「自分でやさしく殖やせる確定拠出年金最良の運用術」 岡本和久(著)

Pocket

 

自分は将来、本当に年金を受け取れるのか?そんな不安が漂う、現在の日本です。しかし自分の年金を守るとても有利な制度、確定拠出年金があります。確定拠出年金をわかりやすく教えてくれる1冊です。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

確定拠出年金に加入できる人。年金について考えたい人。

 

要約

・日本は高齢化が進むため、今後は現役世代が高齢者を支えることができなくなり、社会保障制度の削減が予想される。また政府は国策として、インフレ政策をとった。そのため、預金だけでは老後の準備は足りない。将来の自分を支えるのは今の自分、という時代になった。しかし日本人は現在、投資をほとんどしていない。
自分で将来の資産をつくらなければならない。資産運用の目標は、最低限インフレに負けず購買力を維持すること。そしてできれば、安全にさらに殖やすことである。ただ幸いなことに、世界全体で見ると人口は増え、経済成長は続く。グローバルに分散した長期投資で、良いリターンが実現できる。

年金制度の説明。
国民年金、厚生年金、国民年金基金、企業年金について。
確定給付年金と確定拠出年金とは。
確定拠出年金には、個人型と企業型がある。
NISAと確定拠出年金の比較。
資産運用にとって、確定拠出年金は有利な制度だ。

投機と投資、資産運用について。
資産運用では、資産全体がどうなっているか、長期的に目的とする水準まで安全に殖やせるかが重要である。就業中に資産形成をし、退職後に資産活用して生活していくが、これらをまとめて資産運用と考える。投資は自己責任でリスクを取り、応援したい企業を自分で選ぶ、社会を良くする行為である。

リスクとリターンについて。
リスクとは将来の不確実性のこと。
期待リターンとポートフォリオの説明。
時価総額の比率に従い、株式投資は日本10%、先進国80%、新興国10%とする。

長期投資について。
長期の投資により、複利の効果が活きる。
投資の成果の90%は、アセット・アロケーション(資産配分)で決まる。
年齢が上がれば、リスク資産の割合を減らす。(50代半ばまでは株式8割債券2割、50代半ばから70歳は株式5割債券5割、70歳以降は株式2割債券8割など。)
投資先は、グローバルに分散されたインデックス運用がよい。
コストの低い投資信託を選ぶ。

・マイルドなインフレを起こしながら金利を抑圧することが、国策となった。これは実質金利がマイナスの状態に長くとどまることを意味する。インフレに強いと考えられる資産は、株式、物価連動国債、不動産や商品のような実物資産、外貨である。

税制上有利な口座で、どう運用するかを考えるのが、アセット・ロケーションである。一般の課税口座、確定拠出年金、NISA、財形貯蓄がある。
退職後資金:確定拠出年金、NISA、課税口座で運用。
5~10年以内の支出:NISA、定期預金で運用。
5年以内の支出:定期預金、普通預金で運用。
生活費と予備費:普通預金。

資産運用計画のつくり方。
①投資環境の把握。
②アセット・アロケーションとアセット・ロケーションを決める。
③投資対象の金融商品を選ぶ。
④取引。
⑤モニタリングとリバランス。

個人投資家は、積立投資が基本となる。
毎月(毎年)同じ金額を投資するのが、ドルコスト平均法。より効率的な積立をめざすのが、バリュー平均法。

バリュー平均法の説明。
バリュー経路とは、積立の目標累計金額。毎回、バリュー経路に達するように買い増す。時価残高がバリュー経路を上回ったら、超過分を売る。
今回の追加積立額 = バリュー経路 - 現在の時価残高

 

書評

丁寧でわかりやすい、確定拠出年金の解説本です。気になるのでちょっと年金のことを調べているが、でもどうすべきかまだわからない、といったあたりの人に適当な本と思われます。本書は、個人型か企業型の確定拠出年金に加入できる人向けに書かれています。確定拠出年金は有利な制度なので、加入資格のある人はとりあえず読んで勉強してみるのがお得です。投資の基本的な説明もあるので、投資初心者でも読めます。

今の日本人で将来が安泰なのは、とても能力がありガンガン稼ぎ続けられる人や、大企業や役所に長く務めて、資産と手厚い年金を準備済みの人でしょうか。普通の日本人というカテゴリーに括られる程度の人は、自分の身を守る方法を考えた方がよさそうです。

身を守るには、稼ぐ能力である人的資本を高めることと、資産を用意することにつきます。人的資本については、現在の仕事を頑張りつつも、仕事の延長や趣味・特技といった方向で副業を考えるのもいいと思います。副業から将来の独立に至ることもありますし、リスクの少ない状態で稼ぐ手段に関し試行錯誤しておくと、いろいろ勉強になります。

資産に関しても、早めに動き始めることが大切です。少額からでも投資を始めることが勉強になると、本書で述べられていますが、実際その通りです。60歳近くで年金のことを考え始めても、資金の積み立てという点からも遅すぎますし、金融リテラシーの基礎知識を持たなかったために人生で相当損をしています。

確定拠出年金は、国民年金しかない自営業者や、年金制度を用意していない企業の従業員のためにあります。つまり公的な社会保障制度が薄い人々のためのものです。自衛が必要な人向けの、かなり有利な制度です。本書や「金融機関がぜったい教えたくない 年利15%でふやす資産運用術」などを読んで自分で考え、自分に合った形で利用し倒しましょう。
(書評2014/12/25)

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA