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「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」 足立武志(著)

 

株式投資に必須の、チャート分析を解説した本です。

「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」はファンダメンタルの解説、本書はテクニカルの解説で、2冊で1組という位置付けです。

 

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

株式投資をする人。特にチャートの勉強をしたい人。

 

要約と注目ポイント

個人投資家のファンダメンタル分析は、どうしてもプロの投資家に劣る。それを補うのが、株価チャートの分析だ。

業績が良いと考えても、株価が下がるようなら市場の動きに従うべき。自分の予想が間違っていることを教えてくれるのが、株価チャートである。チャートには、プロの投資家の行動が表れる。

 

能力的にプロに負ける個人投資家を助けてくれるのが、株価チャートです。

 

株価チャートの基礎知識

ローソク足、移動平均線、トレンド、売買高など。

 

売買の基本

トレンドに従う。移動平均線が上向きで、株価がその上にあるのが上昇トレンド。移動平均線が下向きで、株価がその下にあるのが下降トレンド。

上昇トレンド:新規買い、持ち株は保有継続。
下降トレンド:持ち株は売り、新規買いはしない。

 

トレンドに乗ります。トレンドには逆らいません。

 

基本的な買いタイミング

移動平均線からの乖離が小さいうちに買うのが理想。損切りの損失を小さくできる。

①上昇トレンドへの転換直後。

②押し目のあとで、反発したところ。

③直近高値を超えたとき。

ほかの買いタイミングについて。

①底値圏での買い。(底値や直近安値などを下回れば損切り。)

②急落時のリバウンド狙い。(底打ちしたと思われるチャートの形。日経平均株価の25日移動平均線からのマイナス乖離が10%超、個別銘柄の25日移動平均線からのマイナス乖離が30%超、25日騰落レシオが60~70%前後など。)

③過去の節目超え。

 

適切なタイミングで買うことが、損失を小さく抑えます。儲けることより、まず大損害を防ぐことを考えます。

 

基本的な売りタイミング

移動平均線を割り、下降トレンドに転換したら、すみやかに売る。再び上昇トレンドに戻れば、買い直す。

ほかの売りタイミングについて。

①直近安値割れ。

②急騰時の売り。

③吹き値への対処。

 

損切りの方法。

①原則は、25日移動平均線割れ。

②直近安値割れ。

③5日移動平均線割れ。

④買値からの下落率(10%など)で売る。

 

含み益があるときの売りタイミングで、パフォーマンスに大きな差が出ます。また、損切りは早くするのが定石と言えます。

 

実践的な株式売買の方法

空売りの考え方と方法。

トレンドを見極める考え方。

トレンド転換直後の、急騰や急落に備えた逆指値注文の方法。

レンジ相場への対応法。

大相場への対応法。

ポジションの管理法。

株価チャートの分析に加え、ファンダメンタル分析、売買高と信用取引残高の確認を行うと、成績が向上する。

 

その他の解説事項。

決算発表。

増資。

突発的な暴落。

バブル。

IPO銘柄。

大天井をつけた株。

 

売買の方法や個別の事項の解説では、著者の投資経験を十分に学ぶことができます。

 

個別銘柄のチャートを使った実戦練習。

 

具体的な銘柄で、数多くのチャートを使って解説します。

 

書評

以前に読んだ「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」がとても勉強になったので、姉妹編の本書も読みました。

実は「ファンダメンタル投資の教科書」の方でも、必要最小限のチャートの解説はされていました。トレンドについていくため、移動平均線の説明などがありました。

本書は、その部分が詳しく拡大されたと言えます。

著者の手法は、トレンドに乗る順張りです。規律に沿った損切りで大きな損失を避けながら、利益は大きく伸ばすことを目標とします。著者が使用するのは、専ら25日移動平均線です。

このあたりは、各個人の好みや経験にも左右されるかと思います。買いシグナルや売りシグナル、トレンドの判定で使い慣れた指標があれば、それを使っても良いのかもしれません。

投資の本でよく書かれていますが、大切なのは利益を伸ばし、損を小さくすることです。本書では移動平均線というとてもシンプルな指標で、これを実践します。

本書を参考に規律正しくトレードすれば、大損を回避し、勝ちに近づけそうな気がします。基本的なチャートの形なども説明されていて、勉強になりました。

いろいろな銘柄のチャートを使い、売買のタイミングを論じているので、実際のトレードで応用できると思います。

個人的に残念なのは、このような株式投資の実践本を、もっと昔に読んでおくべきだったことです。

私は、アベノミクス相場のごく一部分にしか乗れませんでした。分散投資は少し実行していたので、円安と米国株高に関しては恩恵を受けられたのですが。

しかし、勉強も無駄ではないはずです。投資家の真価が問われるのは、下落相場です。アベノミクス相場で大儲けはできませんでしたが、バブル崩壊には巻き込まれないようきっちり逃げたいと思います。

それほど遠くない時期に、米国株式市場の下落や、アベノミクスの終わりが考えられます。そのときは失敗しないように、利益確定と早い損切りで逃げていきたいと思います。
(書評2015/07/24)

「株式売買スクール」 ギル・モラレス/クリス・キャッチャー(著)

 

7年間の株式投資で18000%を超える収益!
成長株投資で有名なウィリアム・オニールのもとで、著者たちはポートフォリオマネジャーを勤めました。本書では、超絶パフォーマンスを生んだ株式の投資法を解説します。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

成長株投資で大成功したい人。

 

要約

株式投資で成功するためには、ジェシー・リバモア、リチャード・ワイコフ、ウィリアム・オニールといった偉大な先人から学ぶ必要がある。
投資の前に、よく調査し準備せよ。
株は安値ではなく高値で買え。
損切りは素早く、利食いはゆっくり。
利益を出す銘柄に資金を集中させよ。
機関投資家の買う株を買え。
チャートパターンを見極める。
正しい買いのポイント、ピボットポイントで買え。
感情、個人的な見解、ニュース、耳寄り情報に動じない。
トレードしすぎない。辛抱強く待て。

クリス・キャッチャーが7年間で18000%の利益を得た方法。
四半期の売上や利益が、加速的に増加している銘柄を選ぶ。
揉み合いのベースからブレイクアウトしたところで、集中的に買う。
10日移動平均線を下回って、下落したところで売る。

ギル・モラレスが11000%の利益を出した方法。
四半期の売上や利益が、加速的に増加している銘柄を選ぶ。
揉み合いのベースからブレイクアウトしたところ(取っ手付きカップの形)で、集中的に買う。
50日移動平均線が強い支持線となることを確認し、買い増す。
マーケットが調整中なのにブレイクアウトしそうな銘柄は、マーケットが上昇トレンドになると大化け株になりやすい。
ピボットポイントからブレイクアウトして、3週間以内に20%上昇したならば、損切りにならない限り8週間は保有する。
チャートパターンが天井を示し、大商いを伴って、窓を開けて下落したところで売る。
分散投資せず、大化け株に集中投資する。

失敗から学ぶ。
儲かってくると、思い上がってすべてがわかったような気になるが、そのようなエゴを抑えることが大切だ。自分ではなくマーケットが正しいので、常に観察してマーケットの示すサインを読み取れ。
物質的な欲求にとらわれず、マーケットの波に乗り続けることだけに専念する。
先入観で銘柄にほれ込まず、自分の投資法(銘柄選択の条件やトレード手法)を守る。
週足チャートで、最低6週間の適切なベースが形成されていなければ、買わない。流動性の低い銘柄を、大量に買わない。
景気や相場サイクルに関わらず、そのときの経済状態で最先端の企業が、大化け株の核となる。新しい経済や業界の重要な地位にある企業を、機関投資家は必ず買う。大化け株には、1日の平均出来高が大きいという特徴がある。
まず自分の銘柄の観察に集中する。マーケットの指標を気にするのはそのあと。
空売りでは、絶好の機会を待つ忍耐力が重要だ。

・ベースからブレイクアウトして高値を更新する銘柄を、さらに早い段階で発見する方法、ポケットピボットについて。

適切な売りシグナルについて。
50日移動平均線を下回ったら売る。買ってから7週間、50日移動平均線の上で持ちこたえたら、それ以降は10日移動平均線を下回ったら半分売る。50日移動平均線を下回ったら、残りの半分を売って手仕舞う。

空売りの基本ルール。
マーケットが下降トレンドであり、弱気相場に入った早めの段階で行う。
直前の強気相場で大きく上昇した大型の主導株で、天井を付けた銘柄を空売りする。
空売りは、天井をつけてから8~12週後に行う。
出来高が多く、流動性のある銘柄を空売りする。
損切りは3~5%に設定する。
利益目標は15~30%が適当。20日移動平均線をトレイリングストップに使ってもよい。
空売りでは、絶好の機会をひたすら待つ。チャートパターンの完成と、急激な株価の下落、大商いを伴うブレイクダウンである。

・マーケットのタイミングを計る、マーケットダイレクションモデルについて。

オニールの十戒。
自己を見失ってはならない。
恐怖を克服する。
敵の中傷から自身の欠陥を学ぶ。
失敗から常に学ぶ。
保有銘柄について話してはならない。
天井で調子に乗らない。
まず週足チャート、次に日足チャートを見る。
まず大化け株を見つけ、次に大量に買う方法を見つける。
付き合う人間は慎重に選ぶ。
常に異常なほどの集中力を維持する。

・オニールと一緒にトレードした経験談。過去に売買した銘柄に関する、チャート分析と解説。

 

書評

オニールの成長株投資に倣って利益をあげた、トレーダーの著作です。著者たちはオニールに学び、オニールの売買ルールを微調整して大きな利益をあげたそうです。

とにかく長い本なので、はじめに著者たちの売買ルールをすべて説明してほしいと思いました。この銘柄をチャートのこの位置で買い、大成功した。こちらの銘柄でも大成功して、利益が500%だった。この売買では大失敗した。などとトレードの経緯が、ずらずら長く書かれています。

はじめに売買ルールが書かれておらず、経過とともにぽつぽつとルールが出てくるので、どういう戦略で取引を始めたのかが理解しにくいです。オニールの成長株投資に興味があるなら、まず「オニールの成長株発掘法 第4版」を読んだ方が良いです。こちらは売買ルールを簡潔に明示しています。そこから、自分に合うように微調整するのが良いでしょう。

読んで納得する教訓もあるのですが、本のページ数が多すぎて冗長です。まとまりに欠ける印象で、「オニールの成長株発掘法 第4版」を直接読んだ方が効率的だと思います。
(書評2015/07/17)

「いつも出遅れる人の株講座」 太田忠(著)

 

アナリスト、そしてファンドマネジャーとして日本株を知り尽くす著者が、アベノミクス相場を解説します。「株が上がっても下がってもしっかり稼ぐ投資のルール」と合わせて読めば、効果倍増です。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

アベノミクス相場に乗れず、悔しい人。難易度は、初級者向けレベル。

 

要約と注目ポイント

個人投資家は、株価が相当上昇してから市場に参加し、売らずに下落相場に巻き込まれることが多い。「買い」も「売り」も遅れがちな個人投資家に、株式投資の基本を伝えるのが本書の目的である。

株式市場では、社会的常識が通用しない。自分に都合のよい仮定や、判断の遅れ、乗り遅れたという焦りは失敗のもと。投資について無知ならば、人生を失うことすらある。

投資の結果は、「気づく」か「気づかない」かで大きく変わる。

相場の循環というのは、何を買っても儲かる上昇相場から始まります。それが慢心を生み、最後に大損失につながります。まずは相場の歴史をよく学びましょう。

株式投資をはじめる前に覚えておくこと

投資で利益をあげるには、安く買って高く売る、高く売って安く買い戻す、のふたつしかない。

高値や安値を、正確にとらえることは不可能。投資では、時間も分散せよ(資金の余力を残せ)。

株は、安値をつけたら割安で高値をつけたら割高、とは限らない。(新安値はさらに下がりやすく、新高値はさらに上がりやすい。)

含み益は、売らない限り現実の利益ではない。含み損は、今すでに存在する損失である。

ポートフォリオのうち、含み益のある銘柄は残し(買い増し)、含み損のある銘柄は損切りするべきだ。

自分の投資行動パターンを認識し、誤りを修正せよ。

信用取引や先物取引は、レバレッジのかかったゼロサムゲームと認識せよ。

損失限定のリスク管理と、着実な利益確定のため、逆指値注文を利用する。

マネー雑誌などの大儲け話を、真に受けない。大儲けした人の裏側には、大損した人が多くいる。

投資を始めるときは、まず投資をする目的を考える。そして、お金を安定運用資金と長期運用資金に分ける。安定運用資金は、予定されている支出のためのもので、預金などで運用する。長期運用資金は、複利で殖えるように運用していく。

利益は必ず確定させ、常に危機を想定して、投資資金を守ることが大切だと伝わってきます。

株価が上下する理由を知る

マーケット全体が上昇する理由(景気拡大、世界経済好調、景気刺激策、金融緩和策、円安、金利低下、市場の売買が活発)。下落はその逆。

個別銘柄が上昇する理由(業績拡大、業績回復、増配、自社株買い、ブームやテーマに該当)。下落はその逆。

銘柄の選び方

①会社四季報や日経会社情報を読む。

②気になる会社のホームページを見る。

③会社説明会資料を読む。

④決算短信を読む。

⑤PERとPBRで、投資判断をする。競合他社や、自社の過去の水準と比較する。

投資してはいけない会社の特徴

業績が不安定、業績見通しが甘い、ビジネスモデルが崩壊、事業計画が迷走、株主軽視、頻繁な社名変更や監査法人変更。

2015年現時点で有望な銘柄

インフラ(建設・不動産)、売上増(インバウンド関連)、値上げできる(食品など)、円安メリット(輸出関連)、原油安メリット(電力・運輸)、全国や世界に展開(小売など)、株主還元やROE改善、革新的新事業、新高値更新、忘れられている銘柄。

投資期間別の銘柄3分類

長期トレード銘柄:3年以上。景気とはほぼ無関係に、業績が安定して成長する。小売りやサービス業で、一般消費者相手に徐々に規模を拡大する会社。例はユニクロ。

スイングトレード銘柄:数カ月から数年。景気敏感株や市況連動株。大半の銘柄が該当する。例はコマツ。

デイトレード銘柄:デイトレードは専業でやらないと無理。テーマ株やブーム株はマネーゲームと心得る。

銘柄選択や分類では、著者の長年の経験が学べます。

上昇相場での投資

パターンとして、マーケット全体が2~3段階にわたって上げる。

①初期:(景気で循環する)景気敏感株を買う。金融や不動産株を買う。

②中~後期:国策に売りなし。国策銘柄を買う。好業績(特に営業利益が伸びている)や上方修正銘柄を買う。

下落相場での投資

こちらもパターンとして、2~3段階下げるパターンが多い。下落相場でこそ、投資家として生死が分かれる。リスク管理が必須。ほとんどの投資家は対応できない。

下落相場では休むのが賢明だが、積極的な投資家なら、日経平均株価などのインバース型ETFを買うのもよい。必ず逆指値をつけて、個別銘柄を信用取引で売るのもあり。保有銘柄をつなぎ売りする方法もある。

景気は循環し、相場は繰り返します。著者の見解は参考になります。

投資における金言の紹介。

時間は運用の武器。分散投資の重要性。売買も時間的に分散する。リスク管理の大切さ。相場は循環する。バブルは繰り返し起こる。過去の好パフォーマンスは繰り返さない。大化け銘柄の特徴。などなど。

気に入った金言があれば、自分への戒めに使いましょう。

 

書評

読んでみると、そうだよなと感じることが多い内容です。でも、なかなか実行できません。利益を大きく損失を小さくするトレード、投資というのは簡単ではありません。買いから売りまで、会心の出来というのはほとんど記憶にないです。

本書の中身は結構「株が上がっても下がってもしっかり稼ぐ投資のルール」と被っていますが、本書の方が軽く読める仕上がりです。教訓的な話が多くなっています。

どちらを読んでもいいですが、自分で投資ルールをつくりたい場合は「株が上がっても~」が良いかと思います。こちらは今から市場に参加するなら、注意喚起として役立つかもしれません。

アベノミクス相場は終盤戦と思いますが、現時点でまだ終わりではないと考えています。まだバブルは膨らみきっていないと思っています。バブルは最後に大きく伸びるそうなので、欲深く日本株をまだまだ買っていますが、いきなりはしごを外されないように損切り覚悟です。本書にある、光通信を最高値で買った話などを聞くと、本当に怖くなります(そのあと20日連続ストップ安)。

投資は考え始めると本当に難しいです。長年プロとしてやってきた方の経験が詰まった本なので、自分で投資するときに助けとなる、良い「気づき」に遭遇するかもしれません。
(書評2015/05/25)

「株が上がっても下がってもしっかり稼ぐ投資のルール バイ・アンド・ホールドを超えて」 太田忠(著)

 

なぜ、バイアンドホールドは通用しないのか?今の日本における投資戦略を論じた本です。アクティブ運用については、株式投資を論じています。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

資産運用の戦略を考えたい人。株式投資が好きな人。難易度は初級者向けあたりでしょうか。

 

要約

現在の株式投資では、過去の成長時代のバイ・アンド・ホールドとは異なる方法が必要だ。上昇局面、下落局面、横ばい局面、それぞれに適切な対応をする。

個人投資家は、機関投資家より有利である。投資資金が小さいのでどんな銘柄にも投資できるし、売買のタイミングも自由である。

はじめに、自分が投資をする目的をじっくり考えること。自分のなかで投資の目的がはっきりしたら、次に手持ちの金融資産を3つに分けてみる
①生活資金。(6カ月ほどの生活費。普通預金などで持つ。)
②安定運用資金。(予定されている支出を賄うための安全資産。あるいは保守的に運用する資産。定期預金など。)
③長期運用資金。(老後のためのような、10年単位での投資。)
①、②の順で貯めること。③は②まで貯めてから。③は複利効果を活かして運用していく。

アセットアロケーションが大切である。一般に言われるように、全資産を国内外の債券と株式で4等分しないこと。はじめて投資をするなら、リスク資産は10%まで(90%は現金)。勉強しながら、リスク資産の比率は上げていく。相場の変動に備えて現金は残し、時期をずらして金融資産を買え。リスク資産は自分の得意分野を多く持つようにする。自分の知らない(理解できない)金融資産は買わない。異なる分野で最低5銘柄以上に分散投資せよ。

リスク管理が最も大事で、リスク管理できないと生き残れない。システム障害に備えて、複数の証券会社を使う。長期運用資金で許容される損失は、マイナス5%まで。ポートフォリオ全体でマイナス5%になる前に損切りをする。機械的に損切りを行うため、逆指値注文は必須である。株価が上昇したら逆指値も上げていき、確実に利益を確定させる。持ち株を何回かに分けて売り、利益確定するのもよい。

含み益は実現させてはじめて利益が確定するもの。逆に含み損は、すでに発生した現実の損失である。

投資行動の記録をつけ、振り返って反省し今後の教訓とする。売買した銘柄と金額、騰落率、売買した理由、ポートフォリオへの寄与率など。

個別銘柄を選択する方法。
①会社四季報や日経会社情報を読み込む。
②目をつけた会社のホームページ、説明会資料(ビジネスモデル、戦略、将来性など)、決算短信をチェック。
③過去のトラックレコードのチェック。(過去の業績予想の修正はどうだったか。)
④疑問点を会社のIRに質問してみる。
⑤バリュエーションのチェック。(同業他社との比較、過去のバリュエーションとの比較。)

PER、PBR、ROEについて。

上昇相場で選ぶべき株。
しっかりした新規事業がある。
自社のビジネスと相乗効果があり、リターンが期待できるM&Aを行っている。
全国的、世界的に展開できる成長力がある。
景気拡大期における景気循環株。
商品の値上げができる力のある会社。
敗者復活してきた会社。
一貫してIRの姿勢がよい会社。
中小型株のアナリストが減っているので、見向きされず放置されている株。
新高値や上場来高値をつけた株。(新安値の株は避ける。)

・上昇相場では、PERもPBRも高くなる。

IPO企業の質は、上場社数が増えるほど低くなる傾向がある。裏付けのない初値がつくことも多い。目論見書を精読し、過去の業績をチェックする。大株主がベンチャーキャピタルである場合は避ける。上場目的は合理的か、真摯にIR活動をしているか、割高ではないか、時価総額は50億円以上か。

ほとんどの成長株は、期待に添う成長期間が3年未満である。成長している産業では、平均以上に成長しているか?成熟した業界なら、一人勝ちしているか?増益率が増収率を上回る、営業利益率が改善している会社は株価が上がりやすい。

下落局面では、信用取引の売りを活用する。また日経225miniの先物取引により、リスクヘッジもできる。ただし、レバレッジはかけてはならない。逆指値注文でリスク管理をすること。

買ってはいけない(売りの対象になる)株。
ビジネスモデルが崩壊した。
常に業績見通しが甘い。
無意味に多角化する。
何度も社名変更する。
過剰な増資やMSCBなどで、株主の利益を損なう。
好況やブームに便乗して上場しただけ。
経営者にとってIPOがゴール。
監査法人を(怪しげな監査法人に)変更する。
地方取引所に上場している。
経営者が自叙伝などを出版する。

株価は上昇より下落の方が速い。また、売られる株(新興市場など)はどこまでも売られる。時価総額が小さく、流動性が低い株は特に危険である。

株式投資で成功するには、心理の制御が必要となる。
恐怖を克服する。(損失をおそれて判断を誤る、利益を失うまいと手仕舞いが早くなりすぎる、他人の意見が気になって判断を誤る。)
市場の激変に対応し、自身の感性を変化させ投資パターンを修正することが求められる。
適切な投資行動がとれる。(慎重さ、計画性、投資ルールを守る、決断力、柔軟性。)
市場のトレンドに追随できる。
現実を直視し、自分で決断し一貫した行動をとれる。
確率的思考ができる。

業績予想が修正されたときの対処法。

アノマリーについて。

投資信託について。

税金について。

 

書評

著者の経歴の出発点が日本株アナリストなので、ほとんど株式投資(日本株)の話です。しかし、資産運用全体の戦略を考えるのにも使える本です。ポートフォリオ全体で許容できる損失比率を設定し、そこから各資産(各銘柄)で損切りするラインを逆算していくのはよい方法だと思いました。

儲ける話より(儲ける話もたくさんありますが)、とにかくリスク管理を説いているので良識的な本ではないでしょうか。下落局面に対応するための信用売りや先物取引でも、レバレッジを戒めています。投資が初めての人用ポートフォリオが、現金90%になっているのはちょっと面白いです(円グラフの90%が現金)。

他の株式投資本と共通する話もありますが、そのあたりは特に大切なことでしょう。投資を考え始めて1冊目にこの本を読むと、よくわからないと思われます。ある程度投資の勉強をして、自分で取引をした段階で読むと納得できるのではないでしょうか。取引の具体的なルールは書かれていないので、自分で自分の得意な手法を開発する必要があります。

本書でも新高値の銘柄を売ってはならないとあります。上場来高値は最高とも述べています。私は持ち株が新高値を何回かつけると、売って利益にしたくなるのですが、確かに利益は伸ばせるだけ伸ばすのが肝要です。上場来高値は含み損となっている人が誰もいないので、売ろうとする人はいないと考えるべきとあって、なるほどと思いました。
(書評2014/09/29)

「株式投資 第4版」 ジェレミー・シーゲル(著)

 

何十年にもわたる資産運用において最も有利な投資とは何か、ということを考える本です。200年分のデータ分析から見えてきた、最高の投資方法とは。

 

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

長期の資産運用について考えたい人。難易度は初級者向け以上かと思います。

 

要約と注目ポイント

1802~2006年の米国市場のデータを分析した。

 

長期で利回りの高い資産運用は株式投資

利息や配当、値上がり益すべてを再投資した実質トータルリターンでは、株式投資が最も利回りが高かった。株式投資は200年間を通して、ほぼ一貫して約7%の利回りを記録した。

長期債の利回りは株式より大きく劣り、短期債の利回りはさらに低かった。金(ゴールド)や預金では、実質トータルリターンはほとんどなかった。特に第二次世界大戦以降は、債券や預金のリターンは低くなり、預金はマイナスのリターンだった。

債券は株式より安全と思われることが多いが、金利やインフレ率の影響を受けやすく、債券は長期では利回りが悪くなる。米国以外の国のデータでも、株式投資が最も利回りが高かった。

