの期待リターンを決めるのは難しい。過去の平均値をそのまま使うのは、適当ではない。機関投資家の運用計画の数値は、参考にはなる。

アセットアロケーション全体のリスク、インプライドリターン、リスク拒否度、効用などの求め方。またこれらをもとにして、表計算ソフトでワークシートをつくり、最適化計算をする具体的手順の説明。

 

投資理論とマーケット

モダンポートフォリオ理論について。

ALMとは、資産と負債を一体としてリスク管理などを行う考え方。銀行や保険会社の経営、年金制度などにおいて重要となる。個人でも住宅ローンなどの借金を考えるときには、意味のある考え方。なお、個人が借りられるローンは、経済的にはきわめて不利な条件である。

生命保険は、加入者の人的資本の価値をヘッジする手段と考える。資産運用と生命保険は同時に考えるべきものであり、人的資本がこれらに与える影響は大きい。一般に人的資本が大きい方が、資産運用でとれるリスクは大きくなるし、生命保険の必要性も増すだろう。

行動ファイナンス、ギャンブル依存症について。

政府の株価対策について。年金や日銀などの株式買い入れ、政府保有株式の売却延期、空売り規制など需給面の対策は、短期的な効果にとどまる。法人税引き下げや配当への課税引き下げなどは、株式の理論価格を上げるので長期的な効果が期待できる。

・国家財政破綻などの話で脅かして対策を売る商売があるが、破綻シナリオの確率とその対策にかかるコストは冷静に考えるべきだ。危機が心配なら、国債消化における外国人の割合や経常収支、金利などの動向を日頃から見ておく。

中央銀行の金融政策について。

自社株買いや配当について。理論上は、株主の利益には中立的である。

企業買収、株式持ち合いについて。企業価値と時価総額について。

アノマリーについて。

 

実際の運用

長期投資では運用資産の価値の変動幅が大きくなるので、長期投資でリスクが小さくなるということはない。しかし、長期投資では期待値も大きくなるので、運用期間の長短はリスクに対して中立的となる。ただし長期の運用は取引コストを節約できるので、資産運用は長期で行うのが基本である。

・市場参加者が完全にリスクを認識していれば、ハイリスクのものはハイリターンとなるはずである。しかし、リスクが常に正確に知られているかは疑わしい。

ドルコスト平均法は、有利でも不利でもない。積立投資には向くが、ひとつの投資対象に資産が集中しやすい点はデメリットである。ナンピン買いも資産が集中するので、あまり勧められない。

株式投資において、売却目標株価(利食いや損切り)をあらかじめ決めておくのは誤りだ。値上がりや値下がりの理由を確認して、行動すべきである。

・複利効果は大きいが、運用商品の優劣はあくまで1年当たりの利回りによって決まる。若いうちに投資を始め、長期にわたり取引コストを節約することでパフォーマンスが向上する(=複利効果)と意識しよう。

資産がインフレやデフレに対抗できるかは、将来のキャッシュフローと割引率がどう変わるかによる。株式や不動産はインフレに強いと言われることが多いが、状況による。債券はインフレに不利で、デフレに有利である。短期預金はインフレにやや不利で、デフレにやや有利。借金は債券の逆になる。

金や商品への投資、不動産投資、オルタナティブ投資について。

変額年金保険、生命保険会社について。

金融商品取引法について。金融機関の担当者やアドバイザーとの付き合い方について。担当者やアドバイザーが、自身の利益に沿うような金融商品を勧める可能性があることを知っておくこと。運用計画を決めてから金融商品を選択するのが原則であり、その際は最も適切な金融商品を、コスト面や信頼性で最も適切な金融機関から購入するようにする。

 

書評

読み終わっての感想は、これで勉強したらもう十分だ、です。

投資で話題になるような事柄は、ほとんど網羅されているような感じです。資産運用を考えるときに、必要な内容はほぼ書かれているように思います。しかも内容はかなりレベルが高く、本書が理解できれば自分で資産運用ができるでしょう。

著者が中級者向けと述べているように、本書はなかなか手強いものでした。私は著者の山崎氏のコラムや著書をけっこう読んでいるので、本書の解説もだいたい予測がついて理解できました。山崎氏の本を初めて読む人は、難しく感じられそうです。

入門書をかなり読んでいて、自分で投資信託や株式のことを調べたことがあり、投資を理屈っぽくやりたいと思う人に適した本だと思われます。これより勉強したければ、もう専門書にいきましょう。本書は「資産運用実践講座Ⅱ 株式投資と金融商品編」と2冊組であり、(2冊目は未読ですが)これらを読み込んで理解し実践できるようになれば、一般人としては最強レベルの金融リテラシー保持者になりそうです。
(書評2014/10/12)

「全面改訂 超簡単 お金の運用術」 山崎元(著)

 

投資の初心者でも簡単にできる、おすすめの資産運用の解説本「超簡単 お金の運用術」が全面改訂されました。最新の情報にバージョンアップしています。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

手間をかけず資産運用したい人。
合理的な運用方法を知りたい人。
難易度は入門書~初級者向けレベル。

 

要約と注目ポイント

本書の目的は、極めて簡単で現実的にベストに近く無難なお金の運用方法を、伝えることである。

合理的な資産運用を、手間をかけないという面から極限まで追求します。

「超簡単 お金の運用術」からの進化

本書(全面改訂版)では前回版以上に、お金の運用方法をシンプルなものとした。

超簡単 お金の運用術

①当座の生活に必要なお金(生活費3か月分程度)を、銀行の普通預金に確保する。

②残ったお金を、リスク運用マネーと無リスク運用マネーに分ける。
(リスク運用マネーは、無リスク運用マネーより5%利回りが高いが、最悪の場合1年で3分の1が失われる可能性があると想定。無リスク運用マネーは、元本割れはないとする。)

③リスク運用マネーは、「TOPIX連動型上場投資信託 コード番号1306」と「SMTグローバル株式インデックス・オープン」に半々に投資する。

④無リスク運用マネーは、「個人向け国債 10年満期タイプ」かまたは「MRF」に投資する。1行1000万円未満なら銀行預金でもよい。

⑤大きなお金が必要になったら、リスク運用マネーまたは無リスク運用マネーを、躊躇なく部分解約する。

⑥NISAと確定拠出年金を最大限に利用する。

非常用の貯金を確保します。そして、暴落に巻き込まれたら嫌なお金は預金しておいて、残りは全額インデックス投資をするということです。

お金で困らないために大切なこと(数字は重要な順)

①仕事の稼ぎ。

②節約と貯蓄の習慣。

③不動産で失敗しない。

④生命保険に入らない。必要なら掛け捨ての定期保険に入る。

⑤都市部で生活するなら、自動車を持たない。

⑥お金の運用(本書の内容)。

毎日資産運用のことを考えるよりは、しっかり働いて、高額の買い物に注意し節約することが大切です。

投資の基本

投資対象の各金融商品の解説。

自分で理解できない金融商品は買わない。他人から勧められた儲かる話にはのらない。

借金を避けること。

外貨預金、FX取引、外国債券、コモディティ(商品)は、長期投資には適当ではない。

資産運用では、自分の人的資本(将来の稼ぎ)と今後必要となるお金も考慮する。

そのほか、資産運用全般の解説。

基本の知識があれば、お金について冷静に考えられるようになります。

NISAの正しい利用法。

①NISA枠は最大限使う。

②リターンの高い資産の運用にあてる。

③長期間持ち続けられるよう、分散投資している商品を選ぶ。

④コストの低い商品を選ぶ。

具体的には、本書で推奨する株式の投資信託やETFを買うのがよいだろう。NISA枠はあくまでも運用の一部分として位置付け、資産全体の運用を最適化させる。

確定拠出年金の運用の考え方。

①運用益非課税のメリットを活かすため、期待収益率の高い商品を選ぶ(日本または海外の株式インデックスファンドが妥当であろう)。

②通常の運用商品より手数料が安い場合があるので利用する。

③一資産に投資する商品を選ぶ(株式と債券のバランスファンドなどは避ける)。

④同じリスク内容なら低コストの商品を選ぶ。

確定拠出年金は資産運用の一部であり、資産全体の運用計画を最適な形にする。

NISAと確定拠出年金は、資産全体の中の一部として考えます。全体でバランスのとれた形にします。

 

書評

運用の基本的な方針は、前著から変更はありません。ただ、さらにシンプルになっています。

また、前著はリーマンショックの嵐の時期だったので、金融危機について触れていました。本書ではそれに代わり、アベノミクスとNISAおよび確定拠出年金について解説が加えられています。

全面改訂されていますが、基本的な考え方は揺るがないので、前著と重なる部分も多くあります。コラム等も重複しているものがあります。前著を読まれた方は、日本と海外の株式配分比率が50%ずつになったところと、アベノミクスとNISAおよび確定拠出年金の該当部分を読めばよろしいかと思います。

前著を読まれていない方は、どちらか1冊読めばよいでしょう。まあ情報も新しい方がよいので、本書をおすすめします。
(書評2013/10/31)

「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」 山崎元/水瀬ケンイチ(著)

 

個人投資家には、インデックス投資がいいよ。と教えてくれる本です。投資の理論編を山崎氏が、実践編を水瀬氏が担当して執筆しています。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

投資にはそれほど興味はないが、将来のためコツコツお金を貯めていきたい、と考えている人。難易度は初級者向け程度。

 

要約

理論編

インデックス投資の長所は、①明快、②安価、③負けない、の3点。

①投資の価値が指数でわかるので、理解しやすい。リスクや収益率、ポートフォリオなどを検討し、運用の計画と実行において一貫性を保つことができる。

②インデックスファンドは、販売手数料や信託報酬が安価。

③アクティブファンドは手数料が割高となるので、インデックスファンドに勝つのは難しい。また、勝つアクティブファンドを事前に知ることはできない。インデックス投資は平均に負けない。

