「誰も教えてくれないお金の話」 うだひろえ/泉正人(著)

Pocket

 

懸命に働いても、がんばって節約しても、全然お金がない。
本書では、そんなお金の悩みを解決します。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

お金が貯まらない、お金の知識がない、お金の扱い方がわからない人。

 

要約と注目ポイント

・主人公は33歳の主婦兼イラストレーター。夫は脱サラして、カフェ経営中。夫婦とその周囲の人々の日常生活を漫画で描く。(もちろんお金が主題です。)

 

月末にお金がない

主人公の女性は、漫画やイラストの仕事をがんばり、節約し、夫のカフェも手伝っている。しかし、住宅ローンの支払いにすら困る生活。貯金は無い。万一のための保険、子供にかかる費用、老後の不安はどうすれば?がんばっているのに、なぜお金がなくなるの?

解答:
月末にお金がなくなるのは、収入と支出のバランスがとれていない。

 

うまく節約ができない

主人公と同じようにズボラな性格と思っていた妹が、しっかり家計簿をつけ、収入と支出を把握し、家計を管理していた。主人公も家計簿をつけ始め、とことん節約してみた。でも生活がギスギス。それでも貯金が貯まらない。なぜ?

解答:
収入の一定割合を先取り貯蓄し、残りで生活。家計簿は、家計の全体像を知るためにつける。節約は固定費の削減から。

家計の収支を確認し、大きな固定費を削るのが、節約の基本です。先取り貯金も、お金を貯める基本技です。

 

お金を貯め、利益を出すのに必要なこと

貯金を増やそうと、夫のカフェを手伝う主人公。でもお店で利益を出すには、お金(会計)の知識が不可欠。

解答:
家計でも、資産と負債を把握できるバランスシートをつけよう。価格と価値の関係を意識して、お金のセンスを磨こう。お金の流れを見ること。お店では、固定費・変動費・損益分岐点、客単価と回転率などを考え、リピーターを増やして、利益を出す。

 

住宅ローンの支払いが長くて苦しい

賃貸に住んでいた主人公夫婦は、転勤を機に不動産屋に問い合わせをしてみた。すると不動産屋に押され、頭金なしで限界まで変動ローンを組み、新築マンションを購入することになった。今となっては、ローンの長い支払いに苦労している。

解答:
住宅購入のときには、手取り収入から借りていい限度額を考えること。類似する賃貸物件の家賃から、販売価格の妥当性を判断できる。
住宅ローンの種類と金利、物件購入時にかかる諸費用、購入後にかかる税金・修繕費・保険料、繰り上げ返済と借り換え、などを解説している。

家を買ったあとでは、支出の変更は難しくなります。住宅ローンを組む前に、十分な検討をしましょう。

 

お金に苦労しない生き方

将来のため、もっと一生懸命働いてお金を貯めようとする主人公。そんなとき、取材でファイナンシャルプランナーの話を聞くことになる。

解答:
お金について悩むのではなく、考えること。大切なのは、お金の正しい扱い方を知ること。浪費を減らし、価値を生む投資を増やす。情報を集め、取捨選択する。お金について勉強し、実行して気づき、また勉強する。

自分の価値観を考え直すと、お金の使い方が変わることがあります。特に、見栄にこだわらなくなると、自分の大切なことにお金を使うようになります。

 

保険について

漠然とした不安を感じていた主人公。それは、ケガや病気についてだった。夫がケガをして、カフェを休業することに。母や妹が保険に入ることを勧めてきたが。

解答:
公的な社会保障はかなり厚い。それらの解説。公的保障の範囲外で、自分に必要な保険があれば入る(収入保険や医療保険など)。万一のときに必要な額を計算し、その目的を満たす最適な保険を選ぶ。生命保険では、残された家族や子供にかかる費用を計算する。

加入している保険の見直しは、かなり効果的です。

 

老後に備える

老後に必要な生活費を考えてみた主人公。もらえる年金額と、貯まる予定の貯金額の合計では、10年も暮らせない。暗い気持ちになる主人公。老後は暗いのか?

解答:
国民年金・厚生年金・共済年金など、年金制度を説明する。年金はベースになるので納付しよう。少額から資産運用もできる。勉強しながら、小さな金額で始めてみよう。

 

子供を育てる

主人公は、子育てしながら働く知人に刺激を受ける。子供をもつことを意識するが、教育費が心配だ。

解答:
出産にかかる費用と、それを補う保険制度を説明する。かかる教育費と、児童手当や補助制度の説明も。正しい知識を持てば、不安は消える。

老後の生活費も、子供の教育費も、正しい知識を持てば対策を考えられます。具体的に行動を始めれば、不安も減ってきます。

 

書評

漫画でストーリーが展開し、説明も入りますが、詳しい解説は文章となります。主人公の生活は漫画家自身が描き、お金の知識となる説明は、ファイナンシャルプランナーの方が書いています。

お金の知識を学ぶとっかかりとして、漫画は適当かもしれません。なぜかいつも月末にはお金がなくなり、支払いに困る。家計簿が続けられない。といったエピソードは読者の共感も得られそうです。

家計の収入と支出を知ること、先取り貯金、固定費削減など節約の工夫、資産と負債の考え方、住宅購入の考え方、公的な社会保障制度、必要となる保険の考え方、年金の基礎知識、子育てや教育費の実際、などの基本をきっちりと学べます。とりあえず人生で必要な、最低限のお金の知識は、網羅されている感じです。

ただし、どうしても教育的な漫画になるので、漫画そのものは特に面白いとは言えません。結局は文章で解説されます。

なお、夫がカフェを経営しているのでストーリーでは必要ですが、お店が利益を出すための会計知識が、この本の読者に重要なのかは疑問でした。

確かに、そのようなお金のセンスはとても大切です。ただ、こういった本の読者は、お金のことが全然わからない人のような気がします。お店の経営より、自分の生活や貯金が最大の問題だと思われます。ですので、お店が儲かる会計の話は、省いてよかったかもしれません。
(書評2015/11/10)

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA