「起業準備」カテゴリーアーカイブ

「個人事業と株式会社のメリット・デメリットがぜんぶわかる本」 関根俊輔(著)

 

独立するときは、個人事業にするか会社を設立するか迷います。堅実に小さく始めたいなら個人事業。自信があり最初から大きくいくなら会社設立。個人事業と会社設立のメリット・デメリットを、しっかりまとめています。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

起業したい人。

 

要約と注目ポイント

独立の前に、起業の動機、会社を辞めるメリット・デメリット、準備の状況などをよく考えること。可能なら、会社勤めをしながら副業で始めてみる。

独立前の準備

事業計画を考える。
事業の概要、起業の動機、経営理念、市場分析、ビジネスプラン、中長期の展望。

資金計画を考える。
毎月の生活費、事業の固定費、事業の変動費を算出する。そこから損益分岐点売上高を計算する。必要な開業資金を計算する。

個人事業について

名称は屋号。

個人事業の場合、資金の出し入れに制約は少ない。

開業手続きは簡単で、費用はかからない。

交際費は無制限。自宅は業務用の面積分を経費にできる。

青色申告にすべし。決算や申告の作業は会社より楽。

事業内容を変更しやすい。廃業するのも簡単。

株式会社について

名称は商号。

会社の資本金は、私用では出し入れできない。

設立するのに事務手続きが多く、お金も25万円は必要。

交際費は600万円まで。自宅を社宅にすることも可能。社内規定をつくれば、出張手当や慶弔費も経費になる。

車、生命保険料、退職金などは会社の方が節税しやすい。

複式簿記が必須。決算では損益計算書と賃借対照表を提出し、納税期限は早い。

会社法に則って運営し、議事録を残すこと。事業の売買や継承がやりやすい。

個人事業主の税金、会社経営者の税金

個人事業主の税金

個人事業では、
事業所得 = 売上 ― 必要経費
となり、事業所得に個人の所得税や住民税がかかる。

個人事業では、家族に給与を払うと、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除を受けられない。

会社経営者の税金

会社では、
会社の利益 = 売上 ― 経費(役員報酬を含む)
となり、会社の利益に法人税がかかる。

役員報酬に個人の所得税や住民税がかかる。

給与所得控除の部分で、会社をつくると税金が少なくなる場合がある。

家族にも給与を払うと、税金が少なくなる。年収が多い人は、会社をつくって家族に給与を払うと効果的。

節税の知識

前々年の課税売上高が1000万円以下ならば、消費税の納税義務が免除される。個人事業から始めて会社をつくった方が、免税期間を長くできる場合がある。

会社は赤字でも、法人住民税を払う。個人事業は3年、会社は9年、赤字を繰り越せる。

事業用の不動産は会社で売買した方がよいが、マイホームは住宅ローンの優遇措置があるので個人で売買した方がよい。

経営セーフティ共済と小規模企業共済は、節税に使える。

個人事業と会社の比較

個人事業より会社の方が信用され、資金調達もしやすい。従業員の採用も会社が有利。出資や利益の配分、意思決定も会社の方が明確。

個人事業主は、国民健康保険と国民年金に加入。社長は、健康保険と厚生年金保険に入る。健康保険の方が負担は重いが、傷病手当金や出産手当金のメリットはある。

個人事業でも会社でも、従業員を雇ったら雇用保険と労災保険の加入義務がある。雇用保険に加入しないと、ほとんどの助成金は受けられない。

個人事業と会社設立の比較チェックリストつき。

個人事業を始めるには

届出と手続き、法人成りの解説。

会社をつくるには

会社の種類、定款の作成、登記、届出と手続きなどの解説。

個人事業と会社の基本知識がまとまっていて、勉強しやすいです。制度や法律はどんどん変更されるので、常に新しい情報をアップデートしておきたいです。

 

書評

図表が多く、説明の文章もわかりやすくて読みやすいです。ただ、はじめからきっちり解説していきます。

今まで税金に関心がなく、一度も確定申告をしたことがない、といった人は、やさしめの税金の本や起業の本を他にも読んだ方がよいかと思います。

類書に書かれているような基本事項は押さえてあるので、読んであらためて勉強になりました。個人事業と株式会社を比較する本ですが、起業したいとか副業を始めてみた、といった人にもお勧めできる本です。

ところで、税金や社会保険料は延滞しないように、借り入れをしてでも払うべきとコラムにありました。延滞税は14.6%で、免除の可能性もほとんどないとのことです。このゼロ金利の時代に恐ろしい。

別の本でも、社会保険料の重い負担に耐えられず、倒産する会社が多いと書かれていました。日本は財政が非常に悪化していますが、小手先の対策として社会保険料の負担をどんどん上げています。

会社にとっても、従業員の保険料を負担することはかなり重要な問題となっています。社員の年金とか健康保険とか。社会状況で税制などが変わってくるので、日頃から社会的関心は広く持っておくべきですね。
(書評2015/04/25)

「個人事業の帳簿のつけ方・節税のしかた」 平石共子(著)

 

個人事業主向けの経理の入門書です。帳簿のつけ方や申請書の書き方など、ていねいな説明があります。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

個人事業の経理(簿記)を学びたい人。帳簿のつけ方を学びたい人。

 

要約と注目ポイント

個人事業の経理の基本を説明。

帳簿類のつけ方の解説。

個人事業主の税金や確定申告、社会保険を解説

消費税について。

青色申告について。

給与計算と社会保険事務の説明。

経費について。

決算について。

確定申告と納税の説明。

個人事業で知っておくべき基礎知識を、しっかり説明します。

 

書評

普通です。イメージとしては、自動車運転免許の更新で受け取る講習用テキストといった感じです。基本事項をはじめから、真面目に解説しています。しっかり読めば、しっかり基本を勉強できます。

でも、読んでも特に楽しくはないです。悪い評価ではないのですが、まあ教科書なので楽しみにはなりません。帳簿、申請書、表などのサンプルが豊富なので参考になります。
(書評2015/01/04)

「経費で落ちるレシート・落ちないレシート」 梅田泰宏(著)

 

独立したら、何が経費で何が経費とならないのか、気になりますよね?実例盛りだくさんで、経費についてよくわかる解説書です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

個人事業主や小規模企業をやっていて、経費が気になる人。

 

要約と注目ポイント

経費とは?基本を解説

税務署に経費として認めてもらうには、領収書やレシートを保管しておくこと。そして、仕事のために使ったという根拠を、納税者側が立証すること。

領収書の要件は、
①宛名
②日付
③金額
④領収書の発行者の情報
少額なら宛名はなくても可。

領収書だけでなく、レシート、銀行の振込金受取書、クレジットカード支払い明細、ネット通販の取引確認メールや取引画面のプリントアウト、なども経費の根拠になる。

白紙の領収書に自分で書き込むのは絶対ダメ。誤記を自分で修正するのも、疑われるからやめよう。(減価償却を避けるため)1枚の領収書を2枚に分けるのも違法。

領収書は日付順に保管し、帳簿と対応できるようにしておく。口座も個人用と仕事用で分けるのが理想。細かい出費は自分が立て替えて、あとでまとめて清算してもいい。

領収書をもらえない支出の場合。(得意先の)祝儀不祝儀では、案内通知書や祝儀袋のコピーをとる。交通費は、利用明細と経路と金額を記載する。

個人事業主と会社について

会社のメリットは、
①信用が得られる
②個人とは取引しない相手とも取引できる
③家族の給与分が節税できる

会社のデメリットは、
①費用がかかる
②赤字でも法人住民税がかかる
③税務調査が入りやすくなる

最初は、会社より個人事業主で始めてみる方がよい。売上1000万円未満でも、クライアントに消費税は請求しよう。

確定申告や税務調査など

白色申告と青色申告について。収入が700~800万円を超えたフリーランスは、法人化を考えよう。

勘定科目について。

税務調査について。

税務調査でいちばん見られるのは、数字と生活実態の整合性。良い暮らしの割に年収が低すぎると、疑われる。節税はともかく、フリーランスの信用は収入や利益なのだから、しっかり稼ぐことを目標にしよう。

どこまで経費になる?その範囲

自宅兼事務所の家賃や光熱費、旅行、食事、スポーツクラブ、映画、観劇、ゴルフ、書籍、漫画、キャバクラは?

