「株式」カテゴリーアーカイブ

「知識ゼロでも大丈夫! 基礎から応用までを体系的に学べる!株式投資の学校 入門編」 ファイナンシャルアカデミー(編著)

 

株式投資で利益を出そうという教本です。基本的なところを、すっと早く理解するのに適した1冊です。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

個別銘柄(日本株を想定)を選ぶ株式投資で利益をあげたい人。難易度は入門書~初級者向け。

 

要約

まず投資のスタンスを明確にする。
投資期間:デイトレード、スイングトレード、ポジショントレード、長期投資。
分析手法:ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析。
投資金額:資産のうち株式に投資する比率。少数銘柄への集中投資か分散投資か。
投資対象:大型株、小型株。

個人投資家におすすめなのは、中期投資。ファンダメンタルズ分析を基本とし、売買タイミングはテクニカル分析でみる。時価300億円以下の小型株を中心に、適度に複数の銘柄に分散投資する。

株価に影響を与える要素。
景気、為替、金利、政策、天候や災害、海外市場、企業業績、M&A、株式分割や増資、機関投資家などの需給要因。

・順張りと逆張りについて。ビジネスが好調で好業績であり、割安ならば上昇トレンドは継続しやすい。業績がよく、PERが低く、チャートの形がよい株を探す。

会社四季報の読み方。

会社を定性分析する。
独自の強みはあるか?参入障壁は高いか?市場は拡大するか?経営者は優秀か?外部環境はどうか?シクリカル(景気循環)株か、ディフェンシブ株か?

銘柄の探し方。
業績は好調か(直近予想期も含め、3期増収増益など)。
自己資本比率(40%以上だと望ましい)はどうか。有利子負債は多過ぎないか。
PERはどうか(特別損失や繰越損による異常値に注意)。
四季報は毎号見て、数字の変化を確認する。
決算発表が好調か見る。(特に上方修正がありそうか、業績修正にサプライズはあるか。決算スケジュールは確認しておく。)
探し出した銘柄をさらに詳細に調べ、投資対象銘柄として確保する。

PERで割安株を探す。
標準的にはPERは15倍程度だが、事業内容が良く、好業績でPERが低く、割安で放置されている株を見つけよう。ただしPERが低いことは、問題が隠れていることがあるので注意深く調べる。成長株ではすでにPERが高めであることが多いが、さらに成長が見込めれば買ってもよい。成長が織り込まれ高PERの株が下方修正などされた場合、暴落の危険もある。相場全体が暴落したときは、優良株の底値としてPBRの1倍を目安にすることもできる。

チャートではトレンドをつかむとともに、その動きの意味を考える。
買いのサインとしては、もみ合いからの上放れ、三角もち合いからの上放れ。上昇トレンドでの押し目。参考にする移動平均線は、スイングトレードで5日と25日移動平均線、中期投資で13週と26週移動平均線、長期投資で52週と120カ月移動平均線など。移動平均乖離率とRSIで短期的な上下動を確認する。

注目すべきチャートパターン。
下降トレンドからの急騰、セリングクライマックス、ダブルボトム、トリプルボトム、ソーサーボトム、なべ底、ダブルトップ、トリプルトップ、ティーカップなど。チャートでは主な節目を確認する。

配当と優待について。

相場全体の動きも確認する。
日経平均株価やTOPIXの動き。株価は景気に先行するので、景気動向。経済指標として、GDP、先行き判断DI(日本)、非農業部門雇用者数(米国)、ISM製造業景気指数(米国)、製造業購買担当者指数(中国)など。各国の金融政策と為替動向。

リスク管理を徹底する。
基本的に、値下がりのリスクが低く期待リターンが大きいと考えられる銘柄に投資する。いくつかの銘柄に分散投資する、買う時期を分散する。買った理由が失われたら売る(損切りする)。安易にナンピン買いしない。自分の投資スタンスを守る。

株式トレードのやり方。
ネット証券で口座開設するまで。売買の方法。信用取引とは。IPOとは。

 

書評

日本の個別銘柄を自分で選ぶことで、大きな利益をあげることを目的にした本です。市場平均に負けないパッシブ運用でコツコツやりたい人は、読む必要はないと思います。日本に限定せず、先進国や世界全体対象の低コストインデックスファンドやETFで資産運用することが、最終的にはまずまずの結果をもたらすと思いますので。

しかし数年ぐらいの期間で大きく勝ちたいという、欲深い人もいるでしょう。私も含めて。そういう人は自分がアクティブに動けば市場に勝てるだろうという、おめでたさもあるので慎重にいきましょう。

本書は、個人投資家が日本の個別銘柄を売買するときに注目すべき基本事項を、簡潔にまとめていると感じます。日本の個別銘柄の、数カ月から数年のレンジで株価を動かす要因はだいたいあげられているかと思います。ですので、あくまでも自分の判断で日本株式に投資したい人の入門書に良いでしょう。
(書評2014/07/21)

「ミネルヴィニの成長株投資法」 マーク・ミネルヴィニ(著)

 

本書は株式投資の解説書で、成長株投資について書かれています。成長株投資は、急騰する銘柄を探し出して大きなリターンを狙う方法です。この手の本にしては結構新しく、リーマンショック後のマーケットについてまで含まれています。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

成長株投資について勉強したい人。難易度は入門書から初級者向けレベル。

 

要約

はじめに

急成長株への投資では、適切なノウハウや規律を身につけ、勝つための戦略が必要である。株式トレードで並外れたパフォーマンスを達成するには、成功したいという強い熱意を持たなければならない。

十分に研究してトレード戦略をつくり、準備を万全にして好機を待て。少額からでも始めて、自分で考え自分で調べて実戦で経験を積め。

・個人投資家は機関投資家より有利である。流動性に拘らず銘柄を選べるし、投資先を分散させなくてもよいし、機動的に取引でき、現金比率も自由に変えられる。

・普通のやり方では超絶したパフォーマンスを上げられない。普通の人ではできない努力をしなければならない。バリュー株投資、成長株投資、デイトレード、長期投資、何かに秀でるにはひとつのことに絞れ。自分の手法をはっきりと決め、目標をめざすためのルールをつくれ。

 

SEPA(Specific Entry Point Analysis)戦略 明確な買い場分析

特徴
①急成長の初期のトレンドを発見する。
②急成長局面の前に起こる、ファンダメンタルズの大幅な向上を予測する。
③上昇のきっかけを待つ。
④正しい買い場のタイミングを計る。
⑤利益確定と損切りを行い、利益を守る。

銘柄のランク付け(スクリーニング)
以下の順序でスクリーニングする。
①トレンドテンプレート(後述)を満たすか。
②ファンダメンタルズでスクリーニングする。
③残った銘柄は、リーダーシッププロファイル(過去の急成長株)との類似点を調べる。
④手作業での検討を行う(売上、利益、EPS、業績予想、会社のニュース、競合との比較、株価、出来高、流動性リスクなど)。売上や利益のサプライズな上方修正、機関投資家による買い、需給のアンバランス(買いが多い)があるか考慮する。

・典型的な急成長株は、上場してから日が浅く比較的小規模である。ただし、下落相場の時期には急上昇しにくい。

PERの高低で判断して株を買ってはならない。昔の株価で高いか安いかを判断してはならない。急速に売上を伸ばし、最も増益の見込みが高い会社を探せ。

 

トレンドテンプレート

上昇トレンドにあり、(特に大手機関投資家に)関心を持たれている株を買いたい。

株価のサイクルには4つのステージがある。
第1ステージ 横ばいの底固め局面(無関心)
第2ステージ 上昇局面(機関投資家の買い集め)
第3ステージ 天井圏(機関投資家の売り抜け)
第4ステージ 下落局面(投げ売り)

第1ステージ
株価は200日(または40週)移動平均線の近くで上下しトレンドはない。出来高は少なく、何カ月かあるいは何年も続く。底値拾いは不要である。第2ステージの上昇トレンドが形成されるまで買わないこと。

第1ステージから第2ステージへの転換
上昇はたいてい予告なく始まり、出来高がかなり増える。押し目になると出来高はある程度減る。
株価>150日移動平均線>200日移動平均線となる。
200日移動平均線は上向きで、高値と安値を切り上げてきている。商いを伴って下落した週よりも、商いを伴って上昇した週の方が多い。

第2ステージ
ファンダメンタルズの改善など追い風がある。機関投資家による買い集めの兆候がある(上昇局面での長大陽線と大きな出来高、押し目での出来高減少)。
株価>150日(または30週)移動平均線>200日(または40週)移動平均線となる。
株価は高値と安値を階段状に切り上げ、200日移動平均線も上昇トレンドである。短期の移動平均線は長期の移動平均線を上回っている。平均以上の出来高のときは、下落よりも上昇が多い。

第3ステージ
増益率が落ちてきて、天井圏で変動幅が大きくなり不安定になる。一部の機関投資家が売り抜け、買い手は弱い買い手に変わる。業績予想を上回ることができなくなり、上昇トレンドラインを下抜く。通常は出来高を伴って、大きく下にブレイクする。200日移動平均線は天井圏で数回上下し、横ばいとなり、下降トレンドへ転換する。

第4ステージ
下方修正などのネガティブサプライズもありえる。下降トレンドは続き、下げる日に出来高が増え、上げる日は出来高が減る。
200日(40週)移動平均線>株価となる。
株価は52週安値に近く、高値と安値を階段状に切り下げる。200日移動平均線は下降し、短期の移動平均線は長期の移動平均線を下回る。

4つのステージ分類は、株価がサイクルのどこにあるか見通すために使う。株を買ってよいのは第2ステージのみ。

トレンドテンプレート(以下のすべての基準を満たすこと)
①株価>50日(10週)移動平均線>150日(30週)移動平均線>200日(40週)移動平均線
②200日移動平均線が少なくとも1カ月(4~5カ月以上が望ましい)上昇トレンドである。
③現在の株価が52週安値より30%以上高い。(良い候補では52週安値から100~300%以上も高い。)
④現在の株価が52週高値から25%以内にある。(新高値に近いほど良い。)
⑤レラティブストレングス(株価指数と比べてどれだけ強いかの指数)のランキングが70以上。(80台か90台なら望ましい。)

・第2ステージの途中で3~5回ほど、5~26週続く横ばいのベースが形成される。ベースの数で、第2ステージがどれだけ進んだか目安にできる。

ファンダメンタルズより株価のトレンドを目で確認すること。ファンダメンタルズの悪化がわかるより、株価の下落の方が早いことがある。

 

カテゴリーと業種

会社は6つのカテゴリーに分類できる。
①先導株
業界で最も増益率が高く、売上や利益は1位もしくは2位か3位である。相場の上昇初期に最も上昇率が高い。競争優位性があって急成長できそうかを見る。小売業なら、既存店売上高が健全に伸びているかを見る。急成長している先導株は割高に見えるが、比較的初期のうちにこれを見つけて投資することが目標である。

②大手ライバル企業
業界トップの2~3社の動向は常に見ておく。大手ライバル企業がトップを追い抜いて、シェアを奪うこともある。

③機関投資家好みの銘柄
コカ・コーラ、ジョンソン・アンド・ジョンソン、ゼネラル・エレクトリックのような実績のある成熟企業である。

④業績回復銘柄
業績回復した銘柄は、直近2~3四半期の決算が極めて良く、大幅な増益か過去の最高益に近い場合に買う。コスト削減以外で利益を上げているか、財務状況はどうかチェックする。株価が順調に上げているかと、ファンダメンタルズが強くなっているかを見る。

⑤循環株
自動車・鉄鋼・化学などの景気に敏感な銘柄が循環株である。循環株は株価の上昇前にPERが高く、上昇の終わりごろにPERが低くなる。循環株では在庫と需給を見ること。増益が続き良いニュースがあり増配されPERが低くなると天井で、減益が続き悪いニュースがありPERが高くなると底入れの時期である。

⑥かつての先導株と出遅れ株
出遅れ株は、売上や利益の伸び、株価の動き、すべてで劣る。手出ししないこと。

・下落相場の底入れは、特定のいくつかのセクターから始まる。市場全体が大底をつける前に強気相場の上昇を始めることもある。個別銘柄を監視して相場を主導するセクターを見つける。相場を主導するセクターに投資するのが良い。

・あるセクターの先導株(トップ企業)の業績が悪化したときは、業界全体が悪化する前兆のおそれがある。

 

ファンダメンタルズ

利益こそが重要である。利益の大きさ、収益の持続性、利益の見通しの確かさが株価にとって重要である。ポジティブサプライズがあり、業績予想を上回っている会社を買え。
過去2~3四半期に、前年同期比で最低でも20~25%は増益となっていること。本当に成功している会社は、40~100%以上の増益率となる。利益の伸びが四半期ごとに加速していると望ましい。売上も増加していることを確認する。年間EPSが伸びていたり、過去最高益であると機関投資家は好む。

急成長してきた会社の増益率が減速したら、危険な兆候だ。

・営業外収益や一時所得ではなく、中核事業からの利益か確認せよ。会計を取り繕って好調を装っていないか、見極めよ。経費削減のみで利益を上げている場合、それは続かない。売上と利益率が増大していること。また、市場全体や会社のシェアが拡大していること。

・利益率を見る。業界平均と比べて純利益率が高ければ、競争優位性がある。

・決算発表後、株価の動きを見て市場の反応を確かめる。
①最初にどう反応したか。
上昇したか下落したか?下落後は元の水準まで戻したか?自律反発後に再び下落したか?
②その後の抵抗は。
上昇はどのくらいの期間持ちこたえて、利食い売りに抵抗したか?
③反発力は。
調整後に素早く力強く反発したか?それとも下落後に上昇できないか?

