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「奴隷のしつけ方」 マルクス・シドニウス・ファルクス/ジェリー・トナー(著)

 

貴族が奴隷をどう扱ったか、その実例から2世紀前後のローマ帝国を見ていきます。興味深い題材で、入り込みやすいローマ史の案内書です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

ローマ史に興味がある人。

 

要約と注目ポイント

・本書では、古典学研究者である著者が、仮想の貴族の語りを通じてローマ帝国の社会を解説する。貴族は奴隷をどのように見てどう扱ったか、貴族の奴隷管理からローマ社会をわかりやすく説明していく。

・ギリシャ人は、生まれながらの素質として、自由人と奴隷は異なると考えた。ローマ人は、生まれながらに自由人と奴隷が違うとは考えず、社会慣習であるとした。(ローマはどんどん拡張し、異国人を取り込んでいった。)

・ローマ共和制のころ、入植地を富裕層が手に入れ、買った奴隷に農作業をさせた。奴隷は子供が多かった。そのため、奴隷が増えた。

・主人たる家長は、ファミリア全体を維持し繁栄させるため、奴隷管理もしっかり行う必要がある。家という単位にとって、奴隷は基本要素である。ただし、奴隷は主人に絶対服従させる。しつけの行き届いた奴隷が多くいる主人は、格が上がり見栄が張れる。

古代ローマの世界を、ケンブリッジ大学の古典学研究者が貴族の語りを通し、面白く説明します。

奴隷の評価や売買について。

そもそも奴隷は、奴隷商人などにさらわれるか、貧困のためか、戦争で捕虜になったために奴隷になる。

どのような奴隷が売られているのか、家長はどのような性質の奴隷を買うべきか、どういった仕事をさせるのか。

奴隷は基本的に高額商品である。奴隷の購入は、農場では労働力にするための投資になるが、都市の富裕層では顕示的消費と言えるかもしれない。

奴隷を活用するために。

奴隷には、早く奴隷という身分に慣れさせよ。主人は上に立つものとして、奴隷を公正に扱うべし。

仕事に応じて、指導や訓練を行う。奴隷には適量の食事、仕事、罰を与える。良い働きには良い待遇を与え、長年の労働には、家族をもつことを許可したり、解放で報いる。

役割分担と責任をはっきりさせる。農場管理人など、奴隷を管理する奴隷は注意深く選ぶ。

主人は定期的に領地を視察して、奴隷の堕落を防ぐべし。

奴隷の性について。

主人が女奴隷と性的関係をもつのはOK。主人が青年や少年の奴隷と関係をもつのもOK。女奴隷が主人の子を産んだ場合、奴隷として嫡子の世話係にするのもOK。

働きによって、奴隷同士の婚姻も認めるのが良い。奴隷同士の子は家内出生奴隷となり、ファミリアに貢献する奴隷となる。

現代の観点からすれば性的虐待は多発しており、奴隷の精神に有害だったと考えられる。奴隷は強く解放や自由を願っていたようで、自意識や自尊心があったと推測される。

奴隷は資産ですが、人間です。その矛盾が、現代から見ると奇妙な慣習を生みます。

奴隷という存在について。

共和制のころは、主人が家長で奴隷は家人という、ひとつの世帯とみなす感覚もあったようだ。帝政期に贅沢も極まってくると、奴隷は完全に卑しい存在となった。

ストア派など一部の人は、奴隷の内面を重視し、奴隷に対し道徳的にふるまうべきと考えた。ただし社会全体では、高潔な主人がよく指導すれば、奴隷も優れたふるまいをする、という程度の認識だった。

奴隷への罰と拷問について。

奴隷への体罰はまったく通常の行為だ。ただ罰を限定的にしようという意識はあった。重罪を犯した奴隷は、酷使されたり処刑されたり猛獣刑(ライオンに食われる)になるのが当然だった。奴隷の処罰の判断が、皇帝に委ねられることも多かった。逃亡奴隷は重罪である。

奴隷を拷問にかけるのは、裁判で証言させるときだ。奴隷は道徳的に劣るので、拷問にかけないと真実を言わないからだ。このほか、主人が殺されたとき、そばにいたのに助けようとしなかった奴隷も、拷問にかけたうえで処刑される。

奴隷の楽しみについて。

奴隷の楽しみや息抜きとなったのは、年に1回のサトゥルナリア祭で、はちゃめちゃな無礼講だった。都市部の家内奴隷は、祭りを大いに楽しめただろう。

奴隷は奴隷ですけど、人間です。意志も人格もあるのに奴隷扱いでは、収まらないこともあるでしょう。

奴隷の反乱について。

奴隷は敵となるということを、主人は心構えとしておかなければならない。シキリア島の反乱、そして大規模なスパルタクスの反乱の例がある。いずれも、奴隷所有者の残虐な使役が原因となっている。

また反乱ではなくても、家内奴隷による主人殺しや、主人を告発するといった反抗もある。仕事をさぼったり、主人の悪い噂を流すということはよくある。家内奴隷の管理には、細心の注意を払うべきだ。

奴隷の解放について。

奴隷が解放される手段は主に3つ。主人が死んだときの遺言、主人が生きている間の主人の判断、奴隷が自分のお金で自分を買い取る。奴隷解放には法的な取り決めがあり、契約書を作成するのがよいだろう。

奴隷は解放後、解放奴隷となる。主人が保護者、解放奴隷が被護者として、関係は継続する。家内奴隷の方が解放されやすく、農場の奴隷は解放されにくかったと推測される。奴隷は5~20年ほど働くと解放されたらしく、好ましい人物とみなされればローマ市民になれた。

解放奴隷は、成り上がろうと野心を持つ者が多い。そして実際に、富豪となる解放奴隷の例もみられる。皇帝の奴隷や解放奴隷には、皇帝の側近として力を手にした者もいた。

キリスト教徒と奴隷について。

キリスト教徒は慈悲と施しを説くが、キリスト教徒も奴隷の扱い方は変わらなかったようだ。初期のキリスト教では、奴隷は不道徳な行いをすると考えていたし、奴隷制を批判することもなかった。

奴隷は人間ですから。人間みたいに感じ、行動しますよ。人間だもの。

 

書評

ローマ帝国における権力者、富裕層といった人々が、どうやって奴隷を管理したか。この観点からローマ社会を解説していきます。これだけでもかなり、読者の興味を引くためにエンターテインメント色が強い感じがします。ですがさらに、当時の貴族が書いた本という形態をとっており、「つかみ」を意識しているようです。

そんなわけで、気楽にガツガツ読み進められます。小ネタとなるエピソードも満載です。私は歴史に弱いので判断できないのですが、著者は古典学者なので、内容に大きな誤りはないのでしょう。ゆるい気持ちで、ローマ社会史・生活史の入門書として読めます。

本書は仮想の貴族の語りと、著者の解説の二本立て構成です。解説部分には参考文献が記載されているので、さらに詳しく勉強もできます。

私はもうちょっと硬い形式で書かれていても、気にならないのですが、今は読者が読みやすいように学者も配慮する時代なのでしょう。

逆に真面目な人は、エンターテインメント色や、ややブラックな味付けが気にかかるかもしれません。まあ肩に力を入れずに読めば、どういう立場の人でも、ローマ史の読み物として楽しめるでしょう。

なお本書は、人をどう動かすか、目的のために人をどう使うか、という経営論やリーダーシップ論の視点からも書かれています。

ローマ社会史入門とリーダーシップ論を、同時に読みたいという人がいるのでしょうか。焦点をローマ史だけに合わせるか、古代に学ぶ経営論だけとするのか、両方盛り込むのか、この点でも好みがわかれるかもしれません。
(書評2015/09/15)

「40兆円の男たち」 マニート・アフジャ(著)

 

