「なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか」 牧野知弘(著)

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ホテルといえば、東横インやスーパーホテルぐらいしか縁のない私ですが、ホテル業界を扱った新書の紹介です。ビジネスホテルの経営、ビジネスモデル、裏話を楽しく解説する本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

対象読者層

ホテル業界に興味がある人。
ビジネス系の軽めの読み物を楽しみたい人。

要約と注目ポイント

ホテル業界

旅館は1980年代をピークに減少しているが、ホテルは施設数・客室数を増加させてきた。

チェーン展開する宿泊特化型のビジネスホテルが隆盛を誇っているが、独立系ホテル(地元の名士がオーナーなど)は苦戦している。独立系ホテルは特色を打ち出す必要がある。

日本のホテル業界は、帝国ホテル・ホテルオークラ・ホテルニューオータニの御三家を頂点として、鉄道会社系ブランド、観光会社系ブランドなどによりピラミッドを形成していた。

しかし、1990年代から外資系高級ホテルが参入して、既存の秩序が崩壊し、新たな競争の時代に入った。

宿泊予約サイトの出現が、旧来の価格体系を破壊した。またネット上の口コミが、宿泊客へ与える影響も大きい。

ホテル経営

ホテルは人件費の割合が大きく、売上に対し、シティホテルで40%程度、ビジネスホテルで15%程度である。

ホテル経営では、人件費・水道光熱費・設備管理費の削減努力が不可欠。ただし、客の求めるサービスについては質を確保する。

ホテル経営は3つの形態がある。
①土地建物のオーナーが自分でホテルを運営する形態(独立系ホテルが多い)
②土地建物のオーナーが大手ホテルに運営を委託する形態(外資系高級ホテルなど)
③土地建物を賃貸する形態

ホテルの収入は、客室数と宿泊料金と稼働率を掛け合わせて求められる。部屋面積が狭い方が収益性は高まる。

ビジネスホテルは一般に売上比で、人件費15~20%、清掃費10%、水道光熱費7~10%、アメニティ費7~10%となる。これからさらに、業務委託料、フランチャイズ料、建物の維持管理修繕費、客室内設備(ベッドや家具)の更新費、税金などが引かれる。

土地建物の賃貸料と想定稼働率から、利益の出る宿泊価格が計算できる。

ホテルの訴求力は4つの要素がある。ブランド、立地、建物や設備(ハード面)、接客のサービス(ソフト面)である。

各都市(京都、奈良、大阪、仙台、福岡)のホテル事情の解説。また、著者おすすめのホテルの紹介。ほかに著者の体験談(困った客・トラブル・裏事情など)。

最近は外国人観光客が非常に増え、ビジネスホテルの稼働率もたいへん高いようです。この本の内容はその直前の、ビジネスホテルの宿泊料がかなり安い時期のものです。

書評

タイトルからは、ホテルの経営モデルを掘り下げて検討するような内容が想定されますが、かなり気軽に読めるエッセイ風です。

ホテル運営での体験談を面白く紹介する、といった内容の分量が多くて、ホテル経営についての分析はそれほどありません。良くも悪くも手軽にサクサク読めるタイプの本です。
(書評2013/05/02)

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