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「投資家のための金融マーケット予測ハンドブック 第6版」 三井住友信託銀行マーケット事業(著)

 

金融市場のさまざまな事柄を解説する、教科書的な本です。現役の銀行員が執筆しており、投資にまつわる広い範囲を勉強できるテキストです。

 

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

勉強熱心な個人投資家、金融関係の仕事を始めた社会人、金融業界へ就職希望の学生など。

 

要約と注目ポイント

この「投資家のための金融マーケット予測ハンドブック」という本は、日本人が金融市場を勉強するときに、割と定番なテキストのひとつになっていそうです。私は金融業界の人間ではないので、あくまで想像ですが。

20年以上もこのシリーズは刊行され続けているので、こういう本を必要とする人が少なくないのでしょう。私は第5版も読みまして、勉強させてもらいました。読み通せば、確かに読了した分だけ賢くなります。

専門家には常識でやさしい本ですが、勉強したい新社会人や学生、個人投資家には良い本だと思われます。

第5版の書評記事はこちら ⇒ 「投資家のための金融マーケット予測ハンドブック 第5版」 三井住友信託銀行マーケット事業(著)

 

解説されている事柄について

本書は、金融市場や投資について、すごく広い範囲をとにかく堅く説明していきます。そのため、要約は書けません。読み通して自習する本です。

どういう内容について解説されているかをまとめました。

 

金利や為替の予測をするには。

  • 金利の概要。
  • 予測をするための理論(理屈)。

 

日本経済について。

  • 過去の景気循環。
  • 日本の経済統計や指標。
  • 日本の金融政策と金融統計。
  • 日本の金融市場。

 

米国経済について。

  • 過去の景気循環。
  • 米国の経済統計や指標。
  • 米国の財政収支。
  • 米国の金融政策。
  • 米国の金融市場。

 

ユーロ圏経済について。

  • 統一通貨ユーロや欧州債務危機の解説。
  • ユーロ圏の経済指標。
  • ユーロ圏の金融政策。

 

英国経済について。

  • 英国経済の概要。
  • 英国の金融政策。

 

オセアニア経済について。

  • オーストラリアの経済と金融市場の概要。
  • ニュージーランドの経済と金融市場の概要。

 

新興国経済について。

  • 中国の経済と金融市場の概要。
  • インド、ロシア、ブラジル、アセアン(インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナム)各国の経済の概要。

 

商品市場(コモディティ)について。

  • 商品市場の概要。
  • 原油について。
  • 金について。

 

為替市場について。

  • 為替市場の概要。
  • 為替需給について。
  • 為替レートの決定理論について。
  • 国際通貨制度の歴史と概要。
  • 各国の為替政策について。

 

テクニカル分析について。

  • テクニカル分析の概要。
  • テクニカル分析の方法論。

 

以上のような内容を、地味に解説していきます。本書では、2015年後半までの市場動向が反映されているので、割と直近までの金融市場に関して、基礎知識を勉強できます。

 

書評

私はこのシリーズの第5版も読みましたが、難易度や、ターゲットとなる読者層についての感想は、第5版と同じでした。

勉強熱心な個人投資家や、これから金融業界で働いていこうというレベルの学生や社会人にちょうどいい本です。現在の金融市場と関わるにあたり、広くざっと勉強したい人に適しているでしょう。

投資や経済に興味のない、日常生活が忙しい普通の人が読むには内容が多く、濃すぎます。500ページもありますし。普通の人が金融リテラシーを身につけたいときは、もっと易しめの入門書が良いと思われます。

本書はとにかく堅くて真面目なのですが、最後のテクニカル分析の章だけは、山師的要素も盛り込まれています。このへんも楽しめる人は、楽しく読めるでしょう。

 

個人的な感想としては、第5版を読んだときより、知識が増えていることが実感できました。解説もすんなり頭に入りやすく、既に知っている事柄も増えていたので、前作を読んでから金融知識は蓄積されたんだなと思いました。

当ブログの書評にもあるように、この3~4年で経済や投資などの本を、100冊くらいは読んでいます。確かに知っていることは増えました。

ただ残念なのは、別に投資で儲かるようにはなっていないことですね。特に、自分が勝手に相場見通しを立て、投機的なトレードをした収支については、まったく儲かっていません。

2009年以降は基本的にずっと上げ相場だったので、何も考えずに保有している株式指数連動のETFに、自己売買の成績は完敗です。
(書評2016/11/24)

アマゾンでのご購入投資家のための金融マーケット予測ハンドブック 第6版
楽天でのご購入投資家のための金融マーケット予測ハンドブック 第6版

「最強の「先読み」投資メソッド」 土居 雅紹(著)

 

中央銀行がつくりだした金融緩和バブルも、そろそろ危ない。著者によれば、2016~2017年にかけて破裂の恐れがあります。バブル崩壊に備えた投資法を教えます。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

世界経済に興味のある人。
投資をしたいが、暴落には巻き込まれたくない人。

 

要約と注目ポイント

バブルの基礎知識

金融市場では、10年に1回くらいバブルが発生して崩壊する。近年はグローバル化のため、世界のあらゆる市場で同時に暴落が起きる傾向がある。

ITバブルのようにブームが限定されていたり、バブルが株式市場にとどまれば、参加者は少ない。不動産でもバブルが発生すれば、一般人の多くが巻き込まれ、社会的影響は大きい。

アベノミクスは、世界中で行われている量的緩和バブルの一部である。バフェット指標で見れば米国株はバブルの領域で、日本株も高い水準にある。

サブプライムバブルの株価のピークは2007年で、すでに8年経っている。中央銀行の量的緩和で生じた金余りバブルも、そろそろ破裂の可能性がある。

2009年からアメリカの株式市場は上がり続けており、そろそろ危険と考えています。毎年1~2回、世界的に株価が急落するときがありますが、まだ相場は崩れていません。

バブルの発生条件

①通貨が過剰に供給される。金融緩和でカネ余りとなる。

②前回のバブル崩壊から時間が経過した。バブルの痛い思いを忘れた。

③投機を正当化するもっともらしい理由がある。楽観的な夢を抱く。

バブル崩壊の原因となりそうな出来事

大本命はアメリカの利上げ。過去の例では、最初の利上げをして6カ月から2~3年で株価が下落に転じている。

その他
①中国不動産バブルの崩壊。

②日本の消費税再増税。

③中東情勢。

④原油安。

などなど‥‥

総合的に考えると、2016~2017年頃が危ない。

バブル発生の条件は存在し、アメリカの利上げも近いのですが、崩れそうで崩れません。

バブルの天井で避けるべき行動

①多額のローンでマイホームを買う。

②海外旅行。骨董品や美術品の購入。(不景気のときは安い。)

③節税目的の不動産投資。

などなど‥‥

バブルの天井でとるべき行動

①半年分の生活費と、投資用資金を貯める。

②割高な保険や金融商品を整理する。

③暴落時の投資候補を調べ、リストにする。購入予定の不動産や高額商品を下調べする。今は買わない。

などなど‥‥

バブル進行中の注意点

①プロ、専門家、専門機関、メディア、政府、すべての人が間違える。多数派の意見を鵜呑みにしない。混雑した投資対象には投資しない。

②株価の目標価格がどんどん上方修正される。前年のパフォーマンスがものすごく良い。(自分も含め)多くの人が儲け自慢をする。これらの現象があれば、危険な兆候。

などなど‥‥

長年成功している投資家は、バブル発生と崩壊のサイクルを、適切な行動で乗り切っています。

 

バブルへの対処を含んだ10の投資法

以下の10の投資戦略から、自分に合うものを3つ併用する。併用することで、どのような経済環境になってもパフォーマンスが安定する。

リターンを狙う積極的な5つの投資法

①日本株と米国株(のETF)を、10月末に買い、4月末に売る。

②バフェット流に、暴落前に現金ポジションを多く持ち、暴落時に優良株や株価指数ETFを大量に買う。しかし、大底を見極めるのはとても難しい。S&P500が直近高値から30%を超えて下落し、S&P500のVIX指数の月中高値が45超となったあと、落ち着いて35まで下がったときを買いタイミングとする。

③トレンドに乗る、順張り投資。

などなど‥‥

守りを重視した5つの投資法

①10月末買い、4月末売りの手法に、トレーリングストップを加える。

②今後の生産年齢人口の伸び、若年層識字率、識字率の伸びしろを参考に、将来性のある国に長期投資する。フィリピン、メキシコ、アメリカ、インドネシア、インド、エジプト、ナイジェリア、バングラデシュなど。

③ゴールドへの投資。金ETF、金ミニ先物、金レバレッジトラッカーを買う。

などなど‥‥

10の投資法は面白いです。自分でもできそうな方法もあります。

 

そのほかの解説

NISA利用の注意点。

退職金を運用するときの注意点。

アベノミクス後の展望。

 

書評

前半では、世界経済の現状と、過去のバブル相場の特徴を解説しています。それをふまえて、バブル相場の暴落に巻き込まれないためにどうするか考察します。

後半では、繰り返されるバブル相場を考えたうえで、10の投資戦略を紹介します。さらに、NISA、退職金の運用、アベノミクスの今後といった、個別事項も取り上げます。

前半は、具体的なデータを揃え、グラフも豊富で、読みやすい解説となっています。内容に大きな驚きはないですが、簡潔に今の金融市場を復習できます。

リーマンショックを受け、各国の中央銀行が超金融緩和を行いました。危機はひとまず去りましたが、リスク資産の価格が相当割高になってきたので、そろそろ危ないです。アメリカの利上げが一番重要です。

後半の10の投資法ですが、詳細は本書をお読みください。10あれば、1つや2つは気に入る投資法もあるかと思います。

投資戦略が一本足打法だと、大失敗もあります。考え方の異なる投資戦略をいくつか用意し、運用を分散しておけば、パフォーマンスの安定化につながると思われます。自分に合う投資法があれば、取り入れてみるのも一案でしょう。

NISAについては、損益が相殺できないという最大の欠点をどう克服するか考えます。退職金の運用は、一言でまとめれば、浮かれていきなり全額を投資するなということです。

最後のアベノミクス後の展望ですが、これは私も一生懸命考えています。私の考えは、当局は金融抑圧政策を取る(緩いインフレを起こしながら長期金利を低く抑える)というものです。

安倍政権は、もう政府債務を返済する気がないと感じます。ゆっくりゆっくり、政府債務を預金者(国民)の資産と相殺していくのでしょう。

本書ではこれに関連し、デット・ジュビリー(Debt Jubilee)が説明されています。私は初めてこの言葉を聞きました。

中央銀行が、発行した通貨で国債を買い、その国債をバランスシート上の資産とします。その資産を通貨発行分の負債と相殺すると、債務が消えるというものです。その方法の変形として、中央銀行が国債を永久に保有するという手もあります。

そうすれば日本のGDP比243%、1000兆円の公的債務が消滅するのです。しかし、そんなことが本当に可能なのですか?

私の頭では、よくは理解できませんでした。このデット・ジュビリーの結末を、著者ははっきりとは書いていません。ですが、どうも円安(経常赤字の定着)で持続不可能になると示唆しているようです。

私も、通貨安が止まらなくなったときが金融抑圧政策の限界かなと、ぼんやり想像していました。財政ファイナンスと通貨高への介入は無限にできますが、通貨安への介入は限度があります。円安が止められなくなり、インフレが制御できなくなれば、アベノミクスの終わりかと考えさせられました。
(書評2015/07/26)

アマゾンでのご購入最強の「先読み」投資メソッド
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「金(ゴールド)はこれから2倍になる」 林則行(著)

 

株式市場の暴落は近い。暴落から身を守るため、そして儲けるために金(ゴールド)を買おうという本です。

 

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

金投資に興味がある人。株式市場の暴落が気になる人。

 

要約と注目ポイント

5年後に金(ゴールド)価格は、2倍以上になると予想する。金を買おう。

 

金価格が上がる理由

超金融緩和の最後には、株価暴落と経済停滞、通貨価値の毀損が起こる。

マネーの総量の方が、ゴールドの総量より伸びている。

金価格は歴史的な上昇期にある。

金の生産コストは現在の金価格より高い。金価格が低くなれば生産量は減少する。

新興国の国民は金が好き。新興国の中央銀行は、金の保有量を増やしている。

 

世界はデフレ傾向ですが、中央銀行がマネーをばら撒いているのは事実です。そして、アメリカは金融緩和を終わらせようとしています。

 

投資の原則

投資の原則は、誰にも止められない時代の大きな流れに乗ることである。

現在の大きな流れは、政府の借金が増え続けること。政府は、借金をインフレで解決しようとしている。歴史では、インフレ政策は繰り返されてきた。

 

超金融緩和の後で起きること

株価は下落し、米ドルの信用が低下して、金利が上昇する。金利の上昇幅は、経済の混乱や通貨の信用低下の程度による。金利が上がるほど、金価格も上がる。

世界的に需要が不足している。供給過剰を政府が引き受けるので、政府の債務は増える。政府債務の増大により、インフレとなる。

米国の不動産バブルの清算は終わっていない。不良債権の処理がまだ残っている。対処として量的緩和を続け、マネーが増えた。経済成長を支える主力産業がないのに、マネーの力だけで株価が上がっている。

金融緩和が終われば、株価は維持できない。実物経済より、金融資産の規模が膨張しているので、下がるときは暴落となる。

 

2009年から上げ続けたアメリカの株式市場に、利上げが迫っています。

 

金相場の情報収集

金相場に関連する情報(サイト)の解説。鉱山会社の売りポジション比率に注目する。

株式市場がピークを過ぎると、金価格は上がりやすくなる。ピークを見極める。
相場を代表する銘柄や銀行株が、市場指数に先行して下がり始める。シティバンク、バンカメ、JPモルガン・チェース、ウニクレデイト、RBS、ロイズ、三菱UFJ、三井住友、みずほ等の株価を監視する。

 

株式市場の動揺は、必ず金相場にも影響します。

 

金に投資する

情報を検討して、金を買う時期を戦略的に大まかに決める。買いの時期に、時間をずらして買っていく。相場は2段階で上昇すると考え、高値の目安をつける。

実際に金を買う手段の解説。
地金、金貨、純金積み立て、ETF、先物取引のそれぞれの長所・短所について。税金について。

そのほかの商品の解説。
銀、プラチナ、金鉱株、南アフリカ通貨ランド、原油、食糧。

 

金へ投資する方法を比較し、解説しています。金以外のコモディティについても、適切な投資か検討します。

 

書評

以前に「伝説のファンドマネージャーが教える株の公式」「伝説のファンドマネージャーが実践する株の絶対法則」といった林氏の著作を読み、投資法に影響を受けました。成長株投資に近い方法で、読んでから四半期の業績推移をチェックするようになりました。

今回は、ゴールドを買えという話です。なぜ金を買うのかということで、はじめに現在の世界経済の状況を解説しています。金融緩和による人為的な株高なので、暴落は不可避と指摘しています。

2009年3月からの米国株の上がり方を見れば、それなりの規模の暴落がそろそろ来るだろうと、私も思います。それでは株式市場の暴落にどう対処するか。著者の解決策はゴールドです。

この本を読んだ直後は、すごくゴールドのETFを買いたくなりました。現在の金価格は1130ドルまで下がってきたので、そろそろ買い下がっていってもいいような気になります。

ただ私は、全面的に金に賭けるのも危険かなと思います。

大きな資産を持っているなら、5%とか10%を金にするのもありだとは思います。しかしバフェットが金を買わないように、金自体は利益を生みません。

あくまでも値上がり益を狙うか、インフレヘッジという役割に限定されるでしょう。

それにしても、シティバンクやバンカメがこれほどひどいとは思いませんでした。銀行株は興味がないので見ていなかったのですが、リーマンショックからの回復がとても鈍いです。

それから、イタリア株やヨーロッパの銀行株もまるで回復していません。ギリシャの問題もあり、やはり南欧はダメなのかと思いました。これらの株価に注視せよという指摘は、勉強になりました。

今後の日本は、物価上昇率より金利が低い、金融抑圧の環境になりそうです。ですので、資産を守るという観点で、ゴールドとかビットコインのようなものを買うのは有効と感じます。

売買で値上がり幅を取り、投機的に利益が出せるかは、私には自信がありません。
(書評2015/07/19)

アマゾンでのご購入金(ゴールド)はこれから2倍になる
楽天でのご購入金(ゴールド)はこれから2倍になる

「全面改訂 ほったらかし投資術」 山崎元/水瀬ケンイチ(著)

 

毎日忙しい人でもできる投資の方法を、人気経済評論家の山崎元氏が教えます。インデックス投資ブログで有名な、水瀬ケンイチ氏の実践的なアドバイスもあります。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

なるべく手間をかけずに、投資で成果を上げたい人。
インデックス投資マニア。
難易度は初級者以上。入門書とは言えない。

 

要約と注目ポイント

手間のかからない、簡単で無難で負けにくいお金の運用法を、前著「ほったらかし投資術」で提示した。4年経ち、環境変化もふまえて全面改訂したが、投資の基本姿勢に変わりはない。

投資はインデックス運用で行う。

インデックス投資がおすすめな理由

インデックス運用の利点は、

①手数料コストが安い。

②シンプルでわかりやすい。
(資産の価値が指数でわかるので、理解しやすい。ポートフォリオが管理しやすい。)

③負けにくく無難である。
(インデックスファンドは過半のアクティブファンドに勝つ。そして、勝てるアクティブファンドを事前に知ることはできない。)

長期投資では、コストの低さ、管理のしやすさ、安定性は重要です。

インデックス投資ブロガー水瀬氏の投資体験談

将来のため資産をつくろうと投資を開始。ファンダメンタルやテクニカルの分析に、時間と労力を費やして株を買う。

精神的にも疲れるが、それほど努力しても儲からない。市場全体の下落にも巻き込まれる。

そんなときにインデックス投資を知って始める。自分の性格にも合い、継続できた。12年続けたら、良い結果が出ている。

個人がお金を運用する正しい手順

①家計の状態を把握する。

②資産配分を考える。

③個々のアセットクラスに、どの運用商品がベストか考える。

④どの金融機関で投資するか選ぶ。

⑤DC(確定拠出年金)とNISA(少額投資非課税制度)が使えるなら、③と④のところで組み込む。

⑥ときどきモニタリングとメンテナンスをする。

資産運用の簡単な方法

①非常用生活費と運用資金を分ける。

②ネット証券に口座開設。

③リスク資産の投資額決定。

④リスク資産に配分したお金で、国内株式(MAXISトピックス上場投信)50%と外国株式(ニッセイ外国株式インデックスファンド)50%を買う。

⑤DCとNISAから先にリスク資産を割り振る。

⑥運用以外のお金は、個人向け国債変動金利10年型か預金、MRFで保有する。

⑦モニタリングとメンテナンスをする。

⑧お金が必要になったら、必要な分だけリスク資産を売却する。

資産運用の方法論としては、骨格になります。細かいところ(何の投資信託を買うかなど)は数年で変わる可能性がありますが、長期投資の方針は変えるところは少ないです。

投資対象の資産の解説

アセットアロケーションは、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券、現金の5つが基本となる。

ただし現在、先進国は歴史的低金利なので、国内債券を持つ意味はほとんどない。国内債券は現金で良い。外国債券も為替リスクがある上、金利の低下余地は小さいので保有しない。

結果、国内株式と外国株式と現金を適切な比率で持つことにする。

中長期的には、金利の動きは要注意です。

資産運用の各手順を説明

非常用の生活費はいくら必要か

ネット証券の選び方

口座開設の仕方

DCとNISAの説明

リスク資産に投資する額の決め方

積み立て投資と一括投資について

国内株式と外国株式の比率

インデックスファンドの銘柄選択

無リスク資産について

モニタリングとリバランス

などなど‥‥

そのほか、投資の勉強になるトピックなど

インデックス投資を学べる本、サイトの紹介など。

おすすめのインデックスファンド、ETF銘柄の解説。

ETFマネジャーへのインタビュー。

 

書評

前著の「ほったらかし投資術」や、山崎元氏の「全面改訂 超簡単 お金の運用術」などを読んでいると、運用方法に違いはほとんどありません。投資の考え方も同じなので(当然ですが)、どれかを読んでいれば十分だろうと思います。

正しい投資の方法は簡単です。一部に非常用の生活費を残し、最大損失を想定してそれに耐えられる範囲で、日本と外国のコストの低い株式インデックスファンドを買う。積み立て続ける。持ち続ける。終わり。

インデックス投資の優位性や、それを実現する手法も書かれています。ですので、この本1冊ですべて済むはずなのですが、なかなかそうでもないように思われます。

インデックス投資は凄い、保有し続けることは威力がある。これらは、自分なりに投資を勉強して、下手くそなアクティブ投資を実行したあとに、身に染みてわかるものだからです。

結局、ある程度は自分で投資の本などを読み、投資経験を持たないと、インデックス投資に移行しないと思います。

前著から新しくなったところは、DCとNISAの解説および活用法が加わったことです。あともう1点は、債券についてです。先進国の金利低下が極まったので、国内債券に投資する必要は特にない、と述べています。これには私も同感です。

本書の特徴のひとつに、ファンドマネジャーへのインタビューがあります。今回もありまして、ETFマネジャーです。興味のある方はどうぞ。

まとめると、前著や山崎元氏の著作を読んでいる人は、特に読む必要はありません。付け足すのは、確定拠出年金やNISAの知識をアップデートすることと、低金利が今後どうなるかに注意することです。

本書は、投資に興味がない一般人に、手間のかからない合理的な運用方法を教えることを目的にしています。しかし、それにしては難易度が高過ぎます。

著者たちには物足りないでしょうが、投資の基本や運用方法をもっとやさしく説明しないと、一般人には理解できません。実質的には、本書はインデックス投資マニアのための本です。
(書評2015/06/21)

アマゾンでのご購入全面改訂 ほったらかし投資術
楽天でのご購入全面改訂 ほったらかし投資術

「内藤忍の資産設計塾 第4版」 内藤忍(著)

 

内藤忍氏による、資産運用のベストセラーの第4版です。長期投資のテキストとして読むことができます。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

経済面の人生設計を考えたい人。
長期の投資について勉強したい人。
難易度は、初級者向けレベル。

 

要約と注目ポイント

人生を国家や会社に頼れない時代になった。お金の知識が必要だ。

日本人の保有する資産は、円資産の預貯金に偏り過ぎでリスクがある。現在、円安とインフレという2つのリスクがある。これに対処するためには、資産の現状把握、投資の目標設定、資産配分の決定という順に行動していく。

 

資産運用の前に

お金は目的でなく手段である。人生の目標を考え、いつまでにいくらのお金が必要か数値化する。環境変化に応じ、目標は柔軟に修正する。

企業経営者のような視点で、長期計画を立て運用方針を決定し、分散投資でリスク管理をし、定期的にモニタリングしていく。

情報収集し、環境変化に対応する。自分の頭で考え、自分で決める。わからないものには手を出さない。投資は楽しむものではないので、効率的に。長期で続ける。

お金はただの道具です。自分の人生をよりよくするための。ですのでお金は、長期で計画を立て、長期で運用します。

 

資産運用の基礎知識

まずリスクとリターンの関係を考える。特に最大損失を想定する(標準偏差の2倍程度)。リスクは分散投資で減らせる。

投資の成果の約8割は、資産配分(アセットアロケーション)で決まる。資産配分が一番大切なので、これに最も気をつかうこと。

長期と短期を考えて投資をする。長期投資は、主に経済全体の成長を享受する。ベータの部分のリターン(インデックス投資)が該当する。アルファの部分のリターンは、特定の資産への投資(アクティブ投資)で得られる。

インデックス投資が主役。アクティブ投資は脇役(補完的)。

個人投資家は積立投資から始めよう。(大失敗は避けられる。)

リスクを減らすため、外貨資産も保有しよう。

行動心理学を知って、感情的な投資行動を避けよう。

日本と外国の資産に分散して、インデックス投資を続けるのが基本です。投資に関心があるなら、自分で投資対象を選んで、少しずつアクティブ投資もしてみましょう。

 

金融商品のリスク

金融商品には5つのリスクがある。
(価格リスク、金利リスク、為替リスク、信用リスク、流動性リスク。)

価格、金利、為替のリスクは、マーケットに付随したものである。信用リスクは株式で取り、債券では取らない。流動性リスクは取らない。

リスクを考慮し、金融資産を6タイプに分ける。
(流動性資産、日本株式、日本債券、外国株式、外国債券、その他。)

インデックス投資にもマーケットに付随したリスクはありますが、投資をする以上、このリスクは取るしかありません。投資対象が破綻する信用リスクを取るなら、債券ではなく株式で取る。売りたいときに売れなくなる流動性リスクは、どんな投資対象でも取らない。ということになります。

それぞれの金融商品の解説

投資信託の解説。資産運用の基本となる。

ETFの解説。海外ETFの解説。

日本株式の解説。

日本債券の解説。現状では、個人向け国債の変動10年が良い。

外国債券の解説。

FXの解説。

リートの解説。

オルタナティブ投資の解説。プライベートエクイティとヘッジファンドのこと。

個人投資家に関係ありそうな金融商品は、きっちりと解説されています。

 

資産運用の方法

運用を継続できる最大損失はどこまでかという、自分のリスク許容度を知る。標準偏差の2倍程度のマイナスは、平常時もありうると覚悟する。アセットクラス同士の相関関係を理解する。

資産を6つに分類する。
流動性資産、日本株式、日本債券、海外株式、海外債券、その他(不動産や商品など)。

現在保有する資産の運用と、これから積み立てる資産の運用を合計して計画を立てる。大まかな運用利回りと、予定が決まっている支出を考える。時間の経過とともに、計画は修正していく。

計画から資産配分を考える。10万円から1000万円までのポートフォリオの例。

現在保有する資産を洗い出す。資産配分の計画と比べる。少しずつ差を埋めて、計画に近づける。

3カ月に1回、資産状況をチェックする。1年に1回、計画からのずれをリバランスする。

堅実な方法なので、読むと勉強になります。

 

実物資産を含めた運用

実物資産は、金融商品とは異なり価格の歪みが大きく(市場が非効率)、利益が狙える。実物不動産は、減価償却という税制上のメリットがある。

海外不動産の解説。日本の不動産の解説。

ワイン投資の解説。

貴金属の解説。

実物資産を組み込んだポートフォリオの例(3000万円から1億円)。

 

その他の解説事項

海外口座のメリットとデメリット。

NISAの活用法。

マイホーム購入と住宅ローン。

保険について。

市場の暴落時。

などなど‥‥

 

書評

このシリーズは、表紙が著者の内藤氏のお写真で派手な印象ですが、中身は地味です。本の内容は、堅実でスタンダードな解説になっています。

前著でも思ったのですが、普通の個人投資家が投資対象にするような資産(投資信託とか株式とか債券とか)が網羅されていて、すごく手堅い説明でまとめられています。投資に興味を持ってやさしい入門書を数冊読んだ後の人が、投資の全体像を勉強するのに適していると思います。

長期投資の基本を知るのに、良い本だと思います。ただ著者は最近、ワイン投資や海外不動産を推しているらしく、そういった方面の本も書かれています。(本屋で見かけただけで、私は読んでいないのですが。)

フツーの個人投資家は特殊なことに資産を集中させるべきではない、と私は考えますので、ワインや海外不動産の解説は参考程度でいいかなと思います。

それから、資産ポートフォリオの例がちょっと気にかかります。資産額の多い例では、実物資産が組み込まれていますが、実物資産の比率が高過ぎるように思います。これは個人的な好みもあるのですが、私は身軽な方が良いので、実物不動産の比率が高いのはやや躊躇します。
(書評2015/06/13)

