「ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる」 マイケル・ルイス(著)

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リーマンショック以降、ヨーロッパは新たな金融危機の震源地とみなされています。ギリシャを筆頭として、ヨーロッパの抱える危険性を感じられる本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

欧州経済に関心のある人。金融危機に興味がある人。

 

要約と注目ポイント

カイル・バスの警告

サブプライムローン危機で大きく儲けたヘッジファンド経営者のカイル・バスは、金融危機はまだ終わっていないと言った。先進国の信用力によって、一時的に覆い隠されただけだと。2000年以降の先進国の経済成長は実はまやかしで、返済能力のない人が借金をして起きた現象に過ぎない。

債務を返済することが不可能な主要国が、いくつかある(候補はギリシャ、アイルランド、イタリア、スイス、ポルトガル、スペイン、フランス、日本)。問題は、先進国の債務不履行が起きるのが、いつなのかだ。

アイスランド

2008年10月にアイスランドは破綻した。累積債務は対GDP比で850%、銀行の損失1000億ドルを人口30万人で負うことになった。

アイスランドは漁業で成り立つ孤立した大家族のような島国だったが、2000年代前半のアメリカ型金融に倣い、極端なレバレッジと軽率な借り入れによる買収に明け暮れた。その原因は、男性的で冒険主義的な国民性(漁師そのもの)にあったのかもしれない。

ギリシャ危機

ギリシャの国家予算は、使途が不明瞭きわまりなかった。無駄な支出、公務員の高い給与と賄賂、公共部門の非効率。歳入にも問題があった。徴税されることがなく、国民も納税する気がなかった。

財政が破綻しかけたのも無理はない。そもそもユーロ参加のため帳簿を細工し、ドイツ並みの金利で借金できるようになったことが、間違いのもとだった。

腐敗はギリシャ人相互の不信を生み、相互不信がギリシャ人に利己的行動をとらせ、ますます腐敗は深刻になった。腐敗の象徴となった修道院には共同体が存在したが、ギリシャ国民の中には共同体への意識は存在しないようだ。

アイルランド

アイルランドもアイスランド同様に、謎の急激な経済成長と、極端な金融危機を体験した。アイルランドでは、自国の不動産への過剰な投資が行われた。分別のない融資により、1000億ユーロ前後の不良債権が発生した。

思わず大金を手にしたり、あるいはその大金を失ったときにこそ、国民性が表れるようだ。奇妙なことに、アイルランドの銀行債務を政府は補償することに決めた。

ギリシャ人とは異なり、1000億ユーロの負債をアイルランド人はまるごと背負うことにした。何も言わず黙ったまま。

ドイツ

ドイツ人は糞や肛門に執着するが、それは清潔な体裁と汚い実情という二面性を示しているようだ。ギリシャのような破綻国家を救えるのはドイツだけだが、実施には救済される国が支出削減と構造改革に努めることが条件である。堅実なドイツでは信用バブルは発生せず、バブルに熱狂した国々に規律を強いるが、ギリシャでは反発も強い。

ただ、国内ではバブルは生じなかったが、諸外国にバブルを生むような金を貸したのは、ドイツの銀行である。ルールに従って、リスクの高い資産にも粛々と融資し、莫大な不良債権を築き上げた。ここにドイツの二面性がある。

アメリカ

アメリカの地方自治体には、債務が積み上がっていた。住民たちが公共サービスを求めつつ、その対価の支払いを拒否してきた結果だった。公務員の高給と年金が、税収と全く釣り合わなかった結果でもある。長期の利益を犠牲にして目先の利益を欲する、アメリカ人の姿がそこにあった。

2010年ごろから、ユーロ圏では高失業率と低成長、累積する政府債務がくすぶっています。決定的な破局は避けながら、かといって抜本的に解決するわけでもなく、ずっと先送りで取り繕っています。最後には、何か大きなことが起こりそうなのですが。

 

書評

マイケル・ルイス氏の本は読むのが楽しく、これも面白い本でしたが、本当にこんなことがあるのか、となります。

ギリシャでは誰も(国民も企業も)税金を払わないとか。国会議員全員が自宅の固定資産税を払っていないのもすごいですが、企業が(税金を払わないために)まず法人として登録されていないというところで笑いました。ドイツ人もキレますね。

同氏の著作「世紀の空売り」「フラッシュ・ボーイズ」に比べると、本書は馬鹿馬鹿しさが高濃度なので、へらへらしながら読めます。

それにしても欧州の経済は一向に改善せず、再びECBが金融緩和を始めましたが、解決するのでしょうか。異なる経済状況の国々が、同一の通貨を使い、同一の金融政策をとるというのは、やはり持続不可能なのでしょうか。

世界の大きなリスクに、欧州経済があげられます。欧州経済の不振は、欧州に社会不安をもたらすので、経済だけでなく政治面でも影響が大きいです。2015年も欧州経済は要注目です。
(書評2015/01/28)

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