20年程度より長い期間で投資をするなら、株式の利回りが債券の利回りを上回る。これはどの時代の期間を見ても、ほぼ当てはまる。

たとえ株価がピークのときに投資を始めても、20~30年の期間があれば株式の利回りは債券より大きくなる。債券をポートフォリオに入れることで、リスクを低減できる可能性がある。

 

歴史的なデータを見ると、長期では株式投資が最も利回りが高く、有利な資産運用です。平均すると、年7%ほどの利回りでした。

 

投資の基礎知識

株価指数(ダウ平均、S&P500、ナスダックなど)や、その構成銘柄についての解説。

上場投資信託、株価指数先物、オプションについての解説。

ブラックマンデーの教訓。

 

資産運用の考え方

資産の運用利回りを最大化するために、税金について考えることは重要である。税制面で債券投資は株式投資より不利で、債券投資のリターンを低下させる。株式の値上がり益に対する税は、売却するまでかからないためである。

しかし値上がり益は購入時と売却時の価格差なので、インフレ率が高いと税が大きくなり利回り低下の原因となる。

 

株式投資はインフレに強いと言えます。ただ猛烈なインフレが来ると、値上がり幅が大きくなり、売却した場合の税金が重くなります。

 
株式の価値は、企業の利益と配当に基づく。一般に株式、債券、不動産など資産の価値は、将来受け取ることが期待できるすべてのキャッシュフローを現在価値に割り引いた価格である。株価は、将来の配当総額の現在価値と等しい。

企業の利益は、本業からの利益をコアとみなすべきである。従業員のストックオプションを費用計上し、年金費用を調整し、本業と無関係なキャピタルゲインやのれん代の減損は除外されるべきだ。

PERの逆数である株価益回りは、将来の実質利回りの参考にできる。

経済成長率の高い国や成長率の高い時代の株式市場は、逆に株式利回りは低かった。これは高い経済成長には設備投資が必要で、借り入れや増資が行われたためと考えられる。

今後は経済の安定性が増し株式のリスクプレミアムが下がるので、PERが過去の平均値15倍より高い状態が続くだろう。

先進国の高齢化は、資産の買い手を減らし株価の下落要因となる。それを防ぐために、新興国と資本市場が統合されるべきだ。

GDPや株式資本のシェアは、先進国から新興国へと移っていく。米国株式市場だけでなく、他の先進国や新興国にも分散投資すべきだ。

投資先の国やセクターを分散させることで、ポートフォリオ全体のリスクを軽減できる。

 

経済成長率が高くても、株式利回りで有利になるとは限らないようです。そうなると、多くの国に分散投資することは、安定的にリターンを高めることに貢献しそうです。

 
過去のデータは効率的市場仮説に完全には合致せず、市場にはノイズがある。

PERの低い割安株は、高い利回りを示した。PBRの低い割安株も、利回りは高くなった。また高配当な銘柄群は、最終的な投資利回りが高くなった。小型株には大型株より利回りが高くなる時期があった。

ただし常に平均を上回る戦略は存在しないことを、投資家は認識すべきである。

 

長期のインデックス運用で、広く分散投資することが、資産運用の正解です。ただし、市場には歪みがあることは、認識しておくべきでしょう。

 

インフレと景気循環

金本位制からの離脱や通貨切り下げ、金利引き下げなどの金融緩和政策は、株価とインフレ率を上昇させる。マネーサプライを増加させれば、インフレ率が上昇する。

インフレに対し、短期ではどのような金融資産でもインフレヘッジの効果は低いが、長期では株式がインフレヘッジに最も優れている。

株価は企業の利益に左右され、企業の利益は景気循環に影響される。しかし景気循環を正確につかむことは極めて困難である。

そのため投資家は、景況感を後追いして売買してはならない。市場が楽観的なときに高値で買い、悲観的なときに安値で売ることになるからだ。

経済指標の発表は、景気循環やインフレ率、企業利益の予想を変化させる。また中央銀行の政策に影響を与える。これらは株価に影響するが、投資家は短期的に反応するより長期的な投資戦略に専念した方がよい。

 

長期的な視点で投資することが、最後には良いパフォーマンスを残すと考えられます。

 

すぐれた投資とは

株価の動きがランダムではなく、チャートに意味があるという主張は疑わしい。しかしトレンド・フォローやモメンタム投資といった方法で、利回りを改善できる可能性はある。

過去のデータによれば、アノマリーは存在する。1月は小型株の利回りがよい、9月は利回りが悪い、クリスマスから新年にかけては利回りがよい、月の前半が後半より利回りが高くなる、など。

将来もアノマリーが維持されるかは不明であるが、アノマリーを利用できるなら利用するのもよいだろう。

不利な投資行動を避けるため、投資の心理学(行動ファイナンス)について認識しておくべきだ。

アクティブ運用ファンドが市場平均に勝つのは難しい。長期投資家は、時価総額加重インデックスファンドのようなパッシブ運用がよい。

今後はファンダメンタル加重平均のインデックスファンドなど、バリュー重視のパッシブ運用も期待される。

株価が大きく動いた日に、その原因が重大なニュースにあった事例は実はあまり多くない。株価の先行きを予測することはほとんど不可能である。

長期投資で成功するには、感情を制御し、長期的な目標と決定した投資戦略を維持することが重要だ。

 

200年という長い期間のデータで、株式市場を分析しています。個人投資家が長期で資産運用するのに、とても貴重な教訓となります。

 

書評

資産運用を俯瞰的に、大枠から考える本です。個別銘柄やら投信やらを選ぶ前に、まずどういう考え方で投資するかを決めることが大切ですが、本書はそういう方向に役立ちます。

過去200年のデータを分析することで、有利と推測される投資行動を考察しています。そういった意味で、本書は「敗者のゲーム」「ウォール街のランダム・ウォーカー」と同じような位置付けかと思われます。

なお本文中に、税制面で株式投資は債券投資より有利とありますが、これは完全に米国に関する記述です。日本の税金については自分で考えないといけません。

本書の内容は、過去のデータ分析をもとにした投資戦略本と似ています。まとめると普通です。

『超長期で見れば、株式投資が最も利回りがよい。ファンダメンタル面で割安な株を選び、パッシブ運用など分散投資をして、取引コストを節約して長期で保有せよ。経済や株価の予想はほとんど当たらないと考えるべきで、市場心理に巻き込まれないこと。決めた投資のルールを長期で守ること。』

すごく普通なまとめですが、本書は効率的市場仮説に基づくパッシブ運用至上主義ではありません。トレンド・フォローの有効性に言及したり、アノマリーを認めたりしています。

市場に関する解説を読んでも、同意できるところがあります。このように市場は反応したり動いたりするよな、と実際に取引している感覚に近い解説です。

本書の知識を土台に、パッシブ運用を基本に据えながら、自分に合った長期投資戦略を考えてみてはいかがでしょうか。
(書評2014/09/23)

「ビル・ミラーの株式投資戦略 S&P500に15年連勝した全米最強の投資家」 ジャネット・ロウ(著)

 

1990年代から2000年代にかけて、米国株式市場でS&P500を15年連続で上回る成績を残した投資家、ビル・ミラーに関する本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

株式投資で市場平均に勝ちたい人。ハイテク株も保有する、変則的なバリュー投資の手法を知りたい人。解説書というよりは、やや読み物に近い本です。

 

要約

ビル・ミラーはファンドマネージャーとして、1991年から15年連続でS&P500に勝ち続けた。ミラーはバリュー投資を行うが、割安な株だけでなくハイテク株などにも投資する。大学では法律、政治倫理、哲学などを学び、投資家となった後も最新の自然科学や社会科学の研究に関心を持っていた。

・本質的な価値に比べて、大幅に割安な株価の企業に投資する。投資対象は限定せず、ハイテク企業なども含まれる。バリューとは、投資が生み出す将来のキャッシュフローの現在価値がバリューであることだ。マーケットが弱気のときが、投資には好機だ。

・資源開発、農業、汎用品製造などの分野では、従来の経済学にある効用逓減の原則が成り立つ。しかしソフトウェア、医薬品、航空機など知識集約産業では、効用は逓増する。すなわち、市場やシェアが拡大すれば、ますます利益は大きくなる。

