カテゴリー別アーカイブ: 雇用・労働

「年収300万円の残念な働き方 1万人に会って分かった年収の壁を打ち破る方法」 鈴木康弘(著)

 

年収が上がるには、出世するにはどうすればよいのか?地道な努力でキャリア構築をめざす本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

フツーの社会人で、時間をかけて自分を成長させたい人。

 

要約

社会人の成長ステージごとに、必要な努力と習得すべきスキルがある。
ビジネスパーソンとしての各レベルの課題を着実に乗り越えることで、エグゼクティブ社会人まで成長できる。自分の現在のレベルで身につけるべき能力を知り、上のレベルの課題を意識すること。

1つのレベルにつき、3年努力してステップアップするのが標準的。
レベル1(年収180万円):フリーターや学生
レベル2(年収300万円):見習い社会人
レベル3(年収500万円):一人前社会人
レベル4(年収800万円):一流社会人
レベル5(年収1200万円):エグゼクティブ

 

年収を増やすためには

・ビジネスの成功には、IQよりEQが大切だ。
自分が他人からどう見られているかを認識できる。相手の立場を読める。相手の利益になる行動ができる。

・年収が増えない人は、自分が会社に貢献しているか(利益を生み出しているか)考えよう。会社が困っていること、それを解決するために自分ができること、誰の役に立つか、自分のほかに同じ仕事ができる人はいるか、考えてみる。

・新卒者はブラック企業を恐れるが、20代で力をつけるために、超優良ブラック企業か優良ブラック企業に入ろう。(ほとんどの学生はホワイト企業には入れない。)

ホワイト企業:仕事楽、給与高。
メガバンク、旧国営企業、大手メーカー、ディベロッパーなど。

超優良ブラック企業:激務、給与高、将来性高。
大手人材サービス、大手広告代理店、テレビ局、大手コンサル、大手ネットサービス、大手証券、大手ハウスメーカーなど。

優良ブラック企業:激務、給与低、将来性高。
中堅人材サービス、中小メーカー、中堅ネットサービス、大手生保営業職など。

ブラック企業:激務、給与低、将来性低。
中堅旅行代理店、大手外食、アパレル、家電量販店、コールセンター、営業アウトソースなど。

・自分の労働生産性を上げていくこと。資格は実務経験がないと効果が低い。営業経験は評価される。高単価で利益率が高い商材を、資本力の高い営業先に販売できるスキルが評価される。

・将来必要とされるが現在やっている人が少ない仕事を、先読みしてやっておく。将来需要がある仕事の経験を積み、スキルを身につけろ。

 

年収180万円レベルの課題と対策

・就きたい仕事がわからなければ、営業職の正社員になれ。

・留年や休学、留学は在学中にする。卒業後はダメ。

・時間を守れ。遅刻厳禁。

・約束を守れ。

・1年は仕事を続けろ。1年未満で退職するな。

・同じことで何度も叱られるな。

・笑顔で元気に挨拶する。

 

年収300万円レベルの課題と対策

・上司と合わなくても克服せよ。
素直で、言われたことをすぐやり、人懐っこければ好かれる。自分が持つ上司と似た部分のパーソナリティを出してみる。異動まで頑張るのも手。

・同僚やクライアントへ依頼するときは、相手に配慮する。
依頼事項を簡潔で明確に伝える。相手の担当範囲と忙しさを確認。仕事の期限、背景を説明。依頼したら感謝の言葉。

・自分に合う社風の会社や業界で働く。

・仕事の質を上げるためにも、最初は量をこなせ。
営業をやる時間はマシーンとなって、考えず(断られても落ち込まず)にひたすらやる。業務終了後に、改善策を考える。

・正社員は、仕事の成果に対して給与をもらうことを意識せよ。結果が出ないことを環境のせいにしない。

・現在の仕事の給与が低くても、将来役立つスキルを身につけることを重視して、現在の仕事に取り組め。

・次の仕事を意識しながら、3年間は同じ職場で働け。

・失敗は正直に直接報告せよ。

 

年収500万円レベルの課題と対策

・部下を心身良好で能力が発揮できる状態に保ち、適切に仕事を振れ。他人に気持ちよく仕事をしてもらうこと。
部下の仕事量、志向、状態を確認。能力と仕事の難易度を確認。内容の選択と納期の設定。振る仕事の背景・納期・責任の所在と、実行したとき部下が得るメリットを説明し、最終確認する。完了後に仕事を確認し、NGならアドバイスを与え修正させる。及第点なら感謝の意を表し、完了した仕事についてフィードバックし、アドバイスも示す。100点なら賞賛し、フィードバックを返す。

・極端な思考をして、発想力を鍛える。

・燃え尽きないように、仕事量を自己管理する。
仕事量が多過ぎるときは、
①処理するとなくなる仕事(重要)
②処理するとなくなる仕事(重要ではない)
③処理すると同じ量の仕事が発生する仕事(重要)
④処理すると同じ量の仕事が発生する仕事(重要ではない)
⑤処理すると次により多くの仕事が発生する仕事(重要)
⑥処理すると次により多くの仕事が発生する仕事(重要ではない)
の順に片づける。

・難しいことを簡単に説明できるようにする。

・上司の状況を見て、上司を助けストレスを取り除いてあげる。

・上司が知りたい必要な情報を、最少量かつ最速で報告する。

・顧客満足、自分を覚えてもらう、ニーズを察知する嗅覚で、お得意様をつくり新たな紹介を得る。

・不可能な仕事は根拠を明示して断る。

・身だしなみに気を配る。

 

年収800万円レベルの課題と対策

・お願い上手な愛されキャラとなり、マネジメント力を発揮する。

・部下に気合いを強要しない。部下の労働生産性を下げる仕事を減らす。部下が自発的にやる気を出す環境を整える。

・手柄は部下に渡す。

・判断は素早く、一貫性を保つ。判断の失敗も事前に想定しておく。

・関係者へ効果的な根回しをして、承認を早くとる。

・会議では他の参加者のメンツを立てて満足感を与え、自分は実を取る。

・能ある鷹は爪を隠す。謙虚に。

 

年収1200万円レベルの課題と対策

・他の人が解決できない問題を解決できる。
①クライアントから問題を聞く。
②実務経験に基づいた高度な専門知識を使い、解決策を考える。
(リスクをとって、事業責任者として事業を立ち上げたり運営したりという経験を積んでおく。)
③人脈から業者や人材を手配して、問題を解決する。
(人脈をつくるには誠実に仕事を続けること。一緒に仕事をすること。)

・偉くなっても、親しみが湧き相談しやすい謙虚な姿勢でいる。

・大企業と中小企業の経営の違いを認識する。

・部下が能力不足だと不満を言わない。採用できる部下の能力は、自分の器の大きさに等しい。自分の部下になってくれた人材に感謝して、自分で大切に育てろ。

・無理な経営計画を立てない。過剰投資をしない。事業に失敗後のことも検討しておく。

・(特に業績悪化時に)モチベーションは高いが、能力は低い部下も大事にする。

・自分が本当に実現したい夢を語るべき。そうしないと同じ価値観の部下が集まらない。

・細心の注意を払って部下に接すること。気をつけなければすぐにイエスマンばかり集まり、裸の王様になる。

・社長の雇い主は顧客。マーケットインで思考せよ。
①自分が幸せにしたい人(ターゲット顧客)
②その人が欲しがっている価値(ニーズ把握)
③自分にできること(保有リソースの確認)

 

書評

社会人が成長(出世)するために必要な、各ステージにおける課題、考え方、解決策がわかりやすくまとまっています。すごく平易に書かれているので、すぐに読めます。混雑した通勤電車でも、往復で大体読める感じです。

一部にそれはどうかなあと思う箇所はありましたが、たいていはその通りだと思う内容でした。仕事のやり方として、自分にも耳の痛いところが多くありました。

年を取るにつれ腹に落ちてきた教訓も本書に多くありますので、就活前の学生や若手社会人に役立つ本だと思われます。
(書評2014/03/22)

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「ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>」 リンダ・グラットン(著)

 

著者はロンドン・ビジネススクールの高名な教授で、これからの働き方を考える1冊です。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

現在の働き方に疑問や不安がある人。将来のキャリアについて考えたい人。教育や経済環境に恵まれたホワイトカラー。

 

要約

今、仕事のあり方(いつ、どこで、何を、どのように行うか)に根本的な変化が起きている。

・過去の延長線上から未来を予測できなくなった今こそ、未来を予測する必要がある。
それは自分と自分の大切な人たちが、不確実性の高い世界で、適切な選択と決断をする手がかりにするためである。

・未来にはさまざまな可能性があるが、賢い選択を行い主体的に決断することで、望ましい未来を選べる。準備として以下の質問への答えを考えてみる。

自分と周囲の人たちに影響を与えそうな要素は何か?
自分の職業生活に影響を与えそうな要素は何か?
どのように影響を受けるか?
未来に適応していくために、これからの5年間に自分は何をすべきか?

これまでの固定観念を次のように変えるべきだ。
シフト1:
ゼネラリスト的キャリアの尊重から、専門技能を連続的に習得するキャリアへ。
シフト2:
個人主義と競争原理から、コラボレーションやネットワークで結びつく人間関係へ。
シフト3:
消費し続ける生活から、質の高い経験や人生のバランスを重視する生活へ。

 

未来を決定する

・未来を決定する5つの大きな要因は次の通り。
①テクノロジーの進化、②グローバル化の進展、③人口構成の変化と長寿化、④社会の変化、⑤エネルギー・環境問題の深刻化。

・5つの大きな要因は、32の現象から特徴づけられる。
①テクノロジーの進化(10の現象)
テクノロジーが急速に発展し、50億人がインターネットでつながり、クラウドが利用され、生産性が向上し、ソーシャル化し、デジタル化し、バーチャル空間が一般化し、人工知能が利用され、メガ企業とミニ起業家が台頭し、機械化が進む。

②グローバル化の進展(8の現象)
24時間・週7日休まない世界となる。新興国(特に中国とインド)が台頭し、インドと中国から人材が輩出され、倹約型イノベーションが広まり、都市化が進み、世界中に貧困層が出現し、バブル経済は繰り返される。

③人口構成の変化と長寿化(4の現象)
寿命が長くなり、Y世代(1980~1995年生まれ)の影響力が拡大し、ベビーブーム世代(1945~1964年生まれ)の一部は貧しい老後を迎え、国境を越えた移住が増える。

④社会の変化(7の現象)
家族のあり方が変わり、女性は強くなり、人生のバランスを重視する男性が増え、大企業や政府への不信感が強まり、余暇時間が増え、幸福感が低下し、自分を見つめ直す人が増える。

⑤エネルギー・環境問題の深刻化(3の現象)
エネルギー価格が上昇し、環境破壊で住む場所を追われる人が現れ、持続可能性を重視する文化が生まれる。

・自分の未来ストーリーのつくり方。
1、上の32の現象から自分に必要な要素を取捨選択する。
2、要素を自分で肉付けする。
3、さらに、自分にとって関係があるが欠けている要素を探して加える。
4、集めた要素を再分類する。
5、全体像を見い出す。

 

時間

・1990年は時間が細切れではなかった。2025年は3分刻みの世界となる。

・時間が細切れになり、時間に追われ続けることの影響は次のように考えられる。
ひとつのものごとに集中して取り組めず、専門技能を磨きにくくなり、観察と学習の機会が失われ、創造性が低下する。

時間に追われない未来にするためには?
専門技能の習熟をキャリアの土台とし、ある程度まとまった時間をこのために使う。すべての仕事を自分が抱えこまないように、自分と周囲の人的ネットワークを構築する。
消費をひたすら追求する人生から、ものごとを深く考えて自分の働き方を選びとる人生に転換する。

 

孤独

・1990年はリアルな人間関係があった。2025年は職業生活・家庭生活において、直接に人間と触れ合う機会は少ない。
同僚との気軽な関係の消滅、家族関係の希薄化は、多くの人々に深い孤独感と寂しさをもたらす。

孤独な未来を避けるには?
3つのタイプの人的ネットワークをつくる。(シフト2)

①ポッセ(同じ志を持つ仲間)
比較的少人数で、声をかければすぐに力になってくれる長期間付き合いの続く人々。専門技能や知識がある程度共通しており、一緒に活動したことがあり、互いに力になれる信頼感のある人々。
ポッセを構築するためには、互いのポッセの人脈を引き合わせたり、自分の関心テーマを公表し発信して人を引き付ける。

②ビッグアイデア・クラウド(大きなアイデアの源)
自分の人的ネットワークの外縁部にいる、自分とは違うタイプの人々(友達の友達のような)。アイデアや新しい人脈をもたらす多様性に富む大人数のネットワーク。メンバー数は多い方がよく、バーチャル空間での付き合いも考えられる。
ビッグアイデア・クラウドを構築するには、いつもとは違う行動(活動)をする、違うタイプの人の振る舞いに自分を合わせてみる、自分の存在を広く知らせて人を引きつける。

③自己再生のコミュニティ(支えと安らぎの人間関係)
現実の世界で頻繁に会い、くつろいで時間を過ごせる人々。この種の温かい人間関係は、これからの時代は意識的に築く必要がある。
自己再生のコミュニティを築くには、親密な人間関係がつくりやすい暮らしやすい地域に住む、住む場所が選べ時間的・精神的にバランスのとれる仕事に就く。

 

貧困

・1990年(より前)は、どこで生まれたかによって人生の経済的環境がほぼ決まった。2025年は勝者総取りの世界となり、先進国の住民でも才能とやる気と人脈を欠けば、貧困層の一員となる

・貧困は自己肯定の感覚を失わせ、高齢になっても働き続けることを強いる。単純労働に従事する貧困層は、高度な専門技能を身に付ける機会がない。
先進国か途上国かは関係なく世界のあらゆる地域は、クリエイティブな人材が集まる地域、巨大生産拠点、巨大都市(とスラム)、衰退する地方、に分かれていく。

 

キャリア(シフト1)

・専門性の低いゼネラリスト的技能は、特定の企業以外では通用しにくい。

未来の世界で価値を持ちそうな技能をいろいろと想定し、そのうえで自分の好きなことを職業に選ぶ。(その技能は価値を生み出すことが広く社会に理解されており、技能の持ち主は少なく、機械化されにくいこと。)
その分野で専門技能を磨き習熟したら、他の分野にも転進する。次の専門技能へ転進するには、実験的に試みたり、人的ネットワークから学んだり、副業から始めたりするのがよい。

・今後、価値が高まりそうなキャリアと専門技能。
草の根の市民運動家、社会起業家、ミニ起業家。生命科学・健康関連、再生エネルギー関連、創造性・イノベーション関連、コーチング・ケア関連。

・雇用の流動性が高まり、働き方が多様化すると、自分のキャリアや能力が周囲に認知されにくくなる。
自分を理解してもらうには、自分の仕事に対して署名したり、格付けサービスやギルド内で自分の評価を確立させる。

・長く楽しく働き続けられるよう、仕事に集中する時期や仕事以外の活動を行う時期が、モザイク状になるキャリアを実践する。

 

バランスのとれた働き方を選ぶ(シフト3)

従来は、消費活動をするために給料をもらい、給料をもらうために仕事をする、という考え方だった。(この消費活動に幸せを感じていた。)
しかしこの考え方に基づく仕事のあり方は、私生活を犠牲にすることが多かった。

従来の考え方は、お金と地位の価値を過大に、充実した経験がもたらす幸せを過少に評価している。

・これからの仕事観は次のように変わる。
働く目的は充実した経験をするためであり、それが幸せにつながる。

この仕事観のシフトには、選択肢を理解することが重要となる。
自分にはどのような選択肢があり、それぞれの選択肢はどういう結果をもたらすのか、何をあきらめることになるのかを理解する。
そして、人生で何を大切にしたいのか、どういう働き方を望むのかは自分で決める。

 

書評

内容はだいたい同意できる、でも物足りない。というのが感想です。

本書は、これまでの働き方はもう続けられないという問題提起から書かれています。その問題意識には首肯しますし、なぜ働き方を変えなければならないかという分析もおおむね是認できます。

さらに、本書の主張である3つのシフトについても異論はありません。

専門技能を磨き、環境変化に応じて分野を変えてまた技能を磨く。結構なことだと思います。親密な人間関係を大事にしながら、多様性のある緩やかな人的ネットワークをつくる。いいことです。自分の人生を見つめて、物質的な欲求から内面的な欲求へシフトし、自己実現をはかる。すばらしいです。

でもやはり物足りない。何が足りないのか?

本書は、教育水準や家庭環境、経済環境などが平均以上の人にしか役立たないと感じてしまいます。もっと厳しく救いのない言い方をすれば、本書の提言は、おそらく上位10からせいぜい20%の人々にしか当てはまらないと思われます。生まれた時の階層が中流以下の人たちはどうすればいいのでしょう。

本書の内容はほぼ漏れなく要旨にまとめられたと思います。時間に追われないように生きるにはどうするかと、孤独にならず生きるにはどうするかという問題には、要約にその回答をまとめました。

しかし、貧困から抜け出すにはどうするかという疑問には回答していません。本書をすべて読みましたが、答えは書かれておらず、要約にまとめることもできませんでした。本書には貧困から自由になる働き方は書かれていません。

ただ、著者をこのことで責めるのも無理かもしれません。そもそも原著のタイトルは”The Shift: The Future of Work Is Already Here”なので、貧困から自由になるとは書いてありません。

最低賃金水準のアルバイトを掛け持ちして生活している人。新卒時に正規雇用に採用されず、その後キャリアが蓄積されない低賃金の非正規雇用が続き、貯蓄もできず年金支給額も低い人。シングルマザーで生活保護基準未満の生活をしている人、およびその子。
このような人たちが貧困から脱出するには、何かほかの方法論が必要に感じます。

本書の主張を実践できる人は少ないと思われます。逆説的ですが、大半の人が実践できない方法論なので、もし本書のようにシフトできる人なら、それなりに明るい未来が期待できるのではないでしょうか。
人生の出発点が本書の方法を実践できない環境にあるならば、何かの力(社会保障制度、本人のとびぬけた才能や意欲、運など)が必要と考えます。
(書評2014/02/01)

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「ワーク・デザイン これからの<働き方の設計図>」 長沼博之(著)

 

経営コンサルタントである著者が、会社や従業員の実態に問題意識を持ち、日本のこれからの働き方について提案しようと書かれた本です。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

将来の仕事やキャリアに疑問や不安を感じている人。

 

要約

急速な機械化は、人間の仕事のさまざまな領域へ広がっている。
(中小の工場でも利用可能な格安産業用ロボット、ファーストフード店の調理システム、薬剤の調剤システム、メディア業界でのコンテンツ自動生成技術、ホテル接客システム)

・技術革新が速すぎて社会構造の変化が追いつけず、技術革新により発生する失業者が(他の産業で)吸収できていない。また成長産業は雇用を生んでいない。

・リカードの比較優位理論は、各国がそれぞれ最も得意な産業に集中することが、各国すべてに良い結果をもたらすことを示した。
しかし現在、労働力と資本が国境を越えないという比較優位理論の前提は崩れた。クラウドソーシングによる業務委託は拡大を続けている。そしてクラウドソーシングの時給は圧倒的に安い。

・株式会社は利益を上げるため、生産性と効率を追求する。大企業はコスト削減圧力にさらされ続ける。しかしインターネットとソーシャルメディアにより、個人やチーム、小規模な組織は、低コストでそのネットワークを維持できるようになった

事業の寿命(今は3年といわれる)は短くなり、人間の寿命は長くなっている。会社員としてのキャリアだけでなく、セカンドジョブ、NPO、ボランティアなどの複数のキャリア(パラレルキャリア)が求められる時代となりつつある。

・社会構造をつくりあげている基盤には、個人や集団の心理・価値観がある。社会の底流にある人々の価値観へ訴えかける活動(ビジネス)が、今後は重要になる

利潤の追求から社会貢献を追求する価値観へ、社会は変化しつつある。豊かさの基準が、多様な経験や健康、自己実現、豊かな人間関係を満たすコミュニティーとなる。大衆(身近な人)とともに歩む価値観を持つ人が、人々の支持を受けるだろう。

・企業も、機能(社員の能力)は外注することが可能なので、社員には理念の共有が必要と考えるようになった。

・インターネットの意義は、情報へのアクセスから社会的交流に進化している。ウェアラブルコンピュータにより、各個人の脳がつながる社会へと進んでいる。

・今後の事業や働き方では、長期的な視点、他者や環境への配慮、差別をなくす、個人を活かす、行動し結果を示しているか、といった点に価値をおくようになる。

・「雇用」という概念は大量生産・大量消費の経済から生まれたが、「働く」の語源は「傍を楽にする」と言われている。「働く」の意味は再び、他者への貢献や自己実現に回帰してきている。

・現在は明治維新期のような、既存のインフラをつくりかえる時代にあたる
明治維新では近代のインフラが整備された。現在では、銀行などの金融システムはクラウドファンディング、労働インフラはクラウドソーシング、近代教育制度はオープンエデュケーション、製造業はデジタルファブリケーションがそれにあたる。

生産手段を個人やチームが手にすることができるようになった。(3Dプリンタ、クァーキーやウィーメイクのようなモノづくりプラットフォーム)

・知恵を集めたり(オープンイノベーション)、低コストで新規事業を始めたり(リーンスタートアップ)、ネットとリアルをつなぐ(オンライントゥオフライン)といった動きが拡大するであろう。

・個人間の融資プラットフォームであるクラウドファンディングは、資金調達だけでなくPR・製造・流通・販売・サポートといった付随する仕事を生みだす。

・クラウドソーシングが普及すれば、経営者や従業員はトップマネジメント関連分野のみが仕事になる。仕事が分割できるので、途上国の労働者に仕事を委託することが可能で、貧困の解消にも役立つ。

・現在のコミュニティーは細分化されているが、そのような特徴をとらえながら、互いに尊敬し合えるコミュニティーを構築するモデルに需要がある。

・コワーキングスペースでチームをつくり、クラウドファンディングで資金と応援者を集め、プロジェクトを立ち上げ、大規模になりそうなら法人化する。このような新しい起業のかたちが生まれている。

自立した知識労働者も、組織(チーム)と関わりながら働くことになる。組織運営では、情報の共有、多様な考え方の受容、相手のアイデンティティーの尊重、建設的な対話と協働、が重要である。

20世紀は「消費者」と「投資家」が力を持っていたが、今後は「市民」と「労働者」の力が回復する。そして、皆で一緒に作るという、コラボしながら生産する流れが大きくなるであろう。

貨幣より評価に価値を見出す時代になってきている。貨幣経済と評価経済の両方で、幅広い活動を行うパラレルキャリアが必要となる。

パラレルキャリアを考えるポイント。
①経済基盤についてはシビアに考える。(生活費、初期投資、固定費、在庫)
②自身の体験や経験から考える。
③チーム作りを学ぶ。
④ビジョンは大きく。

・あらゆるものが民主化される社会では、個人が大切にされる。個人を尊重し、互いの信頼を重視するコミュニティーが生まれ、社会を良くするという貢献を望む価値観が広がる社会となる。大量生産・大量消費の世界から、多品種適量生産・共生・共有の世界に変わる。

 

書評

2013年における働き方を考える本ですが、現在の社会構造を分析し、まとめた本としても読めます。
本書で引用されている「メイカーズ」「機械との競争」「リーン・スタートアップ」等は私も読みました。こういった現状を簡潔によくまとめてあると思います。

働き方は労働市場や雇用制度に大きく影響を受けますが、これらは産業構造の変化に左右されます。もはや大企業は非正規雇用を利用することを止めないでしょうし、労働者側も終身雇用や年功序列への期待は捨てたほうが良いです。結局どう働くかは自分の問題です。

著者は、これまで出版されてきた働き方を指南する自己啓発書などは、上位5%のエリート層を対象にしていたが、本書ではそれ以外の人の働き方を考えると述べています。なるべく多くの人が実践できるように、さまざまな事例をわかりやすく解説しています。

本書で提示する方向性は共感できるのですが、このようなパラレルキャリアを全員ができるのかは疑問も感じます。
例えば非正規雇用は全労働者の3分の1ですが、こういった人々はパラレルキャリアを考える余裕を持てるのか。複数のアルバイトなどをこなすのは、自己実現のためではなくただ生活に追われているだけです。

また、クラウドソーシングの報酬がやはり安いです。途上国の人に仕事が増えますが、先進国の人の報酬水準を引き下げることになり、政治的に困難な問題が生じると予想されます。

社会保障の網からこぼれ落ちやすい人こそ、パラレルキャリア(複数の関係性)が必要になることは確かなのですが。
本書で紹介されている、個人同士での寄付プロジェクトサービス「ユー・ケアリング・ドットコム」などは、その可能性を示唆していると思われます。

そのほか、全世界的な潮流になるかにも疑問はあります。先進国の人々は成長重視から個人重視の価値観へ脱却できるかもしれませんが、これから豊かになりたい途上国の人々が物質的欲望に基づく市場経済を捨てられるでしょうか。
本書の主張は頷けますが、乗り越えるべき困難もあります。共生の価値観が広がることは、武力紛争や貧困を減らすことにもなり、期待したいです。
(書評2014/01/05)

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「クラウドソーシングの衝撃 雇用流動化時代の働き方・雇い方革命」 比嘉邦彦/井川甲作(著)

 

労働市場は、容赦なくグローバル化にさらされます。インターネットで、世界中の仕事と労働がつながる、そんな現実を教えてくれる本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

クラウドソーシングを取り巻く現状を、簡潔に知りたい人。ビジネスにクラウドソーシングを、取り入れたいと考えている人。

 

要約

インターネットを介して働くクラウドソーシングが、世界規模で台頭してきている。
クラウドソーシングは、ビジネスのスピードを数倍にし、コストを半分以下にすることが可能なので、企業の競争ルールを変えうる。また、個人の働き方にも大きな影響を与える
日本でもクラウドソーシングによる社会変革は、2016年頃までには一般に認知されることになろう。

・インターネットは情報や資源のオープン化をもたらしたが、そのオープン化は人材資源にも及ぶ
今日、企業はマトリクス型組織として内部資源を有効に活用し、外部ともネットワークを形成して外部資源もうまく利用する必要がある。
クラウドソーシングでは企業や組織が、自社やアウトソースした人材を越えて、よりオープンで不特定多数の人的ネットワークから人材を集め、業務を遂行することになる。

・クラウドソーシングにおける、発注者と受注者を多対多でマッチングするプラットフォーム型サイトの概要を説明している。
それぞれのサイトは扱うタスクにより、デザイン&クリエイティブ型、プロジェクト型、マイクロタスク型、と分類できる

デザイン&クリエイティブ型は、高度な知識や創造性が必要とされるタスクを扱う。コンペティションが一般的で、報酬は労働時間でなく成果物に対して支払われる。例えば、InnoCentive、ナインシグマ、iStockPhotoなど。

プロジェクト型では、一定の期間での決められた成果物が求められるプロジェクト単位のタスクを対象とする。 例えば、oDesk、Elance、Freelancer.com、voicebunny、fiverr、ココナラなど。

マイクロタスク型では、数十秒から数分で終わるような細分化された単純作業をタスクとしている。例えば、Amazon Mechanical Turkなど。

・ほかに、自分たちの組織が抱える特定の課題解決を目的として、クラウドソーシングサイトをつくっている場合がある。例えば、NASA、DARPA、P&G、レゴ、ヒューレット・パッカードなど。

・日本のクラウドソーシングサイトは、上記3つの型のいずれか、もしくは複合型となる。
日本国内ではまだ市場が小さく、報酬の単価は高めの水準となっている。また、ひとつのサイトで多種のタスクを取り扱う例が多い。これらは、現在は英語圏の市場から断絶している、日本語サイトによる特徴と考えられる。
例えば、ランサーズ、クラウドワークス、クラウディア、Job-Hub、ヤフオク!など。

・フリーランサーが、経済的保証や福利厚生、交流、教育、信用などの面で有利になるために、ギルド的組織をつくる動きがある。

高い能力や特殊スキルをもつワーカーは、クラウドソーシングでは市場が地域や特殊性で制限されていないため、従来よりも高く評価される可能性がある

一般的なスキルのワーカーでも、仕事の早さ丁寧さ融通がきく納期を守る、などの特徴がクラウドソーシングでは評価される。

・客観的なスキル評価テストや、過去の実績、発注者と受注者の双方向での採点などで、評価が蓄積される。

・クラウドソーシングは労働時間(時刻)や所在地に制限されないので、ワーカーのライフスタイルに柔軟に適合できる

従来型正規雇用者(や派遣労働者)は、クラウドソーシングの普及により、報酬が下がったり雇用が減少すると考えられる。

クラウドソーシング市場からの報酬は安定しないので、ワーカーの収入は不安定となる。好評価を得て継続的に受注できるかが重要となる。

・今後は日本国内も日本語の壁が徐々に取り払われ、海外との競争の増加が見込まれる。英語力の重要性が大きくなる。

・ホワイトカラーの職種はクラウドソーシングによる影響を受けるが、直接人と接触する職種や、特定の場所にとどまる職種などは影響を受けにくい。

・ビジネスにクラウドソーシングの人的資源を取り込む際の、注意点や戦略などを考察している。

 

書評

現在のクラウドソーシング市場の概要がつかめる1冊です。興味があれば、読んでも勉強になる良い本だと思います。私は労働や雇用に関心があることと、会社を辞めた場合のことを考えているので、非常に参考になりました。

本書では、日本企業(特に大企業)が今後、クラウドソーシングを活用する方法や戦略について、いろいろと考察しています。ただ私は、日本の労働市場の閉鎖性や雇用制度の硬直性、国民の意識の保守性は、非常に堅牢だと感じています。率直に言って、黒船が来るかブラックスワンが出現するまで、ほとんど何も変わらないのではと思います。
(書評2013/9/1)

アマゾンでのご購入クラウドソーシングの衝撃 雇用流動化時代の働き方・雇い方革命
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「やむなく副業を始める人が読む本」 関行宏(著)

 

サラリーマンができる副業をまとめた、読みやすい本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

副収入が欲しい会社員。そのまま。

 

要約と注目ポイント

給料アップが望めない時代、副業を始めよう。

ただし、副業で楽に稼げると思ってはいけない。詐欺商法にも注意。

会社の就業規則やコンプライアンスを考えて。(本業と競合する副業や、本業に支障が出る副業はやめよう。)

副業するサラリーマンのための、税金・確定申告・会社にばれないための解説

確定申告や税金の説明。勤務先に副業の収入がばれないためにはどうするか。普通徴収を選択するなどの手段がある。

サラリーマンにおすすめの副業

副業をする目的、本業の勤務時間、自分の生活パターンから副業を選ぶ。

副業はカラダ系、ネット系、スキル系の3タイプ。

副業におすすめのアルバイト

カラダ系は体を使うアルバイト。飲食店、小売店、工場、倉庫、ビル清掃、コールセンター、データ入力、ポスティング、交通誘導員、介護など。利点はすぐ始められて収入が得られること。欠点は時間的に拘束され、体力や気力を消耗することなど。

ネットなら在宅で簡単に副業

ネット系はインターネットを利用するもの。アフィリエイト、有料メルマガ、ネットショップ、ネットオークション、ドロップシッピング、アプリ開発、電子書籍販売、アンケート回答など。

利点は手軽に始められる、融通がきく。欠点は収入が安定しない、発送などの顧客対応が必要となると毎日作業が発生する、など。

社会人のスキルで副業

スキル系は自身の得意分野を活かすもの。キャリアの棚卸しをして考えよう。

プログラム、ウェブデザイン、写真、営業代行、司会、模型製作、翻訳、ライター、スポーツインストラクター、塾講師など。

利点は将来の独立・起業も見えてくること。欠点はビジネスが軌道に乗るまで時間や費用がかかること。

サラリーマンが副業をしたくなったときの選択肢が、ほぼすべて挙げられている感じです。自分に合うものもあるはずです。

 

書評

会社員でもいろんな副業の仕事ができるなー、わくわく。と読み物として結構楽しい。サラリーマンとしては、ネット系かスキル系を考えることになるでしょうか。カラダ系は家計が苦しくて追い込まれた時の手段ですかね。
(書評2013/03/02)

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