事業主と役員は、福利厚生費を使えない。仕事のための接待、打合せ、取材と言えるかどうか。按分比率をどう考えるか。

時間をかけずに読めて、すっと頭に入りやすい本です。もらった領収書やレシートの扱い方など、基本的な例を具体的に説明してくれます。個人事業主を始めた人には、わかりやすいのではないでしょうか。

 

書評

個人事業主や小規模企業向けの、経費に焦点を当てた易しい解説書です。対話形式で書かれた、サクサク読める本です。基本的な解説になりますが、実例を多く挙げていて参考になります。

まあ要点をひとことで言うと、根拠がはっきりしている仕事のために使った費用なら経費になる、ということです。自信を持って仕事のためと言える理由があり、かつ領収書や記録がしっかりしていればOKです。

ところで、税の解釈はある程度の幅があります。個々の税務署員や税理士によって考え方が少しずつ違う、と本書でも書かれています。

本書では、SOHOの場合、仕事で使う面積の比率分の家賃(50~60%程度まで)、電気代は60%程度まで、携帯や固定電話代は80%程度まで、水道とガス代は20~30%程度までは経費として認められるのでは、と述べています。

しかし、以前に読んだ「新版 フリーランス、個人事業、副業サラリーマンのための「個人か?会社か?」から申告・節税まで、「ソン・トク」の本音ぶっちゃけます。」では、SOHOの場合、仕事で使う面積比分の家賃の経費が例えば30%分なら、電話代や水道光熱費も30%が妥当ではないか、としています。さらに、20~30%ならほぼ問題ないが、40%以上なら合理的で常識的な理由を用意した方がよい、とも書かれています。

専門家でも多少のずれがあるので、節税の仕方やら経費の考え方といった本が、いつの時代も売られているのでしょう。ともあれ、自分で自分の仕事をよく見て、経費と言い切れる出費は何か考えるのがよさそうです。
(書評2014/12/23)

「これから始める人の簿記入門」 佐々木理恵(著)

 

簿記のとてもやさしい入門書です。簿記を学んで、お金の残高・借金・流れをつかみましょう。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

簿記の超初心者。

 

要約と注目ポイント

簿記とは

簿記を勉強する前に。

簿記は、お金の計算をすること。簿記でお金の流れがわかる。

家計簿は単式簿記、会社の経理は複式簿記。

複式簿記をつける目的は、財産と儲けを知るため。

複式簿記から、貸借対照表(財産)と損益計算書(儲け)という決算書がつくれる。

貸借対照表には資産、負債、純資産というグループがある。損益計算書には、費用、収益というグループがある。

さらに細かい区分の勘定科目がある。

取引が発生したら、帳簿に記入し仕訳する。

仕訳では、勘定科目と金額を左右の欄ひとつずつに書き込む。

簿記とは何か。簿記をつける目的から、大まかな記入の仕方までわかります。

貸借対照表

貸借対照表は、今の会社の財産をあらわす。

左の借方に、プラスの財産である資産を書く。右の貸方に、マイナスの財産である負債と、資産と負債の差である純資産を書く。

資産の勘定科目の説明。(現金、預金、売掛金、未収金、貸付金、繰越商品、建物、土地、備品、受取手形、有価証券、車両運搬具。)

負債の勘定科目の説明。(買掛金、未払金、借入金、支払手形、預り金、社債、退職給付引当金。)

純資産の勘定科目の説明。(資本金、資本準備金、利益準備金、繰越利益剰余金。)

賃借対照表がわかれば、資産と負債の理解も深まります。

損益計算書

損益計算書は、会社の儲けをあらわす。

左の借方に費用を、右の貸方に収益を書く。

収益と費用の差である当期純利益は、借方の費用の下に書く。当期純損失は、貸方の収益の下に書く。

収益の勘定科目の説明。(売上、受取利息、受取配当金、受取手数料、受取家賃。)

費用の勘定科目の説明。(仕入、給与、旅費交通費、接待交際費、通信費、租税公課、水道光熱費、支払手数料、支払利息、雑費、消耗品費、減価償却費。)

ビジネスには欠かせない損益計算書です。

仕訳

仕訳では、賃借対照表と損益計算書を思い出す。

資産が増えたら左の借方、負債と純資産が増えたら右の貸方に書く。費用が発生したら左の借方、収益が発生したら右の貸方に書く。

仕訳帳、総勘定元帳に記入する。

仕訳の実例。

実例があるので、仕訳の練習ができます。

決算書をつくる

毎日:仕訳帳に記録し、総勘定元帳に転記する。

毎月:試算表を作成。

決算:精算表を作成し、決算整理を行い、決算書を作成する。

決算書作成の流れがわかります。

 

書評

すごく易しいです。でも説明もしっかりしています。おかげで、簿記のイメージはおおよそつかめました。

仕訳のときは貸借対照表や損益計算書を思い出して書く、という解説が個人的にはかなりわかりやすく役立ちました。例えば資産にあたる勘定科目がプラスのときは、左の借方に書いて仕訳をするというように。

あと何冊か簿記の入門書を読んで、会計ソフトを買えば、自分でもそこそこ処理できそうな気がしてきました。勉強になりました。
(書評2014/12/20)

「新版 フリーランス、個人事業、副業サラリーマンのための「個人か?会社か?」から申告・節税まで、「ソン・トク」の本音ぶっちゃけます。」 岩松正記(著)

税金の現実について、税理士がぶっちゃけます。フリーランスだけでなく、サラリーマンにも役立ちます。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

対象読者層

フリーランス、起業、副業に関係する人。また、増税時代のサラリーマン。

要約

会社設立のメリット。
①節税になる。
②信用が得られる。
③見栄が張れる。

会社設立のデメリット。
①書類の手間がかかる。
②設立時および維持に事務処理コストがかかる。
③設立・維持・清算に税金がかかる。
④社会保険料が高い。

税の基本。
事業所得 = 総収入金額 - 必要経費
課税所得 = 事業所得 - 所得控除
所得税 = 課税所得 × 税率
住民税 = 所得割 + 均等割
(所得割は課税所得に一定率をかける。均等割は一定額。)

給与所得控除について。
会社をつくると、給与所得控除の分だけ課税所得が減る。年収別での税額の例。年収400万円を超えたら、法人設立を考えてみる。

経費について。
経費は事業に必要なものへの費用。理由が説明できるようにする。家賃、光熱費、ガソリン代、消耗品費、会議の飲食代などは、仕事の範囲内で経費になる。会社の有利な節税手段として、出張日当を払う、9年間赤字を繰り越す、など。

法人化で信用を得る。
個人より法人の方が信用を得やすく、取引や融資、助成金の獲得などで有利。ただしあくまでも事業で利益を出すことが最優先、と考える。

決算期について。

法人住民税について。

所得控除について。
小規模企業共済、国民年金基金、確定拠出年金、経営セーフティ共済などを利用する。

減価償却について。

消費税について。

確定申告、白色申告、青色申告について。

サラリーマンの副業について。
副業の所得は、給与と合算して納税額を計算する。

税務調査について。

税理士とのつきあい方。

書評

個人事業のやさしい解説ですが、主に税金の話です。質問と答えの対話形式なのでとっつきやすく、どんどん読み進められます。会社が税金の処理をしてくれるサラリーマンにとっても、税金を学ぶはじめの一歩になります。本書はぶっちゃける本なので、教科書的な本と合わせて読むと、知識として漏れがないかと思います。

個人事業や税金について勉強する最初の段階で、読むのに適した1冊と言えるかと思います。このあたりを出発点に、自分なりに勉強と試行錯誤を積み重ねていく必要がありそうです。考えそうなこと(社用車を自分で使う、自宅を事務所にする、家族に給与を払う、出張日当を払う、生命保険料で節税など)はたいてい解説されているので、参考になります。

著者もあとがきで書かれていますが、税金のことは実践しないと身につかないところがあります。私も2回ほど自分で確定申告をして、ようやく税金の仕組みが見えてきた感じです。著者も言われるように、まずはしっかり稼ぎ、そして税金のこともよく調べて専門家に相談し、納税の義務を果たしつつ節税するというのが望ましいと思います。
(書評2014/12/17)

「オールカラー 個人事業の始め方」 中野裕哲(著)

 

