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「イノベーション・オブ・ライフ」 クレイトン・M・クリステンセン/ジェームズ・アルワース/カレン・ディロン(著)

 

「イノベーションのジレンマ」で知られる経営学の著名な研究者が、自身の人生を通して学んだ「生き方」を瑞々しく語ります。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

人生で幸せを感じるにはどうすればよいのか、考えたい人。

 

要約と注目ポイント

・どうすれば幸せになり成功できるのか。どうすれば最愛の人や周囲の人々と、幸せな関係を築けるか。どうすれば誠実な人生を送り、罪人にならずにいられるか。経営研究の手法を用い、これらの問題を考えることにした。

「自分の人生を評価するものさしは何か?」という問いに、本書が役立つことを願う。

・人生の難題に簡単な解決法などないし、求めるべきでもない。ただし、人生の状況に応じて適切な選択をする助けになるツールがある。それは理論だ。理論とは、「何が、何を、なぜ引き起こすのか」を説明する、一般則である。

・理論を使えば、「何を考えるべきか」ではなく「どう考えるべきか」がわかる。優れた理論であれば、分類と説明、そして将来の予測に役立つ。

人生の解答を、経営学の方法で探します。

 

仕事で幸せになる理論

・達成したいことにどうやって到達するか、を示すのが戦略である。

自分のキャリアの戦略では、自分の時間や労力、能力という資源をどう配分するかを決める。人は自分のキャリアをこうしたいという意図を持つが、予期しない機会や脅威が現れてくる。そのため、戦略として計画を立て、予期しない事態に遭遇したときより良い選択肢を見きわめ、戦略を修正しながら資源を適切に配分する、というプロセスを続ける。

人生でも、自分が持つ資源を適切に配分することが、幸せにつながります。

①優先事項について考える。

優先事項とは、意思決定を行うときの基本となる判断基準である。真の動機づけとは、人に本心から何かをしたいと思わせる。

仕事は、衛生要因で考える。(衛生要因とは、衛生状態が悪いと健康を害するが、衛生状態が良くても健康は増進しない事実からつけられた用語。)報酬は衛生要因であり、低かったり不平等だと不満を持つが、高くても不満を感じないだけで、仕事が好きになるわけではない。

自分にとってやりがいがある、貢献している実感がある、などの要因は真の動機づけとなり、仕事への愛情を生み出す。キャリアでは真の動機づけとなる要因を求め、優先事項として指針にせよ。

真の動機づけとなる要因が、仕事を好きにします。

②幸せなキャリアの計画と、予想外の事態のバランスをとる。

どのようなときに大好きな仕事を探す計画を進め、どのようなときに予期しない機会や脅威を創発的に受け入れるか。この戦略の選択が大切である。

戦略の選択肢には2つある。1つは、機会を予期し意図的に追及する戦略。もう1つは、意図的に戦略を進めると発生する問題や機会により、戦略を修正する創発的戦略である。

動機づけ要因(やりがいや自分の目的など)と衛生要因(報酬や職場環境など)の両方を満たす仕事に就いているなら、そのまま意図的戦略に基づき目標達成をめざそう。こうした条件に欠けているなら、創発的戦略で仕事をしていくべきだ。

戦略が成功するかは、どんな仮定の正しさが証明されればよいのか考える。いま検討している仕事で自分が幸せになるためには、どんな仮定が立証されなければならないのか?

想定外な人生の出来事に、どのような戦略を採るべきか、考えさせられます。

③戦略通りに資源を分配し、実行する。

戦略は資源が実際に配分されて、実行できる。自分の時間、能力、お金を、自分の意向に沿って使う。資源が分配されなければ、戦略は実行したことにはならない。

人も企業も、長期的な成功をもたらす取り組みよりも、目先の満足に飛びつく傾向がある。長期的な戦略を立てても、短期的に利益や結果が得られることに取り組んでしまう。人は資源配分プロセスを意識的に管理しなければ、心や脳のデフォルト基準で配分してしまう。

幸せな人生を送るためには、自分の資源を正しく配分しなければならない。資源配分を誤れば、不幸の原因となる。毎日の資源配分が、自分が実行したい戦略に合致していなければ、なりたい自分にはなれない。

 

家族や友人との関係を幸せにする理論

・結果がすぐに出る仕事に資源を配分しがちだが、キャリアは人生の優先事項の中のひとつに過ぎない。すぐに結果は出ないが、長期的に大切な優先事項は家族、友人、健康、信仰などであり、意識してこれらに時間と労力を費やすべきだ。忍耐強く努力を続けて、幸せな関係を育もう。

