「リアルスタートアップ」 塩野誠(著)

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週刊東洋経済のコラムをネットで読んで、いいことを書くなあと思っていました。起業についての著作があるので読みました。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

就職前の学生、閉塞感を覚える若者や起業を考える若者。

 

要約

・労働人口の減少、高齢化、増え続ける莫大な国家債務と、日本は長期的な衰退トレンドにある。このような日本で自分と家族、仲間が生きていくにはどうすべきか?

・著者自身の略歴。国や企業が守ってくれない時代になったが、ビジネスをつくり出せる能力があれば生きていける

・自分の勤務先および自分自身について
①現在の強み、②現在のリスク、③将来のチャンス、④将来のリスク
を考えてみる。

・仕事をするときはその仕事の
①企業の戦略上の意義、②付加価値をつけるにはどうするか、③ゴールとその達成期限、④達成すると身につくスキル、⑤将来応用できる場面
を考えてみる。

「誰かの何かを解決すること」がビジネスになる。

ビジネスのアイディアについて。存在や価値を再定義してみる。
オズボーンのチェックリスト(既存の製品やサービスに対して)
他の使い道は?他に適合できないか?色や形を変えたら?顧客を変えたら?範囲を変えたら?小さくしたら?場所や順番を置き換えたら?何かを組み合わせたら?

提供する価値でお客さんはお金を払ってくれるのかを考える。

・事業計画
①誰(チーム)がやるのか?最初のチームメンバーはとても重要。創業者チームの各人の経験、役割分担、必要な人材を考える。
②どんな問題を解決しようとしているのか?まず解決したい問題を考え、それを解決する仕組みを考える。提供する価値はどうすれば最大化できるか?
「誰」の何を解決するのか?(「誰」はターゲット市場となる。)政治、経済、技術などの影響で市場はどのように変化するか?

・ビジネスモデル
真の顧客は誰か考える。提供する価値にいくらと価格設定するか。ベンチャーは1つのビジネスに集中し、素早くチューニングせよ。

・売上高(=顧客数×単価×購入頻度)-費用(=固定費+変動費 )=利益
数字を動かしてビジネスが成立するか検討する。

・市場参入戦略
誰にどこで(誰が)売るのかを考える。どうやって製品やサービスを認知させるか、ソーシャルメディアの使い方。

・競合
直接の競合のほか、消費者の財布や時間を奪い合う広い競合も考える。どうやって競合に勝つのか?

ビジネスモデルのリスクは何か?法律や規制は?

・資金調達について。

・ベンチャーキャピタルについて
どの業界・領域に投資?どのフェーズで投資?サポートはあるか?投資額、ファンドの規模、ファンドの償還期限、既存投資先企業はどこか、担当者はどうか、などを確認する。

・予想の財務三表と事業計画書の作り方。予想キャッシュフローを割り引いて現在の企業価値を算出する。資本政策について。

・社内で新規事業を立ち上げるときは、経営者のビジョンとプロジェクトの責任者が必要。経営者のビジョンがないと社内の調整がつかず失敗しやすい。
プロジェクトメンバーの内発的な動機付けをして、評価軸はチーム重視で設定する。自社の強みを理解し、アイディア出しは漏れのないようなプロセスをとる。

・起業に失敗した場合はどうなるのか?株主には出資分を返済する必要はないが、借入の連帯保証した部分は借金が残る。ベンチャーは潰れることの方が多いが、潰れる前後で起きることについて。また起業がうまくいった場合はどうなるのか?

・人生やりたいことがあったら結局やるしかない。最後に必要なのは跳ぶ勇気だ。ただし跳んだ後はリアリズムに徹すること。

 

書評

大学生や若手社会人あたりを対象に書かれた本です。スタートアップが書名になっていますが、内容は自己啓発が3割、起業の考え方が7割位の比重です。起業するにせよしないにせよ、これから若者は国や会社に人生をまかせることができないので、生きていく方法を考えようというのが本書のテーマです。

筆者はこれからの時代で生き残るために必要なのは、自分でビジネスをつくり出せる力だと考えています。ビジネスをつくり出す能力を持つ重要性について説き、ビジネスを成立させるための思考や行動について解説しています。その力が身に付けば、起業しても会社で働いても最終的には何とか人生やっていけるだろう、というのが著者の立場です。

くだけた文章の本ですが、起業の基礎テキストとして読んでも無駄にはならないと思います。また起業とは離れますが、会社に対して少し冷めた客観的な視点を持たせる効果があるので、就活前の学生にもおすすめだと感じました。

本書はかなり独特のゆるい軽い文体なので、読者を選ぶ可能性はあります。私はもともと筆者のコラムを読んでいたので、抵抗なく読めました。表面上は軽い印象を与えますが、日本の若者が将来それぞれの人生を全うできますように、という祈りが裏側に窺える1冊です。
(書評2013/12/06)

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