世界で今もっとも活躍し影響力のある、ヘッジファンドのマネジャーの素顔に迫ります。成功する投資家の戦略を学べる本です。

成功しているヘッジファンドマネジャーは十人十色ですが、共通点もあります。

強い目的意識、優れた管理能力、向学心、何になぜどのように投資するかを深く考える、持続可能な形で他人と違うことをする、不快な感情に対応する、失敗から学び軌道修正する、といった特徴を9組のインタビューから発見できるでしょう。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

市場に勝ち続けてきたヘッジファンドマネジャーに興味がある人。

 

要約と注目ポイント

市場に勝ち続け成功している、特別な存在となった、ヘッジファンドマネジャーの投資人生を紹介する。

レイ・ダリオ

グローバルマクロ戦略を採る、世界で最も大きく最も成功したヘッジファンドがブリッジウォーター・アソシエイツである。レイ・ダリオが創設した。

「失敗や大変な経験から学ぶ」、「真実を追及する」、「自分自身を進化させる」、「現実に対処する」ことに断固として集中する。

彼のレポートは、各国の中央銀行や国際機関、大企業、年金基金等で読まれており、強い影響力を持つ。

マーケットと無相関のアルファを追求し、運用ではアルファとベータを分離する。

歴史から学ぶことで、普遍的な投資法や危機管理の原則を確立する。

環境が変わると、各マーケットのベータはそれぞれ異なった影響を受ける。

複数の相関性のないアルファをポートフォリオに入れることで、期待リターンを保ったままリスクを減らす。

リスクパリティと呼ばれる手法を、理論的に構築する。(ポスト・モダン・ポートフォリオ・セオリー)

ピエール・ラグランジュとティム・ウォン

マン・グループとGLGパートナーズの合併により誕生した、世界最大級のヘッジファンドの主要幹部である。

長期の結果を重視し、大きなトレンドから利益を得る。

リスク管理が重要で、勝率を高めることと資金を守ることが基本である。

優秀なマネジャーの自主性を尊重するが、投資のプロセスやリスクは管理する。

ジョン・ポールソン

イベントの裁定取引を基本事業とする。

一流ファンドとなることをめざし、キャリアを積み、好業績を続けてファンドを成長させた。リスクとリターンが不釣り合いな、有利な取引を一貫して追求してきた。

そしてその経歴が、名高いサブプライム市場の空売りにつながった。150億ドルの利益をもたらしたサブプライム証券の空売りで、一躍トップに立つ。その後も大規模な裁定取引を続ける。

マーク・ラスリーとソニア・ガードナー

破綻のおそれがある企業や再建後の企業などの、過小評価された債券や株式に投資するディストレス戦略を行う。

豊富な経験と保守的な運用で、有力なディストレス戦略ファンドに拡大する。その冷静な投資戦略は、金融危機後のフォードの取引でも発揮され、2009年には60%のリターンをあげた。

デビッド・テッパー

信用アナリストとして出発し、ゴールドマン・サックスで債券部門のトレーダーとして大きな利益をあげる。

独立後は、他社に先駆けた積極果敢な投資で、好パフォーマンスを連発する。これは、市場がパニックに陥ったときにも冷静でいられるので、誰よりも早くリスクをとって投資ができるからだ。

ウィリアム・A・アックマン

有力なアクティビストとして知られる。投資先の企業に働きかけ、長期的な企業価値を高めることで利益を得る。

楽天主義者であり、自信満々な態度のため、攻撃的ととられることも多い。

ロックフェラーセンターへの投資、シアーズへの投資、ウェンディーズやマクドナルドへの投資、破産したリートへの投資などで成功する。しかし、検事や証券取引委員会に目をつけられ、取り調べを受けたこともある。

ダニエル・ローブ

自信家で自己主張が強いことで有名である。アクティビストというイメージがあるが、債券取引や裁定取引、ディストレス戦略やイベントドリブン戦略などもこなす。

金融危機前のサブプライム市場の空売りと、2009年の大底での大胆な投資に成功する。ヤフー経営陣へ、積極的な提案も行った。

ジェームズ・チェイノス

空売り専門のファンドマネジャー。早くから、大企業だったエンロンやタイコの巨額不正会計に気付く。決算書を読み込むファンダメンタル分析を核に、ボトムアップの手法をとる。

企業の年次決算書を3回読んでも理解できないときは、詳細を調査せよ。逆に買いの投資家なら、逃げること。

流動性のある大型株か中型株で、空売りを行う。

アナリストは調査に専念し、ポートフォリオマネジャーやパートナーが投資判断を下す。

決算が改竄される可能性はかなりあるので、知的好奇心や疑問を持つことが大切だ。

バブルのような過剰評価や、ある流行がいつまでも続くといった誤認のあとに、空売りのチャンスが生まれる。

2011年以降、中国に対し最大の空売りポジションをとっている。

ボアズ・ワインシュタイン

若くしてドイツ銀行の幹部となり、自己勘定取引で利益を出し続けていた。独立後も、金融危機のさなかに大きな利益をあげる。デリバティブ取引を得意とする。

登場する投資家は、皆すごい能力を発揮し、抜群の成績を残しています。長年の研究、実践、経験。すぐにまねできることはないです。ただ凡人であっても、日々経済と市場を冷静に観察し、勉強するのはムダではないでしょう。

 

書評

成功しているファンドマネジャーにインタビューする本ということで、「マーケットの魔術師」に似た企画です。勝ち続けるファンドマネジャーから学びたいと考え、読んでみました。

ただ登場する人たちが凄すぎるので、個人投資家のトレードや投資には、それほど役立たないような気もします。

素人の意見ですが、私は2007年から始まった金融危機を境に、その前と後では世界が変わったと考えています。リーマンショックに象徴される危機は去ったような風潮ですが、後始末は済んでいないと思います。

日米欧の中央銀行が金利をゼロにして、それでも足りずに莫大なリスク資産を買いっ放しです。危機から7~8年経ちますが、金利を上げることも、買い入れた資産を処分することも、とてもできそうにありません。

中央銀行や政治家が、あからさまにマーケットに介入し、リスク資産の価格形成に関与しています。そういった意味で、金融危機前後でゲームの進め方が少し変わったように感じます。

ですから投資の本では、金融危機後の内容まで含んだものを読みたいと思っています。優秀な成功している投資家が、金融危機後の世界をどのように見て、どう考えているのか、それを知りたいからです。

本書は、金融危機のあとで超トップレベルのマネーマネジャーが何を考えているか語るので、有意義な本だと感じました。

とはいえインタビューは2012年ごろまでに行われたようです。アメリカの利上げ、中国経済の減速とそれに伴う新興国の低迷という、2015年現在の重大事項をどう見ているのか、教えてほしいものです。

「続マーケットの魔術師」「リスク・テイカーズ」などを読んで楽しめる人には、面白い本でしょう。
(書評2015/09/12)

「シフト&ショック 次なる金融危機をいかに防ぐか」 マーティン・ウルフ(著)

 

世界的な金融危機は、再び起こるのか?
答えはイエス。
フィナンシャル・タイムズ論説主幹である著者が、2008年に起きた金融危機の原因を明らかにします。金融危機の再発、そしてそれを防ぐ金融システムについて、大局的な視点で考察します。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

2007年から始まった金融危機について考えたい人。金融システムに関心がある人。金融知識がないと、かなり難しい本です。

 

要約

・1970年代、1980年代から現在まで、金融の自由化とグローバル化が進んできた。それにより、経済は成長したが、金融危機も繰り返し発生するようになった

・主流派の経済学者は、その理論に基づいて行動すれば経済は安定し、外的ショック以外の理由では不況にならないと考える。
これは誤りである。安定な状況が、不安定を生む。資本主義経済において、不況は普通に起こる現象だ。不況は外的ショックだけでなく、システム内部から生まれる現象だと理解すべきだ。

・今も変わらず、市場経済は個人の自由を守るために必要なシステムである。現在問題なのは、金融と経済の不安定化、大量失業、格差の拡大だ。金融資本主義の暴走を正して、これらの問題に対処しなければならない。