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「敗者のゲーム 原著第6版」 チャールズ・エリス(著)

 

「敗者のゲーム」は、インデックス運用による長期投資派にとってバイブルと言える本ですが、その最新版です。本書と「ウォール街のランダム・ウォーカー」が、インデックス積立投資主義の二大聖典と思われます。インデックス投資の真髄をまとめました。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

一生を見据えた、数十年単位での長期投資について考えたい人。

 

要約と注目ポイント

プロの投資家が集まる市場では、長期間勝ち続けることはできない。年間成績では6割のファンドマネジャーが、市場平均に負ける。10年では7割、20年では8割のマネジャーが市場平均に負ける。

市場では、ミスを減らすことが最も重要なのだ。長期にわたり市場に勝ち続けるファンドはほとんどないし、事前にそのファンドを見つけることもできない。

市場に勝つことをめざすのではなく、長期投資の目的を設定し、目的達成のための合理的で現実的な投資政策を選ぶことに注力せよ。そしてその投資政策を、規律を持っていかなるときも守ることが重要だ。

長期間の投資で成功したいなら、目的のために投資行動のルールを守り続けることが大切です。

投資とは

市場に勝つには、①タイミングの選択で勝つ、②投資対象(銘柄)の選択で勝つ、③資産配分の選択で勝つ、④長期間勝ち続ける投資戦略を開発する、のどれかが必要である。いずれもほぼ不可能だ。

投資の基本原則は、いつお金が必要になるか考慮したうえで、長期の資産配分(株式・債券・不動産など)を決めることだ。投資対象は幅広く分散し、投資の方針を(暴落のときも)一貫して守ること。

一時的なマーケットの上下に一喜一憂せず、投資政策を遵守することが大切だ。マーケットの動きに惑わされないためには、歴史に学ぶこと。

投資が成功するかは、投資家の知的能力(情報収集と活用、分析力、判断力)と情緒的能力(暴騰・暴落時に冷静かつ合理的に行動する)に依存する。

長期投資家は、市場に勝つことをめざすべきではありません。いかなるときも冷静さを保つことが重要です。

インデックスファンドの利点

①8割のアクティブファンドに勝つ。
②低コスト。
③運用目的や長期投資方針という最重要事項に専念できる。

証券市場は、ほぼ効率的である。効率的な市場では、投入する労力やコストに対し、インデックスファンドが優れた結果をもたらす。

低コストで広く分散投資されたインデックスファンドは、長期投資に最適です。

データから投資の方法を知る

運用期間が長くなるほど、ポートフォリオ全体の実際の収益率は平均収益率に近づく。長期投資では、データが「平均への回帰」に従う。

普通株の価格の評価は、①将来の企業収益と配当金額、②割引率、というふたつの要素で決まる。長期投資家にとっては①が重要となる。

過去のデータでは、
平均収益率:普通株>債券>短期資産
収益率の変動幅:普通株>債券>短期資産
となる。

インフレ調整後の投資収益率は、
株式>債券>短期資産
となる。

予想インフレ率の変化は、投資収益率に大きな影響を及ぼす。予想インフレ率が上昇すれば株価は下落し、予想インフレ率が低下すれば株価は上昇する。

小さな投資収益率の差も、長期間にわたり複利で運用されると、非常に大きな差となる。

長期間の投資では、株式に投資すべきとなります。インフレを考慮しても、株式投資が良い方法です。

ポートフォリオ

長期投資家は、マーケットリスクだけを負うべきである。個別株式や特定のセクター、市場セグメントのリスクを取っても、追加収益は得られない。

マーケットリスクこそがポートフォリオの収益の源泉なので、マーケットリスクの管理が長期投資家にとって重要である。市場の極端な暴落期にどれだけ耐えられるかを、リスク許容度と考えること。

ポートフォリオを管理する目的は、意図した水準のマーケットリスクを引き受け、期待リターンを最大化することである。

長期に投資を続けるなら、投資対象をいろいろ探すより、暴落時に耐えられる資産管理を最優先にします。

個人投資家へのアドバイス

個人投資家にとって問題となるのは、インフレと人生設計上の支出である。予定の決まっている支出と、非常時の支出に備えて貯蓄をする。貯蓄以外の資金は、株式に長期投資する。特に、株式市場の低迷期に投資を続ける。年金収入なども考慮し、インフレに耐えられる老後の計画を立てる。

2008年の大暴落も、限界を超えた借り入れと過剰な楽観のために発生した。長期投資家は、直近の経験にとらわれ過ぎないように注意すべきだ。

個人は貯金をつくって非常時に備え、それ以外のお金は株式に長期投資するのが良い。という結論です。

 

書評

本書の主張は、数十年という超長期で見れば、市場の成長を完全に享受できるインデックス運用が、最も良い結果を生むということです。目先の景気循環や経済ニュースに踊らされず、低コストで市場平均のリターンを得られるインデックス運用を続けろ、と訴えます。

確かに、日々の情報に惑わされて、すぐに売ったり買ったりするのは避けた方がよいです。売買手数料がかさんで、利回りを低下させます。また、高値で売って安値で買うという、正しいタイミングでのトレードをずっと続けるのも困難です。

安いところで渋々売り、高くなったところで焦って買うのもよくあることで、これも利回り低下の原因です。勝ち組プロ投資家並のトレードはできないので、インデックス資産を我慢して保有し続けるのも一理あります。

ただひとつ気になるのは、本当に世界がこれから、それなりに高いレベルで経済成長を長く続けられるのかということです。

現在の日本人に長期投資を勧める理屈としては、次のようなものがあります。

『バブル崩壊以後の1990年から日本の株式に投資していたら、確かに報われなかった。例えば、1990年から日経平均やTOPIXに連動するインデックス投信に、ドルコスト平均法で積立投資していたら、元本割れしている期間の方が長かった。でもそれは、日本に集中投資していたからだ。1990年以降に、アメリカやその他先進国の株価は何倍にもなっている。世界全体では経済成長してきたので、世界に分散投資した株式投信をずっと保有していたら、資産はとても順調に増えていた。だから日本人も、預金ではなくインデックス運用による長期の積立投資をするべきだ。』

この理屈は、過去のデータを見れば正しいです。でも将来はどうなのか?最近はサマーズ元財務長官などが、米国(先進国)長期停滞説を主張しています。これをどう考えるか。

このような長期停滞説も単なる目先のノイズと処理して、インデックス投信をドルコスト平均法で積み上げていくのもひとつの投資戦略です。あらゆる情報を気にせず積立投資するという姿勢こそ、この戦略の核心ですから。

世界は経済成長を続けるという原理を信じる人が、この戦略をとることができます。そのため、何があっても長い目で見れば世界経済は成長する、という原理に疑念を持つ人は、この戦略に手を入れる必要があるでしょう。

どんなことがあっても長期的には世界は経済成長を続ける、という原理に、最近私は若干の疑念を持っています。「ウォール街のランダム・ウォーカー第10版」の最後に、2000~2010年にかけて米国株式のインデックス投信に投資した場合、元本割れしたと書かれています。

そのあとで、債券・米国株・先進国株・新興国株・不動産すべてにインデックス投信で分散投資していれば、資産は大きく増えていた。めでたしめでたし。インデックス分散投資は不滅だ。と続くのですが、ちょっと待てよ、とも思います。

1990年以降、日本の株式に分散投資しても報われないのは、米国株や他の先進国株まで分散しなかったのが悪い、ということでした。2000年代、米国の株式に分散投資しても元本割れしたのは、世界全体の株式や債券、不動産にまで分散しなかったのが悪い、となりました。

これからはどうなのでしょう。米国経済はそこそこですが、日本と欧州は低成長になりそうです。すると、先進国株すべてに分散投資しても、報われないかもしれません。ほかに加えられる資産は、債券と新興国(あるいはフロンティアという範囲の国々)、不動産などです。

債券は、金利がゼロに近い状態です。新興国には、資源安と中国減速の問題があります。不動産は、金利がゼロから上昇したときどうなるか。ヘッジファンドの成績もずっと悪いですし、コモディティも値下がりしています。保有し続ければリターンが確実に期待できる資産があるのか、よくわからなくなってきました。

大恐慌から第二次世界大戦終了までの20年弱、あるいは1970年代の10年、アメリカの株式は値上がりしませんでした。10年単位で株価が低迷することは、ありうることです。

先進国の株式がこれから10年や20年の間、値上がりしなかったらどうでしょう。がっつり働いて掛け金を払っている期間のうち、10年単位で株価が低迷したら最終的な運用成績はどうなるのか。退職して資産を取り崩し始める時期に、株価がどん底に低迷していたら受取額はどうなるのか。

要するに、バブル崩壊以降の日本株式のように、低迷期の安値で買い、景気が良くなったような気がする高値では買わない、という手法が望ましいのではないでしょうか。

「自分でやさしく殖やせる確定拠出年金最良の運用術」で紹介されていた、バリュー平均法のような考え方も取り入れた方がよいかもしれません。長期で積立投資はするのですが、安値や押し目で大きく買い、高値ではほとんど買わない(あるいは全く買わない、さらには少し売ってしまう)方法です。

