「嫌われる勇気」 岸見一郎/古賀史健(著)

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どうすれば、人は幸せに生きられるのか。
その答えを示す、2014年ビジネス書の大ベストセラーです。本書では、アドラー心理学を対話形式で解説していきます。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

人生に行き詰まっていると感じる人。対人関係の悩みがある人。

 

要約

・アドラー心理学は、フロイトやユングと並んで影響力がある。これは、ギリシア哲学の同一線上にある思想である。

・世界はシンプルである。
人は、自らが意味づけをした主観的な世界に住み、自ら世界を複雑なものとしている。自分が変われば、世界はシンプルになる。

・アドラー心理学は、「現在の人生における問題は、過去に原因(トラウマ)がある」という原因論を否定する。「何らかの(隠れた)目的があり、その目的のために、問題となっている感情や行動がつくり出されている」と考える。アドラー心理学は、トラウマを否定する。(例:引きこもりの事例。怒りの感情。)

・自分の人生は、過去の経験で決定されるものではない。過去の経験にどのような意味を与えるか、どう解釈するかで、人生を決定している。客観的な事実は動かせないが、主観的な解釈は動かせる。前提として、人は変われると考える。

・何が与えられているかではなく、与えられたものをどう使うかに注目する。アドラー心理学は、所有の心理学ではなく、使用の心理学。

・アドラー心理学では、思考や行動の傾向(性格や気質)を、ライフスタイルと呼ぶ。「世界をどう見ているか」、「自分をどう見ているか」がライフスタイルである。
自分のライフスタイルは、自分で選んだものである。今不幸であるなら、それは自分が「不幸であること」を選んでいる。

・人は変わりたがらない。ライフスタイルを変えることは不安で、変えない方が楽なので、人はライフスタイルを変えないようにしている。ライフスタイルは、勇気を持てば自分で選びなおすことができる。

・ライフスタイルを変えれば(世界や自分への意味づけを変えれば)、世界との関わり方や行動も変わらざるをえなくなる。過去は存在せず、今後の人生は、今ここにいる自分が決める。

・自己評価が低い例。自分の短所ばかり見るのは、対人関係で傷つくことを怖れているから。はじめから、自分が他者と関わりを持たないように仕向けている。

・対人関係で傷つかない、ということはありえない。人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである。価値があるかどうかという問題も、最終的には対人関係に還元される。

・劣等感は努力するきっかけとなるが、劣等感を言い訳に使ってはいけない(劣等コンプレックス)。「~だから~できない」というのは、言い訳(見かけの因果律)に過ぎない。また劣等感を補償するため、権威に寄りかかる態度をとることもある。不幸を武器にすることもある。

・健全な劣等感は、他者との比較ではなく、理想の自分との比較から生じる。対人関係の軸に他者との競争があると、対人関係の悩みが生まれ、不幸になる。競争を意識し、勝ち負けを常に考えていると、他者全般、そして世界を敵だと認識するようになる。

・競争の意識から解放されると、他者の幸福を素直に祝福できるようになる。他者が自分の仲間だと実感できるようになれば、世界の見え方は変わる。

・他者から罵られて腹が立った場合、相手が力を示したいという目的で、権力争いを挑んできていると考える。権力争いに敗れた相手は、別の機会に復讐してくることもある。権力争いを挑まれても、乗ってはならない。怒りというコミュニケーションの手段を使わず、他の方法でコミュニケーションする。議論ではあくまでも論理を重視し、自分の正しさを確信しないこと。

・アドラー心理学では、人生の目標(タスク)を掲げている。
行動面では、
①自立すること。
②社会と調和して暮らせること。
心理面では、
①「私には能力がある」という意識をもつ。
②「人々は私の仲間である」という意識を持つ。

・人生のタスクは、対人関係により3つに分けられる。
①仕事のタスク
対人関係の距離と深さでは、最も簡単である。仕事という共通の目標を通じて結ばれた関係。
②交友のタスク
個人的な友人関係。
③愛のタスク
恋愛関係と家族(親子)関係。対人関係の距離と深さでは、最も難しい。

・人生のタスクを回避したいという(隠れた)目的があると、適当な口実(人生の嘘)をつくりだす。人生のタスクに正面から向き合うかは、勇気の問題だ。

・アドラー心理学では、他者の承認を求めることを否定する。他者の期待を満たすために、生きているのではない。

・問題があるとき、それは誰の課題なのかを考える。自分と他者の課題を分離し、他者の課題には踏み込まない。課題を負っているのは、選択して、その結果を引き受ける人である。他者の課題へは、介入はせずに援助する。他者の課題を切り捨てることで、対人関係の悩みはなくなる。

・自分の課題に専念する。他者が自分をどう評価するかは他者の課題なので、考えない。他者の視線や評価を気にする生き方は、不自由である。他者からの視線ばかりを気にする生き方は、自己中心的なライフスタイルだ。他者からの評価を気にせず、他者から嫌われることを怖れない生き方が、自由である。

・対人関係のカードは、常に自分が持っている。自分が相手に対しどう行動するかは、自分の課題。それに応じて相手がどうするかは、相手の課題。

・対人関係は、課題の分離がスタート。他者を仲間とみなし、自分の居場所があると感じることが共同体感覚で、共同体感覚を持てるのがゴールである。自分は世界の中心にいるのではなく、共同体の一部と認識する。

・自分は共同体の一部なので、自分から共同体へコミットする必要がある。共同体にコミットするとは、具体的には人生のタスクに立ち向かうことであり、それによって共同体に所属する感覚が得られる。小さな共同体に所属感を持っていても、さらに外側に大きな共同体が存在することを知っておく。

・課題の分離から、共同体への所属感に至るためには、横の関係を持つ。横の関係とは、同じではないが対等と考える関係性。人の上下関係(操作や介入)を意識しているのが、縦の関係。縦の関係ではダメ。

・横の関係で他者を援助するのが、勇気づけ。勇気づけは、感謝や喜びの言葉、お礼の言葉が相当する。感謝の言葉を聞いたときに、人は他者に貢献したことを知る。

・自分に価値があると思えたときだけ、人は勇気を持てる。自分に価値があると思えるのは、他者に貢献できている、自分は共同体に役立っている、と自分の主観で思えるときだ。横の関係を築き、他者に関心を持って勇気づけすると、他者に貢献しているという感覚につながり、自分の勇気になっていく。

・出発点として、存在していることで貢献していると考える。

・対人関係は、縦の関係か横の関係か、どちらかしか取れない。(ある人とは横の関係で、別の人とは縦の関係というのは無理。)誰とでも意識の上では対等という、横の関係のライフスタイルをとること。

・共同体感覚を持つには、自己受容、他者信頼、他者貢献の3つが必要。
自己受容は、ありのままの自分を受け入れ、そのうえでどう進んでいくか考えること。自分にできることと、できないことを見極める。
他者信頼は、一切の条件をつけず、他者を信じること。他者が仲間だと思える。
他者貢献は、他者に役立つことで、自分に価値があると感じること。自分に価値があると思えると、共同体感覚を持てる。

・全体のうち、うまくいかない部分にだけ焦点を当てて全否定するのは、人生の調和を欠いた生き方だ。誤ったライフスタイルである。

・他者に役立っているという貢献感を持てれば、人は幸福になることができる。主観的な貢献感が持てれば、幸福になれる。誰でも幸福になることはできる。原理的に、貢献できたかはわからない。他者の承認はいらない。

・特別な存在になりたいと思う必要はない。普通であることに勇気を持て。

・人生は、特別な存在をめざす一本の線ではなく、「いま、ここ」という点の連続である。人生には「いま、ここ」しかない。「いま、ここ」だけを真剣に生きろ。

・人生の意味は、あなたが自分自身に与えるものだ。

・誰かが始めなければならない。他の人が協力的でないとしても、それはあなたには関係ない。私の助言はこうだ。あなたが始めるべきだ。他の人が協力的であるかどうかなど考えることなく。

 

書評

本書はたいへん売れた本です。皆さん、人生や人間関係に悩んでいるのでしょうか。私もくよくよ悩みがちです。本書ではアドラー心理学を使って、対人関係や世界をシンプルにとらえ、悩みを解消し幸福になるよう導きます。

アドラーは、フロイトなどの原因論を批判します。原因論は、過去に問題があって、その影響が現在に及び、良くない事態が生じたと考えます。例えば、子供時代に親から愛情を受けなかったため、そのトラウマで今結婚できないというように。

アドラーの主張する目的論では、今結婚できないのは、他者と深く関わり合うことを怖れているためで、その言い訳で子供時代が持ち出されている、のようになります。

原因論のような考え方だけで生きてきた人には、本書は目からウロコになるかもしれません。私はネチネチ考える性質なので、目的論的な見方は今までもしてきました。それでも改めて本書で指摘されると、痛いところです。

地道な努力をしたくない。他人と深く付き合うのを避けたい。対人関係で傷つきたくない。自分の能力の低さを直視したくない。失敗して他人に笑われたくない。馬鹿にされたくない。自分を特別扱いしてもらいたい。責任を負いたくない。

このような隠れた目的のため、言い訳をつくってきました。自分はがんばってもできないという劣等コンプレックスを持ち出す。自分は短所の多いダメな人間だと言い、人を避ける。自分の無能さが明白になるのを避けるため、努力して勝負することから逃げる。人に配慮してもらうために、不幸な事柄をアピールする。

本書では、こういった心理を解説しています。薄々は自分でもわかっていますが、これらは自分にもあてはまります。自分の口実の裏に、逃げまくっている真の目的が隠れているわけです。

この隠れた目的をあぶり出し、ライフスタイルを変えれば、事態は改善します。ライフスタイルを変えるには勇気が必要で、自分に価値があると思えれば勇気が出ます。自分に価値があると思えるのは、他者に貢献している実感があるときです。他者に貢献している感覚は、自分の課題に専念し、他者を勇気づけることで得られます。

課題の分離、他者に承認を求めないこと、「いま、ここ」だけを大切にすることといった概念は、私には納得できます。結局、勇気ですか。「いま、ここ」で勇気をもち、人生のタスクに立ち向かうかが問われているわけです。一瞬、一瞬、自分が選んでいるのです。

苦しいときは、「いま、ここ」で自分の課題に集中すること。そして、(思い込みでもいいですが)自分は他者の役に立っており、自分にも価値があると感じること。確かに、これで少し楽になれます。アドラー心理学的な生き方ができるようになるには、長い時間がかかるそうです。「いま、ここ」で勇気を持って真剣に生きる、うん、怠けたくなったら思い出そう。
(書評2015/09/27)

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