今回の金融危機のポイント。
現在の金融システムの限界が露呈した。
これまでの経済理論や経済政策は続けられない。
銀行を国家が救済したので、金融自由化の時代は終わった。
金融危機後にとられた財政刺激策は正しかったので、大恐慌は回避できた。
負債を圧縮するため民間支出、消費、企業活動が急低下したので、それを補う政府の財政刺激策は正しい。
財政刺激策を2010年に財政緊縮策に変えたのは早過ぎた。
早過ぎる緊縮策で、失業と経済停滞が生じた。

ユーロ圏危機のポイント。
ギリシャのような国とドイツのような国を同列に扱う、制度設計に無理があった。
ユーロ圏の通貨同盟では、裁量的に通貨を管理できず、銀行同盟もなく、労働者の移動も不完全である。
共通の政策金利が適用される単一金融政策をとれば、財政赤字の国が生じるのは避けがたい。
ユーロ圏の支配者は債権国ドイツで、ドイツは自由競争と財政緊縮策に固執している。
景気が悪い過剰債務国は財政刺激策をとれないので、いつまでも景気後退が続く。
通貨同盟内の赤字国は、資金流入が突然止まると、経済危機に直結する。
黒字国から赤字国の中央銀行への信用供給が止まれば、赤字国はユーロ離脱に追い込まれかねない。
一国でもユーロから離脱すると、ユーロ圏崩壊という深刻な危機に至る可能性がある。
ユーロ圏危機の原因は経常収支の大きな不均衡であり、黒字国と赤字国の両方の調整が必要である。
黒字国(ドイツ)は、ユーロ圏危機の原因は財政収支にある、と誤った認識をしている。

新興国経済のポイント。
金融危機後も、新興国は堅調に経済成長し、中国をはじめとする新興国は大きく台頭した。
新興国が成長を続けられたのは、金融政策、公的債務、財政、外貨準備、経常収支黒字など、基礎的条件が良好だったおかげである。
新興国の成長は減速しつつある。その理由は、資本流入への依存、信用の膨張、コモディティブームの終焉、(特に中国で見られる)莫大な質の悪い投資などである。
高所得国(アメリカ)の金融政策が正常化すると、新興国から資本が流出し、通貨安となり、ドル建て債務の負担は重くなる。大量に発行された新興国債券を保有する投資家に、損失が生じる。
中国は、金融危機前は輸出で、金融危機直後は投資で成長した。これから生産能力は過剰となり、投資需要は急減し、拡大した信用には損失が発生するので、中国経済は減速する。
中国の需要によるコモディティブームは終わり、コモディティ輸出国は大打撃を受ける。

なぜ金融危機が繰り返されるのか。
銀行は、リスクをとって信用を創造し、利益を追求する事業者である。
1970年代後半から、金融の規制が撤廃され、自由化されてきた。
銀行が経済のマネーと信用の大部分を供給しているため、銀行が安全でなくなると、金融システムが崩壊する。
バブルが始まると、人々は借金、投資、消費の規模を拡大させ、リスクを忘れ慢心する。
金融の自由化は、政府より市場が正しいという風潮をもたらした。
経済のグローバル化により、資金調達の規模はグローバル化し、銀行の大きさもグローバル化した。
金融工学の発達により複雑な金融商品が開発され、そのリスクを理解しない世界中の投資家が、巨額の資金で購入した。
規制のかからないシャドーバンキングが、さまざまな資産を証券化して、従来の銀行システム以上に資金を供給した。
シャドーバンキング経由の投資には、極めて大きいレバレッジがかかっていた。
シャドーバンキングは不透明で、そのうえ相互の結びつきが強く、パニックが発生するとすぐにシステム全体に波及した。
金融機関は、誤ったリスクモデルでリスクを計算していた。
金融機関では単年の業績で評価され報酬を得ていたので、インセンティブが短期志向になった。加えて、有限責任会社ではダウンサイド・リスクに下限があるので、経営者や社員は最大までリスクをとりにいき、その結果発生した損失は納税者の負担になった。
規制当局は規制を緩めすぎて、金融機関が過剰なリスクをとるのを放置した。
中央銀行は、インフレが安定すれば経済が安定するという、誤った考えを持っていた。

金融危機の原因となった、マクロ経済の問題は何か。
経済収支の不均衡は、金融危機前までに拡大していた。大幅な資本純輸出国は、①中国とアジア新興国、②高齢化の進む高所得国(日本とドイツ)、③産油国。資本純輸入国は、アメリカとヨーロッパ周縁国。
経済収支の不均衡は、マクロ経済を不安定にする。
金融危機の根本原因は、世界的な貯蓄過剰(投資不足)にあった。
世界の需要不足をアメリカが引き受けたので、金融緩和政策をとる必要が生じた。
貯蓄が過剰であれば、利子率か生産・所得を通じて調整される。
不況になると消費と貯蓄が減少し、貯蓄意欲が高まり、経済は縮小し続ける。
実質金利の低下は、経済の長期の実質リターンが低下する前兆であり、はじめに長期資産の価格が上昇する。
実質金利が低下すると、短期的には資産価格が上がり、中期的には信用ブームが起こり、長期的には住宅価格が暴落して金融危機となる。
多くの高所得国で家計の負債が膨張しており、民間の負債の焦げ付きは、公的債務危機を発生させる。

なぜ経済学は間違ったのか。
新古典派経済学は、金融抜きのマクロ経済理論を構築した。金融論は、マクロ経済学抜きのファイナンス理論を構築した。マクロ経済とマネーの相互作用を理解しなかった。
これまでの理論では、信用の拡張は中央銀行が利上げで防ぐ。しかし、資産価格の上昇と信用の拡張がインフレと密接な関係になければ、中央銀行は信用危機を防げなかった。
ケインジアン、ポストケインズ派、オーストリア学派、シカゴ学派、それぞれの理論の検証。

金融の規制改革。
これまでの金融の規制では、危機は繰り返し起こる。現在検討されている規制改革案は、既存のシステムの延命策である。そのため、大規模な金融ショックを予防することはできない。
レバレッジの上限を定めることと、自己資本を大幅に積み増すことを、銀行に強制する必要がある。
裁量の余地の小さい、自動的に実施されるようなマクロプルーデンス政策が必要である。

マクロ経済の持続可能な均衡を取り戻すには。
危機後の停滞した経済を成長の軌道に乗せることと、民間の貯蓄過剰を解消することが必要となる。
2010年に緊縮財政策へ転換したのは早過ぎた。財政政策の比重を高め、金融政策の比重を下げた方が良かった。高所得国は需要不足により、停滞に陥っている。
過剰な負債に対処するため、需要を拡大し、金利を下げ、負債の再編・削減をする戦略が求められる。
金融の自由化で格差が拡大し、多くの人の実質所得が下がり、そのため需要不足が生じた。需要不足は信用ブームで代替したが、信用ブームは崩壊し、政府が最後の支出者となり、公的債務が積み上がった。これらは、経常収支の不均衡と関係している。
資本輸出国が為替レートに介入して、経常収支が不均衡となっている。純貯蓄が黒字国から新興国・途上国に流れるように、グローバルな改革が必要である。
高所得国の構造的な需要不足には、政府が通貨を創造し、刷るお金の量を中央銀行が制御するという、財政ファイナンスも戦略として検討できる。

 

書評

インフレ率を低く抑えて、金融を自由化すれば、経済は永続的にうまくいく。
著者はこのような主張を、本書で批判します。この主張は、今までの経済学者や当局者の主流でした。揺らいではきましたが、現在でも、主流派に位置しているようです。

1997~1998年のアジア金融危機などを見ると、主流派は金融危機の起こった国に対して、厳しい態度をとります。金融危機で資金が流出するなど、経済が厳しくなった国に、緊縮政策をとって財政を黒字化するよう求めたりします。金融危機の続くギリシャに対するドイツのように。ギリシャへのIMFの対応を見ると、最近は少し変わってきたのかもしれませんが。