①家族や友人に対し、今から継続して時間と労力を使うこと。

新規事業の初期段階では、少ない資金でなるべく早く実行可能な戦略を見つけることが大切だ。初期段階で大金を使い、急速な成長をめざすと失敗する。有効な戦略が見つかれば、資金を使って利益より速い成長をめざすべきである。つまり企業は、主力事業が好調なうちに気長に、あまり資金をかけず新規事業に投資しておくのが良い。

人生でも、家族や友人と愛情に満ちた関係を築くという意図的戦略があるのだから、時間と労力を継続的に使う必要がある。将来に向け、今から資源を配分すべきだ。今忙しいので資源を投資しなくても、あとでまとめて時間を使えば埋め合わせられる、と考えるのは間違いだ。

人間関係では、長い目で見た資源配分が幸せを生みます。

②相手の片づけるべき用事を理解し、献身的に片づけを手助けする。

顧客は、自分の用事を片づけたいので製品やサービスを買うのだ。生活の中で「用事」ができ、「用事」を片づけるために、製品やサービスを「雇う」。企業は、顧客の「用事」を理解することが大切だ。

夫婦の関係でも、相手の抱えている用事と、自分が想像している相手の抱える用事は、ずれている場合が多い。これは夫婦間の不幸になる。片づけなくてはならない用事をお互いに理解し、確実にうまく片づける夫婦は、結婚生活が円満となる。大切な人が、何を大切と思っているか理解することが重要だ。

大切な人が大切だと思っていることのために、献身的になることは、相手への愛情も深める。

相手の「用事」を知ることは、相手の気持ちを理解することにつながります。

③子育てでは、問題に挑戦させ自力で解決させよう。そして価値観は、親が自分の行動で示そう。

企業が業務をアウトソーシングするとき、能力という概念を理解しておく必要がある。将来に必要な能力、社内にとどめるべき能力、重要度の低い能力、これらを区別する。能力は、資源、プロセス、優先事項の3つに分かれる。

子育てでも、資源、プロセス、優先事項の能力モデルを応用する。

資源(知識や習い事)はたくさん与えがちだ。だが、責任を持って問題に取り組む、解決のため試行錯誤する、他人と協力するなど、プロセスを学ばせることが大事である。

子供が人生で何を最も優先させるかが、優先事項になる。優先事項は価値観であり、これは親が自分の行動を通して、子供が学ぶ準備ができたときに示す必要がある。

④子供が人生で必要な能力を養えるような経験を、繰り返し計画して与える。

人材登用では、経歴の素晴らしい人が有能だと考えがちだ。しかし、仕事で適切な経験を積み、大きな利害のかかるストレス下の状況で対処する方法を学び、スキルを磨いてきた人が能力を発揮する。能力は、さまざまな経験や、失敗や成功を通して開発され、形成される。

子供にも、将来成功のため必要になりそうな経験を考え、それと似た経験をさせるのだ。人生で必要となる能力を養うのに役立つ経験を洗い出し、それらの経験を与える機会をつくろう。

良い経験を積むことは、子供の成長に役立ちます。

⑤良い家庭文化を意識的に築き、子供に正しい行動をとらせる。

困難な状況でも、子供が選択肢を正しく評価し、賢明な選択を行うようになって欲しい。そのためには、子供の優先事項を正しく設定してやる必要があり、ここで家庭の「文化」が重要な役割を果たす。

企業にも「文化」はあり、共通の目標に向かって協力して取り組む方法である。頻繁に用いられ成功する方法なので、従業員は自律的に文化に沿って行動する。文化は、プロセスと優先事項が組み合わさったものと言える。

家庭でも、自分たちにとって大切なことを意識的に選び、それを強化する文化を設計できる。家族でどのような活動をするか、どのような成果を達成するかを考え、実行するのだ。家族一緒に物事に繰り返し取り組むことで、どうやって問題を解決するか、何が大切かという共通の理解が生まれる。

良い家庭の文化をつくると、子供は自然と正しい行動をとるようになります。

 

犯罪をおかさないための理論

①倫理的ルールでは、一度たりとも妥協しない。
ある市場を支配する大企業が、破壊的だが資本の乏しい小さい新規参入企業と競合した場合、2つの考え方がある。1つ目は新規参入者に対抗し、まったく新しいものをつくる方法で、総費用で表される。2つ目が既存資産を活用する方法で、限界費用と限界収入で表される。

このとき圧倒的に限界費用が総費用より安いので、大企業は既存資産を活用する方針を取りがちだ。しかし限界費用を意識した方針では、いつの日か競争力を失い、市場そのものが奪われるときが来る。

人生においても、決めたルールを一度だけ破るのは、大した問題ではないように思える。一度ルールを破る限界費用は、ほとんどないように感じる。しかし一度ルールを破ると、一度では済まなくなり、最後には総費用以上の、すべてを失うことになる。