・会社発表の業績予想は、経営陣の公式な見通しである。求めているのはポジティブサプライズな決算と、非常に高い業績予想である。

・売上高に対する在庫の増減を確認する。売上の増加以上に在庫が増加していれば、注意する。売上より売掛金の増加が速いときも注意。

売上、EPS、純利益率の3つが3四半期連続で加速している会社を探せ。

 

先導株

強気相場での利益のほとんどは、最初の12~18カ月で得られる。最も良い銘柄の上昇を逃さないために、先導株を追うこと。
弱気相場が底入れすると、最も下落に抵抗していた先導株が最初に転換する。主要株価指数が上昇を始めるころには、先導株は新高値圏にある。相場が下げている間に調べておくことが重要だ。
先導株は下落相場への転換も早い。主要株価指数が天井に達するころには、先導株の多くは下落を始めている。

・新しい上昇相場が始まると、最初の上昇局面は力強く、買い場はない。押し目買いの機会はほとんどない。大底からの上昇初期に先導株に注目せよ。
強気相場では先導株、同じセクターの株、市場平均、出遅れ株の順に上昇する。下落相場でも持ちこたえて、新たな強気相場の最初の4~8週間で新高値をつける先導株を逃さないこと。

相場の底入れの印
①先導株の第1波が現れて、階段状にベースをつくる。
②先導株は少ししか下げず、下げても素早く回復する。
③大半の先導株は安値を切り下げることがない。
④主要株価指数の出来高が、下げる日より上げる日の方が多い。

先導株は最も強いものから買うこと。高値圏に最初に入り、強い値動きをする銘柄から順に買え。何に投資すべきかは、個人的な相場観ではなく相場の強さで決めること。

急成長株には利食い売りの計画が必要である。急上昇局面が終わると、上昇幅のほとんどを失う可能性がある。先導株は下落局面では厳しいので、損切りして手仕舞う計画も必要だ。強気相場で先導株となった銘柄は、通常は次の強気相場では先導株にならない。

 

チャート

チャートは買い手と売り手のすべての動きを表している。チャートはトレードのタイミングを計り、リスクを管理して利益を得る確率を高めるために使う。
チャートではまず長期トレンドを見る。第2ステージの上昇トレンドの、適切なベースを探す。適切なベースでは、左から右に向かってボラティリティが低下する(出来高も減る)。横ばい期間で弱い保有者が取り除かれ、売りが枯れる。

・高値から50%下げたからといって、割安とは限らない。ファンダメンタルズに問題があるかもしれないし、大量の戻り売りも発生する。調整幅が小さい銘柄の方が、成功の可能性は高い。

・適切なベースが形成されるまで待った方が良い。また、1~3回振るい落としがあるまで待った方が良い。出来高を伴う株価の突出高は、機関投資家による買い集めの兆候である。最適な買い場では、出来高は少ない。

・急成長株として、新規事業から1~2年以内の若い会社を狙う。ただし、上場後に健全な第1ベースが形成されていること。

 

リスク管理

株式市場で一貫して成功するために、最も重要なのはリスク管理である。毎日大引け後、自分のポジションを率直に評価する。今とっているリスクと、将来期待できるリターンを評価する。リスク管理という基本原則を怠ってはならない。

・損切りは早くすること。株価が50%下落したら、100%上昇しないと損失は取り戻せない。10%の下落なら11%の上昇、5%の下落なら5.26%の上昇で損益ゼロとなる。1トレード当たりの平均利益を求め、その2分の1の水準で損切りすべきである。ただし損切りの水準は、10%を超えないこと。

・永遠に倒産しない、値下がりしない安全な優良株は存在しない。

・負けトレードの損失より勝ちトレードの利益が長期で大きくなれば、成功できる。株式市場では確率に賭ける。規律を守り、確率の高い状況でのみトレードをする。

感情に従わず、規律を守って自分の戦略を遂行しなければならない。良いトレードは退屈だが、悪いトレードは刺激的である。事前に緊急時の対策を考えておき、常に更新しておく。混乱や驚きなしにトレードすることが目標である。
①株を買う前に損切りの水準を設定する。上昇したら手仕舞う水準を引き上げる。
②損切りした株でも、セットアップが再び整えば仕掛け直す。
③利食いの計画も立てる。急上昇後に買い疲れが起きそうなときか、相場に弱さが見えた直後に売る。
④災害対策をする。インターネットの接続が切れたり、停電したらどうするか?

