カテゴリー別アーカイブ: 書評

「世界一やさしい不動産投資の教科書1年生」 浅井佐知子(著)

 

不動産投資を始めたいが、どこから手をつければいいかわからない。本書では、そんな初心者でも、独力で不動産投資に成功できることを目標としています。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

不動産投資に興味がある人、不動産投資を始めたばかりの人。

超初心者ではなく、初心者向けの本と思われます。経済や金融、税金のことなどをそれなりに知っていることが必要です。

 

要約と注目ポイント

不動産投資の本は多いが、初心者の役に立つ本は少ない。しかし、本書の目的はシンプル。

ひとりで「物件を選び購入し、その保有物件を適切に運営して、売却まで見通しつつ資金管理ができる」ようになることだ。

 

不動産投資の魅力

毎月の固定収入がある。給料以外の収入があることで、生活に安心感やゆとりが生まれる。失業や老後の心配が減る。

不動産投資は、しっかり学べばミドルリスク・ミドルリターンの投資だ。

不動産投資は、基本的にはインカムゲイン狙い。売却時に利益が出たら、さらにラッキー。(キャピタルゲインを得るには、不況時に安く買うなどの努力が必要。)

 

サラリーマンなら、赤字になった場合に給与所得を節税できます。また、経費となる毎年の減価償却費も、節税に効果があります。

 

不動産にかかるコスト

不動産にかかるコストの解説。

購入するときは、仲介手数料、印紙代、不動産登録免許税、不動産登記手数料、固定資産税、不動産取得税、各種保険料。(だいたい物件価格の10%と考えておく。)

保有しているときは、固定資産税などの税金、火災保険料、管理費、修繕積立金、PMフィー。

入居者が退去したときは、リフォーム費用、テナント募集費。

 

不動産投資で成功するには

失敗を避けるには、不動産投資の勉強をして、良い物件を選び、自分の資金力を超える投資をしないこと。

最初はワンルームや1Kの区分所有マンションから小さく始めて、知識と経験を積む。はじめはローンを利用せず、貯めたお金で購入する。

入居者が入りやすい、転売しやすい物件を探し、表面利回りが12%以上なら投資を検討する。

経費削減のやり方。

家賃を維持する(家賃を上げる)、空室をつくらない工夫。

5年後に売却することを考えて、物件を購入する。実際に売却するときのやり方。

投資を検討すべき地域や、物件のタイプとは。避けるべき物件とは。

購入したい物件が見つかったら、利益計算のシミュレーションをする。

 

不動産投資が初めての人向けの、大きな失敗(損失)を避けることを重視した解説です。

 

購入までの契約の流れ

賃貸借申込書や重要事項に係る調査報告書をチェックして、入居者や物件を調べる。

不動産買付証明書について。

ローンを組むときには。

売買契約時に必要なものや、確認しておくべきこと。

残金決済と物件引き渡しについて。

 

実際に購入を検討し、売買契約を結ぶときには、本書を流れに沿って読み返すとチェックリスト代わりに使えそうです。

 

不動産投資における資金管理

資金管理はとても大切。

購入前に、しっかりと物件の収支をシミュレーションしておく。さまざまな状況を想定して、自分で長期の利益計算をすることが、成功する大家には必要。

レントロール(賃貸借条件の一覧表)をつくって、保有している物件を管理する。毎月と毎年の収支を把握する。

毎年の収支を把握して、5年後以降の売却など、長期の戦略を考えていく。

 

経費や税金、空室率などを厳しく見積もっておくと、将来も安心です。

 

書評

「不動産投資に初めて挑戦したい」という人に、本書は適しています。経済やお金についての基礎知識があれば、不動産投資をよく知らなくても、一から学ぶことができます。

投資資金の大部分をローンで賄ったり、最初からアパート一棟、マンション一棟の投資を勧める本もありますが、本書はかなり安全志向です。

スタートとして、貯金で区分所有マンションを一戸買うことを推奨しています。そして知識と経験を積み、人脈等を広げたのち、規模を拡大していく戦略です。

ローンで不動産投資をしたり、一棟のアパートやマンションを建てる利点も理解できますが、まったく初めてなら、やはり区分所有マンションが出発点かな、とも感じます。

本書では、不動産を購入する時期が重要、という指摘もあります。不動産市況が悪いとき(不動産価格が安いとき)をじっくり待て、という教えです。不動産は高い買い物ですから、確かに買い時の見極めも大切です。

現在は不動産価格もかなり上がった印象です。不動産を買いたいなら、じっくりと勉強し、物件の相場観を養いつつ、気長にチャンスを待つのがいいかなと思います。
(書評2017/11/11)

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「いますぐプライベートカンパニーを作りなさい!」 石川 貴康 (著)

 

会社員が勤め先に頼ることなく、経済的に真に自立する方法を紹介する本です。

 

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

将来や老後のお金のことで、心配している人。
副業に関心がある人、もう副業をしている人。
不動産投資に関心がある人、不動産投資を始めた人。

 

要約と注目ポイント

日本の会社員の未来は暗い。給与は上がらないのに、負担する税金や社会保険料は上がる一方だ。

こんなつらい状況から抜け出すには、ただやみくもに働くだけではだめ。税金の知識を身につけ、プライベートカンパニーを使いこなし、不動産投資を行って、安定した豊かな生活を実現しよう。

 

これから豊かに暮らすためには?

不動産投資をすると、劇的に生活は変わる。(もちろん良い方に。)

子育てしている夫婦や、おひとり様の会社員などの例で、家計や資産がどう変化したかを見る。

 

お金の流れをコントロールする

まず、税金の基礎を知る。(収入や所得、控除などの説明あり。)

とにかく控除を使い切り、課税所得を最小化するように考える。そして可処分所得を大きくする。

 

可処分所得を増やすために、プライベートカンパニーを使う。何らかの事業を始めて収入を生み出し、さらに経費を計上して事業支出とする。この支出を課税所得側に付け替えて、課税所得を下げるのが基本。

 

控除を使い税金を減らす

扶養控除、医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除、雑損控除、住宅ローン控除、配当控除、ふるさと納税、災害減免法など、使えるものはすべて使う。

 

ただ、政府の政策が変わると、控除はなくなる可能性もある。お金を残す王道は、やはりプライベートカンパニー。

 

プライベートカンパニーを利用しよう

不動産投資がおすすめだが、趣味の延長など自分のできることで副業を始めてみよう。

法人でなくても、最初は白色申告でも青色申告でも良い。事業は何でも良いので、税務署に認められるように、それなりの規模で継続性のある実態にまで成長させよう。

白色申告、青色申告、法人についての比較や説明。

事業に関わる支出を経費にする。税金を引かれる前に事業支出として物が買える、という最大の利点を活かす。個人の支出も、事業に関係する割合に応じて、按分で経費にする。

プライベートカンパニーの損失は、自分の給与所得と相殺して、税金を減らせる(損益通算)。ただし、不動産所得・事業所得・譲渡所得(総合課税)・山林所得に限る。

家族に給与を払えば、課税所得を減らせる場合もある。

最後は法人化を検討しよう。信用力が上がり、経費化しやすく、損失の繰り越しも長くできる。相続税でも有利。将来は、法人税が軽減され、個人課税が強化されると予想される。

 

プライベートカンパニーを使いこなすことで、サラリーマンも税金の負担を減らし、実質的に豊かな生活を手に入れることができます。

 

プライベートカンパニーの実践例

妻(配偶者)に専従者給与を払う例。

妻(配偶者)をプライベートカンパニーの経営者にする例。

田舎の親をプライベートカンパニーの経営者にする例。

独身の会社員が不動産投資を事業化する例。

不動産投資を始めるなら、ワンルームマンションから練習すると良い。土地勘があり単身者が多い地域で、駅近の居住用物件がおすすめ。良い管理会社を探して長くつきあえれば、メンテナンスも楽になる。

そのほか、法人設立の例。

勤務先の会社は、あなたの会社ではない。勤務先は、あなたの人生に責任を持たない。自分で稼ぐ事業をつくり、豊かな生活と安心の老後を実現しよう。

 

現在の日本の税制だと、安定して給与をもらえる会社員は、不動産投資との相性が良いようです。

 

書評

普通のサラリーマンが、どうしたら余裕のある生活を送り、老後の心配をなくせるか?

給与は上がりにくく、税金や社会保険料の負担が増え続ける現在。がむしゃらに働くだけでは、お金を貯めたり、安心老後を実現するのは難しいです。

本書では、税金の知識を身につけ、何らかの事業を始めることで、税金の負担を減らし可処分所得を増やす方法を教えてくれます。特に、不動産投資について詳しく書かれています。

 

サラリーマンが法人化して豊かに暮らす、という概念は、「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ」橘玲(著)でも書かれているので、こちらの本も参照してください。

また、不動産投資をして節税をしながら、レバレッジをかけて資産を速く増やしていく点や、自分のビジネスを持てと強調する点は、「改訂版 金持ち父さん貧乏父さん」ロバート・キヨサキ(著)に通じるところもあります。

しかし上記の2冊より本書の方が、2016年の日本の会社員には、税制面でさらに適した解説です。資産運用に興味があったり、将来に経済的な不安を抱えている人は、読んで損はない本だと思います。

 

なお本書では不動産投資を勧めており、毎月給料をもらうサラリーマンには不動産投資が相性が良いと私も感じました。ただし、本書でも少し書かれていますが、税制は政治状況によってすぐに変更されます。

不動産所得の赤字を給与所得と相殺して税金を減らす、といった方法が永続的かは疑問です。日本の財政は極めて危険な状態に移りつつあり、どんな税制になるかは予断を持たない方が良いでしょう。

本書を読むと不動産投資を始めたくなります。私はこれからの日本の不動産に悲観的なのですが、それでも不動産投資をしてみたくなりました。

節税できるという視点ではなく、物件や土地自体が利益を生むと判断できる場合のみ、投資を検討したらいいのではないでしょうか。
(書評2017/10/29)

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「投資家のための金融マーケット予測ハンドブック 第6版」 三井住友信託銀行マーケット事業(著)

 

金融市場のさまざまな事柄を解説する、教科書的な本です。現役の銀行員が執筆しており、投資にまつわる広い範囲を勉強できるテキストです。

 

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

勉強熱心な個人投資家、金融関係の仕事を始めた社会人、金融業界へ就職希望の学生など。

 

要約と注目ポイント

この「投資家のための金融マーケット予測ハンドブック」という本は、日本人が金融市場を勉強するときに、割と定番なテキストのひとつになっていそうです。私は金融業界の人間ではないので、あくまで想像ですが。

20年以上もこのシリーズは刊行され続けているので、こういう本を必要とする人が少なくないのでしょう。私は第5版も読みまして、勉強させてもらいました。読み通せば、確かに読了した分だけ賢くなります。

専門家には常識でやさしい本ですが、勉強したい新社会人や学生、個人投資家には良い本だと思われます。

第5版の書評記事はこちら ⇒ 「投資家のための金融マーケット予測ハンドブック 第5版」 三井住友信託銀行マーケット事業(著)

 

解説されている事柄について

本書は、金融市場や投資について、すごく広い範囲をとにかく堅く説明していきます。そのため、要約は書けません。読み通して自習する本です。

どういう内容について解説されているかをまとめました。

 

金利や為替の予測をするには。

  • 金利の概要。
  • 予測をするための理論(理屈)。

 

日本経済について。

  • 過去の景気循環。
  • 日本の経済統計や指標。
  • 日本の金融政策と金融統計。
  • 日本の金融市場。

 

米国経済について。

  • 過去の景気循環。
  • 米国の経済統計や指標。
  • 米国の財政収支。
  • 米国の金融政策。
  • 米国の金融市場。

 

ユーロ圏経済について。

  • 統一通貨ユーロや欧州債務危機の解説。
  • ユーロ圏の経済指標。
  • ユーロ圏の金融政策。

 

英国経済について。

  • 英国経済の概要。
  • 英国の金融政策。

 

オセアニア経済について。

  • オーストラリアの経済と金融市場の概要。
  • ニュージーランドの経済と金融市場の概要。

 

新興国経済について。

  • 中国の経済と金融市場の概要。
  • インド、ロシア、ブラジル、アセアン(インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナム)各国の経済の概要。

 

商品市場(コモディティ)について。

  • 商品市場の概要。
  • 原油について。
  • 金について。

 

為替市場について。

  • 為替市場の概要。
  • 為替需給について。
  • 為替レートの決定理論について。
  • 国際通貨制度の歴史と概要。
  • 各国の為替政策について。

 

テクニカル分析について。

  • テクニカル分析の概要。
  • テクニカル分析の方法論。

 

以上のような内容を、地味に解説していきます。本書では、2015年後半までの市場動向が反映されているので、割と直近までの金融市場に関して、基礎知識を勉強できます。

 

書評

私はこのシリーズの第5版も読みましたが、難易度や、ターゲットとなる読者層についての感想は、第5版と同じでした。

勉強熱心な個人投資家や、これから金融業界で働いていこうというレベルの学生や社会人にちょうどいい本です。現在の金融市場と関わるにあたり、広くざっと勉強したい人に適しているでしょう。

投資や経済に興味のない、日常生活が忙しい普通の人が読むには内容が多く、濃すぎます。500ページもありますし。普通の人が金融リテラシーを身につけたいときは、もっと易しめの入門書が良いと思われます。

本書はとにかく堅くて真面目なのですが、最後のテクニカル分析の章だけは、山師的要素も盛り込まれています。このへんも楽しめる人は、楽しく読めるでしょう。

 

個人的な感想としては、第5版を読んだときより、知識が増えていることが実感できました。解説もすんなり頭に入りやすく、既に知っている事柄も増えていたので、前作を読んでから金融知識は蓄積されたんだなと思いました。

当ブログの書評にもあるように、この3~4年で経済や投資などの本を、100冊くらいは読んでいます。確かに知っていることは増えました。

ただ残念なのは、別に投資で儲かるようにはなっていないことですね。特に、自分が勝手に相場見通しを立て、投機的なトレードをした収支については、まったく儲かっていません。

2009年以降は基本的にずっと上げ相場だったので、何も考えずに保有している株式指数連動のETFに、自己売買の成績は完敗です。
(書評2016/11/24)

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「ずさんな家計を整えました。 ずぼらさんのためのお金安心塾」 上大岡トメ/畠中雅子(著)

 

家計簿がつけられない。小さな節約をするのは面倒だ。そんな人に向いた本です。
ずぼらでも家計が管理できて、お金の悩みがなくなります。

 

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

家計の管理ができず、貯金も節約も苦手な人。

 

要約と注目ポイント

主人公はイラストレーター。

家計簿をつけられない、レシートが山になっている。行き当たりばったりのどんぶり勘定でやってきた。

お金に対しずぼらだったので、お金にふりまわされてきた人生。

お金と上手に付き合う決意をし、ファイナンシャルプランナーに助言をもらう。

 

家計簿はつけなくてよい。

記録と残高が合わない。お金を使ったとき、支出はどの項目に入れるのか迷う。これで挫折する。

生活費は大きな変動はなく、毎月だいたい同じ。

大きな額の特別出費をおさえることをめざす。

 

忙しい毎日、家計簿をつけるのは面倒。家計簿をつける必要がないことはポイント。

 

特別出費に注目する。

特別出費とは、1年のどこかで払う大きな出費。

大きな額の買い物、祝儀や香典などの交際費、保険料や税金、車の費用、教育費、家の修繕費、旅行などのイベント費用、ペットの費用、事故や病気の費用など。

特別出費の合計額はかなり大きく、年ごとに変わるので、特別出費の実態をつかむこと。

 

予測していない、突然の大きな出費が家計に大ダメージとなる。

 

家計の収支をつかみ、特別出費に備える。

年に2回、通帳をチェックする。年末と7月1日にすべての通帳の残高を合計。その差で収支をみる。

家計簿をつける余裕があるなら、3カ月つけてみよう。自分がどのような項目に、お金を使っているかがわかる。

お金の使い方がわかれば、ムダを減らし節約する方針が立てられる。

どのような特別出費があるか把握し、支払い計画表をつくって備える。

 

何にどれだけお金を使っていたか知ること。特別出費に対応できれば、家計は管理できる。

 

特別出費を削る。

自動車税と自動車重量税の節約法。都市部に住んでいれば、カーシェアなどを利用。

消費税増税など大規模なキャンペーンが行われるときは、終わったあとの方が値引きされることがある。

保険は、契約の見直し、早割更新やインターネット更新で節約、長い契約期間で節約。

服を買うのが好きなら、過去半年の服代をざっと計算し、予算をその8割に抑える。8割で済むよう、あらかじめ計画して買い物に行く。(外食好きなど、他の例でも同様。)

家電は値段を下調べし、値引き交渉し、本当に必要な物だけ買う。

自分が大好きなイベント(旅行や観劇など)のためなら、目標を持って貯金できる。

高校までの教育費は、家計内でまかない、貯金を切り崩さない範囲にする。

特別出費はいついくらかかるか予測し、毎月貯金する。

 

ありがちな特別出費について解説。これを削ることができれば、家計は黒字に。

 

ライフプランを書く。

将来の予定や出費を書き込んでみよう。確定した予定も大きな夢も、できるできないやお金は関係なく、具体的に書いてみる。

 

自分の気持ちを正直に、ライフプランに表現してみよう。昔の夢を思い出すかも。

 

生活設計能力を上げる。

お金を貯めて配分する能力(生活設計能力)を高めよう。ひとりの専門家の意見に絞る。詳しい人に直接聞く。天引き貯金などの方法で、自分のできることをする。

 

お金の知識とか、金融リテラシーなどと呼ばれます。学校では教えてくれないので、自分で積極的に学ぼう。

 

