日本の株式市場や個別銘柄の特徴を利用した、稼げる方法論です。1カ月から数年程度の期間で、日本株を売買して儲けたい人におすすめの本です。
おすすめ
★★★★★★☆☆☆☆
対象読者層
日本株の取引(1カ月から数年程度の期間)で儲けたい人。
難易度は初級者向け程度。
要約と注目ポイント
アベノミクスでは金融緩和によりインフレが起こり、株や不動産などの資産価値は上昇する。NISAという制度もつくられた。株式投資を始めるのにふさわしいタイミングである。増税やインフレから身を守るためにも、株式投資を考えよう。
株式投資で勝つには、機関投資家や外国人投資家の動きを知ること。機関投資家は相場が悪くても常に投資をしなければならず、時価総額が大きい銘柄を主に扱っている。
株式相場で個人投資家が考えるべきこと
相場の悪いときは休む。
時価総額の小さい(100億円未満)銘柄を狙う。
時価総額が100億円や300億円を超えそうな、これから機関投資家が買いそうな銘柄を探す。
無配から復配するタイミングの銘柄を探す。
株価は比較で決まる。新興市場にあるような、比較しにくい会社の株は買われやすい。
外国人投資家は、日本株をドル建てチャートで見ていることを意識する。
などなど‥‥
株式市場のアノマリーについて
直近に他の新規上場がないと、新規上場銘柄は値上がりしやすい。
下方修正と決算対策売りのため、9月は株価が下がりやすい。
9月前半の日経平均採用銘柄の入れ替えで、売買が発生する。
欧米系投資家は夏休みとクリスマス休暇は取引せず、オイルマネーはラマダン期間中に取引が鈍る。国内機関投資家では、年金は3月に決算対策売りをして5月以降に買う。国内投信は、6月と12月のボーナスシーズンに買いが増える。
秋のノーベル賞や学会シーズンに、医薬品や創薬ベンチャーが値上がりすることがある。同様に産業展示会では、電機やゲームの銘柄が上がることがある。
などなど‥‥
株式の情報を収集する
皆が見ている情報源を押さえることが大切である。皆が知っていて買いたくなったり売りたくなったりする情報で、株価は動く。「日経新聞」が一番で、そのほか「ダイヤモンドZAi」「日経マネー」「ネットマネー」「ワールド・ビジネス・サテライト」「モーニング・サテライト」「会社四季報」など。
日経新聞の気になるニュースを保存しておく。自分なりのストーリーをつくったり、関連銘柄を探すのに役立つ。
日経の好材料に朝一番で飛びつくと、高値掴みになりやすい。
日経の記事は、企業側からのリークも多くある。
私の履歴書(Web版の経営者ブログ)に経営者が連載している間は、その企業の悪いニュースは出にくい。
会社四季報の業績予想で株価は動く。会社四季報のデータはすべて役立つ。バックナンバーをとっておき、過去のコメントやデータと比較する。ネット証券のサイトで、四季報発売前に四季報速報が出ていれば注目。
企業のホームページや決算説明会資料も確認する。その第一印象や会社の姿勢をみる。
3月号のマネー誌を保存しておく。株主優待特集が毎年あるので、前年の銘柄を参考に先に買っておく。
新しく運用開始する投信に、テーマがあればチェックする。運用開始日に投信が大量に買うので、銘柄が予想できるなら先に買っておく。
国策に売りなし。現在わかっていることから、実現する可能性が高い事柄を予想する。
などなど‥‥
株式のおすすめ投資方法
個人投資家(特に平日仕事がある人)は、過去の事例から値上がりしそうな銘柄をあらかじめ買い、中期(数週間から1年以上)で保有し、高値で売るのがよい。
木曜日には手仕舞いし、金土日で情報収集して作戦を考える。中長期の視点で売買すること。週末には、来週のイベントや相場の状況(新高値銘柄、出来高の大きい銘柄、値動きの大きい銘柄)、チャートのトレンドなどを確認する。
頭と尻尾はくれてやれ。落ちるナイフはつかむな。
買った理由が失われた株は売り、早めの損切り(5%の下落など)をすることで、塩漬け株をつくらない。イベントを狙って買った株は、売るべき時期に必ず売る。
などなど‥‥
書評
著者の肩書(?)は、「相場の福の神」となっています。本書の表紙もザクザク儲かるみたいな表記ですし、こんな「相場の福の神」などと自称する人の話は信用できない!と思いつつ読んでみたのですが、意外とまともでした。
著者は日本株の経験が20年以上なので、日本の株式市場に対する経験値はさすがです。日本株式のアノマリーにも通じていて、初めて知ることもあり勉強になりました。
確かに著者が日本株に投資すれば、勝率を高く維持できそうに思います。ただ著者の手法はアノマリーや経験値によるところが大きいので、読者が真似して勝てるようになるには、読者も実戦で経験を積まないといけないように感じます。
読者が銘柄の研究をして勝ったり負けたりしながら取引をし、日経新聞や四季報を読み続けて努力することで、勝率が少しずつ上がるような気がします。日本株式市場の特徴を、身をもって体験し続けることで勝てる手法かと思います。
日本の株式市場はこの20年ほど停滞しているので、他の国のように市場平均を持ち続ければ勝てたわけではありません。市場で起こるブームを素早く察知し、適切に利食いするという姿勢が必要だったと思われます。
著者の手法は経験や知識、アノマリーに優位性があります。そこに個人投資家の取引の柔軟性(いつ何をどれだけ売買するか)が加わることで、勝率を上げられるものと推測します。努力と時間を費やせば、それなりにリターンを向上させられそうです。
(書評2014/09/07)