株式投資に必須の、チャート分析を解説した本です。
「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」はファンダメンタルの解説、本書はテクニカルの解説で、2冊で1組という位置付けです。
おすすめ
★★★★★★☆☆☆☆
対象読者層
株式投資をする人。特にチャートの勉強をしたい人。
要約と注目ポイント
個人投資家のファンダメンタル分析は、どうしてもプロの投資家に劣る。それを補うのが、株価チャートの分析だ。
業績が良いと考えても、株価が下がるようなら市場の動きに従うべき。自分の予想が間違っていることを教えてくれるのが、株価チャートである。チャートには、プロの投資家の行動が表れる。
株価チャートの基礎知識
ローソク足、移動平均線、トレンド、売買高など。
売買の基本
トレンドに従う。移動平均線が上向きで、株価がその上にあるのが上昇トレンド。移動平均線が下向きで、株価がその下にあるのが下降トレンド。
上昇トレンド:新規買い、持ち株は保有継続。
下降トレンド:持ち株は売り、新規買いはしない。
基本的な買いタイミング
移動平均線からの乖離が小さいうちに買うのが理想。損切りの損失を小さくできる。
①上昇トレンドへの転換直後。
②押し目のあとで、反発したところ。
③直近高値を超えたとき。
ほかの買いタイミングについて。
①底値圏での買い。(底値や直近安値などを下回れば損切り。)
②急落時のリバウンド狙い。(底打ちしたと思われるチャートの形。日経平均株価の25日移動平均線からのマイナス乖離が10%超、個別銘柄の25日移動平均線からのマイナス乖離が30%超、25日騰落レシオが60~70%前後など。)
③過去の節目超え。
基本的な売りタイミング
移動平均線を割り、下降トレンドに転換したら、すみやかに売る。再び上昇トレンドに戻れば、買い直す。
ほかの売りタイミングについて。
①直近安値割れ。
②急騰時の売り。
③吹き値への対処。
損切りの方法。
①原則は、25日移動平均線割れ。
②直近安値割れ。
③5日移動平均線割れ。
④買値からの下落率(10%など)で売る。
実践的な株式売買の方法
空売りの考え方と方法。
トレンドを見極める考え方。
トレンド転換直後の、急騰や急落に備えた逆指値注文の方法。
レンジ相場への対応法。
大相場への対応法。
ポジションの管理法。
株価チャートの分析に加え、ファンダメンタル分析、売買高と信用取引残高の確認を行うと、成績が向上する。
その他の解説事項。
決算発表。
増資。
突発的な暴落。
バブル。
IPO銘柄。
大天井をつけた株。
個別銘柄のチャートを使った実戦練習。
書評
以前に読んだ「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」がとても勉強になったので、姉妹編の本書も読みました。
実は「ファンダメンタル投資の教科書」の方でも、必要最小限のチャートの解説はされていました。トレンドについていくため、移動平均線の説明などがありました。
本書は、その部分が詳しく拡大されたと言えます。
著者の手法は、トレンドに乗る順張りです。規律に沿った損切りで大きな損失を避けながら、利益は大きく伸ばすことを目標とします。著者が使用するのは、専ら25日移動平均線です。
このあたりは、各個人の好みや経験にも左右されるかと思います。買いシグナルや売りシグナル、トレンドの判定で使い慣れた指標があれば、それを使っても良いのかもしれません。
投資の本でよく書かれていますが、大切なのは利益を伸ばし、損を小さくすることです。本書では移動平均線というとてもシンプルな指標で、これを実践します。
本書を参考に規律正しくトレードすれば、大損を回避し、勝ちに近づけそうな気がします。基本的なチャートの形なども説明されていて、勉強になりました。
いろいろな銘柄のチャートを使い、売買のタイミングを論じているので、実際のトレードで応用できると思います。
個人的に残念なのは、このような株式投資の実践本を、もっと昔に読んでおくべきだったことです。
私は、アベノミクス相場のごく一部分にしか乗れませんでした。分散投資は少し実行していたので、円安と米国株高に関しては恩恵を受けられたのですが。
しかし、勉強も無駄ではないはずです。投資家の真価が問われるのは、下落相場です。アベノミクス相場で大儲けはできませんでしたが、バブル崩壊には巻き込まれないようきっちり逃げたいと思います。
それほど遠くない時期に、米国株式市場の下落や、アベノミクスの終わりが考えられます。そのときは失敗しないように、利益確定と早い損切りで逃げていきたいと思います。
(書評2015/07/24)