書評

ほのぼの系のイラストで、すっと読み進められます。

通常の生活費は月々であまり変動がないので、家計簿をつける必要は無し。毎月ではない、額の大きな特別出費だけ注意する。というアドバイスは参考になりました。

なるべく苦労しないで家計の収支を知って、大きな出費に備える。それによってお金の悩みを減らし、毎日を楽しく暮らそう。という考え方の人には良い本です。

家計をきっちり管理するとか、貯蓄して老後資金をつくるという方向の本ではないです。

家計管理や資産管理、老後資金の準備などを、系統立てて説明はしていません。あくまでもお金の知恵をつけるエッセイ、といった明るい読み物です。

つきあいというか、交際の生活の知恵みたいなコラムもあります。食事の会計の割りかん、香典やお祝い、ホームパーティーの手みやげ、お店選びなどがテーマとなっています。

少し気になったのは、生活設計能力を上げるには、参考にする意見をひとりの専門家に絞れ、というアドバイスです。

確かに今は、情報が多すぎて混乱しやすいです。ただ、いろいろなメディアで専門家の意見や解説を見たとき、それって間違いでは?適切なアドバイスではないような?ということがけっこうあります。

早い段階で専門家をひとり選び、その人の意見だけ参考にしていると、不利な方向に進む危険もあるように思いました。

ファイナンシャルプランナーご本人が、天引き貯金として、教育費のためこども保険に、老後資金用のため個人年金保険に加入されているようです。

これも私は、あまり良い選択ではないように感じました。手数料の分だけ不利だと、私は思います。

教育費は、単純に自分で行う天引き貯金の方が良いように思います。

そして個人年金保険ですが、手数料の高さやお金を動かせる自由度の面で、自分で行う積み立て投資に劣ると考えられます。インデックスファンドを自動積み立てで購入するなら、天引きという点は完全に同じです。
(書評2015/11/17)

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「本気で家計を変えたいあなたへ 書き込むお金のワークブック」 前野彩/内藤忍(著)

 

お金のことがよくわからず、何となく将来が不安なあなた。
本書でお金の知識を学べば、人生が変わります。

 

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

お金のことがよくわからない、お金が貯まらない、将来が不安な人。

 

要約と注目ポイント

お金のことがわからず、あなたもお金で悩んでいるのでは?

本気でお金に向き合い、お金の知識を身につければ、家計のムダも削れるし、将来の不安が解消できる。

本書の使い方は、まず基本的な知識を学ぶ。

そのあと記入シートに書き込むことで、自分の場合どうなるかが具体的にわかる。

そして行動し、家計を改善していく。

 

お金を貯める

お金を貯めるには、がんばらなくても続く「しくみ」をつくる。

①現在の家計を把握し、貯金の目標を設定する。

②お金が貯まらない原因と対策を考える。

③自分に合う、がんばらなくてもできる家計管理を実行する。

 

いつも節約を心がけるのではなく、支出が収入より小さくなる状態をつくります。

付属の記入シートを使う。

家族構成、収入、貯蓄、1年間の貯金額、ローン、子供の教育プラン、項目別の支出を記入。

万円単位、千円単位でざっと書き込む。現在のお金の使い方がわかる。

 

家計簿

家計簿は、ムダづかいせず使いたいことにお金を使えているか、管理するための道具。

家計簿を楽につけるポイントを解説。

 

家計簿は、お金の流れを見るためのもの。お金の動きがわかれば、何をすべきかわかります。

 

将来の支出にそなえる

いつ、いくらお金が必要なのか、はっきりさせて理解する。

そうすれば計画的に貯金をすることで不安はなくなるし、今の生活にお金を使って満足することもできる。

 

目的別の貯金

車の購入や旅行、教育資金、老後資金などは、目的別の積み立て貯金がおすすめ。

将来のライフイベントに向けて積み立て貯金をすれば、無理のないペースでできるし、モチベーションも上がる。

毎年の大きな額の特別支出用にも積み立てる。

 

将来の支出が具体的にわかれば、備えられます。未来の不安も減ります。

 

貯金の基本

貯金するには、「収入-貯蓄=支出」という先取り貯蓄が基本。

貯蓄分を先に取り、残ったお金を全部使う方がストレスフリー。

給料から貯蓄分を引き、口座引き落としの諸費用を残し、生活費は1か月に1回だけ口座から引き出す。

生活費の現金は、1週分ずつ分けると管理しやすい。

 

節約の方法

大きな固定費(住居費・保険料・通信費・教育費など)が、節約しやすく効果も大きい。

小さな節約はストレスのもとになりやすい。以下の順に節約する。

①1回で済む大きな固定費の見直し。

②使途不明金(いつの間にか使っているお金)のチェック。

③日々の節約。

 

大きな固定費を節約し、給料から天引きすれば、がっつり貯金できます。

 

テーマごとの解説

 

子育て・老後

子育てにかかるお金と、教育資金の準備方法。

老後にかかるお金と、その準備方法。

年金制度の説明。投資について。

 

保険

生命保険が必要な場合とは。

一生分の収入予定額と支出予定額。遺族年金の説明。生命保険を種類ごとに説明。

医療保険が必要な場合とは。

健康保険の説明。民間保険でカバーするか、貯蓄で備えるか。介護保険の説明。子供の保険の説明。

 

住宅購入

住宅を購入するときは。

自己資金の用意、無理なく返済できる金額、固定金利と変動金利、返済方法、繰り上げ返済と借り換え、死亡保険、などローンの説明。

賃貸との比較。

マンションと一戸建ての比較。

火災保険、地震保険、個人賠償責任保険、自転車保険、自動車保険の説明。

 

社会保険料と税金

パートの年収と、税金や社会保険料の説明。
(年収103万円で所得税課税、130万円で社会保険料負担、141万円で配偶者特別控除なし。)

社会保障制度の説明。

所得税など(源泉徴収票)の説明。

贈与と相続の説明。

 

教育費、老後資金、保険、住宅ローン、税金。重要テーマも、記入シートを使えばよくわかります。

 

書評

本書には記入シートがついているので、いろいろなお金の計算に使えます。

現在の家計収支を把握するシート、ライフイベント表、目的別積み立て貯金のシート、老後の生活のお金用シート、一生分の収支予定シート、遺族年金用のシート、などがあり、確かにわかりやすいです。

書き込むことで、現在の家計から一生のお金の問題まで、大まかなイメージを持つことができます。

本書はけっこう細かく、いろいろな項目のお金を管理している印象です。

目的別積み立て貯金の項目も、かっちりしてます。家族のライフイベントを将来まで書いて、いついくら必要か考え、お金の準備をすることも勧めています。

老後の費用や、自分が死んだ場合の家族の生活費なども、記入シートを使うことで簡単に計算できます。

しっかりお金の問題を想定できるので、毎月のお金の使い方や貯め方に、めどが立てられそうです。ここから自分に合った、がんばらない「しくみ」に仕上げるのが良いかと思います。

本書の特長である記入シートは、自分のお金の理解と改善にすぐ役立ちそうです。

また、社会保障制度や民間の保険の解説など、基本事項の解説もよくまとまっています。解説を読むことで、制度や金融商品を学べます。

記入シートだけでなく、図表やグラフも多いので、視覚的にも理解しやすくなっています。

私は投資や貯金については相当勉強したので、その部分は流して読みましたが、生命保険や医療保険、介護保険などはあまり関心がなかったので、学ぶことが多かったです。
(書評2015/11/12)

アマゾンでのご購入本気で家計を変えたいあなたへ 書き込むお金のワークブック
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「誰も教えてくれないお金の話」 うだひろえ/泉正人(著)

 

懸命に働いても、がんばって節約しても、全然お金がない。
本書では、そんなお金の悩みを解決します。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

お金が貯まらない、お金の知識がない、お金の扱い方がわからない人。

 

要約と注目ポイント

・主人公は33歳の主婦兼イラストレーター。夫は脱サラして、カフェ経営中。夫婦とその周囲の人々の日常生活を漫画で描く。(もちろんお金が主題です。)

 

月末にお金がない

主人公の女性は、漫画やイラストの仕事をがんばり、節約し、夫のカフェも手伝っている。しかし、住宅ローンの支払いにすら困る生活。貯金は無い。万一のための保険、子供にかかる費用、老後の不安はどうすれば?がんばっているのに、なぜお金がなくなるの?

解答:
月末にお金がなくなるのは、収入と支出のバランスがとれていない。

 

うまく節約ができない

主人公と同じようにズボラな性格と思っていた妹が、しっかり家計簿をつけ、収入と支出を把握し、家計を管理していた。主人公も家計簿をつけ始め、とことん節約してみた。でも生活がギスギス。それでも貯金が貯まらない。なぜ?

解答:
収入の一定割合を先取り貯蓄し、残りで生活。家計簿は、家計の全体像を知るためにつける。節約は固定費の削減から。

家計の収支を確認し、大きな固定費を削るのが、節約の基本です。先取り貯金も、お金を貯める基本技です。

 

お金を貯め、利益を出すのに必要なこと

貯金を増やそうと、夫のカフェを手伝う主人公。でもお店で利益を出すには、お金(会計)の知識が不可欠。

解答:
家計でも、資産と負債を把握できるバランスシートをつけよう。価格と価値の関係を意識して、お金のセンスを磨こう。お金の流れを見ること。お店では、固定費・変動費・損益分岐点、客単価と回転率などを考え、リピーターを増やして、利益を出す。

 

住宅ローンの支払いが長くて苦しい

賃貸に住んでいた主人公夫婦は、転勤を機に不動産屋に問い合わせをしてみた。すると不動産屋に押され、頭金なしで限界まで変動ローンを組み、新築マンションを購入することになった。今となっては、ローンの長い支払いに苦労している。

解答:
住宅購入のときには、手取り収入から借りていい限度額を考えること。類似する賃貸物件の家賃から、販売価格の妥当性を判断できる。
住宅ローンの種類と金利、物件購入時にかかる諸費用、購入後にかかる税金・修繕費・保険料、繰り上げ返済と借り換え、などを解説している。

家を買ったあとでは、支出の変更は難しくなります。住宅ローンを組む前に、十分な検討をしましょう。

 

お金に苦労しない生き方

将来のため、もっと一生懸命働いてお金を貯めようとする主人公。そんなとき、取材でファイナンシャルプランナーの話を聞くことになる。

解答:
お金について悩むのではなく、考えること。大切なのは、お金の正しい扱い方を知ること。浪費を減らし、価値を生む投資を増やす。情報を集め、取捨選択する。お金について勉強し、実行して気づき、また勉強する。

自分の価値観を考え直すと、お金の使い方が変わることがあります。特に、見栄にこだわらなくなると、自分の大切なことにお金を使うようになります。

 

保険について

漠然とした不安を感じていた主人公。それは、ケガや病気についてだった。夫がケガをして、カフェを休業することに。母や妹が保険に入ることを勧めてきたが。

解答:
公的な社会保障はかなり厚い。それらの解説。公的保障の範囲外で、自分に必要な保険があれば入る(収入保険や医療保険など)。万一のときに必要な額を計算し、その目的を満たす最適な保険を選ぶ。生命保険では、残された家族や子供にかかる費用を計算する。

加入している保険の見直しは、かなり効果的です。

 

老後に備える

老後に必要な生活費を考えてみた主人公。もらえる年金額と、貯まる予定の貯金額の合計では、10年も暮らせない。暗い気持ちになる主人公。老後は暗いのか?

解答:
国民年金・厚生年金・共済年金など、年金制度を説明する。年金はベースになるので納付しよう。少額から資産運用もできる。勉強しながら、小さな金額で始めてみよう。

 

子供を育てる

主人公は、子育てしながら働く知人に刺激を受ける。子供をもつことを意識するが、教育費が心配だ。

解答:
出産にかかる費用と、それを補う保険制度を説明する。かかる教育費と、児童手当や補助制度の説明も。正しい知識を持てば、不安は消える。

老後の生活費も、子供の教育費も、正しい知識を持てば対策を考えられます。具体的に行動を始めれば、不安も減ってきます。

 

書評

漫画でストーリーが展開し、説明も入りますが、詳しい解説は文章となります。主人公の生活は漫画家自身が描き、お金の知識となる説明は、ファイナンシャルプランナーの方が書いています。

お金の知識を学ぶとっかかりとして、漫画は適当かもしれません。なぜかいつも月末にはお金がなくなり、支払いに困る。家計簿が続けられない。といったエピソードは読者の共感も得られそうです。

家計の収入と支出を知ること、先取り貯金、固定費削減など節約の工夫、資産と負債の考え方、住宅購入の考え方、公的な社会保障制度、必要となる保険の考え方、年金の基礎知識、子育てや教育費の実際、などの基本をきっちりと学べます。とりあえず人生で必要な、最低限のお金の知識は、網羅されている感じです。

ただし、どうしても教育的な漫画になるので、漫画そのものは特に面白いとは言えません。結局は文章で解説されます。

なお、夫がカフェを経営しているのでストーリーでは必要ですが、お店が利益を出すための会計知識が、この本の読者に重要なのかは疑問でした。

確かに、そのようなお金のセンスはとても大切です。ただ、こういった本の読者は、お金のことが全然わからない人のような気がします。お店の経営より、自分の生活や貯金が最大の問題だと思われます。ですので、お店が儲かる会計の話は、省いてよかったかもしれません。
(書評2015/11/10)

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「1行家計簿 世界一かんたんにお金が貯まる本」 天野伴(著)

 

気になる出費の中から節約するターゲットを選び、1日たった10秒記録するだけ!
すぐに貯金が始められます。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

どうしてもお金が貯まらない人。
いつの間にかお金が減っている人。
家計簿や支出管理アプリに挫折した人。

 

要約と注目ポイント

・何となくお金を使っていて、貯金できない。家計簿をつけたりするのに挫折してきた。1行家計簿は、そのような人たちでも実行できる、楽なお金の貯め方だ。

家計簿をつける目的は、ムダな出費を抑え、そのお金を本当に使いたいことにあてるため。だからムダづかいの1項目に注目し、その出費だけ記録して、ムダづかいを減らすのが最も手早い方法だ。

1行家計簿では、ひとつのムダづかいに集中します。

 

1行家計簿

・メリット
楽なので続けられる、ムダづかいの金額が明確、何をすべきかも明確、行動を変えられる、ムダな出費を使いたいことに使える。

何となく出費しているムダづかいを節約ターゲットにして、その出費額を使った時点で書く。振り返ったら、必要でなかったと感じる出費をターゲットにする。

お菓子、コーヒー、ジュース、お酒、タバコ、カフェ、飲み会、漫画、ゲーム、エステ、コスメ、服、美容院などの費用が候補になる。
例:仕事帰りに週3~4回コンビニに寄り、お菓子と漫画を買っている。この費用を集計。

日付と出費を記録するだけ。これを1か月続ける。
回数が多い習慣的な出費なら、1週間の集計でもよい。自分が一番よくいる場所に1行家計簿を置き、出費したらすぐに記録する。

家計簿としては、究極の手軽さです。

1か月(1週間)たったら、合計金額を書く。出費回数で割り、1回あたりの出費を計算する。

・回数が多く、出費額が大きい項目がヤバい。
回数は少ないが出費額が大きい項目や、回数は多いが出費額が小さい項目も、節約の効果あり。

ムダづかいを減らすには、回数を減らすか、1回あたりの金額を減らす。
その出費そのものをやめる、買い物自体の回数を減らす、1回あたりの上限額を決める、出費の対象をもっと安いものに替えるなど、行動を変える。

回数か金額だけを考えるので、節約の方法もわかりやすいです。

節約目標を決め、具体的な行動目標を立てたら、翌月から記録する。
節約した金額でやりたいことを考え、モチベーションを維持する。

・貯金は先取りで貯められる。
給料が振り込まれたら、まず決めた金額(割合)を貯金用口座に入れる。残りは全額使ってよいので、節約して本当に使いたいことにお金を使おう。
先取り貯金と、1行家計簿を組み合わせれば、お金が貯まる。

・1行家計簿を利用した、節約の具体例。
同僚との外食、仕事後の缶ビールとおつまみ、オンラインショッピングなどの出費を節約した実践的アドバイス。

・1行家計簿に成功したら。
①引き続き、今のターゲットを節約していく。
②別の節約ターゲットを考えてみる。
③普通の家計簿にステップアップ。
④節約が習慣になったなら、やめてもOK。

1行家計簿の成功は、貯金の達成感を味わえます。

 

書評

著者の編み出した1行家計簿ですが、極限まで労力をかけずに、ムダづかいを止めてお金を貯める方法論となっています。家計簿や支出管理アプリなどに挫折した人でも、記録をつけられ、支出を減らすことができる方法です。

そもそも家計簿は何のためにつけるかと言えば、支出の記録を振り返って、ムダな支出を削減するためだ、と著者は述べています。ですから、家計簿は継続的に記録して(データの収集)、長い期間の支出の記録を振り返り(データの処理と分析)、ムダな支出を洗い出してその出費を削り、お金を貯める(改善の行動計画と実行)という作業が必要になります。

あらためて書いてみると、確かに面倒です。家計簿をつけ始めても、そのうちやめてしまうのは、仕方ないかもしれません。また家計簿をつけても、分析できないので何をすべきかわからない、改善の行動計画を思いつかないので支出が減らせない、といったこともありそうです。

本書は、家計簿のルーチンワークについて、とことん簡略化しています。家計簿を、家計の業務改善というか、コスト削減というか、そんな仕事のようにとらえてみれば、本書では仕事の効率化を追求しています。

とにかく楽で負担のない形で出費の記録をつけ、ムダづかいを明確にし、わかりやすい形で行動計画が立てられます。1回あたりの出費額を減らすか、支出の回数を減らすかしかないのですから。

1行家計簿はわかりやすく、実行しやすい良い方法と思います。ですが普通のケースなら、1月あたり数千円の節約が限界のような気もします。

1冊の本に仕上げるのに、1行家計簿のネタだけだとちょっと物足りないからか、割と唐突に先取り貯金の方法が出てきたりもします。給料日に3万円とか5万円とか、手取りの10%とかを、貯蓄用口座に移しましょう。そうすればお金が貯められます。先取り貯金は最強の貯蓄術です。などと述べられたりします。

しかし、毎月数万円を必ず貯金するには、1行家計簿だけでは厳しい気がします。もし月数万円貯めるとなると、複数項目の1行家計簿とか、固定費の削減をやらないと難しいのでは?