金融危機が起きている国に、個別の事情を考えず、一律に金融引き締めを求める。金融危機が発生したのは、経済水準をはるかに上回る身の程知らずな生活を、借金によって続けてきたからだ。
あらゆる国に、個別の事情や経済の成長段階を考慮せず、金融の自由化を求める。すべての国が金融を自由化し、グローバルに結合すれば、すべての国が経済成長する。
金融自由化が達成され、中央銀行がインフレ率を低く維持できれば、経済はずっと安定し成長を続ける。

これまでの経済学の主流派は、このようなかなり傲慢で独善的な理論で、政策を進めてきました。効率的市場仮説も、この流れにあるのかと思います。市場に任せると、すべてのことがうまくいく。

私は統制経済がうまくいくとは思いません。
しかし、ITバブル崩壊のショックから回復するため金融緩和し、そのためサブプライムローンのバブルが発生しました。サブプライムローンなどの不動産バブルは、世界的な金融危機に発展しました。この金融危機から回復するため、世界中の中央銀行が、歴史上例のない、超金融緩和を続けました。そして今、超金融緩和を少しだけ減速する(FRBのみが1回利上げする)動きだけで、世界経済は相当ふらついています。(運の悪いことに、ちょうど同じころに、20年以上続いた壮大な中国のバブルも崩れそうです。)

金融自由化とグローバル化で、莫大な投機的資金が過剰なリスクテイクをし、巨大なバブルをつくったあと崩壊し、金融危機が起こり、危機対応で金融緩和する。
過剰な資金 → バブル発生 → 崩壊 → 金融危機(社会不安) → 金融緩和 → 過剰な資金 → バブル発生 …
これまでの経済学者と当局の主流派は、5~10年で回転する、バブルの無限ループを回してきたわけです。それも、だんだん危機の規模が大きくなっているという。

本書はこのような認識で、これまでの金融政策と、これからあるべき金融システムを考察します。本書の特徴としては、フィナンシャル・タイムズ論説主幹という、これまでの主流派に属する人が、謙虚に反省しながら書いています。もともと資本主義を憎んでいた左派のような人が、資本主義は終わりだ、のように書いていないので、建設的です。

私が読みたいなと思いつつ、大著なので読んでいない、「国家は破綻する」「21世紀の資本」などのような、最近の押さえておくべき本は、すべて内容に反映されています。(参考文献になっています。)
著者の分析や考察、提案、主張がすべて正しいかはよくわかりませんが、穏健な内容と広い目配りの本です。本書1冊で、2000年あたりから現在までの金融の動向を考えることができるので、コストパフォーマンスに優れているともいえます。ただ、かなり難しめではあります。金融に興味はあるものの単なる素人である私には、難しかったです。(勉強になりますが、真面目な本なので眠くなりました。)金融に詳しい人は簡単に読め、価値のある本といえるでしょう。
(書評2015/08/27)

「SEO対策のためのWebライティング実践講座」 鈴木良治(著)

 

多くのユーザーを集めるWebコンテンツをつくるには?
感覚ではない、結果に基づいた原則によるSEO対策を教えます。実践できる効果的なWebライティングで、高い成果を上げましょう。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

効果的なWebコンテンツを、継続的に量産したい人。

 

要約

・紙の世界と違い、Webの世界はまだまだ研究が進んでいない。本書では、Webの世界に最適な、感覚に頼らない再現性の高い方法論を提示する。そして、提供する情報を持たなくても、高い成果を上げるWebコンテンツを常に作成できる実践的なやり方を伝える

 

SEOの基礎知識

・Webサイトには、ほとんどの人が検索エンジン経由で来る。検索結果の上位でなければクリックされない。SEO対策は、効果の高い集客の手段となる。

・検索エンジン(Google)はオリジナリティを評価する。短期間で最大の評価を受けられるよう、Webコンテンツを検索エンジンに伝えることが大切だ。

・Webサイトは、公開しても半年は評価が高まりにくい。広告を併用するか、不十分なうちから公開する、といった対策がある。

・SEO対策に正解はない。裏ワザではない、検索エンジンの本質に沿った対策が重要だ。

・これからの技術開発は、音声入力をめざしている。これは文脈を検索することであり、Webコンテンツは意味のある文章として認識されていくことになる。コンテンツの内容が重要になると予測される(キーワードの重要性は低下、外部リンクの効果も低下)。オリジナリティの高いコンテンツを作成することをめざす。

・Webサイトは、すべてのページがスタートページになる可能性がある(ユーザーは目的のページに直接来る)。そのため各ページで内容が完結し、ページ内でユーザーに目的の行動を終えてもらうように設計する

Webコンテンツを作成するときの2つの目標。
①ユーザーを集める。(SEO対策が重要)
②目的の行動をとらせる。(画像やレイアウトなど見た目が重要)
SEO対策と見た目は、トレードオフの面もある。

Webの世界では、(無料の)便利なツールを使うことで、個人でもオリジナリティのある効果の高いコンテンツを作成できる。

ほかの注意点。
問い合わせフォームを設置して、信頼感を与える。
どの機器やブラウザでもサイトが使えるように、チェックする。
ユーザーを流出させず、サイト内で行動を完結させる。
外部サービスを利用して、利便性を高める。
画像や動画など、状況に最適な表現を選ぶ。

 

Webコンテンツの作成

ライティング作業の流れ。
①ニーズのあるテーマを選び、情報収集し、企画する。
②企画通りに、文章作成
③文章を読みやすく魅力的な形に編集
校正して公開。

企画の6ステップ。
①キーワードの検索件数を見て、ニーズの確認。
キーワードプランナーを利用し、検索件数の多いキーワードをテーマ候補とする。

②テーマに将来性はあるか?
Googleトレンドを利用し、将来性を予測する。テーマに選ぶのは、検索件数が横ばいか右肩上がりのもの。ターゲットがはっきりしていれば、さらに良い。

③キーワードの選定。
ユーザーがこちらの望む行動をとりやすいキーワードを選ぶ。調べもの目的や、いち単語のみの目的不明なキーワードは避ける。ユーザーがアクションを起こしやすいキーワードは、エリア系(場所を指定)、悩み系(解決方法を探している)、購入系(買う意思がある)、緊急系(急ぐ問題がある)。これらは目的や動機がわかりやすい。キーワードの包含関係にも注意する。

④そのキーワードで競合に勝てるか?
Googleのページランクや、ファンキーライバルでチェックする。

⑤話題性があり人気のある内容のコンテンツにする。
Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトで、関連する質問を調べる。回答数が多ければ人気がある。質問と回答からターゲット像を確認し、コンテンツの方向性の参考にする。

⑥さまざまなところから情報収集。
Webの情報だけではオリジナリティは高くならないし、真偽不明な情報もある。リアルな情報源も必要だ。書店がおすすめ。書籍は内容が正確で、売り場や棚を見れば、人気や話題の傾向もわかる。フリーペーパーも使える。

文章作成の5ステップ。
①伝わりやすい文章構成にする。
まず結論を決める。つかみは、安心感重視なら常識的に、インパクト重視なら常識の反対から始める。

②目的行動を導くストーリータイプを選ぶ。
良さをアピールする、王道の「一般論から各論を展開」。
中小企業や新製品では、特徴に焦点を当て「各論から一般論へ」。
特徴のない商品では「条件を比較して列挙」。