タイトル通り、個人事業を始めるときに読む本です。テーマごとに見開き2ページでまとまっていて、とても読みやすいです。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

起業したい人。特に個人事業として始めたい人。

 

要約と注目ポイント

個人事業に関する基本事項を、見やすく、わかりやすく、まとめています。

個人事業主として開業する前に

個人事業とは。そのメリット、デメリット。

事業計画の基本。

資金計画の基本。

個人事業スタート時の手続き。必要となる届出書、申告書、申請書など。

個人事業主の届出・社会保険・経費・税金など基本事項を解説

事業運営のポイント。
従業員の雇用、保険、取引書類や契約書の作成、マーケティングなど。

経理のポイント。
簿記、帳簿類、経費など。

個人事業に関わる税金。
所得税、住民税、事業税、消費税、償却資産税など。決算書の作成と確定申告など。

個人事業の基本知識が、すっきり頭に入りやすいです。

 

書評

特徴があるわけではないですが、わかりやすい本です。個人でビジネスを始める前に読むとよいです。個人事業に関する基礎知識を習得できるテキストです。ビジネスにこのような知識は当然必要なので、勉強になります。個人事業の入門書的な位置付けになるかと思いました。
(書評2014/12/13)

「ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか」 ピーター・ティール(著)

 

気鋭の起業家が書いたベストセラーです。本書では、有力な起業手法である「リーン・スタートアップ」を痛烈に批判します。そして、起業家とは計画して革新を起こす存在だと説きます。起業論だけでなく、社会批評、自己啓発としても熱い1冊です。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

革新的事業を興したい人のほか、普通にビジネスに関心のある人。

 

要約

テクノロジーは奇跡を生み、より少ない資源でより多くの成果を可能にする。

成功例をコピーし、1からnへと向かうのは、水平的(拡張的)進歩である。新しい何かを行い、0から1へと向かうのは、垂直的(集中的)進歩である。グローバリゼーションは水平的進歩であり、テクノロジーは垂直的進歩である。

未来を左右するのはグローバリゼーションではなく、テクノロジーだ。

新しいテクノロジーを生み出すのは、スタートアップ(少人数のチーム)だ。

・1990年代の状況と、2000年のドットコム・バブル崩壊から、スタートアップの4原則が常識となった
①壮大なビジョンではなく、段階的に少しずつ前進すること。
②起業においては、計画より試行錯誤を柔軟に繰り返し、無駄を小さくすること。
③既存顧客のいる市場で、成功しているライバルの製品を改良することから始めること。
④プロダクトに集中すること。バイラルな成長をするプロダクトをつくることに集中し、広告や営業に力を入れ過ぎない。
だが、このスタートアップの原則は誤りである。
正しくは、①大胆に賭け、②出来の悪い計画でも作り、③競争の厳しい市場には利益はないと考え、④販売をプロダクトと同様に重視する、である。
ドットコム・バブルの失敗に対し、間違った反省をした。その間違った反省は何かを見極め、新しい価値あるテクノロジーを創り出すにはどうするか、自分の頭で考えることが、次世代の企業を築く道だ。

・完全競争下では、企業は利益を得られない。イノベーションによりトップに立ち、市場を支配し独占すると、(独占)企業は最大の利益を得る。起業家は独占企業をめざせ(差別化のできないコモディティ・ビジネスを行ってはならない)。

独占企業は価値を創造し、企業内に取り込むことができる(収益率が高い)。完全競争下では企業はカネのことしか考えられないが、独占企業はカネ以外のこと(倫理や長期的展望)を考える余裕がある。独占企業はクリエイティブに新しい価値を生み出す限りにおいて、消費者に新しい選択を与え、社会をより良くし、進歩させる。独占は、企業を成功させる条件である。経済学者が競争を理想とするのは、学問上モデル化が容易であるために過ぎない。

・クリエイティブな独占企業は、新しい価値を生み出すし、会社(クリエイター)も利益を得る。競争環境下では、生き残るだけで精一杯で、誰も得をしない。競争を避ける方が良いのに、誰もが競争をするのは、競争というイデオロギーを刷り込まれているからである。あるいは、競争心が競争心を煽り、誰もが戦うようになるのかもしれない。本質を見て、大切なこと以外では競争を避けるべきだ。

