トレードに関する名著とされる「マーケットの魔術師」シリーズ。原点となる第1作です。
おすすめ
★★★★★☆☆☆☆☆
対象読者層
マーケットに勝ち、大きな利益をあげたい人。
要約と注目ポイント
敏腕トレーダーである著者が、非常に優れたパフォーマンスのトレーダー18人にインタビューし、トレードの秘密に迫った。
聖杯を見つけた偉大なトレーダーたち
マイケル・マーカス
商品先物トレーダー。
ブルース・コフナー
主に為替取引を行うトレーダー。
リチャード・デニス
商品先物取引から出発し、成功を収めたトレーダー。
ポール・チューダー・ジョーンズ
長年にわたり、驚異的なリターンをあげ続ける先物トレーダー。
ゲーリー・ビールフェルド
穀物相場で集中的に取引し成功する。そののち債券取引を行う。
エド・スィコータ
開発したトレーディングシステムで、最高のパフォーマンスを出す。
ラリー・ハイト
役者と脚本家から転職し、徹底したリスク管理を特徴とするファンドを創設する。
マイケル・スタインハルト
株式市場を特異な洞察で見るファンドマネージャー。
ウィリアム・オニール
独自の手法で急騰する成長株を発掘する。
デビット・ライアン
ウィリアム・オニールの弟子で、成長株投資を行う。
マーティ・シュワルツ
10年間負け続けたあと、圧倒的なリターンを生むトレード手法を編み出した。
ジム・ロジャース
ジョージ・ソロスと設立したクオンタム・ファンドで、最高のパフォーマンスをあげる。その後は自身の資産を運用している。
マーク・ワインスタイン
徹底したテクニカル分析、多くの経験と優れたセンスにより、ほぼ100%の短期トレード勝率を誇る。
ブライアン・ゲルバー
ブローカー出身の、市場心理を読むのに長けたトレーダー。
トム・ボールドウィン
個人で巨額の資金を動かす、超短期トレーダー。
トニー・サリバ
巨額の利益をあげるオプショントレードを成功させながら、安定的なパフォーマンスも長く維持する。
バン・K・タープ
トレードで成功するための心理学を研究している。
エドワード・ソープ
確率の力でカジノに完勝した数学者。世界初のクオンツ・ヘッジファンドを創設。
書評
たくさんの成功者が出てきて、それぞれのトレード手法や投資哲学を語ります。知らない人もいますが、有名人もいます。
ジム・ロジャースは、日本のメディアにもよく登場します。私が書評を書いた本と、関わりのある人たちもいました。
「オニールの成長株発掘法 第4版」の著者ウィリアム・オニール。「ヘッジファンドⅠ・Ⅱ 投資家たちの野望と興亡」で取り上げられた、マイケル・スタインハルトとポール・チューダー・ジョーンズ。
18人のトレーダーが、成功の秘訣を語ります。なるほど、役に立つ教訓だと思うことはあります。
1回のトレードでの最大損失を限定する。ポジション全体のリスク管理。損切りは早く、利食いは遅く。感情的なトレードをしない。トレードがうまくいかないときは、トレード額を落としていく。規律を守る。などなど。
大成功するトレーダーは個性が強い人が多いので、インタビューでも面白い言い回しや例えなどをします。奥深いような発言をたくさん読んでいくと、自分も何かすごいことがわかったような気持ちになりやすいです。
しかしトレードを始めたばかりの人が、この本を読んでうまくいくとはあまり思えません。こういう本を読むと、自分も大儲けできるような気になりますが、読んだだけでは勝てません。
本書が役に立つのは、毎日相場の研究を重ね、自分のトレード結果をずっと検証しているような人でしょう。そんな人なら、多種多様なトレーダーの話の中に、自分の売買手法に合うヒントを見つけることもあると思います。
各トレーダーで手法が違うので、教訓も異なります。
損切りの基準を決めている人もいれば、損切りポイントを決めていない人もいます。1つのトレードを、必ず資産全体の一定比率以下に限定する人もいます。チャンスと考えたトレードに、とても大きな比重をかける人もいます。
そのようなわけで、かなり分量のある本ですが、各読者にとって有益な部分はそれほど多くないような気もします。
(書評2015/07/02)