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「外資系コンサルのスライド作成術 図解表現23のテクニック」 山口周(著)

 

プレゼンで相手に伝えたいことを受け止めさせるにはどうすべきか。効果的なプレゼンを行うための方法論です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

プレゼンの技術を高めたい人。

 

要約

価値観や立場の異なる人たちと協働し成果をあげるためには、意図や考察を伝達する能力が必要となる。そのためわかりやすいスライドを作成する技術が求められる。スライド作成の技術は、訓練によって高められる。

 

基本

スライドの役割は、ビジネスにおけるコミュニケーションをより早く(時間)、より正確に(効果)、より少ない労力(コスト)で成立させることである。

スライドに必要な構成要素
①メッセージ(最も言いたいこと)
②グラフ、チャート・表などのタイトル
③グラフ、チャート・表
④脚注
⑤出所(情報の信頼性を担保する)
⑥ページ番号
全てのページで、レイアウトのルールは同じにすること。
文字の大きさは12ポイント以上、メッセージは2行以内で。

スライドの作成手順
①ページ番号をつける。
②スライドで伝えたいことを明確にするため、メッセージから書く。同時に出所をつける。
③グラフなどのタイトルをつける。(つけないとグラフやチャートが理解できなくなる。)
④グラフやチャートをつくる。脚注をつける。

良いメッセージがスライドには重要である。良いメッセージは、短く、明快な主張があり、1スライドに1つである。
まず伝えたいメッセージをつくり、メッセージが集まったら受け手が興味を持ってくれるように、わかりやすいストーリーにまとめる。

 

グラフ

数値を視覚化するのがグラフである。データには、実数値、構成比、指数値がある。グラフのフォーマットは、自然な感覚になじむ一目でわかるものを選ぶ。
実数値は棒グラフか折れ線グラフ、構成比は円グラフか棒グラフ、指数値は折れ線グラフか棒グラフだとわかりやすい。実数値と構成比の組み合わせでは面積図、2つの実数値では散布図なども可。円グラフは視覚的に、正確にデータを読み取れないことに注意。

・量の違いを視覚上のボリュームに反映させて、メッセージを際立たせる。2つのグラフを合成して、意味合いを明確にする。

・合成したグラフの解説。
折れ線と並列、棒と積み上げ、棒と並列、折れ線と積み上げ、折れ線と並列、棒と折れ線、散布図。

・グラフの訴求ポイントを明確にするため、線を濃くしたりシェードをかけてフォーカスする。フォーカスは本当に伝えたい一点に絞り込んで、他の項目はなくす。

・数字の動きを視覚化できれば、わかりやすくなる。わかりやすくするため、地図を利用したり、滝グラフを用いるのもよい。

・グラフ間の関係性(データの関係性)が一目でわかれば、理解されやすい。

・洗練されたグラフをつくるための訓練には、次のような方法がある。
自然科学や社会科学の論文(ネイチャーやサイエンスなど)のグラフを真似する。周囲のスライドの達人が作成した資料を模写する。真似して自分の手を動かすこと。

 

チャート

数値化できない概念や構造を、チャートとして視覚化する。
縦軸と横軸に、適切なロジック(秩序)を設定する。縦横軸に秩序をもたせて情報を整理すると、気付きが生まれる。メッセージの主語と軸を合わせること。

自然な感覚に合うように、構造を決める。(左が過去で右が未来、組織の上層部が上で現場が下、など。)
情報整理の5つの方法。
①カテゴリーによる分類
②時間による分類
③場所による分類
④五十音による分類
⑤連続量による分類

・スライドに同じ言葉が何度も出てくるときは、改善の余地がある。

・矢印は、起点と着点を明確にする。

・認知への視覚の効果を考える。
近くにあるものは同じグループとして認識する。(近接の要因)
囲われた領域は同じグループとして認識する。(閉合の要因)
スライド上では、視線は左上から右下へ移動する。

・チャート作成では、はじめに紙でデッサンして、それからパワーポイントに。紙にアイデアを書かないと、自由な発想が生まれない(パワーポイントが先だと、発想が制限される)。

 

スライドのブラッシュアップ

情報量を詰め込み過ぎずにシンプルに。必要な情報を入れノイズは省く。

・情報とは差異であり、スライドの場合、差異は紙の白とインクの黒で形成される。インク量を、必要・不必要の軸と、効率・非効率の軸で調節する。

・相手が何を知っていて何を考えているか、考慮してメッセージをつくる。

・ほかに練習問題と解説。

 

書評

本書では、ビジネスのコミュニケーションにおいて、早く正確に労力をかけず目的を達成することをめざしています。そこで大いに役立つのがスライドの技術です。

本書にはスライドの実例が多く出ているので、大変わかりやすく読み進めることができます。スライドを改善するポイントがよくまとまっています。スライドを改善する急所は、結局は相手に効果的に伝達する方法論なので、とても勉強になります。

実生活では(主に仕事でですが)、何が言いたいのかわからない発言やメール、資料によく遭遇します。意図を読み解こうとするために使われる時間や労力は、本当に無駄と感じます。仕事ができる人は、一瞬でわかる指示や意見や資料を出してくるので、とても楽です。本書の内容を自分のものにできれば、役立つ場面があるものと思われます。
(書評2014/05/27)