人間は弱いので、一度ルールを破ると止められません。はじめの気持ちが大切です。

 

目的を持つことの大切さ

偉大な企業は、目的を持っている。

企業の目的には、自画像、献身、尺度という、3つの部分がある。自画像は、企業が最終的な目的地にたどり着いたときのイメージである。献身は、その目的を実現するために経営者と従業員が深い献身をもつことである。尺度は、経営者や従業員が進捗を測るために用いるものさしである。

人生でも、目的を持たなければならない。目的は明確な意図をもって構想、選択し、管理しなければならない。そして目的に向かう道は、創発的である。自力で自画像を描き、自分がなりたい人間になるために献身し、自分の人生を評価する尺度を理解することだ。

人生の目的は、自分で探して自分で決めよう。著者クリステンセンの後押しです。

 

書評

超有名な経営学者である著者が、実に青い誠実な「生き方」の本を書くことに少し驚きました。ビジネスの世界の研究で長い年月を過ごし、合理的な思考に浸かり、名を成した人が、このように(良い意味で)青い考えを説くのは意外でした。

何と言うか、熱い理想に燃える若者のような、それでいて人生の深淵を歩いてきた老人が書いたような、さわやかでしんみりとした人生指南書です。

いきなり驚いたのは、エンロンでとんでもない粉飾をしたCEOのスキリングと、ハーバードビジネススクールの同級生だったことです。同級生のころは、そのような違法行為を行う人間ではなかったと言います。

そのほかにも、年月を追うごとに、素晴らしい能力を持って輝かしい私生活を送っていたはずの何人かの同級生が、仕事や家庭に深刻な問題を抱えているのを著者は目撃します。

なぜこうなってしまったのか。著者はその疑問を、冷静な知性と温かい誠実さで解こうとします。

人生の幸せに役立つという本書の理論ですが、キリスト教の道徳観が強く反映されていると感じました。当然ですが著者の価値観通りに、自分が生きる必要はありません。ただ経営学の教授らしく、理論は合理的に語られ、わかりやすく提示しているので、すっきりしていて理解しやすいです。人生に悩んだときの、ひとつの道しるべとして参考になります。

なお、本書の邦題は「イノベーション・オブ・ライフ」ですが、原題は「How will you measure your life?」です。おそらくは、原題が忠実に著者の考えを表しています。

「自分の人生を評価するものさしは何か?」という問いに、自分で考えて答えることが、自分にとっての幸せにつながるのでしょう。

それにしても著者のクリステンセンという人は、面白いと思いました。若手教授だったときに、インテルの会長から直接話を聞きたいと言われ、喜び勇んでインテル本社に行ったエピソードなどはいいです。

会長に「問題が発生したから10分しか時間を取れない、10分でインテルに何が必要か説明してくれ」と言われても、「アンディ、それはできない、まず理論を知る必要がある」と返し、理論、そして無関係の他の業界の話をしていくところは楽しいです。忙しい会長が苛立っても、「アンディ、それはできない」と二度突っぱねるところは面白いです。

無関係の業界の話のあと、インテルがどういう戦略を採るべきかについて、会長が自分で完璧に思いつくところなど素敵です。「イノベーションのジレンマ」は未読ですが、読んでみようと思いました。
(書評2015/10/26)

「嫌われる勇気」 岸見一郎/古賀史健(著)

 

どうすれば、人は幸せに生きられるのか。
その答えを示す、2014年ビジネス書の大ベストセラーです。本書では、アドラー心理学を対話形式で解説していきます。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

人生に行き詰まっていると感じる人。対人関係の悩みがある人。

 

要約

・アドラー心理学は、フロイトやユングと並んで影響力がある。これは、ギリシア哲学の同一線上にある思想である。

・世界はシンプルである。
人は、自らが意味づけをした主観的な世界に住み、自ら世界を複雑なものとしている。自分が変われば、世界はシンプルになる。

・アドラー心理学は、「現在の人生における問題は、過去に原因(トラウマ)がある」という原因論を否定する。「何らかの(隠れた)目的があり、その目的のために、問題となっている感情や行動がつくり出されている」と考える。アドラー心理学は、トラウマを否定する。(例:引きこもりの事例。怒りの感情。)

・自分の人生は、過去の経験で決定されるものではない。過去の経験にどのような意味を与えるか、どう解釈するかで、人生を決定している。客観的な事実は動かせないが、主観的な解釈は動かせる。前提として、人は変われると考える。

・何が与えられているかではなく、与えられたものをどう使うかに注目する。アドラー心理学は、所有の心理学ではなく、使用の心理学。

・アドラー心理学では、思考や行動の傾向(性格や気質)を、ライフスタイルと呼ぶ。「世界をどう見ているか」、「自分をどう見ているか」がライフスタイルである。
自分のライフスタイルは、自分で選んだものである。今不幸であるなら、それは自分が「不幸であること」を選んでいる。

・人は変わりたがらない。ライフスタイルを変えることは不安で、変えない方が楽なので、人はライフスタイルを変えないようにしている。ライフスタイルは、勇気を持てば自分で選びなおすことができる。

・ライフスタイルを変えれば(世界や自分への意味づけを変えれば)、世界との関わり方や行動も変わらざるをえなくなる。過去は存在せず、今後の人生は、今ここにいる自分が決める。

・自己評価が低い例。自分の短所ばかり見るのは、対人関係で傷つくことを怖れているから。はじめから、自分が他者と関わりを持たないように仕向けている。

・対人関係で傷つかない、ということはありえない。人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである。価値があるかどうかという問題も、最終的には対人関係に還元される。

・劣等感は努力するきっかけとなるが、劣等感を言い訳に使ってはいけない(劣等コンプレックス)。「~だから~できない」というのは、言い訳(見かけの因果律)に過ぎない。また劣等感を補償するため、権威に寄りかかる態度をとることもある。不幸を武器にすることもある。

・健全な劣等感は、他者との比較ではなく、理想の自分との比較から生じる。対人関係の軸に他者との競争があると、対人関係の悩みが生まれ、不幸になる。競争を意識し、勝ち負けを常に考えていると、他者全般、そして世界を敵だと認識するようになる。

・競争の意識から解放されると、他者の幸福を素直に祝福できるようになる。他者が自分の仲間だと実感できるようになれば、世界の見え方は変わる。

・他者から罵られて腹が立った場合、相手が力を示したいという目的で、権力争いを挑んできていると考える。権力争いに敗れた相手は、別の機会に復讐してくることもある。権力争いを挑まれても、乗ってはならない。怒りというコミュニケーションの手段を使わず、他の方法でコミュニケーションする。議論ではあくまでも論理を重視し、自分の正しさを確信しないこと。

・アドラー心理学では、人生の目標(タスク)を掲げている。
行動面では、
①自立すること。
②社会と調和して暮らせること。
心理面では、
①「私には能力がある」という意識をもつ。
②「人々は私の仲間である」という意識を持つ。

・人生のタスクは、対人関係により3つに分けられる。
①仕事のタスク
対人関係の距離と深さでは、最も簡単である。仕事という共通の目標を通じて結ばれた関係。
②交友のタスク
個人的な友人関係。
③愛のタスク
恋愛関係と家族(親子)関係。対人関係の距離と深さでは、最も難しい。

・人生のタスクを回避したいという(隠れた)目的があると、適当な口実(人生の嘘)をつくりだす。人生のタスクに正面から向き合うかは、勇気の問題だ。

・アドラー心理学では、他者の承認を求めることを否定する。他者の期待を満たすために、生きているのではない。

・問題があるとき、それは誰の課題なのかを考える。自分と他者の課題を分離し、他者の課題には踏み込まない。課題を負っているのは、選択して、その結果を引き受ける人である。他者の課題へは、介入はせずに援助する。他者の課題を切り捨てることで、対人関係の悩みはなくなる。

・自分の課題に専念する。他者が自分をどう評価するかは他者の課題なので、考えない。他者の視線や評価を気にする生き方は、不自由である。他者からの視線ばかりを気にする生き方は、自己中心的なライフスタイルだ。他者からの評価を気にせず、他者から嫌われることを怖れない生き方が、自由である。

・対人関係のカードは、常に自分が持っている。自分が相手に対しどう行動するかは、自分の課題。それに応じて相手がどうするかは、相手の課題。

・対人関係は、課題の分離がスタート。他者を仲間とみなし、自分の居場所があると感じることが共同体感覚で、共同体感覚を持てるのがゴールである。自分は世界の中心にいるのではなく、共同体の一部と認識する。

・自分は共同体の一部なので、自分から共同体へコミットする必要がある。共同体にコミットするとは、具体的には人生のタスクに立ち向かうことであり、それによって共同体に所属する感覚が得られる。小さな共同体に所属感を持っていても、さらに外側に大きな共同体が存在することを知っておく。

・課題の分離から、共同体への所属感に至るためには、横の関係を持つ。横の関係とは、同じではないが対等と考える関係性。人の上下関係(操作や介入)を意識しているのが、縦の関係。縦の関係ではダメ。