コスト優位性、ネットワーク効果、親しみやすい状態という3条件があれば、効用は逓増する。コスト優位性とは、初期投資(研究開発費)は莫大だが複製をつくるコストがきわめて低いことである。ネットワーク効果とは、ある製品を使う人が増えれば、それを使わざるを得ない状況が増え、その製品の普及が加速することである。親しみやすい状態とは、消費者がある製品に慣れれば、さらにずっと使い続けることになる状態を指す。
このような理由で、初期に優位に立てば、圧倒的な地位を占めることもある。ただし有利な立場は、10年くらいしか持続しない。

効用の逓増するハイテク業界では、勢い(動的なプロセス)が重要となる。

・(市場のような)複雑な状況では、問題を定義すること自体が難しく、論理的に考えることもできなくなる。パターンを認識しモデル化するという、帰納的な思考が有効である。

・金利やGDPを予測することは不可能である。予測できない変数を予測してポートフォリオを運用することは、過ちを引き起こす

ミラーが影響を受けた、サンタフェ研究所の経済思想。
①個々の市場参加者が相互の行動を推測して行動し、相互作用の結果として経済事象が発生する。
②世界経済全体の管理人は存在せず、経済は常に新しい条件に適応して変化し、均衡点はほとんど実現しない。

ミラーは企業の本質的な価値を推測するため、定量的な分析と定性的な分析を行う。
定量的分析:PER、PBR、キャッシュフロー、ボラティリティなど
定性的分析:企業の製品、競合、戦略、産業動向など
しかし伝統的なバリュー投資では、有形固定資産を持つ企業を買う傾向がある。動きのあるハイテク株などへの投資では、広い視野が必要となる。将来得られるキャッシュフローを、どれだけ正確に推計できるかが問題となる。

・投資に成功した株の特徴としては、一時的な問題で大きく値下がりした株業界トップ企業の株経営者が優れている企業の株利益率が高い(資本調達コストより高い)事業を持つ企業の株、などがあった。

モダン・ポートフォリオ・セオリーを意識する。
リスク・リターンの観点から投資対象を評価し、資産配分を決め、銘柄を選んでポートフォリオを最適化し、投資成績を評価する。

資産配分では、大部分を株式に投資する。ひとつのセクターには集中させない。景気循環型の銘柄は避ける。

 

ミラーの投資原則

バリュー投資を基本とし、環境変化に応じ投資戦略を進化させる。

・慎重にバリューかどうか評価し、企業の本質的価値より大幅に安い価格で買う

・経済と株式市場について、観察はするが予想はしない

・優れたビジネスモデルを持ち、長期にわたり利益率の高い企業を選ぶ

誤った市場心理に惑わされず、逆にそれを利用する。

・株価が上昇している競争力のある企業をポートフォリオに残し、競争力がない企業は外していく

平均購入コストを低く抑える

ポートフォリオは15~50銘柄に絞る。

長期投資し、保有株の回転を低く保つ。

株を売却する時期。
①株価が適正になったとき。(株価が本質的価値まで上昇し、割安でなくなったとき。)
②より割安な銘柄を見つけたとき。
③投資環境が変化し、投資戦略を変えたとき。

・銘柄選択の正解率を上げるのではなく、ポートフォリオの予想利回りの最大化をめざす

 

書評

15年連続で市場平均に勝つという、とんでもない成績を残したファンドマネージャーについての本です。ビル・ミラー本人が書いてはおらず、ライターが本人へのインタビューや取材をまとめて書いたので、読み物っぽく仕上がっています。そのため投資手法を勉強したい人には、ちょっと使えない印象です。ミラーの投資原則としてまとめられているところだけ、簡潔でわかりやすいです。

ITバブル崩壊後に書かれたのでハイテクやITの話が多く、ひとむかし前の本だなという感想は浮かびました。もう興味は金融危機後の世界の姿だとか、先進国の停滞の真相などに移ってきています。

ミラーの、「経済と株式市場について観察はするが、予想はしない」や「銘柄選択の正解率ではなく、ポートフォリオの利回りの最大化を目指す」といった考え方にはとても共感します。「本質的な価値より大幅に割安な価格で企業に投資し、株価が本質的価値に到達したら売る」という考え方で売買しようと私は現在考えているので、偉大な投資家に同じことを言われると心強くなります。

ところがこれほど優れた投資家であるミラーも、2008年からの世界的な金融危機で大きな損失を出します。どうも金融株を保有して、失敗したようです。これだけ実績がある人でも、市場環境や企業の業績を見誤ることがあるとは、本当にリスク管理は大切です。恐るべき金融市場。
(書評2014/09/12)

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「39連勝!「相場の福の神」が教えるザクザク株投資術」 藤本誠之(著)

 

日本の株式市場や個別銘柄の特徴を利用した、稼げる方法論です。1カ月から数年程度の期間で、日本株を売買して儲けたい人におすすめの本です。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

日本株の取引(1カ月から数年程度の期間)で儲けたい人。
難易度は初級者向け程度。

 

要約と注目ポイント

アベノミクスでは金融緩和によりインフレが起こり、株や不動産などの資産価値は上昇する。NISAという制度もつくられた。株式投資を始めるのにふさわしいタイミングである。増税やインフレから身を守るためにも、株式投資を考えよう。

株式投資で勝つには、機関投資家や外国人投資家の動きを知ること。機関投資家は相場が悪くても常に投資をしなければならず、時価総額が大きい銘柄を主に扱っている。

 

株式相場で個人投資家が考えるべきこと

相場の悪いときは休む。

時価総額の小さい(100億円未満)銘柄を狙う。

時価総額が100億円や300億円を超えそうな、これから機関投資家が買いそうな銘柄を探す。

無配から復配するタイミングの銘柄を探す。

株価は比較で決まる。新興市場にあるような、比較しにくい会社の株は買われやすい。

外国人投資家は、日本株をドル建てチャートで見ていることを意識する。

などなど‥‥

日本株を長年観察してきた著者の、個人投資家向けなアドバイスが満載です。

 

株式市場のアノマリーについて

直近に他の新規上場がないと、新規上場銘柄は値上がりしやすい。

下方修正と決算対策売りのため、9月は株価が下がりやすい。

9月前半の日経平均採用銘柄の入れ替えで、売買が発生する。

欧米系投資家は夏休みとクリスマス休暇は取引せず、オイルマネーはラマダン期間中に取引が鈍る。国内機関投資家では、年金は3月に決算対策売りをして5月以降に買う。国内投信は、6月と12月のボーナスシーズンに買いが増える。

秋のノーベル賞や学会シーズンに、医薬品や創薬ベンチャーが値上がりすることがある。同様に産業展示会では、電機やゲームの銘柄が上がることがある。

などなど‥‥

季節要因による日本株の特有な動きを解説します。長年の経験で発見した細かく稼げるポイントが、たくさん挙げられています。

 

株式の情報を収集する

皆が見ている情報源を押さえることが大切である。皆が知っていて買いたくなったり売りたくなったりする情報で、株価は動く。「日経新聞」が一番で、そのほか「ダイヤモンドZAi」「日経マネー」「ネットマネー」「ワールド・ビジネス・サテライト」「モーニング・サテライト」「会社四季報」など。

日経新聞の気になるニュースを保存しておく。自分なりのストーリーをつくったり、関連銘柄を探すのに役立つ。

日経の好材料に朝一番で飛びつくと、高値掴みになりやすい。

日経の記事は、企業側からのリークも多くある。

私の履歴書(Web版の経営者ブログ)に経営者が連載している間は、その企業の悪いニュースは出にくい。

会社四季報の業績予想で株価は動く。会社四季報のデータはすべて役立つ。バックナンバーをとっておき、過去のコメントやデータと比較する。ネット証券のサイトで、四季報発売前に四季報速報が出ていれば注目。

企業のホームページや決算説明会資料も確認する。その第一印象や会社の姿勢をみる。

3月号のマネー誌を保存しておく。株主優待特集が毎年あるので、前年の銘柄を参考に先に買っておく。

新しく運用開始する投信に、テーマがあればチェックする。運用開始日に投信が大量に買うので、銘柄が予想できるなら先に買っておく。

国策に売りなし。現在わかっていることから、実現する可能性が高い事柄を予想する。

などなど‥‥

株価を動かす要因についても、とても詳しく解説があります。

 

株式のおすすめ投資方法

個人投資家(特に平日仕事がある人)は、過去の事例から値上がりしそうな銘柄をあらかじめ買い、中期(数週間から1年以上)で保有し、高値で売るのがよい。

木曜日には手仕舞いし、金土日で情報収集して作戦を考える。中長期の視点で売買すること。週末には、来週のイベントや相場の状況(新高値銘柄、出来高の大きい銘柄、値動きの大きい銘柄)、チャートのトレンドなどを確認する。