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「ヤバい経営学 世界のビジネスで行われている不都合な真実」 フリーク・ヴァーミューレン(著)

 

「ヤバい~」というタイトルの本は何冊かありますが、読むのは本書が初めてです。本書は正統な経営学者が書いた、くだけた感じだが正統なビジネス書です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

経営に関する通説に、ツッコミを入れてみたい人。

 

要約

・本書は企業の非合理的な側面を扱う。
企業は個人の集合体であり、国や文化が違っても同じような現象が発生する。ビジネスは人々の生活の基礎であり、世界を動かす力を持つ。ビジネスが実際にどのように動いているか(企業がどのように組織され経営されているか)を知ることは重要だ。

・ビジネスの世界には、当たり前と考えて疑うことのない慣習がある。本書では「当たり前」に疑問を持ち、その正体を探る。

・ほとんどの人は気付かない間に周囲から影響を受け、他の人と同じような行動をとる。経営者も同じである。経営者も競合他社を(意識的にまたは無意識に)真似ている。
例:新聞紙面の大きさ。製薬業界のMR活動。

・バイアスに基づいて、ビジネスの意思決定がなされることがある。
例:選択バイアス。不確実性は数字で評価しにくい。数字で表せないことが大事。

・過去の大成功した戦略も、論理的・合理的に導かれたとは限らない。

・優良企業が環境変化に対応できず、衰退する事例は多い。
これは優良企業が自社の強みを磨き続けることで、逆に経営環境の変化に追随できないというパラドックスが原因となる。環境変化をどう捉えるかで対応は変わり、脅威にもチャンスにもなりうる。

・事業が成功し資金が豊富なときは、むしろ強みに特化し手を広げ過ぎないこと。業績が悪化した(不況の)ときは、新しい収益源を探し、ボトムアップで試行錯誤し、多くの中小企業からの売上を増やすことをめざした方がよいだろう。

・経営者は買収を好み、企業の規模を大きくしたがる。
しかし合理的な理由ではなく、支配欲求や野心に基づく規模拡大は危険である。最大ではなくベストな会社となることをめざすべきで、優れた会社組織を築くには時間がかかる。

・ナルシシストな経営者は、戦略変更を頻繁に行い、多くの買収をする。業績は謙虚な経営者よりもばらつきが大きい(大きく良い者も大きく悪い者もいる)。優れたリスク管理者(経営者)は平均リターンが高い正規分布となるが、ダメな管理者は平均リターンが低く分布曲線両端のテール部分が長い正規分布となる。
過剰な自信で買収に失敗することも多いが、経営者の過剰な自信は生まれつきではなく後から備わったものだ。個人の能力は全能ではないのに、周囲の賛辞で自信過剰となってしまう。

・経営者には、わかりやすい戦略的な方向性を示す役割がある。会社の状況に応じて、イノベーターやマネージャーといった異なるタイプの経営者が必要となる。

・アナリストの分析対象になると、その会社の株価は上昇しやすいが、その業績見通しは楽観的であることが多い。投資銀行などで、リサーチ部門とコーポレートファイナンス部門に利益相反の可能性がある場合、顧客企業に有利な評価(あるいは曖昧な評価)を下す傾向がある。

・アナリストが理解できる事業の方が、会社が高く評価される。
コングロマリットだとアナリストが事業内容を理解できないので、コア事業に集中する会社の方を推奨する。

・社外取締役は、利益誘導のために招かれているように見える。取締役も経営者に協力的な方が利益を享受できる。経営者の報酬は高くなりやすい。

・ストックオプションを多く持つ経営者ほど、リスクを取ろうとする。

・外部取締役が多かったり大規模な機関投資家がいると、会社に不利な情報を隠すことが少なくなる。ただし、外部取締役が株を持っていたり小規模な機関投資家が多いと、会社は悪い情報を隠蔽しようとする。

・株式市場は企業の発表内容は気にするが、企業が実際に何をしているかはあまり気にしない。

・予言の自己実現が存在する。(自分の思い込みに従って行動すると、結果的に自分の予想が実現する。)

・「コアビジネスに集中せよ」というアドバイスは、原因と結果を逆に取り違えている。低迷企業は、儲かるビジネスを探そうとして多角化することが多い。好業績の企業が、成功している事業に集中するのは一般的な戦略だ。
「強い企業文化を育もう」というアドバイスも、原因と結果が逆である。成功が徐々に均質な組織文化を作っていく。また強固な企業文化は、環境変化への適応を阻んだりする。

・経営合理化は、コスト削減という短期的なメリットはあるが、長期的には利益率向上に貢献しない。普段から社員を大切にしている会社の場合は、人員削減をしてもうまくいくことがある。

・流行りの経営手法を導入しても業績はよくならない。しかし経営者の評判は上がる。流行りの経営手法の長期的な悪影響は認識されにくく、経営コンサルタントなどを通じて拡散される。

・ノウハウなどを蓄積した社内データベースだけに頼ってはいけない。大きな暗黙知の部分がある。

・研究開発部門は、新しい何かを創り出したときだけ役に立ったと考えがちだが、別の面で貢献している。研究開発部門があることで競合他社の真似ができ、他社の発明や技術を吸収できる。

・今日のビジネス環境の変化の速度は、過去と変わらない。

・イノベーションを起こす会社は、起こさない会社より成長率が低く、倒産する確率は高い。

・会社には偶然幸運が訪れることがあるが、それを受け止めるには経営者が幸運に気付き、それを活かす準備がなされている必要がある。

・成功や競争優位性の要因はよくわからない。あまりに複雑に要素が絡んでいるので、成功を模倣するには、まずは完全にコピーし、そこからゆっくりと変化を加えるのがよいだろう。

・組織再編では、不活性な組織内コミュニケーションを再活性化する利点がある。権力の過度の集中を防ぎ、変化に対する適応能力を高めるメリットもある。

・自社の外のネットワークからイノベーションの材料を得るようにする。

・原理的に会社は株主に最も責任を負う。しかし株主より社員を重視して経営する方がうまくいくこともある。人間(社員)は所属するコミュニティ(会社)へ喜んで貢献する性質がある。社員を金銭で動機付けしようとせず、活動的になれるよう組織を変えよ。

・大きな失敗の原因には、
①職務の細分化と組織の専門化
②成功による過信
③多くの人がやっていることをやりたがる群衆心理
④欲深さ
がある。

・社員が働きやすい環境をつくったり、社会的責任(CSR)を果たすことは、少なくとも損にはならない。

 

書評

本書では、あまり疑われずに常識となっている経営やビジネスの慣行について、軽い口調でツッコミをいれていきます。そのツッコミはあくまでも学術的な研究に基づいているので、面白いながらも、そういう考え方もあるのかと勉強になります。

具体例が満載なので面白いとも言えますが、話があちこちに飛ぶので散漫な印象はあります。著者が主張したいことが何なのか少しぼやけているので、さっと読み流すとあまり記憶に残らないかもしれません。アカデミックながら軽い感じの読物と言えます。ただけっこう長めです。
(書評2014/04/22)

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「ビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門」 早稲田大学ビジネススクール(著)

 

ビジネススクールのさわりになるような、MBAのはじめの一歩といった本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

ビジネススクールに興味がある人。MBAを取りたい人。

 

要約

・戦略的であるために、事実に基づいて考える。事実を把握するため、適切な尺度で測定し、測定結果の背景を読み取る。何をやって何をやらないか、優先順位はどうか、考える。全体最適を考える。
(戦略分析の3C、マーケティングの4P、5つの競争要因、組織変革の7S、SWOT分析、PEST分析)
製品を売るより、顧客のやりたいことを実現させるビジネスを売る。顧客の経済合理性を考える。

・競争相手は誰か、自分の業界はどう変わるかを考える。
(置き換え、省略、束ねる、選択肢の広がり、追加)
異業種間の競争では、ビジネスモデルの違いにより、顧客の時間・空間・財布を奪い合う。ビジネスモデルで重要なのは、「顧客への価値提案」「儲けの仕組み」「優位性の継続」。

・マーケティングについて。
標的顧客を明確にし、顧客満足を最大化させる。顧客の満足が継続的な購買につながり、ビジネスを持続して成長させる。さらに企業の社会的責任や社会的貢献を果たしながら、顧客満足を達成することが求められる。
(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)
ポジショニングには、製品属性、機能的便益、心理的便益、提供価値、用途や目的、製品カテゴリー、市場地位のそれぞれに基づく7つの方法がある。

・花王エッセンシャル、ジャパネットたかた、サウスウエストの分析。

・経営にはビジョン、戦略、オペレーションの3つの要素があり、整合性がとれている必要がある。
オペレーションは戦略を実現する組織能力であり、現場が強くなければオペレーションは遂行できない。強い現場では、全員が参加し高い問題発見・解決能力を持ち、継続的改善が行われている。

・限定された人的資源を戦略的に配分する。
正しい仕事に正しい人材を当てはめる。正しい人材を選んで良い機会を与える。

・組織が中長期的な目標を達成するための、組織内で実施される協働のプロセスやコミュニケーション(インターナル・マーケティング)について。
従業員が喜んで仕事に取り組むようにする、全員がマーケターとして行動する、全社的なマーケティング体制をとる。部門内や部門間、階層間の透明性を確保する、創造性を発揮し交流できるオフィス空間にする、優秀な人材を集める。
全員が目的や意識を共有し、情熱をもって各人のプロフェッショナリズムに基づきプロジェクトを遂行する。

・リーダーシップのある人とは、ビジョンと方向性を示し、コミュニティーをつくり、結果を出せる人。
シナリオプランニングで中長期の視点を身につける。コミュニティーづくりで人を巻き込むには、傍観者を支持者に変える。(一般に構成員のうち支持者は20%、反対者は30%、傍観者は50%)

・21世紀は多様性、独自性、創造性を尊重した複雑系グローバル化の時代である。
グローバル化しても、距離や文化、情報認識のパターンなどには差異が残る。世界中のさまざまな現場で多様性を認識し、クロスボーダーで知恵を結集し新しいイノベーションにつなげる。

・財務会計、管理会計、ファイナンスについて。
賃借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の読み方。企業価値(ディスカウントキャッシュフロー法)、資本コスト、投資の意思決定など。

・経営者が持つべき資質について。

 

書評

ビジネススクールでどのようなことを学ぶのかという、オリエンテーションのような本です。早稲田の教授陣が、担当分野ごとに講義をもとに解説しています。基礎的なフレームワークや理論、実際のケーススタディが題材となっています。

私は今までに、起業準備の本やビジネス書を読んできましたが、意外と重複しているという感想を持ちました。もちろん実際の講義ではもっと高度な内容になるでしょうが、起業の準備で考えてきたようなこともビジネススクールでやるのだなと思いました。ビジネススクールは、門外不出の魔法を教えているわけではないようです。

ビジネスの基本を広く浅く紹介している本として、本書は位置付けられそうです。学生や若手ビジネスパーソンが、手始めに学習するのに良いかもしれません。
(書評2014/01/19)

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「コークの味は国ごとに違うべきか」 パンカジ・ゲマワット(著)

 

世界はフラット化するとか、あらゆる産業でグローバル化は必須、というのが現代日本の常識になっています。で、それってホントに常識なの?と考えるのが本書です。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

(大企業で)事業の海外展開を考える人。海外市場の分析と事業戦略を考える人。

 

要約

経営者はグローバル戦略の策定や評価にあたり、国ごとに根強く残る差異を真剣に考慮すべきだ。

・現在の世界は、グローバリゼーションにより同化しフラット化した世界ではない。完全な統合には程遠いセミ(半)・グローバリゼーションの状態で、今後数十年はそのような状態が続く。
世界はセミ・グローバルな状態と認識し、海外進出による成長や市場拡大、国境の消滅による画一的戦略などの幻想に惑わされないこと。

セミ・グローバリゼーションのため、クロスボーダー戦略は単一国向け戦略と大きく異なるものとなる。

・セミ・グローバル化した市場では国ごとの差異も類似点もともに考慮すべきだが、差異が及ぼす影響の方が大きい。

国ごとの文化的(Cultural)、制度的(Administrative)、地理的(Geographical)、経済的(Economic)な差異を分析し、隔たりを重視せよ。これをCAGEの枠組みと呼ぶ。

・国ごとの隔たりの重要性は業種によって異なるので、CAGEの枠組みは業種レベルで最もうまく機能する。CAGEの枠組みで海外の競合他社を理解できる。隔たりで市場規模を調整(割引く)ことで市場の比較ができる。

価値創造のロジックをクロスボーダーの状況に応用する。(ADDING価値スコアカード)
販売数量の向上(Adding Volume)
コストの削減(Decreasing Cost)
差別化(Differentiating)
業界の魅力の向上(Improving Industry Attractiveness)
リスクの平準化(Normalizing Risk)
知識およびその他の経営資源の創造と応用(Generating Knowledge)

・単一国戦略におけるマージンとは
マージン = 業界マージン + その企業の比較優位性
比較優位性 = 企業にとっての(支払意志額-費用) - 競合他社にとっての(支払意志額-費用)
となる。

・ADDING価値スコアカードで、ADDIという4つの要素は単一国戦略と同じ。リスクの平準化(N)と知識その他の経営資源の創造(G)については、国ごとに違いがある。

・国ごとにさまざまな差異がある中で付加価値を生み出すには、
適応(Adaptation)
集約(Aggregation)
裁定(Arbitrage)
3つのA戦略がある。

適応戦略について。
完全な現地化と完全な標準化の間には、多様化・絞り込み・外部化・設計・イノベーションなどの適応のためのツールがある。
業種の特徴は、最適な適応レベルに大きな影響を与える。そのレベルは時とともに変化するが、実際の適応度を変更するには、柔軟で現実的で開放的な考え方が求められる。
適応の意思決定は、集約や裁定の意思決定を考慮に入れて行うこと。

集約戦略について。
国ごとの類似点を、一般的な適応戦略よりも深く、完全な標準化ほど深くはなく追求するのが集約の目的である。
世界は地域化された状態(セミ・グローバリゼーション)が続き、多くの企業が売り上げの大半を本拠地から得ている。
集約の基準には地理のほか、販売経路、顧客の業種、事業部門、製品部門などがある。CAGEの枠組みとADDING価値スコアカードは集約の基準の選択に有効だが、手続きも重要であり、基準の実装には数年は必要である。

裁定戦略について。
国境を越えた差異を活用し、絶対的な経済性を追求する。
裁定の基盤には、文化的・制度的・地理的・経済的などの複数の要素がある。そしてとりうる裁定戦略も多様だが、管理すべき多くのリスクがある。
裁定を持続可能な競争優位としたい場合は、自社独自の能力の開発に長期的に取り組む必要がある。

・グローバリゼーションに対する期待は、1980年代における市場のグローバリゼーションから、現在の生産のグローバリゼーションへと移った。

3つのA戦略のうち、経営者は自社の比較優位がどれか具体的にとらえ、戦略の優先順位を決めてAを少なくとも1つは確保しなければならない。
対売上高比で宣伝広告費が高い場合は適応、研究開発費が高い場合は集約、労働費用が高い場合は裁定が重要として代理変数をおき、AAAトライアングル分析ができる。

グローバル戦略を策定するために。
①業績の評価(そもそもグローバル事業がうまくいっているか)
②業界と競争力の分析
(売上高上位が占める比率、業界内順位、シェアの変動、国際統合の尺度、クロスボーダーでの標準化、実質価格の変動、収益性、業界の分類など)
③差異の分析(CAGEな隔たりの枠組み)
④戦略オプションの策定(AAA戦略)
⑤価値の評価(ADDING価値スコアカード)

 

書評

世界が完全に統一されるというグローバリゼーション信仰を批判し、現実はその半ばのセミ・グローバルな状態にあり、企業はその現実に対応せよと説く本です。

著者は史上最年少でハーバードビジネススクールの教授になった俊英で、読みながら非常に頭の良い人が書いているなという印象を受けます。ただしわかりやすく書いたと著者も述べており、読者に配慮して読みやすくなっています。

本書は大企業で経営戦略を考えるような人に役立ちそうです。私には直接は関係ない本でした。個人的には裁定戦略が興味深く読めました。裁定といえば新興国で安く作った商品を先進国で売るという程度の認識でしたが、包括的な解説がなされています。

経営学を学んでいて、世界的な事業戦略にも興味がある人は読む価値があるかと思われます。
(書評2014/01/03)

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「ビジネスをつくる仕事」 小林敬幸(著)

 

お台場パレットタウンの大観覧車事業を成功させ、ライフネット生命保険の立ち上げに参加した著者が、ビジネスのつくり方を教えます。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

若手社会人。新規事業を立ち上げる人。起業をめざす人。

 

要約

現代は、ひとつのビジネスで安定的に競争優位を保てる時代ではない。ひとつのビジネスの寿命がサラリーマン人生の寿命より短いので、どんなサラリーマンでも新しいビジネス(価値)をつくることを考える必要がある。

新しいビジネスをつくるには、先入観を持たずどこでもよく現実を見て、たくさんやってみることだ。

・社会全体の動きを理解し、合理的で真っ当なやり方で真ん中を普通にやれ。

・現場の細部をよく見て本質を見抜き、過去の失敗に学んで大きくやれ。

・縦割りの発想や既存の分類を超え斜めに見て、成功確率の高いまっすぐのやり方でやれ。

・顧客や同僚、周囲への想像力・共感力を持て。

ビジネスの育て方は柔軟に。
ビジネスをつくるプロセスは
①見つける。(新しいビジネスを見つける。見つける準備をする。ビジネスのタネには、社会のひずみ、人脈ネットワーク、パブリックな情報がある。)
②始める。(新しいビジネスのコンセプトはシンプルに。企画書はポルノ調で。)
③実行する。(状況を多面的に理解し、シンプルに行動する。)

偶然性を排除しない。
確率論的な発想を持つ。予測できない将来の多様な状況に対応する準備をする。

お金の流れをよく見る。
お客を集めるところとお金を集めるところが異なるビジネスがある。集客と収益化に強固な基盤をつくると変化にも強い。
規模が一桁違えば異なるビジネスとなる。
成熟社会では継続して利益が出るビジネスが大切。

お客に提供する価値は何か、お客の側から(マーケットイン)よく考える。
サービス的価値を付加する。お客に自身の成長を実感させるサービスを提供する。お客に驚きを与える。2つの価値体系の差異を利用する。
お客は誰か、利害関係者それぞれに提供している価値は何か、に注意する。

ビジネスでは組織をよく知ること。
社内起業では、自社の組織をよく理解しておく。
自社でも提携を狙う他社でも、IRから経営課題を知り、それを解決する方向のビジネスだと始めやすい。社員の非公式な愚痴から様子をつかむ。意思決定がトップダウンかボトムアップか考える。

・組織をつくるときの注意点について。

・今後の成熟社会では、社会からのメッセージを聞き取ることが要求され、社会との対話能力が必須となる。

 

書評

著者自身のパレットタウンの大観覧車事業とライフネット生命保険創業の体験を中心に、新しいビジネスをつくることを解説しています。理論的な解説よりは、新書ということもあり読み物に近い形態です。体験談を解説に使っていますが、やや自身の成功譚を語っているという印象があります。

著者は起業志望者も読者に想定していますが、会社内で新規事業を立ち上げる内容が大半となります。社内で新しいビジネスを考えているサラリーマンに向く本かと思われます。
(書評2013/12/29)

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「模倣の経営学 偉大なる会社はマネから生まれる」 井上達彦(著)

 

世界で誰も気付かないアイデアを自分だけが気付き、ビジネスの仕組みをつくる。あり得ない話です。優れた他社のビジネスを手本にすることは不可欠な行為でしょう。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

優れた知見を取り込み、勝てるビジネスモデルや競争力のある経営手法を構築したい人。

 

要約

・優れたものを模倣するのは、古来より学習の基本だった。何のために、何を、どこから、どのように模倣するか考えるには、高度なインテリジェンスが必要だ。

・模倣には遠く関係の薄いところ(異業種・海外・過去)から学ぶ場合がある。異業種から習う例にトヨタ生産システム、海外から習う例にセブン―イレブンがある。

・製品やサービスレベルでは模倣しやすいが、事業の仕組みは模倣しにくい。ビジネスモデルの業種を越えた本質的な共通性を見出し、抽象化されたレベルでの仕組みを模倣して独自の仕組みを築け

・模倣のためのビジネスモデル分析の枠組み P-VAR
Position:ポジションの取り方
Value:提供している顧客価値
Activity:業務活動
Resource:経営資源
P-VARを用いて自社の現状を分析し、参照モデルを通して理想像を描き、現状と理想のギャップを埋めるべく変革を実行する。(ヤマト運輸の例)

・徹底して研究し模倣しようと試行錯誤すると、自分が鍛えられる。こうして鍛えられることで模倣に独自性が加わる。

・模倣の対象は、見習うべき良い見本と反面教師となる悪い見本の2通り。さらに見本は社内と社外の2通りあるので、モデルは2×2で4通りとなる。
社外の成功:単純模倣
社外の失敗:反面教師
社内の成功:横展開
社内の失敗:自己否定

模倣の手順
①参照する事業モデルをP-VARの枠組みで分析する。
②分析モデルをそのまま、あるいは逆転させて提案する。
③理想の事業デザインを描く。
④理想と自社の現状の矛盾を明らかにする。
⑤矛盾を発展的に解消。

模倣の目的には、競争への対応とイノベーションを起こすための2つがある。
競争への対応では、同業他社の成功を迅速に追随する、経営資源に勝れば後発優位なポジションをとる、負けを避けるために横並びの類似行動をとる、がある。
イノベーション目的では、業界を高所大局から理解し大きな流れをつかみ、自分が参照モデルの中に没入するほど入れ込んで、深く理解している自分の事業の経験と化学反応を起こさせる。

 

書評

競争に勝てる優れたビジネスの仕組みをどうやって構築するか、本書では模倣に焦点を当てて解説しています。
独自性のあるビジネスモデルはどうすればつくれるのか。この疑問に著者は模倣という手段を回答として提示します。現在は業界で勝ち組となった強力なビジネスモデルでも、はじめは別のビジネスの模倣であった例を挙げています。

本書の内容は、勉強のためのガチガチのテキストよりは、ややビジネス書の読み物に近い印象を受けます。読んで勉強になりますが、ビジネスをどう模倣するかの具体的な手段はあまり書かれていません。

また、どこまで模倣と言えるかあいまいなところもあります。本書で登場する例ならば、セブン―イレブンやスターバックス、ドトールコーヒーなどは模倣と言えるでしょう。
しかしトヨタ生産方式やヤマト運輸の宅急便などは、模倣とも言えますが、参照モデルからはかなりの跳躍があります。これは模倣した側が独自に洗練し昇華させた例と考えられます。

本書内にもありますが、結局は模倣を有益なものとするためには、模倣先のモデルと自社および自分のいる業界の両方を深く研究していないとできないことだと思われます。
(書評2013/12/25)

アマゾンでのご購入模倣の経営学 偉大なる会社はマネから生まれる
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「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」 クリス・アンダーソン(著)

 

インターネットが普及した今となってはありふれていますが、ただでサービスを提供するというのは、実はビジネスとしては奥の深い話です。クリス・アンダーソン氏の冴える分析で、無料のビジネスモデル、フリーの破壊力が理解できる1冊です。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

フリーのビジネスモデルや、それを生みだした背景、社会への影響などに興味のある人。またはビジネス一般に関心のある人。

 

要約

フリーのビジネスについて

<物質経済(アトム)でのフリー>
あるものをただであげて、別の需要を作り出す。
ジレットのような、安全カミソリを安く売り、替え刃の需要で利益をあげる例がある。
携帯電話がタダで、月々の使用料で稼ぐ。ゲーム端末を安く売り、ゲームソフトで稼ぐ。コーヒーメーカーが無料で、コーヒーのパックを売る。などなど。

<情報通信経済(ビット)でのフリー>
本当にコストがかかっていない。オンライン上のコンテンツが無料で利用できる。

 

フリーのビジネスモデルは、4分類に整理できる。

直接的内部相互補助
フリーの部分を他の部分で補う。無料のもので消費者を引き付け、他のものを売る。(ジレットのカミソリ。)

三者間市場
二者が無料でコンテンツを交換し、その市場に第三者が参加する。(テレビは無料で視聴できる。テレビ番組の制作費は広告主が払う。広告主の商品は視聴者が買う。)

フリーミアム
基本版が無料でプレミアム版が有料。95%が基本版ユーザーで、5%だけがプレミアム版の有料ユーザーでもやっていける。

非貨幣市場
対価を期待しないから無料の場合。(ウィキペディアやフリーサイクル。これらは金銭以外の、注目や評判が動機づけとなる。)
あるいは、実は無償の労働を提供している場合。(グーグルの無料電話案内。これは、通話内容のデータが、検索精度向上に利用されている。)
または、デジタル複製のコストがゼロの場合。(オンライン配信される音楽の不正コピーなど。)

 