・横の関係で他者を援助するのが、勇気づけ。勇気づけは、感謝や喜びの言葉、お礼の言葉が相当する。感謝の言葉を聞いたときに、人は他者に貢献したことを知る。

・自分に価値があると思えたときだけ、人は勇気を持てる。自分に価値があると思えるのは、他者に貢献できている、自分は共同体に役立っている、と自分の主観で思えるときだ。横の関係を築き、他者に関心を持って勇気づけすると、他者に貢献しているという感覚につながり、自分の勇気になっていく。

・出発点として、存在していることで貢献していると考える。

・対人関係は、縦の関係か横の関係か、どちらかしか取れない。(ある人とは横の関係で、別の人とは縦の関係というのは無理。)誰とでも意識の上では対等という、横の関係のライフスタイルをとること。

・共同体感覚を持つには、自己受容、他者信頼、他者貢献の3つが必要。
自己受容は、ありのままの自分を受け入れ、そのうえでどう進んでいくか考えること。自分にできることと、できないことを見極める。
他者信頼は、一切の条件をつけず、他者を信じること。他者が仲間だと思える。
他者貢献は、他者に役立つことで、自分に価値があると感じること。自分に価値があると思えると、共同体感覚を持てる。

・全体のうち、うまくいかない部分にだけ焦点を当てて全否定するのは、人生の調和を欠いた生き方だ。誤ったライフスタイルである。

・他者に役立っているという貢献感を持てれば、人は幸福になることができる。主観的な貢献感が持てれば、幸福になれる。誰でも幸福になることはできる。原理的に、貢献できたかはわからない。他者の承認はいらない。

・特別な存在になりたいと思う必要はない。普通であることに勇気を持て。

・人生は、特別な存在をめざす一本の線ではなく、「いま、ここ」という点の連続である。人生には「いま、ここ」しかない。「いま、ここ」だけを真剣に生きろ。

・人生の意味は、あなたが自分自身に与えるものだ。

・誰かが始めなければならない。他の人が協力的でないとしても、それはあなたには関係ない。私の助言はこうだ。あなたが始めるべきだ。他の人が協力的であるかどうかなど考えることなく。

 

書評

本書はたいへん売れた本です。皆さん、人生や人間関係に悩んでいるのでしょうか。私もくよくよ悩みがちです。本書ではアドラー心理学を使って、対人関係や世界をシンプルにとらえ、悩みを解消し幸福になるよう導きます。

アドラーは、フロイトなどの原因論を批判します。原因論は、過去に問題があって、その影響が現在に及び、良くない事態が生じたと考えます。例えば、子供時代に親から愛情を受けなかったため、そのトラウマで今結婚できないというように。

アドラーの主張する目的論では、今結婚できないのは、他者と深く関わり合うことを怖れているためで、その言い訳で子供時代が持ち出されている、のようになります。

原因論のような考え方だけで生きてきた人には、本書は目からウロコになるかもしれません。私はネチネチ考える性質なので、目的論的な見方は今までもしてきました。それでも改めて本書で指摘されると、痛いところです。

地道な努力をしたくない。他人と深く付き合うのを避けたい。対人関係で傷つきたくない。自分の能力の低さを直視したくない。失敗して他人に笑われたくない。馬鹿にされたくない。自分を特別扱いしてもらいたい。責任を負いたくない。

このような隠れた目的のため、言い訳をつくってきました。自分はがんばってもできないという劣等コンプレックスを持ち出す。自分は短所の多いダメな人間だと言い、人を避ける。自分の無能さが明白になるのを避けるため、努力して勝負することから逃げる。人に配慮してもらうために、不幸な事柄をアピールする。

本書では、こういった心理を解説しています。薄々は自分でもわかっていますが、これらは自分にもあてはまります。自分の口実の裏に、逃げまくっている真の目的が隠れているわけです。

この隠れた目的をあぶり出し、ライフスタイルを変えれば、事態は改善します。ライフスタイルを変えるには勇気が必要で、自分に価値があると思えれば勇気が出ます。自分に価値があると思えるのは、他者に貢献している実感があるときです。他者に貢献している感覚は、自分の課題に専念し、他者を勇気づけることで得られます。

課題の分離、他者に承認を求めないこと、「いま、ここ」だけを大切にすることといった概念は、私には納得できます。結局、勇気ですか。「いま、ここ」で勇気をもち、人生のタスクに立ち向かうかが問われているわけです。一瞬、一瞬、自分が選んでいるのです。

苦しいときは、「いま、ここ」で自分の課題に集中すること。そして、(思い込みでもいいですが)自分は他者の役に立っており、自分にも価値があると感じること。確かに、これで少し楽になれます。アドラー心理学的な生き方ができるようになるには、長い時間がかかるそうです。「いま、ここ」で勇気を持って真剣に生きる、うん、怠けたくなったら思い出そう。
(書評2015/09/27)

