「ビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門」 早稲田大学ビジネススクール(著)

 

ビジネススクールのさわりになるような、MBAのはじめの一歩といった本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

ビジネススクールに興味がある人。MBAを取りたい人。

 

要約

・戦略的であるために、事実に基づいて考える。事実を把握するため、適切な尺度で測定し、測定結果の背景を読み取る。何をやって何をやらないか、優先順位はどうか、考える。全体最適を考える。
(戦略分析の3C、マーケティングの4P、5つの競争要因、組織変革の7S、SWOT分析、PEST分析)
製品を売るより、顧客のやりたいことを実現させるビジネスを売る。顧客の経済合理性を考える。

・競争相手は誰か、自分の業界はどう変わるかを考える。
(置き換え、省略、束ねる、選択肢の広がり、追加)
異業種間の競争では、ビジネスモデルの違いにより、顧客の時間・空間・財布を奪い合う。ビジネスモデルで重要なのは、「顧客への価値提案」「儲けの仕組み」「優位性の継続」。

・マーケティングについて。
標的顧客を明確にし、顧客満足を最大化させる。顧客の満足が継続的な購買につながり、ビジネスを持続して成長させる。さらに企業の社会的責任や社会的貢献を果たしながら、顧客満足を達成することが求められる。
(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)
ポジショニングには、製品属性、機能的便益、心理的便益、提供価値、用途や目的、製品カテゴリー、市場地位のそれぞれに基づく7つの方法がある。

・花王エッセンシャル、ジャパネットたかた、サウスウエストの分析。

・経営にはビジョン、戦略、オペレーションの3つの要素があり、整合性がとれている必要がある。
オペレーションは戦略を実現する組織能力であり、現場が強くなければオペレーションは遂行できない。強い現場では、全員が参加し高い問題発見・解決能力を持ち、継続的改善が行われている。

・限定された人的資源を戦略的に配分する。
正しい仕事に正しい人材を当てはめる。正しい人材を選んで良い機会を与える。

・組織が中長期的な目標を達成するための、組織内で実施される協働のプロセスやコミュニケーション(インターナル・マーケティング)について。
従業員が喜んで仕事に取り組むようにする、全員がマーケターとして行動する、全社的なマーケティング体制をとる。部門内や部門間、階層間の透明性を確保する、創造性を発揮し交流できるオフィス空間にする、優秀な人材を集める。
全員が目的や意識を共有し、情熱をもって各人のプロフェッショナリズムに基づきプロジェクトを遂行する。

・リーダーシップのある人とは、ビジョンと方向性を示し、コミュニティーをつくり、結果を出せる人。
シナリオプランニングで中長期の視点を身につける。コミュニティーづくりで人を巻き込むには、傍観者を支持者に変える。(一般に構成員のうち支持者は20%、反対者は30%、傍観者は50%)

・21世紀は多様性、独自性、創造性を尊重した複雑系グローバル化の時代である。
グローバル化しても、距離や文化、情報認識のパターンなどには差異が残る。世界中のさまざまな現場で多様性を認識し、クロスボーダーで知恵を結集し新しいイノベーションにつなげる。

・財務会計、管理会計、ファイナンスについて。
賃借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の読み方。企業価値(ディスカウントキャッシュフロー法)、資本コスト、投資の意思決定など。

・経営者が持つべき資質について。

 

書評

ビジネススクールでどのようなことを学ぶのかという、オリエンテーションのような本です。早稲田の教授陣が、担当分野ごとに講義をもとに解説しています。基礎的なフレームワークや理論、実際のケーススタディが題材となっています。

私は今までに、起業準備の本やビジネス書を読んできましたが、意外と重複しているという感想を持ちました。もちろん実際の講義ではもっと高度な内容になるでしょうが、起業の準備で考えてきたようなこともビジネススクールでやるのだなと思いました。ビジネススクールは、門外不出の魔法を教えているわけではないようです。

ビジネスの基本を広く浅く紹介している本として、本書は位置付けられそうです。学生や若手ビジネスパーソンが、手始めに学習するのに良いかもしれません。
(書評2014/01/19)

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