ものすごく楽をしながら、1項目のムダづかいの習慣を見える化し、行動を変えて節約する。そこで節約したお金は、本当に使いたい項目に使う。節約の意識や習慣が身につけば、なお良い。貯金を始める第1歩になる。

1行家計簿の意義は、そのようにまとめられそうです。家計全体の改善には、さらに何らかの手段が必要なように感じました。
(書評2015/11/09)

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「3年間で120万円貯金できる! 手取り月20万円からの3つのサイフでらくらく貯まる方法」 横山光昭(著)

 

手取り20万円でも、3年で120万円貯められる方法を教えます。

 

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

家計が苦しい人。
お金の知識がゼロの人。

 

要約と注目ポイント

お金を貯めるためには、3つのサイフを持つ。ここでいうサイフとは、口座のこと。

①生活費を入れる口座(使うサイフ)
②貯蓄の口座(貯めるサイフ)
③資産運用の口座(増やすサイフ)

3つの口座に分けて管理すると、お金は貯められる。

はじめに「使うサイフ」を貯め、次に「貯めるサイフ」に貯めて、最後に「増やすサイフ」に取りかかる。順番を守ること。

 

口座を分けると、お金の入ってくるところと、出ていくところがよくわかります。

 
お金持ちとは、お金に悩まずに生きていける人。3つのサイフがあれば、あなたもお金持ちになれる。

お金を貯められるかは、基本的なことをきちんとできるかにかかっている。

 

価値観や生活習慣も大切です。

 

3つのサイフを始める前の準備

家計の支出を、固定費と変動費に分けてみる。

①固定費(住居費、保険料、小遣いなど)から削減していく。

まず生命保険料を見直す。

子供が生まれたとき、少額の負担でかけられる、収入保障保険である死亡保障だけ必要だ。医療保障(がん保険)は、自分の事情に合わせて検討する。

賃貸に住んでいるなら、家賃の安い部屋への引越しを検討する。

携帯電話や固定電話、インターネット接続のプランを見直し、通信費を削る。

自由に使える小遣いは、手取り月収の7%まで。

国民年金は払いましょう。

住宅ローンがあるなら、借り換えで少なくできるか調べる。「貯めるサイフ」が貯まり余裕があるなら、繰り上げ返済も考える。

 

固定費の節約は、貯金の基本です。

 
②変動費は、消費、浪費、投資に区別して、不要な支出を減らす。

お金を使うときに、消費か浪費か投資か、自問してみる。

浪費の部分を自分で見つけ、削減していく。家計簿をつけたり、レシートを残したりして、自分の浪費の習慣を見える化し、生活を改善する。

消費、浪費、投資の理想の比率は、

消費70%
浪費5%
投資25%(内訳は、貯金などの金融投資:手取り月収の6分の1である16.7%、自己啓発などの自己投資:8.3%)

となる。

 

自分にとって大切なことは何か考えると、明確に区別できます。

 

使うサイフ

「使うサイフ」は、常に手取り月収の半分が入っている状態にする。

毎月、手取り月収の10%を残していき、手取り月収の半分まで「使うサイフ」に貯める。(5か月で貯まる。)急な出費をカバーするのが目的。

 

「使うサイフ」で大切なこと

赤字の家計は、必ず黒字にする。
イレギュラーな支出があっても、イレギュラーな節約で埋める。

月の生活費を5等分し、1か月を5週間と考え、1週ごとにお金を管理する。
買い物は週に2~3回まで。

クレジットカードはなるべく使わない。買い物依存症の人は、デビットカードを利用しよう。

収入が少し増えても、生活レベルは変えないこと。

お金を使わなくても、楽しく暮らす方法はある。

 

次の給料日までの日数を考え、1週ごとにお金を分けるのがポイント。

 

貯めるサイフ

毎月、手取り月収の6分の1を残し、手取り月収の6か月分を「貯めるサイフ」に貯める。(3年で貯まる。)生活防衛資金であり、病気や失業に備えるのが目的。

 

「貯めるサイフ」で大切なこと

給料が入ったら、はじめに6分の1を先取りして天引きする方法がある。

「貯めるサイフ」が貯まったら、旅行などの目的別貯金をしてもよい。

子供の教育費は、必要額を計算し、長期的に目的別貯金として貯めていく。

住宅の購入は慎重に。買うなら、頭金として物件価格の2割は用意する。

ボーナスの7割は、「貯めるサイフ」や「増やすサイフ」に入れる。3割は自由に使ってよい。

 

貯めるサイフにきっちり貯金できれば、生活が安定します。

 

増やすサイフ

「貯めるサイフ」に手取り月収6か月分が貯まったあとに、「増やすサイフ」にお金を入れていく。毎月、手取り月収の6分の1を残して、「増やすサイフ」に入金する。

長期分散投資をして、安定的に増やすのが目的(インフレ対策)。

 

「増やすサイフ」で大切なこと。

投資では、金融投資でお金を増やすことと、自己投資で自分を育てることを考える。

金融投資である「増やすサイフ」は、証券会社の口座でつくる。

長期的に、毎月こつこつ積み立て購入で、分散投資をしていく。

英語、IT、ファイナンスのスキルを学び、人脈を広げ、自分の器を大きくするなど、自己投資も大切だ。

 

増やすサイフとは、お金に働いてもらうこと。それから、自分の稼ぐ能力を上げることです。

 

書評

非正規雇用が労働者の4割となり、自分の生活や人生を、会社に頼れない時代です。お金の知識を身につけ、身を守れる額の貯金をつくることは大切です。

家計が常に苦しい、お金を貯める方法がわからない、という人に本書をおすすめできます。

お金の相談に来た人の生活を見直し、行動を改善させ貯金できる体質に変えるのが、著者の真骨頂という印象です。

以前に、同じ著者の「年収200万円からの貯金生活宣言」を紹介しました。「年収200万円からの貯金生活宣言」でも、アドバイスは似ていました。

横山氏は著作がとても多いので、どれを読めばいいのかよくわかりませんが、貯金に対するアプローチは一貫しています。

自分の生活をしっかり見つめ直し、貯金ができる行動様式を身につけさせるのが得意なのだと思います。

大げさに言うと、人生に規律を持たせて、目標に向かって一歩ずつ努力させるように仕向けるわけです。その目標が貯金であり、その延長として自己投資での自分の成長です。

生活を見直し、不要な支出を減らす。日常の急な出費に備えた貯金、そして病気や失業に耐えるための生活防衛資金をつくる。そのあとから長期投資として、積み立てで投資信託を買っていく。

実に王道で真っ当な方法と感じました。

著者が最も得意なのは、生活の見直しで貯金できる体質にするところだと思います。純粋な金融投資については、もっと突き詰められると思います。

バランス型ファンドよりは、手数料のさらに安い、グローバル株式ファンドとトピックス連動型ファンドを組み合わせるとか。

ただ、お金知識ゼロの人を読者に想定しているので、そこまで要求するのは酷でもあります。

あと付け加えるとすれば、本文の解説で、株式と債券を両方持てば資産運用が安定するとしているのは、修正の余地がありそうです。

本書の出版が2013年9月なので、こちらもそこまで求めるのは厳しいかもしれませんが、現在、債券を買う意味はほとんどないと私は考えます。

先進国すべてがゼロからマイナス金利なので、債券は値上がりの期待よりは、値下がりリスクの方が大きいと言えます。今の状況では、株式が暴落した局面で債券が値上がりするかは不明です。

今なら、債券を買う分のお金は、普通預金で十分と思います。その普通預金は、経済状況が変わってきてから運用を考えれば良いでしょう。
(書評2015/11/08)

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「イノベーション・オブ・ライフ」 クレイトン・M・クリステンセン/ジェームズ・アルワース/カレン・ディロン(著)

 

「イノベーションのジレンマ」で知られる経営学の著名な研究者が、自身の人生を通して学んだ「生き方」を瑞々しく語ります。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

人生で幸せを感じるにはどうすればよいのか、考えたい人。

 

要約と注目ポイント

・どうすれば幸せになり成功できるのか。どうすれば最愛の人や周囲の人々と、幸せな関係を築けるか。どうすれば誠実な人生を送り、罪人にならずにいられるか。経営研究の手法を用い、これらの問題を考えることにした。

「自分の人生を評価するものさしは何か?」という問いに、本書が役立つことを願う。

・人生の難題に簡単な解決法などないし、求めるべきでもない。ただし、人生の状況に応じて適切な選択をする助けになるツールがある。それは理論だ。理論とは、「何が、何を、なぜ引き起こすのか」を説明する、一般則である。