③書き手(自分)の設定を固める。
ターゲットは誰か、自分の知識量やキャラクター、発信者としての立場、これらを考慮して表現を整える。

④表記を統一する。

⑤SEO対策と量の調整。
1コンテンツは、だいたい800~1800文字にまとめる。

編集の8ステップ。
①目的に合う文章量に調整する。
具体例や引用文を追加・削除することで、量を増減する。

②読みやすく伝わりやすい文章にする。
1段落は5行以内、1文は60字以内。重要なことは目立たせる、結論は最初に。

③SEO対策のキーワードを使用する。
適正な出現率で、キーワードを文章中に入れる。

④文章を完成させる。

⑤図表などの画像を追加。
キーワードを含む短文を、代替テキストにする。データ量は小さく。

⑥レイアウトを調整する。
視線の動きに対応させる。

⑦フォントを調整する。

⑧見出しを作成する。
見出しは短くして、強化したいキーワードを入れる。

校正の2ステップ。
①誤字、誤用の訂正。不適切表現の修正。など。

②Webページに反映した形での、SEO対策の確認。

 

キャッチコピーの作成

Webページで重要なのは、検索結果一覧と各ページのタイトル。これに効果的なキャッチコピーをつける。キャッチコピーには、集客およびSEO対策という役割がある。

キャッチコピー作成のポイント。
①ターゲットの立場を考え、ターゲットが行動するように、明るいプラス面から伝わるように書く。

②得になる情報をキャッチコピーに盛り込む。(お金儲けの情報、豆知識などの役立ち情報、限定情報、新着情報。)興味を持たせる表現にする。

③金銭的な情報は、割引、無料、付帯条件のお得さなどを強調する。

④役立ち情報は、ノウハウ、テクニック、術、ポイントなど、手っ取り早い裏技的な方法論であることを示す。

⑤限定情報は、数量、地域、期間などでお得感を出す。

⑥ターゲットが明確なら、新着情報で引きつける。

⑦興味を持たせるには、エピソード、質問、理由、方法などの形を使う。

⑧金銭以外で、人を動かしやすい情報。人間関係(承認欲求)、健康、美容、安心、喜び。

 

アクセス解析による改善

Webコンテンツは、PDCAサイクルを回して改善する。Googleアナリティクスを利用する。

・アクセス解析で確認するデータ。
表示順位、表示回数、CTR、平均セッション時間、直帰率、コンバージョン率。

・アクセスデータを見る。SEO対策を行い、キャッチコピーやコンテンツを改善する。A/Bテストなどで効果を比較する。

 

目的別Webライティング

訪問者がランディングページで目的の行動をとるように、ランディングページでアクションを完結させる

ランディングページの基本形。
①問題と解決策の提示。(キャッチコピーを使う、商品を紹介する。)
②アピールポイントを3つ。
③価格や条件を示す。
④今買う動機づけ。(付属品や割引などでお得感を出す。)

・そのほかのページ解説。
サポートページ、会社公式サイト、ビジネスブログ、ショップサイト、ECサイト、アフィリエイトサイト、など。

 

使える無料ツール

・コンテンツの企画や作成、ライティング作業に役立つ、無料ツールの紹介。

・SEO対策に使える、無料ツールの紹介。

 

書評

私は何も考えずに、やりたいようにブログを書いてきました。そのため、基本的なSEO対策が学べる本書を読むと、改善しようかなと思うところがありました。確かにこれは気をつけた方がよいとか、なるほどこれは配慮すべきだとか。前に読んだ「いちばんやさしい新しいSEOの教本」と合わせて、少しは良くなったのでしょうか。

しかし、SEO対策というのは原理的に答えがありません。本書でも指摘されていますが、グーグルにとって検索アルゴリズムは究極の秘密なので、公開されません。したがって、いくらSEO対策と称する行動をとっても、果たしてそれに効果があるのかは不明です。例えば、本書を批判するアマゾンのレビューがあります。SEOに詳しい人が書いているようで、キーワードの出現率は無意味だと言われると、そうなのか、とも思います。

せいぜい私としては、ブログの訪問者にとって見やすく、わかりやすく、読みやすく、興味深く、役立つコンテンツを量産する努力をするのみです。難しいですけど。
(書評2015/08/12)

「最強の「先読み」投資メソッド」 土居 雅紹(著)

 

中央銀行がつくりだした金融緩和バブルも、そろそろ危ない。著者によれば、2016~2017年にかけて破裂の恐れがあります。バブル崩壊に備えた投資法を教えます。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

世界経済に興味のある人。
投資をしたいが、暴落には巻き込まれたくない人。

 

要約と注目ポイント

バブルの基礎知識

金融市場では、10年に1回くらいバブルが発生して崩壊する。近年はグローバル化のため、世界のあらゆる市場で同時に暴落が起きる傾向がある。

ITバブルのようにブームが限定されていたり、バブルが株式市場にとどまれば、参加者は少ない。不動産でもバブルが発生すれば、一般人の多くが巻き込まれ、社会的影響は大きい。

アベノミクスは、世界中で行われている量的緩和バブルの一部である。バフェット指標で見れば米国株はバブルの領域で、日本株も高い水準にある。

サブプライムバブルの株価のピークは2007年で、すでに8年経っている。中央銀行の量的緩和で生じた金余りバブルも、そろそろ破裂の可能性がある。

2009年からアメリカの株式市場は上がり続けており、そろそろ危険と考えています。毎年1~2回、世界的に株価が急落するときがありますが、まだ相場は崩れていません。

バブルの発生条件

①通貨が過剰に供給される。金融緩和でカネ余りとなる。

②前回のバブル崩壊から時間が経過した。バブルの痛い思いを忘れた。

③投機を正当化するもっともらしい理由がある。楽観的な夢を抱く。

バブル崩壊の原因となりそうな出来事

大本命はアメリカの利上げ。過去の例では、最初の利上げをして6カ月から2~3年で株価が下落に転じている。

その他
①中国不動産バブルの崩壊。

②日本の消費税再増税。

③中東情勢。

④原油安。

などなど‥‥

総合的に考えると、2016~2017年頃が危ない。

バブル発生の条件は存在し、アメリカの利上げも近いのですが、崩れそうで崩れません。

バブルの天井で避けるべき行動

①多額のローンでマイホームを買う。

②海外旅行。骨董品や美術品の購入。(不景気のときは安い。)

③節税目的の不動産投資。

などなど‥‥

バブルの天井でとるべき行動

①半年分の生活費と、投資用資金を貯める。

②割高な保険や金融商品を整理する。

③暴落時の投資候補を調べ、リストにする。購入予定の不動産や高額商品を下調べする。今は買わない。

などなど‥‥

バブル進行中の注意点

①プロ、専門家、専門機関、メディア、政府、すべての人が間違える。多数派の意見を鵜呑みにしない。混雑した投資対象には投資しない。

②株価の目標価格がどんどん上方修正される。前年のパフォーマンスがものすごく良い。(自分も含め)多くの人が儲け自慢をする。これらの現象があれば、危険な兆候。

などなど‥‥

長年成功している投資家は、バブル発生と崩壊のサイクルを、適切な行動で乗り切っています。

 

バブルへの対処を含んだ10の投資法

以下の10の投資戦略から、自分に合うものを3つ併用する。併用することで、どのような経済環境になってもパフォーマンスが安定する。

リターンを狙う積極的な5つの投資法

①日本株と米国株(のETF)を、10月末に買い、4月末に売る。

②バフェット流に、暴落前に現金ポジションを多く持ち、暴落時に優良株や株価指数ETFを大量に買う。しかし、大底を見極めるのはとても難しい。S&P500が直近高値から30%を超えて下落し、S&P500のVIX指数の月中高値が45超となったあと、落ち着いて35まで下がったときを買いタイミングとする。

③トレンドに乗る、順張り投資。

などなど‥‥

守りを重視した5つの投資法

①10月末買い、4月末売りの手法に、トレーリングストップを加える。

②今後の生産年齢人口の伸び、若年層識字率、識字率の伸びしろを参考に、将来性のある国に長期投資する。フィリピン、メキシコ、アメリカ、インドネシア、インド、エジプト、ナイジェリア、バングラデシュなど。