・負けが続く(損切りに繰り返し引っかかる)ときは、銘柄選択に問題があるか、市場環境が厳しいかである。失敗が続く間は、取引額を減らすこと。

・ナンピン買いをしてはならない。正しい買い場で買った後に下げているなら、それは危険信号である。

・現金から株へポジションを移すときは、徐々に進めるべきだ。小さなポジションから始め様子を見て、うまくいけばポジションを大きくしていくのが良い。

・ボラティリティが大きくなっているときは、市場環境が厳しいときがほとんどなので、損切り水準を狭くする。利食いも早くする。

・ポートフォリオの持ち株は4~6銘柄、多くても10~12銘柄までが良い。

 

書評

成長株投資の解説書です。著者は30年以上の経験がある個人トレーダー出身で、高パフォーマンスを記録した方です。成長株投資についての本は、以前に数冊読んだことがありますが、大筋では似た内容でした。投資戦略としては、標準的な成長株投資手法のように感じました。

トレードを行う水準を部分的に数値で記述していますが、文章での解説も多いです。トレードのルールを完全にマニュアル化しているわけではないので、自分で考えて取引ルールをつくらなければなりません。

著者はまだ現役のようで、2012年頃の米国株まで話が出てきます。近年はアルゴリズム取引や超高速取引などが幅を利かせていて、個人が手作業でする取引に勝ち目があるのかと考えることもありますが、まだやっていけるようです。アベノミクス相場を体験したあとで、本書の弱気相場と強気相場の解説を読むとかなり正確だと思いました。
(書評2014/05/05)

「伝説のファンドマネージャーが実践する株の絶対法則」 林則行(著)

 

「伝説のファンドマネージャーが教える株の公式」を補足する続編となります。成長株投資にも似ていますが、より日本株に適応させた株式投資の解説本です。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

株式投資を勉強したい人。
想定投資期間が数か月から数年の、成長株投資を志向する人。
「伝説のファンドマネージャーが教える株の公式」を読んだ人。
難易度は初級者程度でしょうか。

 

要約と注目ポイント

個別銘柄の選択と買いのタイミングを解説する。

買うべき銘柄か?買いのタイミングか?

買いで注目すべき4つのポイント。
重要な項目から優先順位がついている。

①ビッグ・チェンジか?
時流に乗っているか、オンリーワン企業か、政策の後押しがあるか、の3つのうちいずれかに該当すること。

②直近2~3四半期の業績が良いか?
売上10%以上、利益20%以上伸びていることが条件。赤字から黒字転換のときは伸び率をみる。

などなど‥‥

相場全体を見る

銘柄選択後、株式市場が上昇局面か確認。

新高値銘柄数が増えたか?

日経平均や他国の市場が最近の高値を抜いたか?

などなど‥‥

「伝説のファンドマネージャーが教える株の公式」の買いの公式と合わせると、より理解が深まります。

買ってはいけない株

訳あり銘柄は買わない。

その会社の株価だけ上がっているが同業種の株価が上がっていないとき

出遅れ株のとき

リストラで利益が出ているとき

などなど‥‥

いつ売るのか?

売りでは完璧を狙わない。

ピークで売るのは無理なので、各種テクニカル指標を利用して売る。

テクニカルツールの説明。

儲けたいと欲深くなると、買うことばかり考えがちです。大きな損失を避けるため、何を買ってはいけないのか、いつ売るのか、これらは常に意識するべきです。

そのほかに株式投資で気をつけること

高値で飛び付き買いをしない。

銘柄数は5~10ぐらい保有して分散投資する。

 

書評

前著「伝説のファンドマネージャーが教える株の公式」を読んで勉強になるなあと思い、本書も続けて読みました。

投資のルールとして、前著より本書の方が読者の裁量に任せる部分が多いように思われます。どちらか読むとしたら、ルールの明確な前著がわかりやすいと思います。

勉強にはなったのですが、ビッグ・チェンジする銘柄を見抜いたり、チャートの解釈などで、やはり経験や知識が必要なのでは、と感じました。著者は、経験が浅くてもルールを守れば大丈夫と述べていますが。
(書評2013/8/17)

「オニールの成長株発掘法 第4版」 ウィリアム・J・オニール(著)

 

急騰する成長株を具体的な基準で選び出す、成長株投資の方法論です。成長株の特徴を見切り、資産をふやしたウィリアム・オニール氏の著作です。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

株式投資について勉強したい人。特に、数か月から数年かけて上昇する成長株を発掘したい人。

 