・理論を使えば、「何を考えるべきか」ではなく「どう考えるべきか」がわかる。優れた理論であれば、分類と説明、そして将来の予測に役立つ。

人生の解答を、経営学の方法で探します。

 

仕事で幸せになる理論

・達成したいことにどうやって到達するか、を示すのが戦略である。

自分のキャリアの戦略では、自分の時間や労力、能力という資源をどう配分するかを決める。人は自分のキャリアをこうしたいという意図を持つが、予期しない機会や脅威が現れてくる。そのため、戦略として計画を立て、予期しない事態に遭遇したときより良い選択肢を見きわめ、戦略を修正しながら資源を適切に配分する、というプロセスを続ける。

人生でも、自分が持つ資源を適切に配分することが、幸せにつながります。

①優先事項について考える。

優先事項とは、意思決定を行うときの基本となる判断基準である。真の動機づけとは、人に本心から何かをしたいと思わせる。

仕事は、衛生要因で考える。(衛生要因とは、衛生状態が悪いと健康を害するが、衛生状態が良くても健康は増進しない事実からつけられた用語。)報酬は衛生要因であり、低かったり不平等だと不満を持つが、高くても不満を感じないだけで、仕事が好きになるわけではない。

自分にとってやりがいがある、貢献している実感がある、などの要因は真の動機づけとなり、仕事への愛情を生み出す。キャリアでは真の動機づけとなる要因を求め、優先事項として指針にせよ。

真の動機づけとなる要因が、仕事を好きにします。

②幸せなキャリアの計画と、予想外の事態のバランスをとる。

どのようなときに大好きな仕事を探す計画を進め、どのようなときに予期しない機会や脅威を創発的に受け入れるか。この戦略の選択が大切である。

戦略の選択肢には2つある。1つは、機会を予期し意図的に追及する戦略。もう1つは、意図的に戦略を進めると発生する問題や機会により、戦略を修正する創発的戦略である。

動機づけ要因(やりがいや自分の目的など)と衛生要因(報酬や職場環境など)の両方を満たす仕事に就いているなら、そのまま意図的戦略に基づき目標達成をめざそう。こうした条件に欠けているなら、創発的戦略で仕事をしていくべきだ。

戦略が成功するかは、どんな仮定の正しさが証明されればよいのか考える。いま検討している仕事で自分が幸せになるためには、どんな仮定が立証されなければならないのか?

想定外な人生の出来事に、どのような戦略を採るべきか、考えさせられます。

③戦略通りに資源を分配し、実行する。

戦略は資源が実際に配分されて、実行できる。自分の時間、能力、お金を、自分の意向に沿って使う。資源が分配されなければ、戦略は実行したことにはならない。

人も企業も、長期的な成功をもたらす取り組みよりも、目先の満足に飛びつく傾向がある。長期的な戦略を立てても、短期的に利益や結果が得られることに取り組んでしまう。人は資源配分プロセスを意識的に管理しなければ、心や脳のデフォルト基準で配分してしまう。

幸せな人生を送るためには、自分の資源を正しく配分しなければならない。資源配分を誤れば、不幸の原因となる。毎日の資源配分が、自分が実行したい戦略に合致していなければ、なりたい自分にはなれない。

 

家族や友人との関係を幸せにする理論

・結果がすぐに出る仕事に資源を配分しがちだが、キャリアは人生の優先事項の中のひとつに過ぎない。すぐに結果は出ないが、長期的に大切な優先事項は家族、友人、健康、信仰などであり、意識してこれらに時間と労力を費やすべきだ。忍耐強く努力を続けて、幸せな関係を育もう。

①家族や友人に対し、今から継続して時間と労力を使うこと。

新規事業の初期段階では、少ない資金でなるべく早く実行可能な戦略を見つけることが大切だ。初期段階で大金を使い、急速な成長をめざすと失敗する。有効な戦略が見つかれば、資金を使って利益より速い成長をめざすべきである。つまり企業は、主力事業が好調なうちに気長に、あまり資金をかけず新規事業に投資しておくのが良い。

人生でも、家族や友人と愛情に満ちた関係を築くという意図的戦略があるのだから、時間と労力を継続的に使う必要がある。将来に向け、今から資源を配分すべきだ。今忙しいので資源を投資しなくても、あとでまとめて時間を使えば埋め合わせられる、と考えるのは間違いだ。

人間関係では、長い目で見た資源配分が幸せを生みます。

②相手の片づけるべき用事を理解し、献身的に片づけを手助けする。

顧客は、自分の用事を片づけたいので製品やサービスを買うのだ。生活の中で「用事」ができ、「用事」を片づけるために、製品やサービスを「雇う」。企業は、顧客の「用事」を理解することが大切だ。

夫婦の関係でも、相手の抱えている用事と、自分が想像している相手の抱える用事は、ずれている場合が多い。これは夫婦間の不幸になる。片づけなくてはならない用事をお互いに理解し、確実にうまく片づける夫婦は、結婚生活が円満となる。大切な人が、何を大切と思っているか理解することが重要だ。

大切な人が大切だと思っていることのために、献身的になることは、相手への愛情も深める。

相手の「用事」を知ることは、相手の気持ちを理解することにつながります。

③子育てでは、問題に挑戦させ自力で解決させよう。そして価値観は、親が自分の行動で示そう。

企業が業務をアウトソーシングするとき、能力という概念を理解しておく必要がある。将来に必要な能力、社内にとどめるべき能力、重要度の低い能力、これらを区別する。能力は、資源、プロセス、優先事項の3つに分かれる。

子育てでも、資源、プロセス、優先事項の能力モデルを応用する。

資源(知識や習い事)はたくさん与えがちだ。だが、責任を持って問題に取り組む、解決のため試行錯誤する、他人と協力するなど、プロセスを学ばせることが大事である。

子供が人生で何を最も優先させるかが、優先事項になる。優先事項は価値観であり、これは親が自分の行動を通して、子供が学ぶ準備ができたときに示す必要がある。

④子供が人生で必要な能力を養えるような経験を、繰り返し計画して与える。

人材登用では、経歴の素晴らしい人が有能だと考えがちだ。しかし、仕事で適切な経験を積み、大きな利害のかかるストレス下の状況で対処する方法を学び、スキルを磨いてきた人が能力を発揮する。能力は、さまざまな経験や、失敗や成功を通して開発され、形成される。

子供にも、将来成功のため必要になりそうな経験を考え、それと似た経験をさせるのだ。人生で必要となる能力を養うのに役立つ経験を洗い出し、それらの経験を与える機会をつくろう。

良い経験を積むことは、子供の成長に役立ちます。

⑤良い家庭文化を意識的に築き、子供に正しい行動をとらせる。

困難な状況でも、子供が選択肢を正しく評価し、賢明な選択を行うようになって欲しい。そのためには、子供の優先事項を正しく設定してやる必要があり、ここで家庭の「文化」が重要な役割を果たす。

企業にも「文化」はあり、共通の目標に向かって協力して取り組む方法である。頻繁に用いられ成功する方法なので、従業員は自律的に文化に沿って行動する。文化は、プロセスと優先事項が組み合わさったものと言える。

家庭でも、自分たちにとって大切なことを意識的に選び、それを強化する文化を設計できる。家族でどのような活動をするか、どのような成果を達成するかを考え、実行するのだ。家族一緒に物事に繰り返し取り組むことで、どうやって問題を解決するか、何が大切かという共通の理解が生まれる。

良い家庭の文化をつくると、子供は自然と正しい行動をとるようになります。

 

犯罪をおかさないための理論

①倫理的ルールでは、一度たりとも妥協しない。
ある市場を支配する大企業が、破壊的だが資本の乏しい小さい新規参入企業と競合した場合、2つの考え方がある。1つ目は新規参入者に対抗し、まったく新しいものをつくる方法で、総費用で表される。2つ目が既存資産を活用する方法で、限界費用と限界収入で表される。

このとき圧倒的に限界費用が総費用より安いので、大企業は既存資産を活用する方針を取りがちだ。しかし限界費用を意識した方針では、いつの日か競争力を失い、市場そのものが奪われるときが来る。

人生においても、決めたルールを一度だけ破るのは、大した問題ではないように思える。一度ルールを破る限界費用は、ほとんどないように感じる。しかし一度ルールを破ると、一度では済まなくなり、最後には総費用以上の、すべてを失うことになる。

人間は弱いので、一度ルールを破ると止められません。はじめの気持ちが大切です。

 

目的を持つことの大切さ

偉大な企業は、目的を持っている。

企業の目的には、自画像、献身、尺度という、3つの部分がある。自画像は、企業が最終的な目的地にたどり着いたときのイメージである。献身は、その目的を実現するために経営者と従業員が深い献身をもつことである。尺度は、経営者や従業員が進捗を測るために用いるものさしである。

