「ビル・ミラーの株式投資戦略 S&P500に15年連勝した全米最強の投資家」 ジャネット・ロウ(著)

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1990年代から2000年代にかけて、米国株式市場でS&P500を15年連続で上回る成績を残した投資家、ビル・ミラーに関する本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

株式投資で市場平均に勝ちたい人。ハイテク株も保有する、変則的なバリュー投資の手法を知りたい人。解説書というよりは、やや読み物に近い本です。

 

要約

ビル・ミラーはファンドマネージャーとして、1991年から15年連続でS&P500に勝ち続けた。ミラーはバリュー投資を行うが、割安な株だけでなくハイテク株などにも投資する。大学では法律、政治倫理、哲学などを学び、投資家となった後も最新の自然科学や社会科学の研究に関心を持っていた。

・本質的な価値に比べて、大幅に割安な株価の企業に投資する。投資対象は限定せず、ハイテク企業なども含まれる。バリューとは、投資が生み出す将来のキャッシュフローの現在価値がバリューであることだ。マーケットが弱気のときが、投資には好機だ。

・資源開発、農業、汎用品製造などの分野では、従来の経済学にある効用逓減の原則が成り立つ。しかしソフトウェア、医薬品、航空機など知識集約産業では、効用は逓増する。すなわち、市場やシェアが拡大すれば、ますます利益は大きくなる。

コスト優位性、ネットワーク効果、親しみやすい状態という3条件があれば、効用は逓増する。コスト優位性とは、初期投資(研究開発費)は莫大だが複製をつくるコストがきわめて低いことである。ネットワーク効果とは、ある製品を使う人が増えれば、それを使わざるを得ない状況が増え、その製品の普及が加速することである。親しみやすい状態とは、消費者がある製品に慣れれば、さらにずっと使い続けることになる状態を指す。
このような理由で、初期に優位に立てば、圧倒的な地位を占めることもある。ただし有利な立場は、10年くらいしか持続しない。

効用の逓増するハイテク業界では、勢い(動的なプロセス)が重要となる。

・(市場のような)複雑な状況では、問題を定義すること自体が難しく、論理的に考えることもできなくなる。パターンを認識しモデル化するという、帰納的な思考が有効である。

・金利やGDPを予測することは不可能である。予測できない変数を予測してポートフォリオを運用することは、過ちを引き起こす

ミラーが影響を受けた、サンタフェ研究所の経済思想。
①個々の市場参加者が相互の行動を推測して行動し、相互作用の結果として経済事象が発生する。
②世界経済全体の管理人は存在せず、経済は常に新しい条件に適応して変化し、均衡点はほとんど実現しない。

ミラーは企業の本質的な価値を推測するため、定量的な分析と定性的な分析を行う。
定量的分析:PER、PBR、キャッシュフロー、ボラティリティなど
定性的分析:企業の製品、競合、戦略、産業動向など
しかし伝統的なバリュー投資では、有形固定資産を持つ企業を買う傾向がある。動きのあるハイテク株などへの投資では、広い視野が必要となる。将来得られるキャッシュフローを、どれだけ正確に推計できるかが問題となる。

・投資に成功した株の特徴としては、一時的な問題で大きく値下がりした株業界トップ企業の株経営者が優れている企業の株利益率が高い(資本調達コストより高い)事業を持つ企業の株、などがあった。

モダン・ポートフォリオ・セオリーを意識する。
リスク・リターンの観点から投資対象を評価し、資産配分を決め、銘柄を選んでポートフォリオを最適化し、投資成績を評価する。

資産配分では、大部分を株式に投資する。ひとつのセクターには集中させない。景気循環型の銘柄は避ける。

 

ミラーの投資原則

バリュー投資を基本とし、環境変化に応じ投資戦略を進化させる。

・慎重にバリューかどうか評価し、企業の本質的価値より大幅に安い価格で買う

・経済と株式市場について、観察はするが予想はしない

・優れたビジネスモデルを持ち、長期にわたり利益率の高い企業を選ぶ

誤った市場心理に惑わされず、逆にそれを利用する。

・株価が上昇している競争力のある企業をポートフォリオに残し、競争力がない企業は外していく

平均購入コストを低く抑える

ポートフォリオは15~50銘柄に絞る。

長期投資し、保有株の回転を低く保つ。

株を売却する時期。
①株価が適正になったとき。(株価が本質的価値まで上昇し、割安でなくなったとき。)
②より割安な銘柄を見つけたとき。
③投資環境が変化し、投資戦略を変えたとき。

・銘柄選択の正解率を上げるのではなく、ポートフォリオの予想利回りの最大化をめざす

 

書評

15年連続で市場平均に勝つという、とんでもない成績を残したファンドマネージャーについての本です。ビル・ミラー本人が書いてはおらず、ライターが本人へのインタビューや取材をまとめて書いたので、読み物っぽく仕上がっています。そのため投資手法を勉強したい人には、ちょっと使えない印象です。ミラーの投資原則としてまとめられているところだけ、簡潔でわかりやすいです。

ITバブル崩壊後に書かれたのでハイテクやITの話が多く、ひとむかし前の本だなという感想は浮かびました。もう興味は金融危機後の世界の姿だとか、先進国の停滞の真相などに移ってきています。

ミラーの、「経済と株式市場について観察はするが、予想はしない」や「銘柄選択の正解率ではなく、ポートフォリオの利回りの最大化を目指す」といった考え方にはとても共感します。「本質的な価値より大幅に割安な価格で企業に投資し、株価が本質的価値に到達したら売る」という考え方で売買しようと私は現在考えているので、偉大な投資家に同じことを言われると心強くなります。

ところがこれほど優れた投資家であるミラーも、2008年からの世界的な金融危機で大きな損失を出します。どうも金融株を保有して、失敗したようです。これだけ実績がある人でも、市場環境や企業の業績を見誤ることがあるとは、本当にリスク管理は大切です。恐るべき金融市場。
(書評2014/09/12)

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