「20代のための「キャリア」と「仕事」入門」 塩野誠(著)

 

著者の塩野誠氏の「リアルスタートアップ」は、以前に紹介しました。本書は学生や若手社会人におすすめします。この本には、将来の人生の可能性を広げてくれる知恵があります。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

就活前の学生。
就活中の学生。
働き始めた若者。

 

要約と注目ポイント

本書の目的は、経済状況の変化や社会の多様化をふまえ、幸せに働いて生きるために知っておくべき基本を若者に伝えることである。

仕事とは

キャリアを考えるとは、ご飯を食べていくために人生の各段階で、どんな仕事をしてどれだけお金を稼ぐのかを考えることだ。

自分の仕事に価値や技術はあるか、誰かがどれだけ自分にお金を払ってくれるかは常に意識する。未来は不確実で思った通りにはいかないが、将来を考えて準備はしておく。

自分がすることに価値はあるのか、人の役に立ちお金を払ってもらえるのかを考えるのは基本です。

キャリアプラン

体力面で、あるいは結婚・子育て・介護などのライフイベントのため、仕事にフルタイムで本気で取り組める期間は意外と短い。

現在の会社は新人を育成する余裕がなくなってきている。やりたい仕事ができるよう、自分で準備をして選択肢を広げよう。

若いうちは失敗のコストが低いので失敗するべき。加えて少しの成功体験と、自分ひとりでゼロから最後までやり遂げた経験を持とう。

20代は仕事への投資の時期で、好きだとかやりたいとか続けられるとか勉強になるなどの要素で仕事を選べ。そこで経験や技術や人脈を積み重ねたことが、30代後半以降の収穫(報酬)につながる。

若いときに無茶苦茶がんばった方が、あとが楽になるのは事実です。(ブラック企業とか過労死は除きますが。)

自分に合う仕事、やりたい仕事

学生だと相手の警戒心もないので、偉い人や気になる人も割と会ってくれる。ガンガン会いに行ったり質問したりしてみる。

就職前にバイトやインターンで会社の中をのぞいてみるのもよい。

これから盛り上がる業界が分かるかは、社会への好奇心を持っているかどうか、自分で調べて行動できるかによる。

好奇心や積極性は大切です。

キャリアアップ

ビジネスでの「英語ができる」の定義は、海外で英語で交渉して自分のやりたいことが実行できる、である。日常業務なら定型的な言葉やメールを利用すれば何とかなる。

現在の転職市場で一番高く売れるのは、海外で資本提携や事業提携などをまとめられる人。

海外(留学)で得る経験の価値は、日本との差異や驚きに出会うことにある。語学だけなら日本でも学習できる。

自分に何のとりえもないと本当に思うのなら、英語や簿記など必要性のあるスキルを勉強せよ。現在の日本にはハングリーに努力する人は少ないので、それだけでひとつの強みができる。

新卒で大企業に入るとビジネスマナーは身につく。年を取ればやってきた仕事の内容と実績が重要。

今の日本だと、ハングリーさは武器になると思います。

人の役に立つ仕事、やりがいのある仕事

NPOやNGOでなく一般企業でも世の中の役に立っている。NPOやNGOは一般企業以上にマネジメントが難しいと覚悟すべし。

自分が送りたい生活を冷静に考えて、必要額よりちょっと多く稼げれば、まあ幸せと言える。

エリートとは本来、才能や家柄や環境に恵まれていることを自覚した者が、高貴な者の義務として自主的に公益に尽くそうと行動する人のことである。

社会人の基礎力、マナー、常識

一緒に仕事をしてこそ本物の人脈がつくれる。信用をなくさないように。

ロジカルシンキングは習慣とすればよい。最初に結論、次に自分の立場のイエスかノーかを明確にし、理由を述べる。問題設定は適切に。

MBAとは、仕事において経営の論点として考える目次を頭の中につくるためのもの。

会社が日常的に違法行為を行っている。職場環境が悪く、肉体的・精神的に危険である。このような場合は早く辞めて逃げろ。

プロフェッショナルとは、その仕事については自分が一番考え抜いていると思える人。

就職と転職では

退職は円満退社で。転職回数は少ない方が無難。転職時は安めの給与で入社して、評価されて給与が上がる方が快適。

採用面接では社会常識を守り、自分が所属する組織の悪口は言わない。見た目にも最低限の配慮をしよう。面接では、結論を先に理由を後から簡潔に。何について話すのか、頭出ししてから話そう。