③ゴールドへの投資。金ETF、金ミニ先物、金レバレッジトラッカーを買う。

などなど‥‥

10の投資法は面白いです。自分でもできそうな方法もあります。

 

そのほかの解説

NISA利用の注意点。

退職金を運用するときの注意点。

アベノミクス後の展望。

 

書評

前半では、世界経済の現状と、過去のバブル相場の特徴を解説しています。それをふまえて、バブル相場の暴落に巻き込まれないためにどうするか考察します。

後半では、繰り返されるバブル相場を考えたうえで、10の投資戦略を紹介します。さらに、NISA、退職金の運用、アベノミクスの今後といった、個別事項も取り上げます。

前半は、具体的なデータを揃え、グラフも豊富で、読みやすい解説となっています。内容に大きな驚きはないですが、簡潔に今の金融市場を復習できます。

リーマンショックを受け、各国の中央銀行が超金融緩和を行いました。危機はひとまず去りましたが、リスク資産の価格が相当割高になってきたので、そろそろ危ないです。アメリカの利上げが一番重要です。

後半の10の投資法ですが、詳細は本書をお読みください。10あれば、1つや2つは気に入る投資法もあるかと思います。

投資戦略が一本足打法だと、大失敗もあります。考え方の異なる投資戦略をいくつか用意し、運用を分散しておけば、パフォーマンスの安定化につながると思われます。自分に合う投資法があれば、取り入れてみるのも一案でしょう。

NISAについては、損益が相殺できないという最大の欠点をどう克服するか考えます。退職金の運用は、一言でまとめれば、浮かれていきなり全額を投資するなということです。

最後のアベノミクス後の展望ですが、これは私も一生懸命考えています。私の考えは、当局は金融抑圧政策を取る(緩いインフレを起こしながら長期金利を低く抑える)というものです。

安倍政権は、もう政府債務を返済する気がないと感じます。ゆっくりゆっくり、政府債務を預金者(国民)の資産と相殺していくのでしょう。

本書ではこれに関連し、デット・ジュビリー(Debt Jubilee)が説明されています。私は初めてこの言葉を聞きました。

中央銀行が、発行した通貨で国債を買い、その国債をバランスシート上の資産とします。その資産を通貨発行分の負債と相殺すると、債務が消えるというものです。その方法の変形として、中央銀行が国債を永久に保有するという手もあります。

そうすれば日本のGDP比243%、1000兆円の公的債務が消滅するのです。しかし、そんなことが本当に可能なのですか?

私の頭では、よくは理解できませんでした。このデット・ジュビリーの結末を、著者ははっきりとは書いていません。ですが、どうも円安(経常赤字の定着)で持続不可能になると示唆しているようです。

私も、通貨安が止まらなくなったときが金融抑圧政策の限界かなと、ぼんやり想像していました。財政ファイナンスと通貨高への介入は無限にできますが、通貨安への介入は限度があります。円安が止められなくなり、インフレが制御できなくなれば、アベノミクスの終わりかと考えさせられました。
(書評2015/07/26)

「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」 足立武志(著)

 

株式投資に必須の、チャート分析を解説した本です。

「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」はファンダメンタルの解説、本書はテクニカルの解説で、2冊で1組という位置付けです。

 

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

株式投資をする人。特にチャートの勉強をしたい人。

 

要約と注目ポイント

個人投資家のファンダメンタル分析は、どうしてもプロの投資家に劣る。それを補うのが、株価チャートの分析だ。

業績が良いと考えても、株価が下がるようなら市場の動きに従うべき。自分の予想が間違っていることを教えてくれるのが、株価チャートである。チャートには、プロの投資家の行動が表れる。

 

能力的にプロに負ける個人投資家を助けてくれるのが、株価チャートです。

 

株価チャートの基礎知識

ローソク足、移動平均線、トレンド、売買高など。

 

売買の基本

トレンドに従う。移動平均線が上向きで、株価がその上にあるのが上昇トレンド。移動平均線が下向きで、株価がその下にあるのが下降トレンド。

上昇トレンド:新規買い、持ち株は保有継続。
下降トレンド:持ち株は売り、新規買いはしない。

 

トレンドに乗ります。トレンドには逆らいません。

 

基本的な買いタイミング

移動平均線からの乖離が小さいうちに買うのが理想。損切りの損失を小さくできる。

①上昇トレンドへの転換直後。

②押し目のあとで、反発したところ。

③直近高値を超えたとき。

ほかの買いタイミングについて。

①底値圏での買い。(底値や直近安値などを下回れば損切り。)

②急落時のリバウンド狙い。(底打ちしたと思われるチャートの形。日経平均株価の25日移動平均線からのマイナス乖離が10%超、個別銘柄の25日移動平均線からのマイナス乖離が30%超、25日騰落レシオが60~70%前後など。)

③過去の節目超え。

 

適切なタイミングで買うことが、損失を小さく抑えます。儲けることより、まず大損害を防ぐことを考えます。

 

基本的な売りタイミング

移動平均線を割り、下降トレンドに転換したら、すみやかに売る。再び上昇トレンドに戻れば、買い直す。

ほかの売りタイミングについて。

①直近安値割れ。

②急騰時の売り。

③吹き値への対処。

 

損切りの方法。

①原則は、25日移動平均線割れ。

②直近安値割れ。

③5日移動平均線割れ。

④買値からの下落率(10%など)で売る。

 

含み益があるときの売りタイミングで、パフォーマンスに大きな差が出ます。また、損切りは早くするのが定石と言えます。

 

実践的な株式売買の方法

空売りの考え方と方法。

トレンドを見極める考え方。

トレンド転換直後の、急騰や急落に備えた逆指値注文の方法。

レンジ相場への対応法。

大相場への対応法。

ポジションの管理法。

株価チャートの分析に加え、ファンダメンタル分析、売買高と信用取引残高の確認を行うと、成績が向上する。

 

その他の解説事項。

決算発表。

増資。

突発的な暴落。

バブル。

IPO銘柄。

大天井をつけた株。

 

売買の方法や個別の事項の解説では、著者の投資経験を十分に学ぶことができます。

 

個別銘柄のチャートを使った実戦練習。

 

具体的な銘柄で、数多くのチャートを使って解説します。

 

書評

以前に読んだ「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」がとても勉強になったので、姉妹編の本書も読みました。

実は「ファンダメンタル投資の教科書」の方でも、必要最小限のチャートの解説はされていました。トレンドについていくため、移動平均線の説明などがありました。

本書は、その部分が詳しく拡大されたと言えます。

著者の手法は、トレンドに乗る順張りです。規律に沿った損切りで大きな損失を避けながら、利益は大きく伸ばすことを目標とします。著者が使用するのは、専ら25日移動平均線です。

このあたりは、各個人の好みや経験にも左右されるかと思います。買いシグナルや売りシグナル、トレンドの判定で使い慣れた指標があれば、それを使っても良いのかもしれません。

投資の本でよく書かれていますが、大切なのは利益を伸ばし、損を小さくすることです。本書では移動平均線というとてもシンプルな指標で、これを実践します。

本書を参考に規律正しくトレードすれば、大損を回避し、勝ちに近づけそうな気がします。基本的なチャートの形なども説明されていて、勉強になりました。

いろいろな銘柄のチャートを使い、売買のタイミングを論じているので、実際のトレードで応用できると思います。

個人的に残念なのは、このような株式投資の実践本を、もっと昔に読んでおくべきだったことです。

私は、アベノミクス相場のごく一部分にしか乗れませんでした。分散投資は少し実行していたので、円安と米国株高に関しては恩恵を受けられたのですが。

しかし、勉強も無駄ではないはずです。投資家の真価が問われるのは、下落相場です。アベノミクス相場で大儲けはできませんでしたが、バブル崩壊には巻き込まれないようきっちり逃げたいと思います。

それほど遠くない時期に、米国株式市場の下落や、アベノミクスの終わりが考えられます。そのときは失敗しないように、利益確定と早い損切りで逃げていきたいと思います。
(書評2015/07/24)