頭と尻尾はくれてやれ。落ちるナイフはつかむな。

買った理由が失われた株は売り、早めの損切り(5%の下落など)をすることで、塩漬け株をつくらない。イベントを狙って買った株は、売るべき時期に必ず売る。

などなど‥‥

株式の情報を生かした投資方法を解説します。これも非常に実践的なアドバイスになっています。

 

書評

著者の肩書(?)は、「相場の福の神」となっています。本書の表紙もザクザク儲かるみたいな表記ですし、こんな「相場の福の神」などと自称する人の話は信用できない!と思いつつ読んでみたのですが、意外とまともでした。

著者は日本株の経験が20年以上なので、日本の株式市場に対する経験値はさすがです。日本株式のアノマリーにも通じていて、初めて知ることもあり勉強になりました。

確かに著者が日本株に投資すれば、勝率を高く維持できそうに思います。ただ著者の手法はアノマリーや経験値によるところが大きいので、読者が真似して勝てるようになるには、読者も実戦で経験を積まないといけないように感じます。

読者が銘柄の研究をして勝ったり負けたりしながら取引をし、日経新聞や四季報を読み続けて努力することで、勝率が少しずつ上がるような気がします。日本株式市場の特徴を、身をもって体験し続けることで勝てる手法かと思います。

日本の株式市場はこの20年ほど停滞しているので、他の国のように市場平均を持ち続ければ勝てたわけではありません。市場で起こるブームを素早く察知し、適切に利食いするという姿勢が必要だったと思われます。

著者の手法は経験や知識、アノマリーに優位性があります。そこに個人投資家の取引の柔軟性(いつ何をどれだけ売買するか)が加わることで、勝率を上げられるものと推測します。努力と時間を費やせば、それなりにリターンを向上させられそうです。
(書評2014/09/07)

「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAi「1000万円株バトル!!」優勝者が教える デイトレ&スイング 株ですぐに儲ける法」 Tyun(著)

 

短期で儲ける、デイトレードとスイングトレード。勝てる短期トレード手法を論じた本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

デイトレードで地味に儲けたい人。

 

要約

デイトレードとスイングトレードには、リスク管理がしやすく短期間で大きく儲けられる利点がある。すぐに結果が出るので損切りも早くなり、自分に適した投資スタイルをつくりやすい。

・損切りを徹底しリスク管理をして、短期トレードで少しずつ利益を積み重ねることで、著者は6年間勝ち続けた(2005年からの7年で100万円を1億円にした)。

トレードスタイルの分類。
スキャルピング:数秒単位の取引。
デイトレード:数分から数時間。
スイングトレード:数日から1~2週間まで。
ポジショントレード:数週間。
中期トレード:数カ月。
長期トレード:数年以上。

・市場で勝てる投資法は変化するし、アルゴリズムによる高速取引も普及した。そのため、損切りの幅が小さく危険性の低いデイトレードとスイングトレードをおすすめする。平日昼間に取引ができないなら、時間軸を長めにとったスイングトレードやポジショントレードがよい。

デイトレードのデメリットには、手数料がかかる、ザラ場をずっと見ている必要がある、アルゴリズム取引の影響を受けやすいという点がある。手数料の安い証券会社を選ぶこと。

自分の生活でどれだけ損失を出しても平気かあらかじめ想定し、許容範囲内で取引する。元手には最低100万円をつくること。

・空売りできる、レバレッジをかけられる、手数料が安くなるというメリットがあるので、信用口座を開こう

銘柄の癖や特徴をよく観察し、自分と相性のよい得意な銘柄をつくろう。流動性とボラティリティがあり、賃借銘柄であるとよい。大きなニュースや開示情報が出た銘柄、得意なチャートの銘柄、高値や安値をブレイクしそうな銘柄を探す。スクリーニング機能も使う。

自分の得意な金融商品、業種、銘柄群、投資スタイルに集中すること。

高値(安値)をブレイクしたのについていくのが基本である。25日移動平均線でトレンドをつかむ。過去数時間から数日の価格帯別の出来高を見れば、他の投資家のポジションを推測できるので、先に行動できる。価格帯別の出来高が集中している付近を抜けると、ブレイクしやすい。直近の高値・安値や、25日移動平均線付近でもブレイクしやすい。

下にブレイクするのを狙うのがおすすめ。上より下に行く方が速い。また、売りが得意な投資家は少ない。ただし早めの損切りは必須であり、高額な逆日歩にも要注意。

相場の動きが悪いときや迷ったときは、休んでもよい。

仕手株には関わらない方がよい。

両建ては基本的にはしない。売り禁になりそうな銘柄の売りポジションをつくる、50単元規制に抵触せずに売りポジションをつくる、優待を貰う、というときだけにする。

銘柄の賃借状況も確認しておく。

株価の動きが想定と異なったとき、持ち続けるか迷ったとき、需給が悪化したときは損切りする。

気配値から情報を読み取りトレードする方法。

ストップ高(安)について。比例配分があるので、実際の需給を見極めることが重要。

失敗したトレードを書きとめて、定期的に投資手法の問題点を洗い出し改善する。収支をつけて成績を確認する。

 

書評

何か新しいことを始めるとき、私はまず教科書的な本で勉強したくなるのですが、本書はテキストには向きません。デイトレードをやりたい人が、たくさん読む本のうちの1冊かなという感想です。デイトレードがどんなものか少しはわかったので、勉強にはなりました。

要旨ではほとんど触れていませんが、気配値の解釈やそれを受けてのトレード方法についてけっこう記述があります。本当にモニターの前に張り付いていないとできないので、自分にはデイトレードは無理だなと思いました。

私とは投資スタイルが異なりますが、このようなやり方もあるのかとわかりました。偉そうだけど全く予想が当たらないエコノミストやストラテジストよりは、ある程度の期間勝ち続けている相場師の発言の方に価値があるかと思いますので、まあ読んでもよかったかなと感じます。すぐに読み終わりますし。リーマンショックや東日本大震災の暴落を受けても勝っているところは大したものです。
(書評2014/09/06)

「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」 足立武志(著)

 

ファンダメンタル重視の中期投資で、トレンドに乗る順張りが基本戦略です。売買の方法を具体的な数値で教えてくれる、実践的な株式投資の教科書です。

株価チャートについては、シリーズの「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」をお読みください。

 

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

株式投資を勉強したい人。
自分で銘柄を選んで中期(数カ月から2~3年?)投資したい人。
難易度は入門書~初級者レベル。

 

要約と注目ポイント

将来値上がりする株を探すのに、決算書は有効である。しかし、個人投資家が決算書を読むのは難しい。

本書では、決算書の重要なポイントだけを読み取って銘柄を選ぶ手法を解説する。それに加えて、選んだ銘柄の株をどのように買い、どのように売るかという一連の流れについても扱う。

値上がりが期待できる株は、大きく分けて2種類。

成長株:年々売上と利益が増えている企業の株。
割安株:企業価値に比べて実際の株価が低い企業の株。
(復活株:大赤字から復活した企業の株。大きな上昇率が期待できる。)

これらの株を探すには、「会社四季報」、「決算短信」、「有価証券報告書」を見る。

会社四季報:多くの企業の概況を手早く知る。
決算短信:最新の企業情報や業績がわかる。
有価証券報告書:企業をじっくり調べる。

 

どういった株が値上がりするのか、その種類がわかります。また、その値上がり株の効率的な探し方も学べます。

 

会社四季報の読み方

株価は将来の業績を織り込んで動くので、四季報から読み取る。ただし、あくまでも予想なので実際の業績と異なる場合もある。

成長株では、売上高と経常利益がともに過去3年以上増加しており、当期と来期も増加が予想される企業を探す。過去は売上と利益が増加していても、将来増加のスピードが鈍ったり減少に転じたりすると、株価は低迷する。

割安株では、PERが低い、PBRが低い、配当利回りが高い企業を探す。PERや配当利回りは変動するので、業績の安定性も確認する。

復活株では、赤字が減少してきている企業や、赤字から黒字へ転換が予想される企業を探す。ただし財務をチェックして、倒産の可能性が低い企業を選ぶ。また、株価が下降トレンドにある間は買わない。