これは、市場変動のタイミングに合わせて買いを調節しようという考えです。本書の主張は、市場の変動は無視せよ(タイミングは個人投資家には見極められない)というものです。どちらの立場をとるかは、投資家の自己責任です。世界経済の将来の見方で、立場が決まるでしょう。

運用について理解し、自分にとっての運用目的を認識し、基本方針を自分で決め、どのような市場環境でも適切な投資政策を堅持することが重要だという、本書の主張には同意します。ドルコスト平均法によるインデックス運用が最高なのか、変更の余地があるかを決めるのは投資家です。
(書評2015/02/01)

アマゾンでのご購入敗者のゲーム 原著第6版
楽天でのご購入敗者のゲーム 原著第6版

「資産運用実践講座Ⅱ 株式投資と金融商品編」 山崎元(著)

 

前回紹介した「資産運用実践講座Ⅰ 投資理論と運用計画編」の続きです。上下巻の下巻にあたります。

おすすめ

★★★★★★★★☆☆

 

対象読者層

正しい資産運用について勉強したい人。難易度は初級者から中級者あたりが適当です。

 

要約

株式投資

株式のリターンが債券のリターンより長期で見て高いとは、必ずしも言えない。過去のデータ(特に外国のデータ)を引いて、リターンでは株式が債券を上回るとする主張が多い。しかし過去のデータから、今後も絶対に株式が有利と断言はできない。ただ株式投資は、大きなリスクをとって生産活動に資本を提供する行為なので、一般論として大きなリターンを期待することはできる。

・株式の理論価格は、
現在の理論株価 = 現在の1株利益 ÷(投資家の要求リターン - 利益成長率)
であり、変形して、
投資家の要求リターン = 益利回り + 利益成長率
名目金利 + リスクプレミアム = 益利回り + 利益成長率
となる。
すなわち、実質利益成長率が実質金利より高ければ株式投資は有利であり、実質利益成長率が実質金利より低ければ株式投資は不利である。インフレ初期は株式投資が有利となり、インフレ後期は株式投資が不利となる可能性がある。しかし投資家の予想と現実がずれることもあり、株式でインフレヘッジできるかはわからない。

株式のリスクプレミアムは、直接測定することはできず、一致した学説もない。だいたい5~6%と考えられることが多かった。

チャート分析だけで儲けることはできないと考えるのが、学術研究と運用業界の主流である。チャート分析が有効であると考えて頻回に取引することは、個人投資家にとって弊害がある。

証券会社のアナリストの投資判断が、リターンを改善することはないだろう。

株価は、将来の利益を予想して形成される。利益予想の変化が株価に影響を与えるので、決算情報や、会社四季報などの業績予想の推移を調べることは有意義である。1回目の上方修正の段階では株価は割安(買い)で、3~4回上方修正が続くと株価は割高(売り)となっていることが多い。

PER、PBR、ROE、日経平均株価、TOPIXについて。

個別銘柄に投資する場合は、業績予想の変化(推移)はどうなっているか、株価は割安か割高か、流動性など取引の状況はどうか、を確認する。損失が許容できる範囲の金額で、業種の異なる3銘柄以上に分散投資を心掛けるのがよい。

時間を分散して株式を売買することに意味はない。取引回数が増えコストがかかることや、最適なポートフォリオをつくるのが遅れる機会損失がある。

成長株投資について。
成長株投資で高いリターンを上げるには、他人より早く高成長に気付き、自分が株を買い終わったころに他人が高成長を知ることが必要である。これはなかなか難しい。また、成長株は期待外れ(成長鈍化など)になると、株価を大きく下げる。

割安株投資について。
将来の利益の予測とPERから、またPBRから、割安か判断する。割安株は相対的に値動きが安定しており、銘柄選択基準もわかりやすいことから、割安株投資は個人投資家に向いている。

イベントドリブンについて。

株式を売却するときは、
①お金が必要になったとき。
②資産配分で、株式の比率が変わったとき。
③その銘柄のウェイトが大きくなり過ぎたとき。
④買った理由がなくなったとき。

議決権行使について。

 

投資信託

アクティブファンドは、市場平均に勝てない場合が多い。また、市場平均を上回る優良なアクティブファンドを、事前に見分けることはできない。手数料の差は、ファンドの優劣の大きな要因となる。

・パッシブファンドは、コストが低く個人投資家に適した金融商品だった。近年は、銘柄入れ替えなどに便乗する、コバンザメ投資や引値ギャランティといった現象が見られる。これらはパッシブファンドのリターンを低下させる。ただ現在でも、パッシブファンドはアクティブファンドより高いリターンを示す場合が多いので、パッシブファンドは優位性のある投資対象と考えられる

バランス型ファンドは、コストが高めで運用の中身が把握しにくいという欠点がある。ファンド・オブ・ファンズやライフサイクル型ファンドにも、同様の問題がある。本来は、投資家が資産配分を決定し、それぞれ適切な資産を組み合わせる方が望ましい。投資家自身が行うことで、コストが下がり、管理も容易となる。

毎月分配型ファンドは、課税のタイミングが早くなるので損である。インカムゲインに対する心理的満足のほかに、長所はない。

元本確保型商品は、投資家にとって利点はない。SRIファンドなどは投資の面で優位性はないので、投資家の価値観による。タクティカル・アセットアロケーションのシステム運用は、うまくいく時期といかない時期があり、また投資家がリスクの把握や管理をしにくくなるので勧められない。

トップダウンとボトムアップについて。定量評価と定性評価について。

シャープ・レシオとインフォメーション・レシオについて。

 

預金と債券

利回りが確定している預金や債券では、運用期間と信用リスクの2面から考慮して、利回りを比較するのが原則である。このとき、利回りは複利で比較する。銀行預金の場合は、銀行の格付けも参考にできる。社債を個人投資家がリスク評価することは難しい。

デフレで超低金利(ゼロ金利)の環境では、普通預金が安全で利便性もあるので良い。このような環境下では、運用期間や信用度に問題のある金融商品の利回りもゼロに近づくので、相対的に普通預金が優位となる。名目の利回りがゼロでも、普通預金が十分に有利である。

金利が変化するときの金融商品の比較では、以下の点を考慮する。
①名目金利ではなく、インフレ率を考慮した実質金利で損得をはかる。
②長短の金利差を見て、得な方を選ぶ。
③今後の金利動向も考える。長期の債券では、金利上昇でキャピタルロスの可能性がある。
10年満期の変動金利個人向け国債は、運用リスクが小さく、検討してみる価値はある。手数料の高い外貨預金や外国債券は、常に不利である。

・銀行預金にもさまざまな種類があるが、どれだけの期間でいくらになって戻ってくるかを具体的に確認すること。外貨建てである、オプションが組み込まれている、対象者や期間が限られている、手数料の高い商品と抱き合わせである、などの問題がある場合もみられる。

債券の解説。
①利回りが高くなれば、債券の価格は下がる。利回りが上がるということは、将来価値が不変ならば現在価値が下がるということである。
②インカムゲインとキャピタルゲインを両方合わせて、利回りを検討しなければならない。債券の期間が長いほど、価格が変動するリスクが大きくなる。
③利回りの比較は、複利で行う。
④デュレーションについて。
⑤債券の信用リスクは、格付け情報を参考にする。しかし個人投資家が債券の評価をするのは、極めて難しい。

物価連動国債について。

 

その他の金融商品

自分が理解できない金融商品は、購入してはならない。利益が出る仕組みや、売り手の取り分となる手数料、価格条件から見た損得などがわからないなら、理解できていない。

為替レートについて(購買力平価、需給、資本取引)。

外国株式、外国債券について。
その株式や債券がよい商品かと、その国の通貨がよいかは別々に考えるべきである。運用資産全体のうち、どの通貨をどれだけの比率で持つべきかを考える。外国の株式や債券でも、大半の為替リスクはヘッジできる。

・外国債券をどの通貨で運用しても、円建てでは円の金利と大きくは変わらない。基本的な期待リターンは自国通貨で運用した場合と同じだが、分散投資としての意味はある。

外国株式では、金利や利益成長率、求められるリスクプレミアムの水準が日本と異なることに注意する。

FXについて。

先物、オプションについて。

投機と投資とは。

 

書評

基本的には、1冊目と同じです。入門書のレベルは卒業した人が、もっと理論的に資産運用を独力で行うための本です。専門書まではいかない、中級者向けです。

これを通して読むと、投資の全範囲に目配りできるので本当に勉強になります。でも素人にはかなり難しいです。私も債券や為替のところは、厳しい箇所がありました。株式は興味があるので多少は勉強していて、本書もまあまあ理解できたのですが、債券と為替は勉強が必要です。

本書は合理的なので読むと納得するのですが、それでも他の良書とされる本と主張が異なる部分もあるので、投資とは方法論が確立していないものだと感じました。

「ウォール街のランダムウォーカー」「敗者のゲーム」では、長期の株式パッシブ運用こそ最高と主張します。私も長期の株式投資が有利と思っています。しかし本書で、過去のデータをもとに絶対に将来も株式が債券を上回るとは言えないとか、パッシブファンドに及ぶ悪影響などを読むと、確かにそういう視点もあると気付きます。(ただし本書も株式を期待できる投資としています。)

最近は、先進国経済が長期に停滞するとも言われています。ヨーロッパでは景気後退、さらにはデフレの可能性が出てきました。これまで外国では長期の株式投資が報われてきましたが、日本では20年間、株式投資にいいところはありませんでした。もし今後、先進国経済が、あるいは世界経済が日本のように停滞するなら、株式投資にも疑問が湧いてきます。

そうすると、ただ株式をパッシブ運用するだけでは、賢い投資法ではないかもしれない(平均レベルは期待できますが)。ならばタイミングを見て、不況のときに株式を多く買い、好況のときに投資を抑えたくなります。でも景気の波を正確に認識するのは、極めて難しい。自分が景気の波を捉えられないなら、どうすべきか。そもそも市場のタイミングを見極めるのが無理だと考えるのが、パッシブ運用です。するとパッシブ運用に戻ります。今のところ、答えが見つかりません。
(書評2014/10/16)

アマゾンでのご購入資産運用実践講座Ⅱ 株式投資と金融商品編
楽天でのご購入資産運用実践講座Ⅱ 株式投資と金融商品編

「資産運用実践講座Ⅰ 投資理論と運用計画編」 山崎元(著)

 

著者いわく、中級者のために書かれた本です。入門書では物足りない、資産運用を理詰めでしっかり勉強したいという人向けの本です。

おすすめ

★★★★★★★★☆☆

 

対象読者層

正しい資産運用について勉強したい人。難易度は初級者から中級者あたりが適当です。

 

要約

本書は、投資の入門書では飽き足らない個人が、正しい理論を理解して、自分で資産運用を実践できるようになるための独習用テキストである。

 

資産運用計画作成の概略

①計画作成の前に、家計の状態を把握する。
②借金や年金の条件が現在どうなっているか、確認する。
③どれだけの損失まで許容できるかをつかみ、最大損失許容額を設定する。それに従い資産配分を決定する。
④決定した資産配分比率のそれぞれの資産に、どの金融商品をあてるか選ぶ。金融商品を選択したら、適切な窓口から購入する。
⑤年に1回程度、もしくは経済環境の急変時に、資産のリバランスなどのメンテナンスと運用計画の点検を行う。

 

資産運用計画の各論

投資計画をつくる前に、資産や借金、収入と支出など家計の状態を把握する。家計の状態を知るのに、簡易のバランスシートと損益計算書をつくってみる。
バランスシート:金融資産(時価)、実物資産(時価)、短期ローン、長期ローン、自己資本。
損益計算書:年間収入、年間支出。

短期ローン、長期ローン(住宅ローン)とも、すみやかに金融資産で返済するのが有利である。借金の返済は、リスクフリーで市場金利にスプレッドが乗った金利で運用しているのと同じである。

生活費の3カ月~2年分ぐらいを普通預金などで貯めてから、投資を始めるのが無難ではある。ただし個人の状況を考慮しつつ、少しずつリスク資産に投資するのも(勉強になるので)よい。

高齢者(年金生活者)の資産運用で注意すべきは、運用に失敗しても働いて損失分を埋めることが難しいことである。余命を長めにとって金融資産を取り崩す年数を決め、1年当たりの取り崩す額を概算する。以下のように計算する(すべて1年当たりの額。)
年金 + 取り崩し額 + (稼ぎ) - 生活費 = 余裕金
この余裕金から逆算して、とれるリスク資産の額が決まる。これは1年ごとに計算を仕直して調整する。なお、金利やインフレ率が大きく変化したら前提条件を変える。また資産家の高齢者は、よりリスクをとることが可能。

インカムゲインとキャピタルゲインは、区別して扱うべきではない。インカムゲインが高齢者に適しているという考えは誤り。

個人型の確定拠出年金に加入できるならば、税制上メリットが得られる。60歳まで引き出せないことに注意。運営管理機関と運用商品は、よく調べて適切なものを選ぶこと。運用する確定拠出年金は、資産運用全体のなかの一部として位置付ける。全体が最適化されるように資産を配分する。

資産の運用では、あらかじめ最悪の場合(最悪の損失額)を考えておくことが大切だ。期待リターンから2標準偏差を引いた額くらいを想定するのが普通(2.5%の確率で発生)。

資産配分を簡便にするには、リスク上限を決めて、その範囲内でリスクとリターンの組み合わせを選ぶのがよいだろう。リスク許容度が理解できるなら、最適化計算をする。資産配分は、リスクとリターンを同時に考えながら決める。先に運用の目標利回りを決めてはいけない。

簡易なアセットアロケーションの方法。
①1年間での許容損失額の上限を決める。
②リスク資産のリスクを、年率標準偏差X%と仮定する。
③マイナス2標準偏差を損失許容額の上限とし、とりうるリスク資産の割合を逆算する。
④リスク資産の期待収益率をY%、リスクフリーの期待収益率をZ%と仮定し、③の上限までの範囲内でリスク資産の割合を考える。
⑤上の④で決めたリスク資産を、さらに国内株式、外国株式、外国債券などに(機関投資家の運用計画を参考に)振り分ける。

運用パフォーマンスは、資産配分のやり方で9割程度決まる。資産分類内でどの程度アクティブリスクをとるかで、多少パフォーマンスは変化する。

資産ごとの期待リターンを決めるのは難しい。過去の平均値をそのまま使うのは、適当ではない。機関投資家の運用計画の数値は、参考にはなる。

アセットアロケーション全体のリスク、インプライドリターン、リスク拒否度、効用などの求め方。またこれらをもとにして、表計算ソフトでワークシートをつくり、最適化計算をする具体的手順の説明。

 

投資理論とマーケット

モダンポートフォリオ理論について。

ALMとは、資産と負債を一体としてリスク管理などを行う考え方。銀行や保険会社の経営、年金制度などにおいて重要となる。個人でも住宅ローンなどの借金を考えるときには、意味のある考え方。なお、個人が借りられるローンは、経済的にはきわめて不利な条件である。

生命保険は、加入者の人的資本の価値をヘッジする手段と考える。資産運用と生命保険は同時に考えるべきものであり、人的資本がこれらに与える影響は大きい。一般に人的資本が大きい方が、資産運用でとれるリスクは大きくなるし、生命保険の必要性も増すだろう。

行動ファイナンス、ギャンブル依存症について。

政府の株価対策について。年金や日銀などの株式買い入れ、政府保有株式の売却延期、空売り規制など需給面の対策は、短期的な効果にとどまる。法人税引き下げや配当への課税引き下げなどは、株式の理論価格を上げるので長期的な効果が期待できる。

・国家財政破綻などの話で脅かして対策を売る商売があるが、破綻シナリオの確率とその対策にかかるコストは冷静に考えるべきだ。危機が心配なら、国債消化における外国人の割合や経常収支、金利などの動向を日頃から見ておく。

中央銀行の金融政策について。

自社株買いや配当について。理論上は、株主の利益には中立的である。

企業買収、株式持ち合いについて。企業価値と時価総額について。

アノマリーについて。

 

実際の運用

長期投資では運用資産の価値の変動幅が大きくなるので、長期投資でリスクが小さくなるということはない。しかし、長期投資では期待値も大きくなるので、運用期間の長短はリスクに対して中立的となる。ただし長期の運用は取引コストを節約できるので、資産運用は長期で行うのが基本である。

・市場参加者が完全にリスクを認識していれば、ハイリスクのものはハイリターンとなるはずである。しかし、リスクが常に正確に知られているかは疑わしい。

ドルコスト平均法は、有利でも不利でもない。積立投資には向くが、ひとつの投資対象に資産が集中しやすい点はデメリットである。ナンピン買いも資産が集中するので、あまり勧められない。

株式投資において、売却目標株価(利食いや損切り)をあらかじめ決めておくのは誤りだ。値上がりや値下がりの理由を確認して、行動すべきである。

・複利効果は大きいが、運用商品の優劣はあくまで1年当たりの利回りによって決まる。若いうちに投資を始め、長期にわたり取引コストを節約することでパフォーマンスが向上する(=複利効果)と意識しよう。

資産がインフレやデフレに対抗できるかは、将来のキャッシュフローと割引率がどう変わるかによる。株式や不動産はインフレに強いと言われることが多いが、状況による。債券はインフレに不利で、デフレに有利である。短期預金はインフレにやや不利で、デフレにやや有利。借金は債券の逆になる。

金や商品への投資、不動産投資、オルタナティブ投資について。

変額年金保険、生命保険会社について。

金融商品取引法について。金融機関の担当者やアドバイザーとの付き合い方について。担当者やアドバイザーが、自身の利益に沿うような金融商品を勧める可能性があることを知っておくこと。運用計画を決めてから金融商品を選択するのが原則であり、その際は最も適切な金融商品を、コスト面や信頼性で最も適切な金融機関から購入するようにする。

 

書評

読み終わっての感想は、これで勉強したらもう十分だ、です。

投資で話題になるような事柄は、ほとんど網羅されているような感じです。資産運用を考えるときに、必要な内容はほぼ書かれているように思います。しかも内容はかなりレベルが高く、本書が理解できれば自分で資産運用ができるでしょう。

著者が中級者向けと述べているように、本書はなかなか手強いものでした。私は著者の山崎氏のコラムや著書をけっこう読んでいるので、本書の解説もだいたい予測がついて理解できました。山崎氏の本を初めて読む人は、難しく感じられそうです。

入門書をかなり読んでいて、自分で投資信託や株式のことを調べたことがあり、投資を理屈っぽくやりたいと思う人に適した本だと思われます。これより勉強したければ、もう専門書にいきましょう。本書は「資産運用実践講座Ⅱ 株式投資と金融商品編」と2冊組であり、(2冊目は未読ですが)これらを読み込んで理解し実践できるようになれば、一般人としては最強レベルの金融リテラシー保持者になりそうです。
(書評2014/10/12)

アマゾンでのご購入資産運用実践講座Ⅰ 投資理論と運用計画編
楽天でのご購入資産運用実践講座Ⅰ 投資理論と運用計画編

「インフレ貧乏にならないための資産防衛術」 村上尚己(著)

 

アベノミクスによりデフレがインフレに転換したあとの、資産運用方法について論じた本です。本当にインフレになったら、参考になるかもしれません。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

インフレになったときの資産運用を考えたい人。
難易度は、新聞の経済面を読んでいる人ならスラスラ読めるレベル?