要約

大化けする銘柄を発見するための要素を、CAN-SLIMとしてまとめた。
C(Current Quarterly Earnings) 当期四半期のEPSと売上。
A(Annual Earnings Increases) 年間の収益増加。
N(Newer Companies, New Products, New Management, New Highs Off Properly Formed Bases) 新興企業、新製品、新経営陣、ベースを抜けた新高値。
S(Supply and Demand) 株式の需給。
L(Leader or Laggard) 主導銘柄か停滞銘柄か。
I(Institutional Sponsorship) 機関投資家による保有。
M(Market Direction) 株式市場の動向。

チャートを研究せよ。
チャートパターンが認識できれば、売買タイミングが大きく改善される。(本書には100銘柄のチャートが記載されている。それぞれチャートパターンの解説がある。)

直近四半期のEPS増加率(前年同期比)が高いこと。
25~30%は最低でも必要だ。また売上も、直近四半期で25%以上増加していること。EPSや売上は、2~3四半期続けて増加しているのがよい。

過去3年連続で、年間EPSが増加していること。
年間EPSが安定して、25%以上増加していることが必要だ。またROEも高い(17%以上が望ましい)こと。

・PERは、株式の売買判断にはほとんど役に立たない。

新しいサービスをつくる新興企業、新製品、新経営陣などが、大きな株価上昇をもたらすことがある。また、新高値を更新した株式も、さらに上昇する傾向がある。この場合、チャートを見て正しいタイミングで買う。

発行済み株式数や浮動株の数、日々の出来高をみて、株式の需給を確認する。

上昇を主導する銘柄を買い、つられて値動きする停滞銘柄は買わない。

機関投資家による保有を調べる。
成績優秀なファンドが保有している銘柄がよい。また、保有する機関投資家の数が増えている銘柄が望ましい。

強気相場か弱気相場か見極めよ。
代表的な市場平均株価の指数について、値動きと出来高を日々確認する。また、市場を先導する個別銘柄も、値動きと出来高を確認する。

買値から8%下落したら損切りせよ。例外はない。
8%以上下落したなら、銘柄選択の誤りか、買いのタイミングの誤りか、市場全体の下落の始まりである。成長株で利益をあげるには、損切りのルールを守らなければならない。

利益確定は、テクニカル指標を確認して売る。
売りのテクニカル指標については、本文で詳細な解説がある。

・そのほか、分散投資、長期投資、信用取引、空売り、オプション取引、新規株式公開、投資信託、外国株、債券などについて。

 

書評

成長株投資という手法を、私はよく理解していませんでした。本書は、成長株への投資手法として、ひとつの基本形かと思います。かなり勉強になりました。
本書は米国株式市場を研究した内容なので、日本市場での応用には、少し工夫が必要かもしれません。しかし大きく化ける成長株で収益をめざすときに、基本的な考え方として押さえておいてもよいと感じました。
チャートの有効性に関しては、私自身はどこまで意味があるのか、何ともわかりません。
(書評2013/07/27)

「伝説のファンドマネージャーが教える株の公式」 林則行(著)

 

著者は、アブダビ投資庁で日本株式運用部長を経験されています。オイルマネーを操ったファンドマネージャーが教える、日本株投資法です。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

株式投資を始めたばかり、あるいは今から始めるつもりの人。
別に経験者が読んでもよい。

 

要約と注目ポイント

相場に勝つには、最低限の必要な予備知識だけ持てばいい。

「業績のいい株は上がる」は、株式投資の公理だ。「業績がいい」とは何か、いつから市場が好業績を評価するかの2点が重要だ。これらを認識できるよう、数値化できるルールを用いる。

相場に勝つ!株の公式「買い」

相場に勝てる、買いの公式を9つ解説する。

買いの公式1
数年来高値(過去2年以上の期間のうち直近の高値)を更新した時点で買う。

買いの公式2
保ち合い期間が長く、値動きが緩やかであった後、新高値を更新した場合、下げ幅を6割以上戻した後に新高値を更新した場合などは、成功の確率が高い。

買いの公式3
経常利益が、過去5~10年に年平均7%以上成長し、減益がほとんどなく安定している銘柄を選ぶ。

買いの公式4
直近1~2年の経常利益の伸び率(前年同期比)が20%以上である。

買いの公式5
直近2~3四半期の売上の伸び率(前年同期比)が10%以上である。

などなど‥‥

非常に簡潔なわかりやすい基準で、株の公式が提示されます。買う株を選ぶ9つの公式は、方針が明確で勉強になります。

相場に勝つ!株の公式「売り」

相場に勝てる、売りの公式を4つ解説する。

買いと売りでは考え方が違う。売りたい株価は設定しない。下げのスピードは速い。売るときは飛び降りる。

売りの公式1
テクニカル分析の売りサインで売る。

売りの公式2
直近の利益(前年同月比)が20%未満のときは売り。

などなど‥‥

売って手じまいするまでが勝負です。いつ買い、そしていつ売るのか。アクティブに投資したい人は、売買タイミングが決定的に重要です。

 

書評

これらのルールに従って取引はしていないので、成功率はよくわかりません。(著者は成功したパフォーマンスを示しています。)ただ、テクニカルのようでいて、実質はかなりファンダメンタルズ重視なので、参考にできそうだと感じました。

私は過去10年程度の業績推移は確認してきました。四半期の決算発表で、株価が大きく動くのは確かなので、長期の業績に加え、直近の業績も売買の検討事項として、試してみようと思います。
(書評2013/07/13)

「日本株で成功するバフェット流投資術」 大原浩(著)

当代随一の投資家バフェットに学ぼうという本です。バフェット自身に著作はないので、他人が書いたバフェット本は、内容が妥当かは読者が判断しなければなりません。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

対象読者層

バフェット本は欠かさずチェックしたい人、投資本をとにかく読みまくりたい人、あたりかと。

要約と注目ポイント

買う株の選び方

過去10年程度、利益は安定しながら増加する傾向か。ROEは12~15%以上、PERは10~15倍以下、売上高純利益率10%以上の株式を買うのが望ましい。

自社株買いをしたり、経営者・役員・従業員が自社の株を買っていることが望ましい。ストックオプション制度はない方が良い。

他社より競争力で明らかに勝っているか。インフレ時にも価格を上げて、利益を確保できるか、考えてみる。

その会社の事業内容を理解できれば、投資しても良い。

設備投資や研究開発費は、少ない方が良い。

労働組合が、経営側と協調的であることが望ましい。

経営陣は誠実であること。

年間利回りは20~30%を目標にする。

過大な債務はないか、確認する。

最後に著者が、日本株の9銘柄をあげて、具体的に検討している。

バフェットのことを知っていれば、驚く内容ではないです。

書評

難易度は初級者向けレベル。バフェットの考え方を、日本株に応用しようというのが売りでしょうか。他のバフェット本と、内容は(当然ですが)それほど変わりません。

ただし、バフェットをネタとしながら、著者の投資哲学が、かなり前面に押し出されています。バフェット本を何冊か読んでいる人、投資の勉強を真面目にやっている人には、本書から新しく学ぶところは特に無いかと思われます。

あと、年間利回り目標を20~30%としていますが、普通の人がめざす利回りとしては異常と感じます。継続的にそのような利回りを得ることは、ほぼ不可能と思われるので、もう少し現実的な目標を設定すべきと考えます。
(書評2013/03/20)

「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力」 メアリー・バフェット/デビット・クラーク(著)

当代随一の投資家バフェットに学ぼうという本です。バフェットが財務諸表をどう読むか述べています。バフェット自身に著作はないので、他人が書いたバフェット本は、内容が妥当かは読者が判断しなければなりません。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

対象読者層

株式で長期投資志向の人。財務諸表から、優良企業を見つけるポイントを知りたい人。

要約

・競争優位性が永続的な、スーパースター企業に投資せよ。これらの企業には、財務諸表において一貫した特徴がある。

・粗利益率が高い企業は、永続的競争優位性がある可能性が高い。粗利益率を40%以上に一貫して保持していると、その可能性は高い。

・販売及び一般管理費、研究開発費が一貫して低くなければならない。減価償却費を無視してはならない。減価償却費の割合は、粗利益に対し低くなければならない。

・支払利息、長期借入金が少ないことを確認せよ。自己株式調整済み負債比率が0.80以下ならば、永続的競争優位性を持っている可能性が高い。

・純利益が長期的に、右肩上がりで成長している企業か確かめよ。売上高に占める純利益の割合が、長期間20%以上なら永続的競争優位性がある可能性が高い。10%以下なら競争優位性はないと考えられる。10~20%ならば、他の要素と併せて検討せよ。

・売上高に占める売掛金の割合が、同業他社より一貫して低ければ、競争優位性を持つ可能性がある。

・優良企業には、優先株を発行しない傾向がある。

・内部留保が、長期的に着実に増加している企業は、永続的競争優位性を持つ可能性が高い。

・自己株式(金庫株)が存在することは、永続的競争優位性があることを示している可能性が高い。

・株主資本利益率(ROE)が、平均より高いことを確認せよ。

・キャッシュフロー計算書において、資本的支出が低いか確認せよ。純利益に対し、一貫して資本的支出が50%以下なら、永続的競争優位性を持つ可能性がある。25%以下ならその可能性はさらに高い。