「トレードシステムはどう作ればよいのか 2」 ジョージ・プルート(著)

 

さまざまなトレードシステムを、評価し分析します。「トレードシステムはどう作ればよいのか 1」の後編です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

システムトレードを行う人。

 

要約と注目ポイント

本書は、先物や株式市場のアルゴリズム取引についての評価と分析を掲載する、「フューチャーズ・トゥルース誌」の記事をまとめたものである。2006年から2012年の記事となる。

さまざまなシステムの評価と分析

・ケリーの公式について。

・適応型システムについて。

・オープンレンジブレイクアウトの評価。

・有限状態マシンの解説。

・オシレーター系インディケーターの検討。

・S&P500のデイトレードの評価。

・エクセルのVBAによるシステムの検証とトレード。

・商品の買いのみのトレードを評価する。

・電子市場におけるトレードの注意点。

・システムテスター「ガジット」で、日中データを検証する。

・「アルゴリズムトレーディング入門」、「TradeStation Made Easy」、「Modeling Trading System Performance」、「Alpha Trading」の書評。

・タートルシステムの再考。

・固定比率ポジションサイジングの検討。

・ポートフォリオの構築。

・過去に作成したシステムの再考。

・トレードステーションのカスタマイズ。

・ラッセルデイトレードシステムでの改善。

・現在でもトレンドフォローは有効か。

・パターン認識について。

いろいろなアイデアや手法に基づくシステムを、徹底的に評価し分析します。ものすごいページ数なので、システムトレードを行う人には、参考になるシステムがあるかもしれません。

 

書評

本書は「トレードシステムはどう作ればよいのか 1」の後編です。前編と同様、はじめに申し上げますが、私はシステムトレードを行わないので、よくわかりません。おすすめは★5個の普通にしてあります。

この本のシステムトレードは、価格データのみに基づくためか、経済動向の記述は一切ありません。前編と後編で13年ほどカバーし、ITバブルにもサブプライムローン危機にもかかった時期ですが、全く無視です。ただひたすらボラティリティが高いか低いか、値動きがどうかを検討しています。

完全に価格データに集中し、経済を無視している姿は、清々しいほどです。ファンダメンタル的要素を加えたら、もう少しパフォーマンスが向上しそうな気もするのですが、余計なお世話でしょうか。
(書評2015/07/22)

「トレードシステムはどう作ればよいのか 1」 ジョージ・プルート(著)

 

世間に出回っている、さまざまな売買システムを検証します。売買システム分析のフューチャーズ・トゥルース誌の連載を、本にまとめています。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

システムトレードを行う人。

 

要約と注目ポイント

本書は、先物や株式市場のアルゴリズム取引についての評価と分析を掲載する、「フューチャーズ・トゥルース誌」の記事をまとめたものである。1999年から2005年の記事となる。

さまざまなシステムの評価と分析

・動的なブレイクアウトシステムの評価。

・各デイトレードシステムの評価。

・損切り手法の比較。

・先物市場のシステムを株式市場に移行した結果。

・ミニ先物でのシステムトレードを評価。

・S&P500とナスダック100。

・ボラティリティが高い市場での比較。(2000年のITバブル末期の時期と思われる。)

・ナンピンを続けるスケールトレードの評価。

・静的なマネーマネジメントストップと、動的なプロテクティブストップの比較。

・移動平均の検討。

・パターン認識の検討。

・大きな利益を目標とする長期システムにおいて、適切な利食いとは。

・通貨のオーバーナイトトレードでの、翌朝の寄り付きについての検討。

・勝てるトレードシステムの検討。

・賭けのサイズの検討。

・複数のシステムを使うとどうなるか。

・ゾーン分析の評価。

・トレンドフォローシステムについて。トレンドフォローシステムには、トレーリングストップを併用する。トレンドフォローシステムの改善。

・オープンレンジブレイクアウトについて。

・ボラティリティが低い市場での評価。

・資産曲線をトレードに応用することの是非。

・モンテカルロ法の適用。

・ギャップはトレードに利用できるか。

・S&P500のデイトレードで有効な方法。

・商品ポートフォリオの分散化。

・タートル・トレーディング・アプローチの評価。

いろいろなアイデアや手法に基づくシステムを、徹底的に評価し分析します。ものすごいページ数なので、システムトレードを行う人には、参考になるシステムがあるかもしれません。

 

書評

はじめに申し上げますが、本書の評価はよくわかりません。私はシステムトレードを行わないので、おすすめを★5個の普通にしてあります。システムトレードを実行される方には、参考になる本ではないでしょうか。

トレードを完全にシステマティックに実行して、その成果について評価と分析を行う本です。システムトレードでも、多少はファンダメンタル的な指標を入れる方法もあると思うのですが、本書はすべて価格データに基づいた手法のようです。

しかし、個人がデータを解析しトレード手法を開発したとして、プロやマーケットに勝てるのでしょうか。データ解析、評価、分析の能力。決められた通りのトレードを繰り返すにあたっての資金量。力勝負になると、個人がプロ組織に正面から勝つのは難しそうにも思えるのですが。実際はどうなのでしょう。

勝てるトレード方法を開発しても、勝ち続けられる期間はそう長くないようです。勝てなくなって、別のシステムに変更したり、新しい方法をまた開発しなければならないようです。厳しい話です。
(書評2015/07/22)

「金(ゴールド)はこれから2倍になる」 林則行(著)

 

株式市場の暴落は近い。暴落から身を守るため、そして儲けるために金(ゴールド)を買おうという本です。

 

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

金投資に興味がある人。株式市場の暴落が気になる人。

 

要約と注目ポイント

5年後に金(ゴールド)価格は、2倍以上になると予想する。金を買おう。

 

金価格が上がる理由

超金融緩和の最後には、株価暴落と経済停滞、通貨価値の毀損が起こる。

マネーの総量の方が、ゴールドの総量より伸びている。

金価格は歴史的な上昇期にある。

金の生産コストは現在の金価格より高い。金価格が低くなれば生産量は減少する。

新興国の国民は金が好き。新興国の中央銀行は、金の保有量を増やしている。

 

世界はデフレ傾向ですが、中央銀行がマネーをばら撒いているのは事実です。そして、アメリカは金融緩和を終わらせようとしています。

 

投資の原則

投資の原則は、誰にも止められない時代の大きな流れに乗ることである。

現在の大きな流れは、政府の借金が増え続けること。政府は、借金をインフレで解決しようとしている。歴史では、インフレ政策は繰り返されてきた。

 

超金融緩和の後で起きること

株価は下落し、米ドルの信用が低下して、金利が上昇する。金利の上昇幅は、経済の混乱や通貨の信用低下の程度による。金利が上がるほど、金価格も上がる。

世界的に需要が不足している。供給過剰を政府が引き受けるので、政府の債務は増える。政府債務の増大により、インフレとなる。

米国の不動産バブルの清算は終わっていない。不良債権の処理がまだ残っている。対処として量的緩和を続け、マネーが増えた。経済成長を支える主力産業がないのに、マネーの力だけで株価が上がっている。

金融緩和が終われば、株価は維持できない。実物経済より、金融資産の規模が膨張しているので、下がるときは暴落となる。

 

2009年から上げ続けたアメリカの株式市場に、利上げが迫っています。

 

金相場の情報収集

金相場に関連する情報(サイト)の解説。鉱山会社の売りポジション比率に注目する。

株式市場がピークを過ぎると、金価格は上がりやすくなる。ピークを見極める。
相場を代表する銘柄や銀行株が、市場指数に先行して下がり始める。シティバンク、バンカメ、JPモルガン・チェース、ウニクレデイト、RBS、ロイズ、三菱UFJ、三井住友、みずほ等の株価を監視する。

 

株式市場の動揺は、必ず金相場にも影響します。

 

金に投資する

情報を検討して、金を買う時期を戦略的に大まかに決める。買いの時期に、時間をずらして買っていく。相場は2段階で上昇すると考え、高値の目安をつける。

実際に金を買う手段の解説。
地金、金貨、純金積み立て、ETF、先物取引のそれぞれの長所・短所について。税金について。

そのほかの商品の解説。
銀、プラチナ、金鉱株、南アフリカ通貨ランド、原油、食糧。

 

金へ投資する方法を比較し、解説しています。金以外のコモディティについても、適切な投資か検討します。

 

書評

以前に「伝説のファンドマネージャーが教える株の公式」「伝説のファンドマネージャーが実践する株の絶対法則」といった林氏の著作を読み、投資法に影響を受けました。成長株投資に近い方法で、読んでから四半期の業績推移をチェックするようになりました。

今回は、ゴールドを買えという話です。なぜ金を買うのかということで、はじめに現在の世界経済の状況を解説しています。金融緩和による人為的な株高なので、暴落は不可避と指摘しています。

2009年3月からの米国株の上がり方を見れば、それなりの規模の暴落がそろそろ来るだろうと、私も思います。それでは株式市場の暴落にどう対処するか。著者の解決策はゴールドです。

この本を読んだ直後は、すごくゴールドのETFを買いたくなりました。現在の金価格は1130ドルまで下がってきたので、そろそろ買い下がっていってもいいような気になります。

ただ私は、全面的に金に賭けるのも危険かなと思います。

大きな資産を持っているなら、5%とか10%を金にするのもありだとは思います。しかしバフェットが金を買わないように、金自体は利益を生みません。

あくまでも値上がり益を狙うか、インフレヘッジという役割に限定されるでしょう。

それにしても、シティバンクやバンカメがこれほどひどいとは思いませんでした。銀行株は興味がないので見ていなかったのですが、リーマンショックからの回復がとても鈍いです。

それから、イタリア株やヨーロッパの銀行株もまるで回復していません。ギリシャの問題もあり、やはり南欧はダメなのかと思いました。これらの株価に注視せよという指摘は、勉強になりました。

今後の日本は、物価上昇率より金利が低い、金融抑圧の環境になりそうです。ですので、資産を守るという観点で、ゴールドとかビットコインのようなものを買うのは有効と感じます。

売買で値上がり幅を取り、投機的に利益が出せるかは、私には自信がありません。
(書評2015/07/19)

「株式売買スクール」 ギル・モラレス/クリス・キャッチャー(著)

 

7年間の株式投資で18000%を超える収益!
成長株投資で有名なウィリアム・オニールのもとで、著者たちはポートフォリオマネジャーを勤めました。本書では、超絶パフォーマンスを生んだ株式の投資法を解説します。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

成長株投資で大成功したい人。

 

要約

株式投資で成功するためには、ジェシー・リバモア、リチャード・ワイコフ、ウィリアム・オニールといった偉大な先人から学ぶ必要がある。
投資の前に、よく調査し準備せよ。
株は安値ではなく高値で買え。
損切りは素早く、利食いはゆっくり。
利益を出す銘柄に資金を集中させよ。
機関投資家の買う株を買え。
チャートパターンを見極める。
正しい買いのポイント、ピボットポイントで買え。
感情、個人的な見解、ニュース、耳寄り情報に動じない。
トレードしすぎない。辛抱強く待て。

クリス・キャッチャーが7年間で18000%の利益を得た方法。
四半期の売上や利益が、加速的に増加している銘柄を選ぶ。
揉み合いのベースからブレイクアウトしたところで、集中的に買う。
10日移動平均線を下回って、下落したところで売る。

ギル・モラレスが11000%の利益を出した方法。
四半期の売上や利益が、加速的に増加している銘柄を選ぶ。
揉み合いのベースからブレイクアウトしたところ(取っ手付きカップの形)で、集中的に買う。
50日移動平均線が強い支持線となることを確認し、買い増す。
マーケットが調整中なのにブレイクアウトしそうな銘柄は、マーケットが上昇トレンドになると大化け株になりやすい。
ピボットポイントからブレイクアウトして、3週間以内に20%上昇したならば、損切りにならない限り8週間は保有する。
チャートパターンが天井を示し、大商いを伴って、窓を開けて下落したところで売る。
分散投資せず、大化け株に集中投資する。

失敗から学ぶ。
儲かってくると、思い上がってすべてがわかったような気になるが、そのようなエゴを抑えることが大切だ。自分ではなくマーケットが正しいので、常に観察してマーケットの示すサインを読み取れ。
物質的な欲求にとらわれず、マーケットの波に乗り続けることだけに専念する。
先入観で銘柄にほれ込まず、自分の投資法(銘柄選択の条件やトレード手法)を守る。
週足チャートで、最低6週間の適切なベースが形成されていなければ、買わない。流動性の低い銘柄を、大量に買わない。
景気や相場サイクルに関わらず、そのときの経済状態で最先端の企業が、大化け株の核となる。新しい経済や業界の重要な地位にある企業を、機関投資家は必ず買う。大化け株には、1日の平均出来高が大きいという特徴がある。
まず自分の銘柄の観察に集中する。マーケットの指標を気にするのはそのあと。
空売りでは、絶好の機会を待つ忍耐力が重要だ。

・ベースからブレイクアウトして高値を更新する銘柄を、さらに早い段階で発見する方法、ポケットピボットについて。

適切な売りシグナルについて。
50日移動平均線を下回ったら売る。買ってから7週間、50日移動平均線の上で持ちこたえたら、それ以降は10日移動平均線を下回ったら半分売る。50日移動平均線を下回ったら、残りの半分を売って手仕舞う。

空売りの基本ルール。
マーケットが下降トレンドであり、弱気相場に入った早めの段階で行う。
直前の強気相場で大きく上昇した大型の主導株で、天井を付けた銘柄を空売りする。
空売りは、天井をつけてから8~12週後に行う。
出来高が多く、流動性のある銘柄を空売りする。
損切りは3~5%に設定する。
利益目標は15~30%が適当。20日移動平均線をトレイリングストップに使ってもよい。
空売りでは、絶好の機会をひたすら待つ。チャートパターンの完成と、急激な株価の下落、大商いを伴うブレイクダウンである。

・マーケットのタイミングを計る、マーケットダイレクションモデルについて。

オニールの十戒。
自己を見失ってはならない。
恐怖を克服する。
敵の中傷から自身の欠陥を学ぶ。
失敗から常に学ぶ。
保有銘柄について話してはならない。
天井で調子に乗らない。
まず週足チャート、次に日足チャートを見る。
まず大化け株を見つけ、次に大量に買う方法を見つける。
付き合う人間は慎重に選ぶ。
常に異常なほどの集中力を維持する。

・オニールと一緒にトレードした経験談。過去に売買した銘柄に関する、チャート分析と解説。

 

書評

オニールの成長株投資に倣って利益をあげた、トレーダーの著作です。著者たちはオニールに学び、オニールの売買ルールを微調整して大きな利益をあげたそうです。

とにかく長い本なので、はじめに著者たちの売買ルールをすべて説明してほしいと思いました。この銘柄をチャートのこの位置で買い、大成功した。こちらの銘柄でも大成功して、利益が500%だった。この売買では大失敗した。などとトレードの経緯が、ずらずら長く書かれています。

はじめに売買ルールが書かれておらず、経過とともにぽつぽつとルールが出てくるので、どういう戦略で取引を始めたのかが理解しにくいです。オニールの成長株投資に興味があるなら、まず「オニールの成長株発掘法 第4版」を読んだ方が良いです。こちらは売買ルールを簡潔に明示しています。そこから、自分に合うように微調整するのが良いでしょう。

読んで納得する教訓もあるのですが、本のページ数が多すぎて冗長です。まとまりに欠ける印象で、「オニールの成長株発掘法 第4版」を直接読んだ方が効率的だと思います。
(書評2015/07/17)