 

要約と注目ポイント

本書は、アベノミクスの成功によりインフレ時代が到来したとき、一般投資家はどのように資産運用すればよいか論じている。20年に及ぶデフレ環境に慣れた日本人に、インフレ時代の資産防衛や運用の基本的な考え方を提示する。

アベノミクス

アベノミクスは正しい金融政策であり、停滞していた日本経済は好転した。

民主党政権はデフレを自然現象のように考えていた。しかし安倍政権の金融緩和政策により、円安と株高が進んだ。

安倍政権下、脱デフレを掲げる黒田総裁・岩田副総裁の日銀人事が決定される。安倍政権は、脱デフレにおける日銀の重要性を正しく認識していた。

アベノミクスによりマーケットに劇的な変化(大幅な円安と株高)が起きた。これが示すのは、個人投資家は金融政策や経済政策を理解することが重要だということである。

アベノミクスが成功すればデフレから脱却し、日本経済の状況は大きく変化する。

アベノミクス批判への反論

以下の典型的なアベノミクス批判は、いずれも的外れである。

①インフレは危険。
⇒デフレ下で豊かに生活できる環境の人たち、あるいはデフレに適応した意識を持つメディアの意見に過ぎない。

②インフレで生活が苦しくなる。
⇒一般物価水準と個別価格を混同している。生活必需品より、サービス価格や賃金の上昇は遅れる。

③資産バブルや投機を生む。
⇒金融緩和政策は、どの国でも行われている経済安定化の政策である。

インフレの実現

日本は供給が需要を上回るデフレの状態にあった。中央銀行がマネーの量を増やせば、物価と賃金が上がり、インフレ期待が生まれる。

インフレ期待が生まれると、企業は投資をし家計は消費活動をするので、インフレは実現する。インフレが実現すれば総需要が底上げされ、失業などの問題が解消し、日本経済は回復する。

2013年5~6月の株価の乱高下は、日本経済の状況が大きく変わるときに、投資家の期待が揺れ動いたために起きた調整に過ぎない。

著者は時々メディアにも寄稿していますが、完全無欠のリフレ派という印象です。

今後のアベノミクス

アベノミクスには、3本の矢の政策が正しく行われていないという危うさもある。

最も重要なのが第1の矢(金融政策)である。

第2の矢(財政政策)は、脱デフレのサポートに徹するべきだ。非効率的な公共投資よりは、民間にお金が渡り総需要を上げる減税などが行われるべきだった。消費税増税は悪影響がある。

第3の矢(成長戦略)は総供給を増やす政策なので、脱デフレが達成された後に効果が出る。規制緩和が第3の矢にあたる。

デフレ脱却で日本の問題は解決する

脱デフレが達成されれば、日本の問題は解決へ向かう。

デフレから脱すれば、税収が増加して財政問題は改善する。金利が上昇すれば政府の国債利払い負担も増えるが、名目金利が上昇するときは経済成長率やインフレ率も高まっていて、税収も増えるので問題ない。

また、中央銀行が名目金利を抑えることも可能である。インフレ率が高まれば失業率が低下する。若年層の失業率が低下し、非正規雇用の比率も下がり、若年層の所得が改善して出生率が上昇する。

金融政策の力は無限大という感じです。

2014~15年の日本経済見通し

当面は、日本の株価はアメリカの株価と連動する。

2014年度の日本の実質GDP成長率は消費税増税のため1%程度まで低迷するが、2014年後半はアメリカをはじめとする先進国経済が回復し、日本経済を下支えする。

輸出と企業の設備投資が増加すると予測される。個人消費と企業の設備投資が拡大し、インフレ期待が広がるという好循環が実現する。日銀は追加の金融緩和もできる。

2015年には日経平均株価は2万円に近づく。2014年にアメリカは、実質GDP成長率が3%程度でインフレ率が2%程度となるだろう。アメリカが先に政策金利を引き上げるので、1ドル110円台まで円安が進み、さらに脱デフレは推進される。

日本経済が安定成長し、インフレ目標が実現するので、2014年末には長期金利は1%台半ばまで上昇する。2016年までには、長期金利は2%の大台を超える可能性がある。

インフレ対策を考えた資産運用

デフレでは預貯金が合理的だったが、インフレ転換後にはデフレ時代の資産運用は機能しない。

脱デフレで日本経済が安定成長するようになれば、資産運用の中核は日本株となる。また円高が終焉することで、外貨建て金融資産もリスクに見合った本来のリターンが期待できる。

脱デフレで為替と株価の連動性が低下すると考えられるので、長期分散投資が機能する。日本株と日本債券、外国株と外国債券という4大資産を基本とする。これらのインデックス型投資信託などで、長期分散投資することが有効となる。

インフレは不動産ブームとは別の現象なので、住宅購入はあくまでも物件や個人の事情を慎重に考慮して決めるべき。

脱デフレと経済正常化が達成すれば、社会保障制度改革が次の政策課題となる。高齢化の進展に伴い、税と社会保険料の負担が大きくなるだろう。インフレ時代に対応した資産運用が必要となる。

資産運用は、日本と海外のリスク資産に分散投資しよう、という結論です。

 

書評

次期日銀総裁に望ましいのは誰かという市場関係者アンケートで、著者の村上氏は岩田規久男氏(当時は大学教授で現副総裁)と回答したと本文中にあります。

岩田氏をあげたのは村上氏ひとりだけだったそうで、村上氏はバリバリのリフレ派だなと思いましたが、実際に本書も金融緩和強化を是とするリフレ派な内容です。

以前に岩田氏の著作を一冊だけ読んだことがありますが、自身の主張に自信満々でした。村上氏も、本書の中で自説に絶対の自信を見せています。

というか、自分の分析や予測が外れる未来を全く想像していないかのようです。よくわかりませんが、あまりに自信に満ちあふれている様子を見ると、それはそれで大丈夫かとこちら側は不安になります。

本書はリフレ派の人が考える正しい資産運用の解説書です。安倍政権はリフレ派の考え方で行動しているので、個人投資家が対策を考えるのには、それなりに参考になるかなと思います。

各章のはじめに要点がまとめてあるのはわかりやすく、親切設定です。
(書評2014/07/25)

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「投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識」 ハワード・マークス(著)

 

バフェットも推薦するこの本は、市場で生き残るための必携の1冊です。著者はオークツリー・キャピタル・マネジメントの会長で、大成功した投資家です。

 

おすすめ

★★★★★★★★☆☆

 

対象読者層

市場に勝ちたい人。投資哲学を考えたい人。

 

要約と注目ポイント

投資を成功させるには、数多くの「一番大切なこと」に、同時に思慮深く注意を向ける必要がある。

本書はハウツー本ではなく、投資哲学の本である。投資は複雑である。本書では、投資家が適切な判断をして、重大な失敗を避けるための思考方法について論じる。

価値のある教訓は、厳しい時期に得られる。私はいくつもの異常事態に見舞われながら投資キャリアを重ね、実効性のある投資哲学を築いてきた。

 

投資に勝つための思考

平均的なパフォーマンスならば、インデックスファンドを買えば誰でも達成できる。市場平均に勝つことを成功と定義すれば、成功には幸運かすぐれた洞察力が必要である。

投資はアートの要素が強く、成功させる普遍的な法則などない。

鋭敏な思考(二次的思考)が必要で、他の投資家より正確に見極め、他の投資家とは違う思考方法をとらねばならない。

投資で成功するには、コンセンサスとは異なる正しい予測をしなければならない。しかし、コンセンサスと異なる予想をすること、それが正しいこと、その予想に基づいて行動することはとても難しい。

 

誰にでもできる、底の浅い単純な思考が一次的思考です。奥が深く、複雑で入り組んでいるのが二次的思考です。

「減益だから売ろう」というのが一次的思考で、「減益だがコンセンサスよりは減益幅が小さくなると予想され、決算発表後に株価が上昇するだろうから買いだ」というのが二次的思考になります。

 

本質的価値を見抜く

社会的にオープンで広く情報が公開され、多くの(優秀な)人が参加する市場は、効率的市場仮説に近い。

非効率的な市場の特徴として、情報やその分析にばらつきがあり価格が本質的価値から離れ、投資家の勝ち負けが分かれている。

また、資産のリスク調整後リターンが、他の資産のリスク調整後リターンと釣り合わない事態が起きている。

本質的価値を正しく推計することが不可欠である。投資の原則は、本質的価値より安く買い、本質的価値より高く売ることだ。

 