・企業価値は、その企業が将来生み出すキャッシュフローの総和である。独占していないオールドエコノミーの低成長企業の企業価値は小さく、そのキャッシュフローは短期のものだ。独占している高成長テクノロジー企業の企業価値は大きく、そのキャッシュフローは長期(遠い未来)のものだ。テクノロジー企業の大きな企業価値を正当化するには、10年後に独占企業として存続していることが必要である。

・10年後に独占企業として存続しているか見極めるために、独占企業の特徴を挙げる。
①プロプライエタリ・テクノロジー。
製品やシステムの仕様、技術などを独占的に保持し、秘匿していること。2番手より10倍は優れていること。
②ネットワーク効果。
ユーザー規模が大きくなれること。ただし、ネットワークが小規模なときも初期ユーザーにとって価値があること。小さな市場から始めること。
③規模の経済。
規模拡大の可能性を、最初のデザインに組み込むこと。
④ブランディング。
強いブランドをつくること。ただし、ブランドより本質(プロダクト)が優先される。

独占を築くには。
小さい市場から始めて独占する。理想は、少数の特定ユーザーが集中していて、ライバルがほとんどいない市場を狙う。
規模を拡大する。ニッチ市場を創造し独占したら、関連する少し大きな市場に拡大する。
正しい順序で徐々に規模を拡大すること。
破壊しない。破壊は古い業界を意識することであり、創造に専念すべき。破壊は競争を招く。
終盤戦で勝つ。最重要なのは、将来キャッシュフローを生み出すこと。最初に参入することより、特定の市場で最後に大きく成長し、独占することが大切だ。

未来が明確で予測できると考えるなら、人々は将来の計画を立て実現させようとする。未来があいまいで偶然に左右されると考えるなら、人々は計画を立てず定石通りの選択肢を数多く集めようとする。未来について、捉え方(明確orあいまい)と認識(楽観or悲観)で4つのグループに分けられる。
あいまいな悲観主義:暗い未来を予想するが、どう対処してよいかわからない。現在のヨーロッパ。今を楽しむ行動しかとれない。投資額は小で貯蓄額は大。
明確な悲観主義:未来を予測できると考えるが、暗い未来を予測し、貯蓄に励む。現在の中国。先進国のキャッチアップで豊かになったが、先進国水準の豊かさには到達できないと中国人は考えている。投資額は大で貯蓄額は大。
明確な楽観主義:未来は予測できるし未来は明るい、と考える。自らの計画と努力で、未来はより良くなる、と信じている。1960年代までの欧米。投資額は大で貯蓄額は小。
あいまいな楽観主義:未来は今より良くなると考えるが、未来がどういう姿かは想像できない。未来に期待するが、具体的に未来の姿を設計する必要を感じず、そのため計画もしない。1982年以降のアメリカ。投資額は小で貯蓄額は小。

あいまいな楽観主義は、新しいものをつくらず既存のものをつくり直そうとする。どうすれば富が創造できるかわからないので、優秀な学生は、具体的な工学よりランダムな市場の金融へ向かう。未来がわからないので問題解決のために具体的な計画は持たず、政府は裁量支出より給付支出を多くする。現代の生物学(バイオテクノロジー)は、対象をあいまい(ランダム)なものとみなす。
政治哲学も20世紀(ジョン・ロールズとロバート・ノージック)はあいまいな楽観主義だ。ロールズは左派平等主義でノージックは右派リバタリアンだが、人間は他人と平和に共存できると信じながら、具体的なビジョンを持たずプロセスを重視する点で共通する。(ちなみに古代哲学者のプラトンとアリストテレスは明確な悲観主義、エピクロスとルクレティウスはあいまいな悲観主義、19世紀のヘーゲルやマルクスなどは明確な楽観主義。)

あいまいな楽観主義とは、計画なき進歩(ダーウィンの進化)である。新しい価値を創るには、0から1を生み出すには、大胆な計画が必要だ。スティーブ・ジョブズの最も偉大な業績は、(その美しい製品ではなく)明確で念入りな長期計画を実行するアップルという会社を築いたことだ。今こそデザイン(計画)を復活させるべきだ。起業とは、偶然ではなく計画によって人生(世界)をコントロールする試みなのだ。

