「臆病者のための億万長者入門」 橘玲(著)

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橘玲氏は文春新書で「臆病者の~」という著書を何冊か書かれています。タイトル的にも、本書は投資戦略の入門書という位置づけになると思います。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

投資、というか将来の人生設計(経済面)について考え始めた人。難易度は入門書と初級者向けの間ぐらいか。

 

要約

・金融(株式投資)は確率のゲームである。資産運用とは目先の金儲けではなく、人生における経済的リスクを管理することである。

お金持ちになるには、次の3つの方法の組み合わせしかない。
①収入を増やす。
②支出を減らす。
③資産を上手に運用する。

資産運用は部分でなく全体で考えること。
総資本 = 人的資本 + 金融資本
金融資本 = 金融資産 + 不動産 + 年金資産 + 相続資産など
労働者としてのスキルを高めたり、定年後も勤めて働く期間を延ばすことで、人的資本は大きくなる。金融資本は総合的に最適な形で運用する。最適な運用とは、各資産のバランスをとり、リスクは最小化しリターンを最大化し、かかるコストを最低にすることである。

金融商品は心理的な錯覚にだまされないよう、確率的に考えること。
生命保険は、最もコストが安く必要最低限なものを、必要な期間だけ契約する。医療保険は、公的健康保険制度で補えず不安があるときだけ利用する(勤労者が長期入院したときの所得保障ぐらいしか想定できない)。

資産運用で最も大切なのは、だまされないこと。
絶対に儲かる話はない。他人が自分のお金のことを真剣に考えてくれることはない。誰かが助けてくれることはない。自分で守ること。

株価は、将来の一株あたりの利益の総額を、現在価値に換算したものである。
株式投資の益回り = 長期金利 + リスクプレミアム
市場全体の株価が長期的に見て高いか安いかは、PERから大まかに判断できる。

・株式市場は複雑系の世界なので、将来予測はできない。アクティブファンドよりインデックスファンドが優位である。世界経済はずっと成長してきたが、2000年代以降、経済成長が鈍化した可能性がある(株価の上昇率が低い)。以上より個人の投資戦略をまとめると、市場が暴落するのを待って、分散投資(世界株式インデックスファンドなど)で株価が回復するまでドルコスト平均法で買い続けろ

外貨の為替リスクは中立的である。
購買力平価説によれば、インフレなら通貨は下落しデフレなら通貨は上昇する。金利平衡説によれば、高金利の通貨は下落し低金利の通貨は上昇する。長期的に見れば、通貨に有利不利はない。(中期的には金利が上がれば通貨は上がるので、歪みが生じることもある。)国内の資産にこだわらず、海外に分散投資すべきだ。

・市場が十分に効率的ならば、マイホームは所有でも賃貸でも損得は変わらない。マイホームを借金して買うことは、レバレッジをかけて不動産投資をすることだと自覚すること。日本は将来的には空き家が増えることを認識すべき。不動産市場には情報の非対称性があり、インサイダーマーケットに近いので素人は損をする。(株式市場はオープンマーケットに近い。)

将来はほとんど予測できないが、人口構成と年金財政は予測しやすい。国民年金は自発的に納付することと、収支が明らかなので比較的有利な金融商品である。国民年金のツケは厚生年金が払っている。(厚生年金は強制加入で、保険料率は上がり、利回りは実質マイナス。)

・日本は社会保障費と国債の費用で歳出の5割を占めるが、その利益を享受しているのも国民である。国民が既得権益を手放すような画期的な政策はとれないので、増税と社会保障水準の切り下げが徐々に進むだろう

・アベノミクスは、実質金利をマイナスにしようという政策である。マイルドなインフレをめざす金融政策の結末は、どうなるかわからない。急激なインフレと円安が起こる可能性はないわけではない。個人でリスクをヘッジすることを考えておくべきだ。

現在の日本人は、資産を分散できていない。マイホームという不動産にほとんど集中投資している。また、資産はほぼ円に限られている。日本で働き、円で給与を受け取る以上、人的資本も円で換算される。

アベノミクスが失敗したときのリスクヘッジ。
①お金は普通預金で運用する。
②金利が上昇し円安が進みだしたら、運用を普通預金から変更する。
国債ベアファンドを買う。外貨預金にする。物価連動国債を買う。
「日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル」に詳細がある。)

 

書評

人生において経済的に困窮しないように金融リテラシーを身につけよう、というのが本書の趣旨です。難易度はやさしめですが、用語の説明などはありません。資産運用を考え始めた人が、基本的な入門書を何冊か読んだ後に読むとよいでしょう。若干変化球的な内容です。

私にとっては聞いたことがある話が多かったので、橘玲氏の過去の著作やコラムを読んでいる人には本書は必要ないかと思います。今までの総まとめのような本です。新規に加わっているのは、世界経済がこれから長期に停滞した場合の対策ぐらいです。
(書評2014/06/25)

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