「現役経営者が教える ベンチャーファイナンス実践講義」 水永政志(著)

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著者はジャスダック上場企業であるスター・マイカ株式会社の創業者であり、大学で講義もされています。プロフェッショナルです。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

起業したい人でファイナンスの基本を学びたい人。

 

要約

・著者は過去に3社のベンチャーを起業した。その体験から学んだことは起業前に知っておいた方がよいことも多く、起業をめざす人に伝えたい。

・1社目の経験。財務や経理を知るべき(資金繰りに困る)。資金調達をしないと会社は大きくは成長しない。企業価値や法律を知るべき。

・2社目の経験。ビジネスモデルに絶対はない。常に最悪の事態を想定せよ。

・3社を通じての経験。起業にはサラリーマンには味わえない無限の可能性があり、本当に楽しい。挑戦し失敗を重ねても学び続けることが大切だ。失敗に学んで失敗しない方法を選び続けよう。

・ベンチャー企業とは、急速な成長を積極的・冒険的な精神でめざす企業である。従来ある中小企業との違いは、所有と経営の分離を考えるかどうか。

 

ビジネスモデル

・ビジネスモデルでは、顧客、価値、経営資源の3要素が重要。アイデアよりどのように実行するかが大切だ。

・既存のビジネスモデルのバリューチェーンを、異なる視点で再構築してみる。レイヤーマスター、オーケストレーター、マーケットメイカー、パーソナルエージェント。

・競争優位を築く。
コストリーダーシップ戦略(規模の経済・経験曲線・範囲の経済)、差別化戦略、集中戦略。

・SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)。

・プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(ポートフォリオの最適化)。市場成長率と相対的マーケットシェアの2軸で分析。

・合理的な判断をする。サンクコストの呪縛を避ける、機会費用を意識する、フレーミング効果やアンカリングに気をつける。

・ビジネスモデルには再現性がなければならない。

 

株式会社

・株式会社についての解説。
法人格をもつ。出資者は有限責任。株主と取締役と会社代表者の関係。会社設立のプロセス。黒字倒産の原因。資本金。議決権。

 

組織

・企業目的を遂行するために、シンプルで意思疏通が円滑にできる組織が好ましい。
組織構造の要素には、専門化・部門化・管理の範囲・権限の範囲・公式化がある。これらの要素が、ピラミッド組織やフラット組織および自律型組織をつくる。

・組織形態の類型
機能別組織、事業部制組織、カンパニー制と持株会社制、マトリクス組織。

・組織停滞の原因と、組織活性化のための社内制度や人事評価制度について。

 

資金調達

・内部留保のみでは成長は遅い。資金調達の方法として負債(デット)と資本(エクイティ)を考える。

・負債には、不動産担保融資やプロジェクトファイナンスでの銀行からの借り入れがある。信用保証協会を通じた、行政機関や政府系金融機関の融資を受けることもある。

・社長の個人保証について。連帯保証と根保証。

・銀行について。コベナンツ。

・その他のデットファイナンスについて。手形の割引、社債、新株予約権付社債。

・ベンチャー企業はエクイティファイナンスを多く活用する。アーリーステージでのエンジェル、レイターステージでのベンチャーキャピタルからの投資など。

・ベンチャーキャピタルについて。投資を受けるプロセス。

・ダイリューション(希薄化)について。株主割当増資、第三者割当増資、適正な株価。

・種類株式について。優先株、転換予約権付優先株式。

・資本政策では必要資金の確保と経営権の確保を両立させる。

 

コーポレートガバナンス

・コーポレートガバナンスは、取締役が株主のために働くことを担保する仕組みである。
株主総会、取締役会、監査役、代表取締役、執行役員、ステークホルダー、敵対的買収、買収防衛策について。

 

株式上場

・上場のメリット
流動性が高まり、株の価値が上がる。知名度、信用度が上がる。人材採用がやりやすくなる。社債が発行しやすくなる。

・会社は株主に対し情報公開の義務を負っている。上場後はさらに詳細に報告する義務がある。インサイダー取引は極めて重い罪である。

・IPOは、第一段階として証券会社が引き受けて株式が公開され、第二段階として上場して取引所で株式が売買される。
公募では新株を発行するので会社は事業資金を得られるが、売り出しでは創業者などが発行済みの株式を売るので会社にはお金は入らない。

・ブックビルディング方式について。上場適格要件について。

 

出口戦略

・企業はゴーイングコンサーン(永続的な存在)だが、創業者の能力には期限がある。創業者は自身の能力が低下し始めたことを自覚できないと認識し、経営権の委譲について考えておくべき。

・創業者が適切な後継者に経営を委ね、保有する株式も市中で(あるいは事業提携先に)売却し、または新経営陣にMBOさせることで、新経営陣に緊張感を持たせるという出口戦略が望ましい。

 

企業価値

・企業価値 = 借入金 + 株主価値(時価総額)

・会社の価値
継続価値 = 企業が生み出すキャッシュフローの現在価値の総額
解散価値 = 企業の資産価値 – 負債の価値

・キャッシュフローの現在価値、正味現在価値、内部収益率、永久定額年金、割増永久年金、EBITDA、株主価値、株主資本コスト、加重平均資本コストについて。

 

書評

書名から起業にまつわるファイナンスの技術的な解説の本かと思って読みましたが、起業全般の講義でした。数式も最後の附録まで出てきません。ファイナンスが中心ですが、自身の起業体験やビジネスモデル、会社組織のあり方なども説明されています。

大学で講義されていることもあり、基本的な事項を実践的に解説しているという印象です。ファイナンスも含めて、起業や経営の基本を学ぶ本と思われます。

著者は3回起業してさまざまな経験をしているので、机上の空論ではないテキストとして学べそうです。
(書評2013/11/24)

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