我々は正規分布ではなく、べき乗則の世界に生きている。ベンチャーへの投資も、べき乗則に従う。大きく成功する可能性があるスタートアップだけに投資するのが、優れたベンチャーキャピタルだ。指数関数的に成長したベンチャー企業は、結果として民間雇用や国家経済に大きく貢献する。

・人生には選択があるので、すべての人は投資家である。だからすべての人は、べき乗則を意識すべきだ。べき乗則の世界では、ひとつのもの、ひとつのことが他のすべてに勝る。今は起業する人が多すぎるので、起業にこだわらなくてもいい。企業間の違いは、企業内の役割の違いよりはるかに大きい。重要なのは、「何をするか」だ。将来価値を持つと考えられる、自分の得意なことに集中せよ。

・世界には、定説(知るのが簡単)、隠れた真実(知るのが難しい)、謎(知ることが不可能)がある。原理主義者は定説と謎しか認めないが、原理主義者でない我々も、もはや社会には隠れた真実は残っていないと考えている
隠れた真実が残されていないと考える原因は、物理的フロンティアがなくなった以外に、①漸進主義、②リスク回避、③現状への満足、④フラット化(世界の誰かがすでにやっていると考える)、である。

・隠れた真実を見出すのは、ごく少数の人々だ。隠れた真実は、探さなければ見つからない。偉大な企業は、目の前にあるのに誰も気付いていない、隠れた真実を土台にする。隠れた真実の存在を信じて、探さなければならない。

・隠れた真実には、自然についてと人間についての2種類ある。人々があまり語ろうとしない、誰も見ていない場所に、人間についての隠れた真実がある可能性が高い。(例:学問として、物理学は重視されるが栄養学は重視されない。そのため栄養学の研究は、数十年停滞している。肥満は大きな社会問題である。栄養の分野は、科学でなく大手食品団体のロビー活動の影響が大きい。こういう分野に、隠れた真実はある。)隠れた真実を、少数の人々で共有せよ。(この人々は、偉大な企業の創業メンバーにあたる。)

企業にとって、創業時の土台がきわめて重要だ。共同創業者選び(相性)、企業統治の仕組み、社員全員が長期的に一致できる組織構造、などである。
スタートアップでは、
所有:創業者と社員と投資家
経営:マネージャー(創業者)と社員
統治:創業者と投資家からなる取締役会
となる。
取締役は少人数にすること。社員は毎日同じ場所で一緒に働かなければならない。社員はフルタイムで雇うか、雇わないかの2択である。CEOの報酬は低ければ低いほどよい。社員の給料は、固定給よりは仕事に対する現金ボーナスの方がよく、現金ボーナスよりはストックオプションの方がよい。会社の将来価値を向上させる方向にインセンティブが働く報酬にする。
起業の瞬間に正しいことを行えば、将来にわたって新しいものを創造し続ける企業をつくることができる。

同じ時間を過ごしたい人、一緒に働くことを心から楽しめる人を雇え。スタートアップの初期社員には、同じ考え方で同じタイプの人間を集めること。会社に固有の使命があること(ほかのどの会社にもできない大切なことを、なぜ君の会社ができるかを説明せよ)。君の会社に入ることが、素晴らしい仲間と独自の問題に取り組む、またとないチャンスであることを示せ。

各社員それぞれが仕事のひとつに責任を持つこと。社員が同じ仕事を競うと、社内で争いが起こる。役割をはっきりさせ、社内の平和を保つ。

最高のスタートアップは、外部の人が見逃している隠れた真実を正しく信奉した、強い仲間意識で結ばれた集団である。

営業はとても重要である。一流の営業は、セールスしていることに気付かれない。効果的に販売する方法も、創り出さなければならない。有効な販売チャネルがひとつも見つからなければ、そのビジネスは終わりだ。