四季報を号ごとに見て、業績予想の変化をチェックする。業績は加速しながら上方に修正されているか、下方修正されていないか。

倒産のリスクをチェックする7つのポイントを解説。この7項目を見れば、危険性がわかる。

株主からわかる、注意すべき3つのポイントを解説。この3つのポイントで、将来の株価下落を予測する。

 

会社四季報の読み方が、具体的にわかります。特に倒産リスクと株主の動向は、見るべきポイントが理解できます。

 

決算短信の読み方

決算短信と四半期決算短信は、合わせて年4回開示される。会社四季報より速報性があり、内容も詳しい。

サマリー情報で、当期の売上と利益の実績と、来期の売上と利益の予想を見る。これを四季報の予想数値と比べる。最新情報と四季報で、業績の変化を確認する。

四季報を読んで詳しく知りたくなったことや疑問点を調べる。決算短信の「経営成績・財務状態に関する分析」を読んでみる。

キャッシュフロー対有利子負債比率や、インタレスト・カバレッジ・レシオで、債務償還能力をチェックする。

賃借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の読み方を解説。

粉飾決算がないか、簡潔なチェックポイントを解説。

会社四季報に、「継続前提に重大事象」や「継続前提に疑義注記」とコメントされていることがある。これに関して、決算短信や有価証券報告書に詳しく記載されている。その読み方の解説。

 

著者は、株式投資を熱心に行われている現役の公認会計士なので、このあたりの解説は本当に勉強になります。

 

PER、PBR、ROE、配当利回り

PER = 株価 ÷ 1株当たり(予想)当期純利益

PERは、投資資金が何年分の当期純利益で回収できるかを表している。

PBR = 株価 ÷ 1株当たり純資産

PBR1倍割れなら、企業を解散した場合に残る財産より株価の方が低いことになる。利益を出せる企業がPBR1倍割れなら、割安と言える。優良株ならPBR1倍が下値のめどとなることも多い。割安株ならPBR1倍が上値のめどとなる場合もある。

ROE =(当期純利益 ÷ 自己資本)× 100

自己資本を元手に、どれだけの効率で利益をあげているかを示す。ROEが高ければ、収益力の高い優良企業と評価される。逆にROEの改善が見込める、現在ROEが低い企業に投資するのもあり。

配当利回り =(1株当たり(予想)配当金 ÷ 株価)× 100

配当利回りが高いと、株価は割安と言える。株価が下がると配当利回りが高くなるので、株価を下支えする効果がある。

PERを投資に使うときの注意点を解説。

PBRを投資に使うときの注意点を解説。

ROEを投資に使うときの注意点を解説。

配当利回りを投資に使うときの注意点を解説。

 

PER、PBR、ROE、配当利回りの数値からどう考えるか。実際に投資する際の注意点は、とても役立ちます。

 

売買の方法

個人投資家より早くプロの投資家が業績悪化を予測するため、業績がよいのに株価が下がることがある。株価は業績のピークより先に下がり始める。

日経平均株価などの株価指数でも、景気の底より半年ほど前に底打ちし、景気のピークより先に天井となることが多い。

業績とは別に、株価の動きにはトレンドがある。上昇、下降、横ばいと3つのトレンドがある。横ばいのときは、上昇か下降のトレンドがはっきりするまで待つ。

上昇トレンド、下降トレンドの見極め方。そして、そのときの売買の方法を解説。

株価は買いたい人の数量(需要)と売りたい人の数量(供給)にも影響される。好業績の銘柄でも、需給が悪化すれば売られる。

供給が多くなる(株価が下がる)原因はいくつかある。典型的な下落原因を、5つ解説する。

売買での大失敗を避けられるポイントを解説。

損切りはルールに従い、機械的に実行すること。

 

この本の特長は、ファンダメンタルをしっかり解説しながらも、そのほかの要素にも目配りしていることです。チャートや需給も考慮することで、マーケットの現実に近づいています。

 

決算書を読み込む

長期にわたり高成長を続ける企業を、早く見つけるポイントを解説。

倒産リスクを見極める、重要ポイントを解説。

粉飾決算を見抜くポイントを解説。

税効果会計の解説。

 

注意すべき複数の指標を、具体的な数値をあげて解説するので、非常に勉強になります。これらをすべて身につければ、投資のパフォーマンスは確実に上がるでしょう。

 

書評

著者は会計士なので、ファンダメンタルズの解説はとてもわかりやすいです。四季報や決算短信については、実際の企業の例が多く出されているので理解しやすいです。

決算短信では具体的な数値基準を示し判断材料としており、自分でも真似できます。また、粉飾決算や税効果会計の説明はさすがで、役立ちます。

しかも会計士だからファンダメンタル至上主義かというとそうでもなく、トレンドを見て売買するという実践派です。良いポイントを突いた解説書だと思います。

こういう感じで時間をかけて分析し、感情を制御して売買できれば、結構良い投資成績が残せるのではと思われます。

株式投資だと流儀が分かれることが多くて、成長株(グロース投資)だけやる、割安株(バリュー投資)だけやる、みたいになったりもします。

ただ著者は守備範囲が広くて、成長株も割安株もやるし、業績が悪化した企業も復活の目があれば投資する(10倍株狙い?)、ということで良い意味で欲張りです。ファンダメンタルズを正確に分析して、成長株も割安株も10倍株も臨機応変に投資できたら理想です。
(書評2014/08/14)

「ピーター・リンチの株で勝つ アマの知恵でプロを出し抜け 新版」 ピーター・リンチ/ジョン・ロスチャイルド(著)

 

伝説のファンドマネージャー、ピーター・リンチの著作です。株式投資の奥義を垣間見ることができます。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

ピーター・リンチの株式投資手法を学びたい人。

 

要約

投資を始める前に、投資をする目的を考え、自分の態度をしっかり決めておくこと。
株式投資についてどう思うか、市場を信頼しているか、何を期待して投資するのか、短期なのか長期投資なのか、株価が急落したときにどうするか、などである。優柔不断で確信が持てないままで投資をすると、暴落のさなかに底値で投げ売りする最悪の行動をとりかねない。

・プロの機関投資家は、アナリストがフォローしておらず推薦していない銘柄は買いにくい。値下がりしたときに責任を問われるからだ。特に企業年金や保険会社で運用する場合は、投資先に多くの制約がある。
アマチュアにはプロの投資家にはない強みがあるので、それを活かせ。あなたはアナリストより特定の分野に詳しいかもしれない。また、どんな銘柄を選ぶか、いつ買うのか、いつ売るのか、どれだけ買うのか、どれだけ売るのか、ポートフォリオにどんな銘柄をどれだけ入れるか、制限がないことは強みだ。

・歴史的に見れば最も収益率が高いのは株式で、次に社債や公共債であり、いちばん低いのは国債である。株式投資はリスクが高いが、債券にも金利変動のリスクはあり、インフレを考慮すると国債は実質利回りゼロに近い。よく調査し長い目で見て基本に忠実に行動すれば、株式で勝てる可能性は高くなるので、株式投資には挑戦する価値がある。10銘柄を選び6銘柄で成功すれば、十分な成果があげられるだろう。

人々が株式市場に集まり人気を博しているときは株式投資に悪い時期で、不人気で無関心なときが株式投資に良い時期となる。

株式投資を始める前にチェックする3つのこと。
①家を持っているか。
よく調べてそれなりの家を買えば、長期間住んだあと値上がりした価格で売れる。株式の前に住宅を買うこと。
②お金が必要か。
2~3年で必要になるお金では株式投資をしない。失敗しても今後の毎日の生活に支障のない、余裕資金で株式投資をする。
③株で成功する資質があるか。
忍耐強さ、自主性、常識、苦痛への耐久力、自由な思考力、謙虚さ、柔軟性、意欲、失敗を認める強さ、パニックを無視する力など。完全な情報がないなかで決断する能力や、自分の変な信念や思い込みを除くことも必要だ。相場先行きの予測や自分の相場観など信じず、それを無視し、ファンダメンタルズに変化がなければ保有したままジッとしていられるか。