・株価指数には、TOPIXのような時価総額ウエイトと、日経平均のような株価ウエイトがある。資産運用のポートフォリオには、時価総額ウエイトの方が適する。

・インデックスファンドでは、銘柄入れ替えや銘柄ウエイトの変更、浮動株の調整がある場合、少し損失が生じることがある。

運用計画は、自分が理解できる範囲で自分がつくること。金融商品の販売者に、助言を求めるのは危険。

資産運用の基本は、
①家計の財務状態の把握。
②資産配分計画を考える。
③個々のアセットクラスに、どの運用商品を充てるか考える。
④どの金融機関で投資するか考える。
⑤ときどきメンテナンス。

運用では、金融資産と人的資本(将来の稼ぎ)、負債を考慮する。

・確定拠出年金やNISAでは、自分の運用資産全体が最適になるように、これらの中身を選ぶ。

・資産配分(アセットアロケーション)についての解説。

 

実践編

・個別株投資は、いつも株のことが気になって、生活の質を落としてしまう。また銘柄を厳選しても、市場全体の下落につられて値下がりする。
人にもよるが、インデックス投資だと、心と時間にゆとりが持てる。しかも、手間をかけず、資産運用をしっかり継続できる

インデックス投資の始め方。
ネット証券や銀行などの選び方。インデックスファンドやETFの解説。積み立て投資のやり方。リバランスについて。高騰や暴落したときの心構え。

 

その他

・代表的なインデックスファンドとETFを評価している。

・インデックスファンドマネジャーへのインタビュー。

 

書評

インデックス投資について、基本的なことをきっちり解説している印象です。専門家による理論的な解説と、個人投資家による実際の投資法の説明があります。ふたつの視点からの説明なので、よりわかりやすいかもしれません。
そのほか、インデックスファンドマネジャーとの対談などもあり、特色があります。通常の解説本をすでに読んでいる人でも、勉強になるかも。
(書評2013/08/03)

「超簡単 お金の運用術」 山崎元(著)

 

一般人が手間をかけずに、でも合理的に投資をする方法とは?投資をしない普通の日本人でも、楽に資産運用ができる本です。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

投資に関心がなく、面倒なことは嫌な一般人。
合理的に資産運用したい人。
難易度は、運用方法については入門書から初級者レベル、その理由の解説は初級者レベルと思われます。

 

要約と注目ポイント

一般人にとって、資産運用は仕事でも趣味でもない。普通の人のための、極めて簡単で、現実的にはベストに近く、かつ無難な運用方法を提示する。

超簡単 お金の運用法

①当座の生活に必要なお金を、普通預金で持つ。

②残りの全額で、株式に投資するETFを、日本株4割と外国株6割の比率で買う。
(③全額株式が怖ければ、リスクをとることに気が進まない分のお金を、10年満期タイプ個人向け国債かMRFに投資する。)

④大きなお金が必要になったら、②または③を躊躇なく部分解約する。

⑤健康保険・国民年金・(必要なら自動車保険・火災保険)に必ず入る。

⑥必要なら、安い死亡保障の生命保険(定期保険)に入る。

⑦確定拠出年金は利用する。

非常用のお金を残します。そして全額をインデックス投資します。保険は見直して、節約します。

運用法の解説

買うETFは、日本がTOPIX連動型上場投資信託(コード1306)か上場インデックスファンドTOPIX(コード1308)、外国がiShares MSCI KOKUSAI Index(ティッカーTOK)。

コストが高くつくので、借金はしない。①の普通預金は借金を避けるため。

長期投資では、株式が有利だ。②の比率だと、リスクが小さくなる。

ペイオフを考慮して、③では国債とMRFとした。1000万円以下なら、銀行預金も保護される。

④の通り、解約は躊躇するな。現在の判断が重要で、過去の買値は関係ない。

保険は付加保険料(手数料に該当)が非常に高い。不要な保険には入らない。高額療養費制度があるので、健康保険には入る。自動車を運転するなら自動車保険、自分が火元になることを考えるなら火災保険にも入る。

税金からも保険料が払われることや、確定拠出年金利用の条件でもあるので、国民年金にも入る。(⑤と⑥)

確定拠出年金には、非課税のメリットがある。運用資産全体のうちの一部として考え、手数料も考慮して選ぶ。(⑦)

そのほか、投資の考え方のポイントや注意点など。

解説を読むことで、なぜそのように資産運用するのか、運用法の理由がわかります。

 

書評

さすがという内容。読後感はすっきり感です。なんかすっきりします。

投資に興味がなく手間もかけたくない一般人が、実行可能で、かつ、並み以上のパフォーマンスも期待できる手法を考察しています。ほかに、投資にまつわる注意事項も、簡潔で分かりやすく解説しています。

しかし逆説的ですが、投資について自分で勉強して、試行錯誤しながら実行した経験(少し損もしたりとか)を持つ人でないと、本書のシンプルさの凄みが実感できないという。
(書評2013/06/09)