フリーの本質

・半導体は物質よりも、知恵がはるかに重要な製品だ。このような、情報が主要な構成要素となる産業は、価格を下げながら性質を上げていく

・コンピュータの情報処理能力と、デジタル記憶容量と、通信帯域幅のコストは下がり続ける。ビット経済では、ユーザー個人が負担する限界費用はゼロに近づく。

競争社会では、価格は限界費用まで落ちる。

無料か1セントかでは、非常に大きな差がある。
少額の支払いでも、買うかどうかの選択という、考える認知作業が必要となる。これは心理的障害となる。無料は決断を早めて、商品を試す人を増やす。

・分配する限界費用はゼロなので、フリーで配るのが、大量の顧客をつかまえる最良の戦略である。(グーグルの最大化戦略。)

・フリーは人を引き付けて集める。人が集まれば市場の流動性は高まり、市場の機能は向上する。規模が大きくなれば、参加率が低くても市場はうまくいく。(ウィキペディアの投稿者数は、訪問者全体の1万分の1。)

・ウィキペディアは百科事典の売上をなくし、百科事典市場を消滅させたが、私たちの集合知という価値を大きく増やした。
フリーは、産業の売上という直接収入の富を消失させたが、富は計測しにくい形で再分配される

・フリーの市場ではお金の代わりに、非貨幣要因の注目と評判が動機づけとなる。オンラインでは注目と評判が数量化できる。無償の労働が、ウェブの急成長を支えた。

・コストがゼロに向かっているものは、遅かれ早かれいつかはフリーになる。いずれ多くのビジネスの市場で、フリーと競い合うことになる

潤沢でコストのかからない資源を、コントロールせずムダに使うことが、全く新しい創造性を生みだす。

・コモディティ化した商品は安くなり、頭脳により生みだされた稀少性のあるものが価値をもつようになった。
潤沢になった商品の価値は他の稀少なものへ移るので、稀少なものでの収益化を考えるべきだ。

 

書評

フリーについて多面的に分析と考察をしており、基本的な枠組みを捉えることができます。2009年の出版なので、本書で取り上げている例などにも変化はあるでしょうが、フリーのビジネスモデルの理解には、有用な書物であると思います。

デジタル化したコンテンツがフリーに向かうことに、もはや抵抗しても無駄であると認識する必要があるかもしれません。お金を稼ぐには、フリーとなった商品の周辺でサービスなどをつくりだすか、現在の世界での稀少性を発見しビジネスにする、といった努力が求められそうです。

日本では相変わらず製造業重視で、ものづくりだ、科学技術立国だ、的な発想が多いように思われます。(私も製造業系の出身なので、製造業は好きなんですけど。)

国民の多数もメディアもこれだけ円安が好きなのは、いまだにバブル以前のように、製造業が好調なら日本は万事うまくいく、という意識があるのかなあと思います。

先進国はすでに知識社会に移行しており、日本も第三次産業が主であるわけです。そのあたりは認めないと、今後の世界の進化から日本が脱落するのでは、とちょっと心配になります。まあ、自分の人生の方がもっと心配ですけど。
(書評2013/8/24)

アマゾンでのご購入フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略
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「ビジュアル改訂版 「マーケティング」の基本&実践力がイチから身につく本」 安原智樹(著)

 

新たな価値を生み出して、顧客からお金をもらうというのは難題です。お客様からお金をいただくという、ビジネスで最も重要なマーケティングの入門書です。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

マーケティングを初めて学ぶ人。
難易度は入門書レベル。

 

要約

マーケティングの基本について。マーケティングの目的は、自社と顧客の満足を最大化すること。顧客のニーズと自社のシーズを結びつける。

マーケティングプランは、環境分析、目標設定、基本戦略とマーケティング・ミックス、現場での実行、からなる。

環境分析の要素は3C。自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)。

基本戦略は、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3要素。

マーケティング・ミックスの要素は4P。製品(Product)、価格(Price)、場所(Place)、販売促進(Promotion)。

サービス業の場合は4C。顧客価値(Customer value)、顧客のコスト(Cost)、顧客とのコミュニケーション(Communication)、顧客の利便性(Convenience)。

市場について。マーケティング・リサーチについて。

顧客について。顧客の心理や購買パターンなど。

競争について。競合相手、市場シェア、競争戦略など。

製品戦略について。イノベーター理論、新製品の開発、製品ライン、ブランド、ネーミング、パッケージなど。

価格戦略について。コストから考えた売りたい価格、競合関係から算出される価格、顧客が買ってくれる価格など。

流通戦略について。顧客に商品を届けるチャネルについて。

プロモーション戦略について。表現戦略と媒体戦略の2つがある。

そのほか、マーケティングの実務について。

マーケティングの基本事項が、簡潔にやさしく解説されています。

 

書評

1項目につき見開き2ページの解説など、とにかく簡潔でわかりやすいです。図表も多く取り入れ、マーケティング全般を、広く浅く基本的な事項を押さえて解説しています。理解しやすく読みやすいので、マーケティングの入門書として適切な1冊と感じました。

それにしても、マーケティングってのは奥深いなあ。お客様からお金をいただくことは、つくづく難しい。
(書評2013/07/05)

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「なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか」 牧野知弘(著)

 

ホテルといえば、東横インやスーパーホテルぐらいしか縁のない私ですが、ホテル業界を扱った新書の紹介です。ビジネスホテルの経営、ビジネスモデル、裏話を楽しく解説する本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