人生でも、目的を持たなければならない。目的は明確な意図をもって構想、選択し、管理しなければならない。そして目的に向かう道は、創発的である。自力で自画像を描き、自分がなりたい人間になるために献身し、自分の人生を評価する尺度を理解することだ。

人生の目的は、自分で探して自分で決めよう。著者クリステンセンの後押しです。

 

書評

超有名な経営学者である著者が、実に青い誠実な「生き方」の本を書くことに少し驚きました。ビジネスの世界の研究で長い年月を過ごし、合理的な思考に浸かり、名を成した人が、このように(良い意味で)青い考えを説くのは意外でした。

何と言うか、熱い理想に燃える若者のような、それでいて人生の深淵を歩いてきた老人が書いたような、さわやかでしんみりとした人生指南書です。

いきなり驚いたのは、エンロンでとんでもない粉飾をしたCEOのスキリングと、ハーバードビジネススクールの同級生だったことです。同級生のころは、そのような違法行為を行う人間ではなかったと言います。

そのほかにも、年月を追うごとに、素晴らしい能力を持って輝かしい私生活を送っていたはずの何人かの同級生が、仕事や家庭に深刻な問題を抱えているのを著者は目撃します。

なぜこうなってしまったのか。著者はその疑問を、冷静な知性と温かい誠実さで解こうとします。

人生の幸せに役立つという本書の理論ですが、キリスト教の道徳観が強く反映されていると感じました。当然ですが著者の価値観通りに、自分が生きる必要はありません。ただ経営学の教授らしく、理論は合理的に語られ、わかりやすく提示しているので、すっきりしていて理解しやすいです。人生に悩んだときの、ひとつの道しるべとして参考になります。

なお、本書の邦題は「イノベーション・オブ・ライフ」ですが、原題は「How will you measure your life?」です。おそらくは、原題が忠実に著者の考えを表しています。

「自分の人生を評価するものさしは何か?」という問いに、自分で考えて答えることが、自分にとっての幸せにつながるのでしょう。

それにしても著者のクリステンセンという人は、面白いと思いました。若手教授だったときに、インテルの会長から直接話を聞きたいと言われ、喜び勇んでインテル本社に行ったエピソードなどはいいです。

会長に「問題が発生したから10分しか時間を取れない、10分でインテルに何が必要か説明してくれ」と言われても、「アンディ、それはできない、まず理論を知る必要がある」と返し、理論、そして無関係の他の業界の話をしていくところは楽しいです。忙しい会長が苛立っても、「アンディ、それはできない」と二度突っぱねるところは面白いです。

無関係の業界の話のあと、インテルがどういう戦略を採るべきかについて、会長が自分で完璧に思いつくところなど素敵です。「イノベーションのジレンマ」は未読ですが、読んでみようと思いました。
(書評2015/10/26)

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「新クリエイティブ資本論」 リチャード・フロリダ(著)

 

新しく台頭する階層を描き、大反響を巻き起こした「クリエイティブ資本論」を、10年ぶりに全面改訂!

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

現在の経済で主役となる階層に、興味がある人。

 

要約と注目ポイント

・経済や文化を変化させる、長期的かつ潜在的な力は何か。それは経済を成長させる力をもつクリエイティビティと、新たな社会階層「クリエイティブ・クラス」である。

・クリエイティブ・クラスにより、カジュアルなスタイル、柔軟な勤務体系、個人志向、多様性の尊重、実力主義といった価値観が社会に広まった。都市に求められる価値も、快適な居住性、清潔さ、緑の豊かさ、持続可能性などに変わった。

・本書の主張は、
「誰もがクリエイティブである。すべての人が持つクリエイティブな力を引き出そう。ひとりひとりのクリエイティビティを尊重し、育成する社会を構築しよう。それは開放性と多様性に満ちた社会だ。」
である。

クリエイティブな人々が、新たな階層として台頭してきました。これらの人々が、経済の形を変え、社会を革新します。

クリエイティブとは

クリエイティビティとは、役に立つ、意義のある、機能する、(それが作られるまで明確ではないが)何か新しい形態を作り出す能力である。多様なクリエイティビティを育成するには、それに適した多様性のある社会的・経済的環境が必要となる。クリエイティブな人材が集まることが大切なので、ビジネスではどの場所(都市)を選ぶかが大きな意味を持つ。

・報酬を何から得ているかで、階層が分かれる。(労働力比率と報酬比率はアメリカのデータ)
「クリエイティブ・クラス」は労働力の30%強で、知的および社会的スキルを使う頭脳労働で報酬を得る。賃金総額の半分以上を占め、他の2つの階層の倍近く稼いでいる。
「ワーキング・クラス」(労働力の約20%)と「サービス・クラス」(労働力の45%強)は、決まりきった仕事や肉体労働で報酬を得る。

クリエイティブ・クラスは、3つのTがある、大都市圏か中小規模の大学都市に集まる。3つのTは、技術(technology)、才能(talent)、寛容性(tolerance)である。

・クリエイティビティとは、知性も当然含むが、統合する能力のことである。また(他人の批判にへこたれないように)自信リスクをとる能力も含む。
多面的で経験的なものなので、長い時間をかけ修練し、集中し、多大な努力をする必要がある。協力者も要るので、他人をまとめて組織的に取り組む能力も含まれる。

・クリエイティビティは、収穫逓増の性質がある。誰かのクリエイティビティに手を加え改良し、新しい形態のクリエイティビティが複数生まれ、さらに蓄積されていく。

新しく価値のあるものを生み出す能力が、クリエイティビティです。クリエイティブ・クラスは頭脳労働者で、都市部に集まります。

 

クリエイティブ・クラスの特徴

・クリエイティブ・クラスと人的資本(学位)に相関関係はあるが、一致しているわけではない。クリエイティブ・クラスは賃金が高く、失業率は低い。またクリエイティブ・クラスが多く住む地域も、失業率が低くなる。

・ワーキング・クラスは減少している。退屈で単純な作業や、機械で制御された作業を行い、賃金は低めである例が多い。失業率は高く、景気後退局面で特に高くなる。サービス・クラスの労働人口は一貫して増加しているが、賃金は一番低い。失業率は高めである。

・クリエイティブ・クラスと、ワーキング・クラスおよびサービス・クラスとの間には、収入や経済的保障の格差だけでなく、ライフスタイルといった面でも差異があり、固定化している。

・政治学者のイングルハートは、世界的に価値観が、経済成長からライフスタイルを重視する方向へ変化していることを指摘した。このように変化した価値観は、クリエイティブ・クラスと共通するものである。クリエイティブ・クラスは、体制の内側にいる、社会の主流派なのだ。

・クリエイティブな人々の働く意欲をかきたてるのは、クリエイティブな仕事からの内発的報酬である。

クリエイティブ・クラスは増えており、収入も高いです。生活の質を大切にする価値観を持ちます。

 

クリエイティブな仕事への変化

労働者は、フリーエージェント化が進んでいる。良い面としては、労働の自由度が増し、時間帯や条件を選んで、充足感が得られる仕事に専念できる。悪い面としては、やりたいと思う仕事は競争が激しく、収入が低くて安定しない。

・非正規社員や派遣社員などの比率が上がり、会社は社員の人生のリスクを引き受けなくなってきている。今日の労働者は、自分の仕事や生活に、より自分で責任を負うようになった。

・クリエイティブな頭脳労働者には、カジュアルなドレスコード、柔軟な働き方、大学の学生寮のような楽しそうで相互作用的な空間、を用意することが求められる。
オフィス環境としては、共通の知識や関心を土台としながら、互いに異なる見解を提示できる人々が、相互に接触しやすい構造が望ましい。

・クリエイティブな労働者は、内発的報酬で動くので、長時間労働となりやすい。常に、新しく効果的な方法を迅速に考案し実行しようという、過酷なストレスがかかる。

クリエイティブ・クラスは、自由な働き方を望み、相互作用から成果が生まれます。ただし、何事も自己責任で、過重労働になりがちです。

 

高濃度な時間と経験を求める

・テクノロジーが進歩するほど、時間を管理しようとする圧力を受けやすい。高い技能を備え高収入の人ほど、忙しく時間に追われる感覚を持つ。時間を濃縮して過ごそうとする(商品を消費することから、経験を消費することへの移行)。

・クリエイティブ・クラスは、濃密でクオリティの高い、心がときめくさまざまな経験を求めている。自分で体を動かす、アクティブで本格的な経験を楽しむ。選択肢を自分でつくったり、幅広く選択できる本物の経験を、クリエイティブ・クラスは好む。

・クリエイティブ・クラスは、その土地に根を張った、その土地特有の有機的に発展してきた文化を好む。このようなストリート文化は、無数の小さな文化の集まりで、多種多様な人々が行き交い、多くの要素が折衷的である。クリエイティビティとは多くのものを合成する営みであり、ストリート文化の多様性、相互性、折衷主義がクリエイティブを刺激する。

クリエイティブ・クラスは、時間を有効に使おうとします。そのため、濃厚で質の高い経験を求めます。

 

クリエイティブ・クラスの考え方

・クリエイティブ・クラスでは、プロテスタントの労働倫理とボヘミアンの倫理が混じり合っている
近代工業社会が成立して以降、この2つの倫理は対立してきた。プロテスタントの倫理は、合理的で実利主義であり、保守的で勤勉を尊ぶ。ボヘミアンは仕事ではなくライフスタイルに基準を置く。
クリエイティブ・クラスは、勉強も仕事も一生懸命であり、遊びも一生懸命である。組織や規律と、自己や快楽とは両立している。

・資本主義社会では、経済面でブルジョアジーとプロレタリアートが対立し、文化面でブルジョアジーとボヘミアンが対立していた。ブルジョアジーはプロテスタント倫理を徹底することで、資本家階級となり、権力を握った。プロテスタント倫理では、人間の感受性や自由な行為、肉体的快楽の可能性を抑圧するので、ボヘミアンは反抗した。

・だがボヘミアンの価値観が存続できるのは、持続可能な経済的基盤があるときだけだ。シリコンバレーが開拓したクリエイティブ精神は、経済力を生む仕事世界と、自由と多様性を求めるボヘミアン的生活世界を、2つとも巻き込み混合させた。2つの倫理を同時に持つクリエイティブ・クラスが、今後の社会の方向性を決めていく。

クリエイティブ・クラスは勤勉かつ、開放的に遊びます。

経済成長とクリエイティブ・クラス

・クリエイティブ・クラスは、寛容で多様性があり、質の高い生活や経験が得られ、自分のクリエイティビティが発揮できて、クリエイティブ・クラスが集まっている場所に住みたがる。
知識主導型のイノベーション経済では、クリエイティブな人々が集まると、相乗効果が生まれる。集積により生産性が高まり、発展し繁栄していく。

・経済的に見ると、クリエイティブ・クラスが集まる地域は繁栄し、ワーキング・クラスが集まる地域は停滞し、サービス・クラスが中心となる地域は、人口と仕事が増えても低賃金のまま、という傾向がある。

・労働者のスキルには、身体的スキル、認知能力のスキル、目標達成のために人と協力する社会的スキルがあり、最後のものが一番大切である。認知能力を使って分析でき、社会的スキルを行使できる労働者は、高賃金が得られる。

・都市の真の経済成長は、人口の増加ではなく、生産性の向上によってもたらされる。人口の規模や密度ではなく、クリエイティブ・クラスの人口比率が高い場合、経済成長も高まる。すなわち、クリエイティブ・クラスにより生産性が高まっている。

・クリエイティブ・クラスを惹きつける場所は、3つのTのほか、4つめのT(territory)がある。これは、仕事や生活をするのにクリエイティブな環境であり、多様でクリエイティブな人々がいて開放的なので自分も参入しやすく、クリエイティブな活動が日々行われている場所である。場所の質が高いと言える。

クリエイティビティが経済を成長させます。場所の質が高いと、クリエイティビティが発揮されます。

都市環境と社会の絆

・従来のコミュニティ(社会資本)は弱体化している。教会、町会、政治団体、同好会などへの参加は減っている。だが今日では、これらの団体に参加したくないと考える人が増えている。
今日では、弱い絆の重要性が増している。強い絆はいくつかなら維持できるが、数が多くなると負担になる。弱い絆はたくさん持てるし、状況で使い分けられ、クリエイティビティにとって有効である。

場所の質が高いと、クリエイティブな人々という多様な労働力と、それを探す企業の厚みのある労働市場という、両方が存在する。良質のライフスタイルも得られる。場所では、多様性、その土地らしさ、シーンも重要。どこに住むかが、人のアイデンティティにもなっている。

・住民がその場所に愛着を持つのは、寛容性があり、社会からさまざまなものが豊富に提供され、建築物や緑地が美しいときである。

・クリエイティブ経済により、人口は都市へと回帰し、都心部へ向かう。郊外では、歩きやすい街が好まれる。快適性や安全性、自転車専用道路や公園など歩きやすさ、公共交通機関へのアクセス、エネルギー効率の良さといった点が望まれるようになった。

・クリエイティブ・クラス、ワーキング・クラス、サービス・クラスは、それぞれ非常に異なる種類の場所に住み、極めて異なる人生を生きる。働き方によって、日常生活の大部分は決まっている。階層間の対立、住む地域同士の対立が目立ち始めた。

・幸福度は、収入やクリエイティブ・クラスの比率と正の相関があり、ワーキング・クラスの比率と負の相関がある。喫煙や肥満などでみると、クリエイティブ・クラスが多く人的資本のレベルが高い都市が健康で、ワーキング・クラスが多い都市が不健康だった。銃による死亡率、歯科受診率などでも相関があった。

・アメリカでは、仕事の種類、収入、教育レベル、政治や文化、健康、幸福というすべての面で分断化され、不平等な社会になっている。貧困や不平等、階層間の分裂を解決するため、新しい制度が必要である。

・すべての人がクリエイティビティを発揮でき、クリエイティブ経済が実現するような、新しい社会契約を構築しなければならない。

経済格差と、それによる社会の分裂をどう解決するのか。アメリカだけではない、世界の深刻な問題です。

 

書評

ビジネス書だと思って読み始めたら、実際は社会学寄りの本でした。典型例で言うと、シリコンバレーで働き高収入を得るような人たちを、ビジネス的に分析する本と思っていました。確かにそういう人たちを扱っていますが、それらの人々が生まれた歴史的背景や社会的位置付け、社会への影響、価値観の変遷、階層としての特徴などを考察しています。

原著は2002年ごろに書かれており、この内容ならば出版時には衝撃的と思われます。反響は大きかったようです。本書は、それから10年後の改訂版です。本文中で著者も述べていますが、今読むと驚きはありません。細部はともかく全体としては、まあこのようなものだろうという印象を受けます。

高賃金で社会的地位の高い層に、本書で指摘するクリエイティブ・クラスが増えているのは事実でしょう。社会的影響力を持つ層では、主流派になりつつあるかもしれません。クリエイティブという概念は理解しにくいのですが、多様性のある都市部を好む、カジュアルなドレスコード、ゲイが住みやすい都市に多い、といった具体例の方が察しやすい感じです。これらの例だと、急成長するIT企業の活動的な社員というイメージです。

ですが本文では、意外と工場労働者の創意工夫みたいなものも、クリエイティビティとしています。ここはけっこう違和感がありまして、こういう工場で製品の改良に熱心に取り組む人たちって、都市部に住むか?という印象です。むしろ町工場的メンタリティじゃないですかね、これ。

思うに、経済格差があまりにひどくなったことを、著者が意識しているのではないでしょうか。クリエイティビティはすべての労働者が持っているし、それを発揮することで賃金も上がり、生活水準も上げられる、という結論に何としても持っていきたい意欲を感じます。

工場労働者でもクリエイティビティが発揮できるとしても、それは期間労働者のような人たちではないでしょう。高度経済成長期のブルーカラーのように、終身雇用でその職場にずっといて、職場に忠誠心もある人です。仕事が人生とかなり一体化しており、仕事の創意工夫に励む感じです。そして仕事に打ち込むことで、人生が報われることがかなり期待できた時代の話です。著者がクリエイティブな工場労働者の例として、一生懸命語るのも、1960年代の著者の父の話です。

しかし本書でワーキング・クラスの衰退を指摘しているように、現在の工場労働者は身分の安定したブルーカラーは少ないように思います。期間労働者ではクリエイティビティを発揮する機会もなく、報酬も得られません。

工場のカイゼン運動を例に挙げ、末端の労働でもクリエイティブだと述べます。しかし、その末端労働者がクリエイティビティを発揮したとして、それに十分な報酬を与えることができるのでしょうか。

著者は、末端の労働者階級からもクリエイティビティを引き出し、適切な報酬を与えてクリエイティブ経済に組み込め、と主張するのですが。その報酬の与える体系がよくわかりません。

本書は現在の経済構造、その上部に位置する階層を知る本として、有意義だと思います。クリエイティブな人々により、新たなビジネスが生まれ、経済成長するというのも納得します。クリエイティブ・クラスの価値観や生活スタイルも、こういう人々だろうなとうなずけるものです。

しかしそこから、すべての労働者がクリエイティブになれるし、格差を小さくできるという主張は、やはり相当楽観的と考えざるをえません。格差を縮小する方策や、労働者からクリエイティビティを引き出す方法を述べていますが、実現はかなり難しいと思います。

途中でよくわからない議論もありました。賃金格差は、クリエイティビティや教育、技能の有無が原因となる。しかしそれは収入格差に直結しないので、ワーキング・クラスやサービス・クラスの労働者も、クリエイティブ・クラスが集中する地域に住めば暮らしが良くなる、と述べていますが、これはちょっと理解できない主張です。

このように、クリエイティブ・クラスを通して、今日の経済構造、社会構造を考えるには有益な本です。その先どうするか。例えば経済格差の解消や、階層間の断絶を解決するにはどうすればよいのか、本書の分析や主張では不十分かと思われます。
(書評2015/10/23)

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