ケースインタビューでは、面接官は思考プロセスを見る。合理的な前提を立てられるか、論理構成はあるか、優先順位をつけられるか、数式が成り立っているか。

自分でビジネスをつくり出す能力を持っていれば食べていける。

約束を守り、責任を果たし続けると、信用も得られます。

 

書評

著者は就活前や就活中の学生、若手社会人に向けて書いたと述べています。読んでみて、確かに私も就活前に本書の内容を知っておけばなあ、と感じました。働くことに実感が持てない学生は、読んだ方がいい本です。

たいした仕事をしてこなかった私でも、20代にこういうところを意識して働いていれば、もう少しキャリアを上積みできたような気がします。まあそれでも一生懸命生きてきたし、人生に後悔はしていませんが。

しがないおっさんの私もうなずくところが多かったのですが、特に若い人に知ってもらいたいことはふたつ。

ひとつは、仕事にフルパワーでのめりこめる期間は結構短いということです。家庭の事情みたいなことも増えますので。それで、失敗も許される若いうちに必死で働くと、あとから効いてくるキャリアが積めます。

ふたつめは、若い人(学生)には偉い人や忙しい人も結構面白がって会ってくれるということです。
ビジネスパーソンの常識としてはアホ丸出しだけど、潜在能力はありそうで、素直で目がキラキラしていて活動的な若い人が、自分を指名して会いたいと言ってくると、話してもいいかなと思う社会人は多いのでは。

そんなわけで学生にはおすすめの本です。私も若者とは関係なくがんばろう。
(書評2013/12/28)

「君がオヤジになる前に」 堀江貴文(著)

 

堀江貴文氏が若者に気合いを入れる、自己啓発系の1冊です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

閉塞感をもっている人。
将来の自分に悩みや不安がある人。

 

要約と注目ポイント

オヤジとは、あらゆることについて、より良き方向へ改善しようと行動や努力することを放棄した者、と定義する。

本書では、25才から38才までの仮想のキャラクターを設定し、彼らと堀江氏との対話という形式で諸問題を考えている。最後に38才の堀江氏の自問自答もある。

堀江貴文のメッセージ

思考し続けろ。

結婚や転職や起業程度のことは、人生の転機にはならない。
起業するなら週末起業などではなく、完全に独立しろ。

仕事をやるならとことん没頭しろ。何かに思い切りハマれ。

とにかくいろいろなことに興味を持て。

モラルを無条件で受け入れず、自分は何をしたいのか?どう生きたいのか?を真剣に考えろ。

モテたい気持ちをなくすな。
(好きな人に振り向いてもらおうという欲が、思考や努力を生む。)

アイディアよりそれを体系化する実行力が大事。

情報を多く持て。

皮膚感覚で嫌なものは絶対に断れ。

安住の場所をつくらず、命を捨てず、世界最高峰を目指す。
これが最も充実した人生だ、と考える。

・福本伸行氏との対談。

思考を放棄し、すべてのことをあきらめて努力も行動もしなくなった状態を、オヤジと呼んでいます。確かに自分も若かったころ、そのようなオヤジを嫌悪していたはず。オヤジになりかけている今、必死さを取り戻したいです。

 

書評

なかなか熱いメッセージにあふれる本です。

前に読んだ「金持ちになる方法はあるけれど、金持ちになって君はどうするの?」には多くのビジネスモデルが紹介されていたので、私自身は「金持ちに~」の方が読んで勉強にはなりました。しかし自分に気合を入れるには良い本だと思います。

本書の内容を簡潔に言えば、情報を多く受け入れ思考をし続けろ、ということになります。ほかの主張も合わせると、堀江氏の合理性を尊ぶ姿勢がうかがえます。

社会の既存の行動規範にどっぷり漬かっている人は、危機感を覚えるために本書を読むと良いかもしれません。
(書評2013/10/05)

「金持ちになる方法はあるけれど、金持ちになって君はどうするの?」 堀江貴文(著)

 

本書では堀江貴文氏が、さまざまなビジネスモデルを惜しげもなく披露しています。このような考え方がビジネスでは必要だ、と勉強できる本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

起業や独立を志向する人。
新しいビジネスを創りたいと考えている人。
現状を変えたいと思っている人。
堀江氏に興味がある人。

 

要約と注目ポイント

メルマガをもとに再構成しているために、雑誌の連載をまとめたような本です。コラムをたくさん集めたような本です。

ただし、個々の要素はバラバラですが、全体は堀江氏の思想で貫かれているので、本としては統一性があると思います。

堀江氏の考えるビジネスモデルを、ひとつひとつ紹介。約70件。

読者(メルマガ購読者?)からの質問と、堀江氏の回答。約160件。

著名人(西村博之氏、夏野剛氏、藤沢数希氏、船曳建夫氏)の寄稿。最後に本人のあとがき。

時間をかけずに、さっさと読めます。内容を自分であらためて考えれば、勉強になるかもしれません。

 

