「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」 クリス・アンダーソン(著)

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インターネットが普及した今となってはありふれていますが、ただでサービスを提供するというのは、実はビジネスとしては奥の深い話です。クリス・アンダーソン氏の冴える分析で、無料のビジネスモデル、フリーの破壊力が理解できる1冊です。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

フリーのビジネスモデルや、それを生みだした背景、社会への影響などに興味のある人。またはビジネス一般に関心のある人。

 

要約

フリーのビジネスについて

<物質経済(アトム)でのフリー>
あるものをただであげて、別の需要を作り出す。
ジレットのような、安全カミソリを安く売り、替え刃の需要で利益をあげる例がある。
携帯電話がタダで、月々の使用料で稼ぐ。ゲーム端末を安く売り、ゲームソフトで稼ぐ。コーヒーメーカーが無料で、コーヒーのパックを売る。などなど。

<情報通信経済(ビット)でのフリー>
本当にコストがかかっていない。オンライン上のコンテンツが無料で利用できる。

 

フリーのビジネスモデルは、4分類に整理できる。

直接的内部相互補助
フリーの部分を他の部分で補う。無料のもので消費者を引き付け、他のものを売る。(ジレットのカミソリ。)

三者間市場
二者が無料でコンテンツを交換し、その市場に第三者が参加する。(テレビは無料で視聴できる。テレビ番組の制作費は広告主が払う。広告主の商品は視聴者が買う。)

フリーミアム
基本版が無料でプレミアム版が有料。95%が基本版ユーザーで、5%だけがプレミアム版の有料ユーザーでもやっていける。

非貨幣市場
対価を期待しないから無料の場合。(ウィキペディアやフリーサイクル。これらは金銭以外の、注目や評判が動機づけとなる。)
あるいは、実は無償の労働を提供している場合。(グーグルの無料電話案内。これは、通話内容のデータが、検索精度向上に利用されている。)
または、デジタル複製のコストがゼロの場合。(オンライン配信される音楽の不正コピーなど。)

 

フリーの本質

・半導体は物質よりも、知恵がはるかに重要な製品だ。このような、情報が主要な構成要素となる産業は、価格を下げながら性質を上げていく

・コンピュータの情報処理能力と、デジタル記憶容量と、通信帯域幅のコストは下がり続ける。ビット経済では、ユーザー個人が負担する限界費用はゼロに近づく。

競争社会では、価格は限界費用まで落ちる。

無料か1セントかでは、非常に大きな差がある。
少額の支払いでも、買うかどうかの選択という、考える認知作業が必要となる。これは心理的障害となる。無料は決断を早めて、商品を試す人を増やす。

・分配する限界費用はゼロなので、フリーで配るのが、大量の顧客をつかまえる最良の戦略である。(グーグルの最大化戦略。)

・フリーは人を引き付けて集める。人が集まれば市場の流動性は高まり、市場の機能は向上する。規模が大きくなれば、参加率が低くても市場はうまくいく。(ウィキペディアの投稿者数は、訪問者全体の1万分の1。)

・ウィキペディアは百科事典の売上をなくし、百科事典市場を消滅させたが、私たちの集合知という価値を大きく増やした。
フリーは、産業の売上という直接収入の富を消失させたが、富は計測しにくい形で再分配される

・フリーの市場ではお金の代わりに、非貨幣要因の注目と評判が動機づけとなる。オンラインでは注目と評判が数量化できる。無償の労働が、ウェブの急成長を支えた。

・コストがゼロに向かっているものは、遅かれ早かれいつかはフリーになる。いずれ多くのビジネスの市場で、フリーと競い合うことになる

潤沢でコストのかからない資源を、コントロールせずムダに使うことが、全く新しい創造性を生みだす。

・コモディティ化した商品は安くなり、頭脳により生みだされた稀少性のあるものが価値をもつようになった。
潤沢になった商品の価値は他の稀少なものへ移るので、稀少なものでの収益化を考えるべきだ。

 

書評

フリーについて多面的に分析と考察をしており、基本的な枠組みを捉えることができます。2009年の出版なので、本書で取り上げている例などにも変化はあるでしょうが、フリーのビジネスモデルの理解には、有用な書物であると思います。

デジタル化したコンテンツがフリーに向かうことに、もはや抵抗しても無駄であると認識する必要があるかもしれません。お金を稼ぐには、フリーとなった商品の周辺でサービスなどをつくりだすか、現在の世界での稀少性を発見しビジネスにする、といった努力が求められそうです。

日本では相変わらず製造業重視で、ものづくりだ、科学技術立国だ、的な発想が多いように思われます。(私も製造業系の出身なので、製造業は好きなんですけど。)

国民の多数もメディアもこれだけ円安が好きなのは、いまだにバブル以前のように、製造業が好調なら日本は万事うまくいく、という意識があるのかなあと思います。

先進国はすでに知識社会に移行しており、日本も第三次産業が主であるわけです。そのあたりは認めないと、今後の世界の進化から日本が脱落するのでは、とちょっと心配になります。まあ、自分の人生の方がもっと心配ですけど。
(書評2013/8/24)

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