相場の先行きはわからない。相場の予測をするよりは、ファンダメンタルズと比較して割安な株を探すべきだ。

・身の回りの物事をよく見ることで、アナリストがまだ見つけていないテンバガー(10倍上がる株)を探し出すことができる。自分が詳しい業界の知識と、一般消費者としての知識は、急成長する新興中小企業を探すのに役立つだろう。
だが候補に挙がった株をすぐに買ってはいけない。会社についてよく調べる。巨大企業の株価は動きにくく、小さい会社の株価の方が動きやすい。

株価の動きから、企業は6つに分類できる。
なお、企業は成長の段階やビジネス環境によって、別の分類へ移ることもある。
①低成長株
大きくて古い会社。国の成長率より少し上くらいの成長である。これらは過去に急成長したが成長が鈍化した会社などで、株価は横ばいで配当は高く安定的である。
②優良株(中成長株)
低成長株を上回る成長をする巨大企業で、株価は緩やかに上昇する。買うタイミングがよければ、かなりの収益が期待できる。ただテンバガーにはなりにくく、2年で50%も上昇すれば利食いを検討する。不況時にも強いので、ポートフォリオに入れるのもよいだろう。
③急成長株
年に20~25%成長する小さい企業で、うまくいけば10倍かそれ以上に株価は上昇する。急成長株は急成長産業の中にあるとは限らず、低成長の業界にあることも多い。ただし急成長株には倒産のリスクや、成長の限界が来て停滞し株価急落のリスクがある。いつ成長が止まるか、どれだけの資金を投資するかの見極めが大事だ。
④市況関連株
売上や利益が循環的に上下し、株価も上下する。自動車、航空、鉄鋼、化学、タイヤなどである。株価は好況時には優良株より大きく上昇するが、不況時は大きく下げる。市況関連株は大企業だが、優良株と混同してはならない。市況関連株はタイミングがすべてである。
⑤業績回復株
業績不振を極め無成長となったが、破綻の手前で回復した株である。相場一般とは無関係に急速に株価は上昇する。業績回復株には、政府の支援によって破綻を回避したもの、予想外の業績悪化から回復したもの、突発的な大事故で下げたもの、倒産企業から優良事業がスピンアウトしたもの、リストラによるもの、などがある。
⑥資産株
アナリストや乗っ取り屋がまだ気付いていない資産を持っている株。自分の業界知識や消費者としての知識を利用して探す。現金、不動産、優良事業などの資産を持っている。

わかりやすい「どんな馬鹿でも経営できる」会社は、投資対象として最高である。
社名が退屈もしくは奇妙、代わり映えしない退屈な業容、感心しない魅力的でない業容、分離独立した、機関投資家が保有せずアナリストがフォローしていない、悪い印象を与える、気が滅入る業容、無成長か低成長の産業、ニッチ産業もしくは独占的、買い続けなければならない商品をつくる、テクノロジーを使う側である、インサイダーが買っている、自社株買いをする。このような会社は素晴らしい。

避けるべき株。
超人気産業の超人気株。(業界内の競争が厳しすぎる。)
第二の××と呼ばれる株。(××は有名企業。)
多悪化した株。(本業と関係ない会社を高すぎる価格で買収し、悪い多角化をする会社。)
耳寄りなストーリーを持つ株。(中身のない特ダネで期待を引きつけている。)
下請け会社。(特定の顧客に依存している会社。)
耳触りのよい社名の会社。

・株をいくらで買えばよいのか。株は会社の部分所有権だということを忘れるな。最終的には株価は収益と並行になる。調べる会社のPERを、株式市場全体、業界平均、過去のPERと比較する。急成長株はPERが高く、低成長株のPERは低くなるが、会社がどのように将来の収益を伸ばそうとしているのか調べてみる。

・ある会社の株を買う前には、十分に調査をし、自問自答すること。買う理由を子供に理解できるように、2分間で自分に説明してみる。

事実を確認する。
年次報告書や四半期報告書をチェックする。証券会社から情報を得る。会社に質問したり、IRから話を聞く。本社を訪問して会社の雰囲気を感じる。商品やサービスを利用したり、販売店を観察する。

注目すべき数字を確認する。
①興味深い商品が売上全体に占める割合を調べる。
②PERを見る。
(成長率+配当利回り)÷PER の値が2以上なら望ましく、1.5でまずまず。
③キャッシュを見る。
1株あたりどれだけキャッシュや、キャッシュに相当する資産を保有するか見る。それを株価と比較する。
④負債を見る。
バランスシートで負債はどれだけか、資産と負債の比率はどうか、短期と長期の負債はどれだけあるか。
⑤配当。
配当がその会社にどのような影響を与えているか。低成長株や優良株なら、配当は着実に支払われてきているか。無配でも急成長しているか。
⑥簿価。
簿価よりも実際の資産価値が低くないか。あるいは、不動産やブランド力や特許に含み資産がないか。
⑦キャッシュフロー。
株価に比べて高いフリーキャッシュフローが得られているか。設備投資の必要性が低い事業が望ましい。
⑧在庫。
売上以上に在庫が増えていれば危険な兆候である。
⑨成長率。
収益の伸びを見る。20%の成長率でPER20倍の会社の方が、10%の成長率でPER10倍の会社よりも望ましい。
⑩税引前利益率。
同業種内で利益率の高い会社がよい。長期保有なら利益率の高い会社を選ぶ。業績回復株なら、利益率が低い方が回復期には利益率の増加が大きい。

定期的に会社をチェックする。
株を買った理由となる状態は維持されているか。会社の成長段階には、本業が発展する始動段階、新規事業を展開する急成長段階、成長が停滞する成熟段階がある。会社がどの段階か考える。

個人投資家は年利回り12~15%をめざして、長期に利益を最大限にするような一貫した戦略をとり、ポートフォリオをつくるとよい。自分の得意な業界や、綿密に調査した銘柄から選ぶ。割安な優良株、最悪期から回復を始めた市況関連株や業績回復株、よく調査した資産株や急成長株などである。買った株の買った理由となるストーリーが崩れ始めたら、他の良い株と入れ替えてポートフォリオを調整する。

・ファンダメンタルズが良好な株が暴落に巻き込まれたときは、絶好の買うタイミングである。売るべきタイミングは難しい。ファンダメンタルズが悪化したとき、買った理由が失われたとき、値上がりしたので利食って別の割安な株に乗り換えるとき(優良株)、業績の循環が頂点に来たと思われるとき(市況関連株)、成長が鈍化したとき(急成長株)、業績が転換点に来たとき(業績回復株)、市場に発見されて値上がりしたとき(資産株)、などが売るタイミングである。業績回復株は回復後に他の分類に移行することもある。

次のような声に惑わされてはいけない。
「こんなに下がったのだから、もう下がらない」
「ここが底値だ」
「これだけ上がったのだから、もう上がらない」
「必ず値は戻す」
「保守的な株は値が動かない」
「これ以上待っても値は動かない」
「値上がりしたから良い投資だった、値下がりしたから悪い投資だった」
など。

オプション、先物、空売りは勧められない。

 

書評

さすがにいいことを言っているような気がしますが、ちょっと本の古さは否めない面もあります。本編はおそらくブラックマンデー直後頃に書かれており、新版に寄せた序章もITバブル崩壊直前あたりに書かれたようです。本文中にあげられる企業やビジネス環境が古いので、例はわかりにくいです。

このあとITバブル崩壊、アメリカの住宅市場バブルとその崩壊、リーマンショック、欧州金融危機と来るので、著者の見解を知りたいと思いました。最近の先進国の超低金利などについて、聞いてみたいです。株式投資の基本は変わらないと言われるかもしれませんが。

企業の6分類や望ましい会社、避けるべき会社の考察には、普遍性があるように感じました。退屈な社名の会社、気が滅入る退屈で人気がなく無視されるような事業の会社こそが最高の会社だ、というのは笑えました。言いたいことはわかりますが。葬儀屋チェーン、ガソリンスタンドの廃油を集める会社、缶と瓶の栓を作る会社(社名はクラウン・コルク・アンド・シール)、採石会社などがあげられています。

住宅はほぼ間違いなく利益が出るので、株の前に買えというような記述もあります。アメリカは今後も人口は増えるので、注意深く選べば住宅も値上がりするでしょうが、絶対はありません。必ず儲かると限度以上の借金で不動産を買った結果が、サブプライムローン危機です。古い本なので読んで納得できるところは教訓とし、現在には合わないかもというところは気に留める程度がいいのではないでしょうか。
(書評2014/07/30)