書評

想像していたより面白く読めました。おすすめ度は★5にしてありますけど。私が思っていた以上に、堀江氏は頭がよく、関心の幅が広く、行動力があり、努力をする人でした。ビジネスについては、勉強になりました。頭が下がります。

私が会社を辞めたりクビになったりして、肩書きのない裸で路上に放り出されたら、金を稼ぐのに苦労するでしょう。バイトはできると思いますが。

しかし、堀江氏は裸でも(身体ひとつと頭脳で)ビジネスを組み立てて金を稼ぐことができます。この点は本当に、単純に尊敬します。
(書評2013/08/10)

「サラリーマンの悩みのほとんどにはすでに学問的な「答え」が出ている」 西内啓(著)

 

サラリーマンのありがちな悩みに対し、さくっと回答をくれる本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

そのままですが、会社員で仕事・生活・人生に悩みがあって、何か新しい視点を持ちたいという人。

 

要約と注目ポイント

給料が上がらないという悩み

今までと同じ方法でさらにがんばっても、生産性は上がらない(収穫逓減の法則)。会社は常に、新しく競争の少ない、効率的な事業を探さなければならない。

そのために個人が求められることは次の2つである。知識や知恵やアイデアを持ち周囲と共有すること、知識やアイデアが行き交う場に留まり続けること。

末端のサラリーマンだと、仕事をいかに効率的にこなすかが大切でしょう。立場が上になってくると、アイデアや知識を使ったり、人を上手く回すことが求められます。

お金が貯まらないという悩み

人間は合理的に行動しない(行動経済学)。何にいくら払っているか、正確に認識して節約しよう。

継続的に、自動引き落としなどで貯金し、インデックス運用で分散投資しよう。

自分の人的資本にも投資すべし。

お金や投資については、当ブログのその方面の書評をお読みください。山崎元氏などの本がおすすめです。

出世できないという悩み

仕事が義務ではなく、天職となったときが成功する可能性が高い。

意義や喜びを感じることができ、自分が得意なことが天職となる。自分の強みを理解(ポジティブ心理学)すれば、天職を見つけやすい。

適度な難易度で仕事の過程に集中できる「フロー」の状態になれば、才能が活かせる。

お金や地位や面子のためではなく、充実感ややりがいを感じるような仕事だと、天職の候補です。

職場の人間関係がうまくいかないという悩み

相手のタイプや状況によって、仕事のやり方を適切に合わせよう。部下が必要とするものを提供し、良い仕事ができるように誘導するのが良いリーダーシップ。

ビジネスでチームが機能するには、チーム内で9つの異なるタイプの役割を果たす人員が必要。チームが高いパフォーマンスを示すには、チームの構成員をそれぞれ9つのうち得意なポジションに充てること。

自分の努力によって向上させられるのは専門性。

相手の行動を変えさせるというのは、なかなか難しいことです。

仕事の成果が出ないという悩み

毎日繰り返す作業で成果が上がらないとき必要なのはカイゼン、定常作業でなければ必要なのはプロジェクトマネジメント。

プロジェクトマネジメントは最小の努力で成果を上げるための知恵である。

プロジェクトマネジメントでは、期限と予算と目標が設定される。作業のプロセスと所要時間の見積もりは、正確に評価しておく。

必要なのはカイゼンか、プロジェクトマネジメントか。見分けることが大切です。

仕事をがんばっても家庭がうまくいかないという悩み

(夫婦では)相手の人格を尊重する。相手の話をよく聞く、たわいもない話をする。スキンシップをとる。相手へ感謝や愛情を伝える。ネガティブでなくポジティブな言葉を使う。

夫婦円満なら子どもの問題行動は少なくなる。

心理学的なアプローチです。

 

書評

まあ精神論でがんばっても上手くいかないときは、本書のように戦略的な行動を試してみるのも良いでしょう。これだけだと不十分かもしれませんが、日本人は大局に立った行動が苦手らしいですので。

私は社会思想には詳しくないですが、全般的に、アメリカ的なプラグマティズム風な思考と感じました。

要約には書いていませんが、ポジティブ心理学のところで、自分の強みを知るVIAテストというものが紹介されています。

これは無料でできるので、私もやってみたら、強みの1位が「向学心」、2位「審美眼」、3位「公正さ」となりました。

本書に従って、私の強みを書き下すと、「私の天職は、個人的な感情で他の人たちに偏った判断を下すことなく、ありとあらゆる美しいものに感動し、新しいことを積極的に学ぶこと」です。

どんな仕事?
(書評2013/06/02)