ホテル業界に興味がある人。
ビジネス系の軽めの読み物を楽しみたい人。

 

要約と注目ポイント

ホテル業界

旅館は1980年代をピークに減少しているが、ホテルは施設数・客室数を増加させてきた。

チェーン展開する宿泊特化型のビジネスホテルが隆盛を誇っているが、独立系ホテル(地元の名士がオーナーなど)は苦戦している。独立系ホテルは特色を打ち出す必要がある。

日本のホテル業界は、帝国ホテル・ホテルオークラ・ホテルニューオータニの御三家を頂点として、鉄道会社系ブランド、観光会社系ブランドなどによりピラミッドを形成していた。

しかし、1990年代から外資系高級ホテルが参入して、既存の秩序が崩壊し、新たな競争の時代に入った。

宿泊予約サイトの出現が、旧来の価格体系を破壊した。またネット上の口コミが、宿泊客へ与える影響も大きい。

ホテル経営

ホテルは人件費の割合が大きく、売上に対し、シティホテルで40%程度、ビジネスホテルで15%程度である。

ホテル経営では、人件費・水道光熱費・設備管理費の削減努力が不可欠。ただし、客の求めるサービスについては質を確保する。

ホテル経営は3つの形態がある。
①土地建物のオーナーが自分でホテルを運営する形態(独立系ホテルが多い)
②土地建物のオーナーが大手ホテルに運営を委託する形態(外資系高級ホテルなど)
③土地建物を賃貸する形態

ホテルの収入は、客室数と宿泊料金と稼働率を掛け合わせて求められる。部屋面積が狭い方が収益性は高まる。

ビジネスホテルは一般に売上比で、人件費15~20%、清掃費10%、水道光熱費7~10%、アメニティ費7~10%となる。これからさらに、業務委託料、フランチャイズ料、建物の維持管理修繕費、客室内設備(ベッドや家具)の更新費、税金などが引かれる。

土地建物の賃貸料と想定稼働率から、利益の出る宿泊価格が計算できる。

ホテルの訴求力は4つの要素がある。ブランド、立地、建物や設備(ハード面)、接客のサービス(ソフト面)である。

各都市(京都、奈良、大阪、仙台、福岡)のホテル事情の解説。また、著者おすすめのホテルの紹介。ほかに著者の体験談(困った客・トラブル・裏事情など)。

最近は外国人観光客が非常に増え、ビジネスホテルの稼働率もたいへん高いようです。この本の内容はその直前の、ビジネスホテルの宿泊料がかなり安い時期のものです。

 

書評

タイトルからは、ホテルの経営モデルを掘り下げて検討するような内容が想定されますが、かなり気軽に読めるエッセイ風です。

ホテル運営での体験談を面白く紹介する、といった内容の分量が多くて、ホテル経営についての分析はそれほどありません。良くも悪くも手軽にサクサク読めるタイプの本です。
(書評2013/05/02)

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「ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務」 石野雄一(著)

 

実務家の書かれた、よくわかるファイナンスの入門書です。2007年の本なので、リーマン後の金融危機は反映されていません。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

ファイナンスの勉強をしようと、入門書を読み始めるあたりの人。
あるいは、少し勉強を始めたぐらいの人。

 

要約と注目ポイント

会計とファイナンスの違いは?

会計は利益を扱うが、ファイナンスはキャッシュフローを扱う。会計は過去を見るが、ファイナンスは現在と未来を見る。

ファイナンスの基礎知識

財務三表の説明。

ファイナンスは、投資の決定・資金の調達・配当政策の3つの意思決定に関わる。これらの意思決定の目的は、(投資家にとっての)企業価値の最大化である。

リスクとリターンの説明。

株主資本コストは、負債コストより大きい。(株主の方が債権者より大きなリスクを負っているので、期待するリターンも大きい。)

WACC(加重平均資本コスト)は、企業の資金調達コストである。企業が投資家からいくらで資金を調達できるかを表し、企業に対する投資家のリスク認識を示す。

WACCを下げることが、IR(企業広報)のミッションである。適切な企業情報を適切なタイミングで公開することにより、投資家のリスク認識を下げる。

複利や現在価値・将来価値、割引率の説明。

企業価値と事業価値の説明。

ファイナンスと経営

経営者の使命は、WACC以上のROIC(投下資本利益率)をあげることである。ROICとWACCの差をEVAスプレッドと呼ぶが、このEVAスプレッドをプラスにし、さらに拡大することが経営者の使命である。

投資判断決定の考え方。

最適な資本構成の考え方。

格付けは、企業の債務償還能力の分析判断(債権者の視点での評価)にすぎない。

 

ファイナンスと経営、財務について学ぶべきことが、ざっくりですが研ぎ澄まされて詰まっています。

書評

実務家の書いた本らしく、わかりやすく簡潔に要点を押さえてあります。確かに「ざっくりと」ファイナンスを理解する入門書としては、良い本と思います。ただ、薄い新書なので、これ一冊だけだと十分ではないかもしれません。数冊入門書を読む内の一冊とするのが良いのでは。
(書評2013/04/21)

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