書評

本書でも、学問的な理論ではありませんが、簡潔で実用的なバフェットの理論を紹介しています。いかにして、長期にわたり好業績をあげ続ける会社を探すか、要点をつかめると思います。本書の指摘するポイントを押さえれば、少なくとも倒産したり、平均以下のパフォーマンスしか出せない会社は、避けられると思われます。さらに実際の投資で活用するには、読者自身の試行錯誤と研究が必要でしょう。
(書評2013/03/17)

「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」 メアリー・バフェット/デビット・クラーク(著)

言わずと知れた投資家バフェットの、銘柄選択の考え方を紹介する本です。バフェット自身に著作はないので、他人が書いたバフェット本は、内容が妥当かは読者が判断しなければなりません。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

対象読者層

株式に長期で投資したいと考える人。長期投資による複利効果で、10年後20年後に向け資産を大きく増やしていきたい人。難易度は初級者向けと思われます。

要約

・投資家の多くは短期の視点しか持っておらず、好材料で買い、悪材料で売る。バフェットは長期の視点で考えることにより、投資で大成功した。

・株式市場は、ごく一部の消費者独占型企業と、その他大多数のコモディティ型企業からなる。バフェットは、消費者独占型企業にのみ投資をする。

・消費者独占型企業とは、消費者が商品(サービス)を選ぶとき、その企業の商品しか選択の余地がないほど、圧倒的なブランド力などの価値を持っている企業である。世界中どこの飲食店や小売店に入っても、コカコーラがあるような状況は、コカコーラ社が消費者独占型企業であることを示す。消費者独占型企業は、高い利益率で安定した利益をあげ続ける。

・コモディティ型企業とは、過当競争の業界にあり、売上高利益率やROEが低く、業績が安定しない企業である。

・安値で買うことが、投資収益率を高める。

・優良企業でも、株式の買い場のチャンスは訪れる。相場全体の下落・暴落、景気後退、その企業の一時的トラブル、構造的変化である。下落した株価から、その企業が立ち直れるだけの力があるかをよく見極めよ。再度好業績を取り戻すと確信したら、力強く買い向かえ。

・消費者独占型企業の期待収益率を、10年程度先まで予想してみる。そのうえで国債の利回りと比較して、投資効率を評価せよ。本書の中では実例に基づき、投資収益率を簡便に計算で予測したり、結果を検討している。

・高ROEの企業が、利益を内部留保として再投資することで、投資収益率が高まる。

・自社株買い戻しは、株主の富を増やす。

書評

学問的な理論ではないですが、実戦的で明確な理論です。一人の投資家の考え方なので好みは分かれると思いますが、ともかく世界で最も成功した投資家の理論です。株式で長期投資を行う人は、知っておくべき内容と思われます。いろいろな情報が飛び交い、目先の変化に惑わされそうになったときは、基本を思い起こすのがいいでしょう。優良な銘柄の株式を安く買い、利益が拡大し株価が上がる間、持ち続ければいいのです。
(書評2013/03/09)

「株式投資 低成長時代のニューノーマル」 菊地正俊(著)

 

世界経済が低成長となった今、どのように投資をすればよいか考える本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

著者は証券会社の株式ストラテジストなので、日本経済や世界経済全般を勉強したい人に良いかと。入門書よりは上で、初級者以上を想定して書かれていると思います。

 

要約

・世界経済が低成長となり、株式投資はキャピタルゲインよりインカムゲイン重視となっている。

・政治や政策が市場に与える影響力が大きくなり、マクロからみたトップダウン運用が重要性を増している。

・金融危機後、世界経済の中心が欧米からアジアへシフトしてきており、アジアの成長を取り込んでいる会社の評価が高い。(東南アジア各国と主要新興国の個別分析がある。)日本株は外国人が買わないと上昇しないが、新興国市場で成長している日本企業は期待できる。(新興国で活躍している日本企業の紹介と分析がある。)

・主要先進国はすべて超低金利であり、高い利回りを得るためには、世界の多様な資産に投資するアセットアロケーションが重要となる。

 

書評

おすすめ度が低めなのは、次の理由によります。著者がストラテジストなので、投資手法や投資理論を直接的に論じた本ではないこと。著者も本文中に「市場の動きは激しい」と書いているが、2012年末より日本市場では円安と株高、世界的には債券から株へのグレートローテーションなど、トレンドが変化してきた可能性があること。そのため2012年12月発行と新しい本だが、状況が変わってきたかもしれない。もちろん中長期的な分析は有効で、細かい情報も盛りだくさんなので、勉強好きな人は読まれてもよいでしょう。私は修行中であり初めて知ることも多く、1,890円で購読してもまずまず満足しました。
(書評2013/02/22)