人間の世界では、過去に起こったことが再び繰り返されることがあります。本書を読んで、歴史から学び未来を見通し、お金持ちになりましょう。
おすすめ
★★★★★★☆☆☆☆
対象読者層
お金持ちになりたい人。歴史から投資戦略を考えたい人。
要約と注目ポイント
人間社会では、同じようなことが繰り返し起こる。長い年月にわたり資産を維持している富裕層は、とても歴史を重視している。本書では歴史から学んだ知見をもとに、株価の動き(戦争の影響)、インフレ、バブル、イノベーション、商品価格、長期投資、今後の投資戦略を考察する。
株価を予想する
日本の株価は、過去130年間で年間収益率が平均7%だった。ただし大きく上昇する時期と、長期に低迷する時期があった。約20年の単位で、超長期のトレンドが発生していた。
第1次世界大戦の戦時需要で大正バブルが発生したが、そのあと崩壊しデフレとなった。デフレと関東大震災による不況に対し、日銀の国債引き受けという金融緩和策がとられた。敗戦後に巨額の債務のため準ハイパーインフレになった。このバブル崩壊から長期デフレ、震災、超金融緩和までの流れは現在と同じである。
人は自分が経験した範囲の感覚で、取引しがちである。株価の歴史的推移を見ておくべきだ。15~20年単位の長期トレンドは、そう簡単に止まらない。だが、永遠に続くこともない。
今の長期停滞は25年続いてきた。現在が、長期トレンドの転換点である可能性は高い。アベノミクスの結末は株高と好景気、インフレが考えられる。
インフレ
アメリカ経済は将来も堅調で、ドル高が予測される。日本の経常収支は恒常的に赤字となり、円安となる。したがってインフレとなるが、仮に経済成長が伴わなければスタグフレーションとなる。
インフレやスタグフレーションに備えるには、預金をやめて株を買う。基礎体力があり、グローバル展開していて、需要が減りにくい商品を提供する会社の株が候補となる。優良な不動産を借金で買うのもひとつの方法。他のヘッジ手段は外貨や金など。
過去のドイツや日本でインフレが発生したとき、物価は急激に上がるのに、不動産価格や株価の上昇は遅れた。ドイツのハイパーインフレでは、価格の上昇は①為替、②金、③物価、④不動産、⑤株価、の順番だった。
バブルとイノベーション
バブルには、マクロ的な市場全体がバブルになる場合と(1980年代後半の日本など)、イノベーションを材料とした個別のバブルの場合(2000年頃のITバブル)がある。
マクロ的バブルは、資産間のお金の移動で発生する。株式、債券、不動産のうちで、過剰にマネーが流れ込んだ資産がバブルとなる。現在は債券バブル。
イノベーションでは巨大な利益が期待されるので、イノベーション関連企業の株価は高騰し、バブルとなる。テクノロジーを材料とするバブルは、再現性がある(鉄道、自動車、半導体、インターネット)。
テクノロジーがバブル化するのは、投資家が理解しやすいとき。次の有力な候補は、人工知能とロボット。テクノロジーの評価は、黎明期、過度な期待、失望、安定的な成長、と移り変わる。投資するのに適切な時期がある。
コモディティ
金などの実物資産は、通貨に対する不安が高まると買われ、通貨への信頼が高まると売られる。
ビットコインは、金本位制に影響を受けて設計されている。世界の一定数の人が価値を認めれば、ビットコインは通貨になる。
原油価格は、1970年代のオイルショックでピークをつけた。リーマンショック前から再び高騰し、高値で推移していたが、アメリカのシェール革命により2014年後半から下落している。今後も供給過剰で、価格は低く抑えられる可能性がある。
長期投資
株式への長期投資は、年平均7%の高い利回りと複利効果が見込まれる。ただし毎年の利回りは、リスク(標準偏差)の大きさに応じて上下に振れることに注意する。現実的な投資リターンは、べき分布で想定される。長期投資でもリターンの幅は大きい。
投資家は株式投資に高いリターンを求めるので、将来も株価は継続的に上昇すると考えられる。
株価や経済の動向は、人間の心理による影響も大きい。
今後の投資戦略
今後の投資戦略を考えるために、大切な基本事項を解説します。そのうえで、有利と考えられる投資戦略を提示しています。
書評
著者には「大金持ちの教科書」という著作があります。このなかで、時代の流れを見極めることが、お金儲けにとって重要と述べています。この時代の流れを読むという部分を拡大し、歴史から学ぶという要素を加えて1冊の本になったのが、本書「お金は「歴史」で儲けなさい」であるような印象です。
そのため、「大金持ちの~」と重複する解説もあります。本書は、歴史的なデータから現状を分析し、将来のシナリオを予測するという点が特徴です。
読んでみて、いろいろ勉強になりました。私とけっこう似た考え方だなと思いました。今後に使えそうな点を、いくつか整理してみます。
日本株式の過去の平均利回りは、年7%としています。「株式投資 第4版」によると、過去200年のアメリカ株の年平均利回りが7%なので、これはだいたい妥当と思われます。株式に数十年単位で投資することは、収益の面でもインフレ対策の面でも悪くない方法だと考えられます。
日本の将来シナリオとして、インフレ(スタグフレーション)は有力と考えます。まだ物価は上がっていませんが。
日本の国家債務を処理するのに、物価上昇率より長期金利を低く保つ、金融抑圧的な政策がとられるだろうと私は予想します。ですから、アメリカの優良株を買う、外貨建て資産を持つ、優良不動産に投資する、といった方法には賛同します。
インフレのとき、資産によって上昇する時期がずれることは勉強になりました。はじめに外貨や貴金属に逃げ、そのあと相対的に安く売り込まれた株や不動産を買うと、お金持ちになれるようです。(上手くいくか、保証はできませんが。)
バブルの分類も、学ぶところがありました。マネーが過剰に流れるところを、冷静に探そうと思います。イノベーションによるバブルの場合、ブームのピークの前に株を買っておきたいのですが、私はたいてい出遅れます。
なので、失望され忘れられたテクノロジーが、本格的に普及してきて復活する前の、横ばいの時期に買うのもありかと思います。
人工知能やロボットは本当に有望と思いますが、今のところ勝者ははっきりしません。アップルやグーグル、フェイスブックやIBMなどは力を入れていますが。
(書評2015/06/29)