市場は完全に効率的でも非効率的でもなく、その間にあります。間違った価格が付けられることがありますが、それを利用して市場に勝つには、すぐれた洞察力が必要です。

 

バリュー投資で勝つ

テクニカル分析のみで投資をすることに、有効性は認められない。そのため、ファンダメンタルズに基づく2つのアプローチ、バリュー投資とグロース投資を検討する。

バリュー投資は、現在の本質的価値が現在の株価より高ければ(本質的価値が将来ほとんど増大しなくても)買う。

グロース投資は、将来的に十分な利益をあげるほど本質的価値が増大するならば(現在の本質的価値が現在の株価より低くても)買う。

一般にグロース投資は成功しにくいがリターンは大きく、バリュー投資は安定的だがリターンは小さい。本書ではバリュー投資を扱う。

 

バリュー投資で成功するには、本質的価値を正しく見ることと、本質的価値の見解を我慢強く保持することが求められます。

バリュー投資では、割安の資産を買っても、すぐに利益が出るわけではありません。

 

投資家心理を読む

本質的価値を正しく推計できるようになったとしたら、その資産の価格にも注意しなければならない。妥当(割安)な価格で買わなければならない。

価格は(特に短期的には)心理とテクニカル要因(需給要因など)に左右される。投資をしたい人がこの先増えるのか減るのか、投資家心理を知ることは重要だ。

 

最も危険なのは人気の絶頂にある資産を買うことで、最も安全で収益性が高いのは人気のない資産を買うことです。

 

リスクとは資金を失う可能性だ

未来はわからないため、投資ではリスクを理解し、認識し、コントロールしなければならない。投資を検討するときは、許容できるリスクを考え、潜在的なリターンと付属するリスクを考慮する。

投資成績を評価するときも、リターンのほか付属していたリスクを評価しなければならない。相場の上昇時には、リターンを高くするにはリスクを高くすればよいように感じるが、それは誤りである。

高リスク資産は不確実性が高く損失の可能性があり、高い期待リターンが本来は提示されるべきものである。

リスクはボラティリティで定義されるが、リスクとは資金を失う可能性と考えるのがよい。

損失リスクは脆弱なファンダメンタルズや悪いマクロ環境のためではなく、たいていは楽観的過ぎる心理と行き過ぎた価格から生じる。

 

本質的価値を大幅に下回る価格で買えば低リスク高リターンが期待でき、高すぎる価格で買えば高リスク低リターンとなります。

リスクに対処するには、本質的価値の安定性と信頼性、価格と本質的価値の関係性をもとに判断することが大切です。

 

リスクとリターン

投資家が過度に楽観的で、資産を高すぎる価格で買っていたと気付くところから、たいていリスクが認識され始める。

高リスクと低い期待リターンは表裏一体であり、追加的なリターンを得るためにはリスクプレミアムを要求すべきなのだ。「リスクがなくなった」という神話が、特に危険なリスクの根源となりうる。

リターンとリスクの関係では、無リスク資産の金利に、リスクに応じてリスクプレミアムが上乗せされる。

安全性が高い資産の期待リターンが低い、高リスクの資産のパフォーマンスがこのところ良い、大量の資金が流入している、融資基準が緩い、といった状況ではリスクプレミアムが低下する。

投資家がリスクを忘れ買いを集中させた資産は、期待リターンが低下しリスクが高くなる。誰もが不安を感じ買いたがらない資産は、リスクプレミアムが拡大しリスクは低くなる。

どんな価格で買うかが問題なのだ。

 

すぐれた投資家は、利益を得るためにきちんと理解したうえで、リスクをとっています。獲得するリターンに相応する水準よりも低いリスクをとるのが、すぐれた投資家です。

リスクは目に見えないため、悪い出来事が起きた時にはじめて、リスクコントロールがなされていたかわかるのです。

 

市場のサイクルを認識せよ

ほとんどの物事にはサイクルがある。多くの人がサイクルはなくなったと思い込んだときに、大きな利益や損失が生まれる機会が発生する。

人間に感情があることが、サイクルが存在する要因のひとつである。信用サイクルが典型的である。

好景気が訪れ、金融機関が融資を拡大し、投資に付随するリスクが低下したように見え、リスク回避志向が消える。

金融機関はシェア競争のため要求リターンを引き下げ、資本コストが資本収益率を上回る投資が行われ、資金が回収できなくなる。

サイクルは下降局面へ反転し、貸し手は融資をしなくなり、企業は資本不足に陥り、デフォルトや倒産が起きる。

景気後退を招き、ますますリスク回避志向となるが、行き過ぎたところでサイクルは再び反転する。

証券市場における地合いの動きは、振り子の振動に似ている。

振り子の軌道の中心点は平均的な位置だが、振り子がその位置に留まるのは一瞬である。振り子は軌道の一端から一端へと動き、一端に近づけばいずれ必ず中心点に向かい反転する。

強欲と恐怖のサイクルは、投資家のリスクに対する姿勢の変化によって起きる。

投資家のリスク許容度が高ければ、価格はリターンに見合うより大きなリスクを含んでいる可能性がある。投資家がリスク回避的だと、リスクに見合うより大きなリターンが得られる可能性がある。

 

相場が好調で価格が高騰すれば投資家は買いに殺到し、市場が混乱すると投資家は完全にリスク回避的になり売りに殺到します。

 

過ちを招く心理的要因

過ちを招く心理とは、強欲、恐怖、自己欺瞞、同調圧力、嫉妬、うぬぼれ、降伏である。

過ちを招く心理に対抗するためには、本質的価値を強く意識すること。そして過去のサイクルの教訓を思い出し、心理的要因が悪影響を及ぼすことを理解すること。

皆が楽観的過ぎるときは悲観的になり、皆が悲観的過ぎるときは楽観的になるという、懐疑的な目を持つこと。

 

多くの投資家が市場サイクルに押し流されたときは、反対の行動、逆張りが有効です。

ただし、価格が本質的価値から大きく乖離していることを察知する能力と、群衆に逆らう強固な意志が必要となります。

さらに、逆張りにふさわしい行き過ぎた相場はめったになく、行き過ぎた相場が何年も続くこともあります。

 

賢明なポートフォリオ

賢明なポートフォリオは、収益性が高い資産を買い、それを買うために収益性の劣る資産を売り、最も収益性の低い資産を避けることで構築される。

投資先候補から、リスクに対し特に潜在リターンが高いもの、特に割安感が強いものを探し出す。このような掘り出し物は、たいてい何らかの欠陥があり不人気な資産である。

人々が理解不足で、不適切とみなし、リターンが低迷し続けており、悪い印象を持っている資産に掘り出し物がある。

良いチャンスは常にあるわけではない。掘り出し物が出てくるのを我慢強く待つことが、最良の戦略である場合もある。

予想リターンがきわめて低い環境下で、リターンを追及するのは危険である。

 

危機時に投げ売りされた資産を買うことが、最高の投資になります。

 

投資家は守りを忘れるな

将来を正しく継続的に予測することは不可能だ。市場サイクルの期間やタイミングを予測することもできない。

しかし、できるだけ現在のサイクルや振り子の位置を見極めようとし、起こりそうな事態に備えるべきである。サイクルの頂点や谷底に達するときに備え、そのとき間違った群衆と行動をともにしないこと。

投資家は市場のランダム性を認識しなければならない。投資家は、儲けと損失回避の間でバランスをどうとるか、決めなければならない。投資は複雑なので、守りの要素が重要である。

守りでは、正しい行動をとるよりも、間違った行動をとらないことに重点を置く。

守りには2つの原則がある。

1つは損失を出す資産をポートフォリオに入れないことだ。これは調査、投資基準、低価格と安全域、楽観的な予想の排除によりなされる。

もう1つは暴落による市場崩壊のリスクがある時期を避けることである。

損失をもたらす過ちは、分析や知識の問題と、心理や感情の問題から起きる。投資は未来に対処することだが、想像力を欠くことも過ちとなる。

 

資金が過剰に供給されると、人々はリスクを軽視し、リスクが大きくなります。市場が熱狂すると、従来のモデルが通用しなくなることがあります。

そして、危機時には資産間の相関性が高まり、分散投資の効果が下がってしまいます。

レバレッジをかけず、サイクルを意識することが大切です。長期のパフォーマンスが良いことこそ、すぐれた投資家の証です。

 

書評

何らかの具体的な投資手法を教える本ではありません。長年にわたり成功してきた投資家が、投資行動の基本原則について考察した本です。

「敗者のゲーム」のような、味わい深い系の本でして、これを読んだからすぐに何かがどうにかなるということはありません。常に市場のことを考えていると、どうしても目先の損益が気になりだすのですが、やはりそういうやり方だと大成功はありえません。

まとめた要約を読み返すと、そんなことは当たり前だ、となります。でも、実行できないんだな、これが。要約だけでなく本文を読むと、大事なことが書かれているなとしみじみします。

再読して印象深かったのは、リスクがないと思って投資家が集まりある資産を買うと、リスクが高くなるという指摘です。リスクがなくリターンが簡単に得られると考え買うことで、期待リターンが小さくなり、リスクプレミアムが薄くなって、逆に損失の可能性が大きくなるのです。

資産の質が高いから安全と考えるのは誤りで、本質的価値から安い価格で買うことが安全なのだ、という指摘も教訓になります。優良資産も高すぎる価格で買えば危険です。これも覚えておこう。
(書評2014/07/18)

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