ひとりの顧客から生涯に得る純利益の平均総額(CLV)が、ひとり当たりの新規顧客獲得費用の平均(CAC)を上回らなければならない。
コンプレックス・セールス(CACが1000万ドル規模):CEOが直接売り込む。スペースXのような会社。
個人セールス(CACが1万ドル規模):適正規模の営業チームが幅広い顧客層に売り込む。ボックスのような会社。
マーケティングと広告宣伝(CACが100ドル規模):一般大衆向けの低価格品。バイラルには広がらないが、営業マンを張り付けるほど単価は高くない。
バイラル・マーケティング(CACが1ドル規模):プロダクト自体が友人を呼び込みたくなる機能を持つ。フェイスブックやペイパル。バイラル成長する可能性のある市場の中の、一番重要なセグメントを最初に支配せよ。ペイパルは、イーベイのパワーセラー2万人を独占した。

・企業はプロダクトを売り込むだけでなく、経営者は企業そのものを、社員や投資家に売り込まなければならない。マスコミを味方につけた、優れた販売戦略やPR戦略は重要である。

機械(コンピュータ)は、人間を補完するものだ。人間が計画を立て、判断を下す。機械が大量のデータを処理する。グローバリゼーションは、労働力としての人間を交換可能にし、消費する資源を争うようにした。テクノロジーは、労働する人間を補完できるし、(わずかな電力以外は)資源を消費しない。人間にできることと機械にできることの融合が、偉業を生む。

まとめ(ビジネスに必要な7要素)。
①エンジニアリング:2番手より10倍優れたブレイクスルーとなる技術。
②タイミング:ビジネスを始める適切な時期。
③独占:小さな市場を独占できる。
④人材:正しいチーム作り。
⑤販売:プロダクトを届けられる方法。
⑥永続性:10~20年後も生き残れるポジショニング。
⑦隠れた真実:気付かれていない独自のチャンス。
失敗したアメリカのクリーンテクノロジー企業は、上の要素を全く満たしていなかった。(クリーンテクノロジー・バブルで終わった。)成功したテスラは、7要素を満たしていた。

・偉大な創業者は、極端な資質を持つと言われる。極端な資質を生まれ持ち、周囲の環境が極端な資質を強化し、周囲の人々が極端な資質を強調し、自分自身が戦略的に極端な資質を誇張する。企業には、創業者の極端な資質が必要である。創業者は、極端な資質を信じ込んで自分を見失ってはならない。

未来について。

 

書評

確かに面白い本です。知的興奮があると言えるでしょうか。テクノロジー系出身者の起業本なのですが、まずかなりビジネス色が強いと感じました。独占企業は批判を避けるため、市場の中のとるに足らない一社であるようにふるまい、競争で消耗している企業は、逆にまるで市場を独占している強豪のように自社を飾るなどと述べています。うっすらとは感じていたことですが、こうはっきり言葉にされると自分のような人間にも理解できます。消耗するコモディティ・ビジネスは避けて独占企業となれ、なんていう言葉はウォーレン・バフェット氏のようです。

と思っていたら、いきなり政治哲学などを論じ始めて(それもかなり真面目に)、びっくりしました。つまり、この世界でどう起業するかはどういう価値を創り出すかを考えることであり、その価値をどのように創り出すかには計画が必要となるが、現代のアメリカは計画を必要としない社会となっていて、なぜ計画を必要としない社会かという問いには思想が関係する、というわけです。

1982年以降、アメリカをあいまいな楽観主義が支配し、未来を予測しなくなったので計画を立てなくなった。そのため企業は投資せずお金を貯めこみ、お金の使い道がわからないので金融業界が栄えた、と著者は述べています。これは、日本が不景気なのは企業が設備投資せず利益を貯めこんでいるからだ、という議論に通じるところがあります。日本の企業も未来がわからず、どこに投資していいかわからないということでしょうか。投資額が小さく貯蓄額が大きいので、日本はあいまいな悲観主義となります。デフレとはあいまいな悲観主義なのか?

本文の始めあたりや日本語版序文からエリート臭が漂ってきますが、著者はあえて挑発的な記述をしているようです。ドットコム・バブル崩壊の反省から、失敗しないように小さくまとまる起業が多くなっています。これが著者には不満らしく、全く新しい価値の創造をめざすよう、本書で焚き付けています。

とはいえ、起業を全面的に勧めているわけでもありません。世界はべき乗則に従うので、勝ち目のない起業よりは、初期のグーグルに入社する方が良いと指摘します。とにかく頭の良い人が書いていて、読んで自分が疑問に思うようなことは、大体あとで説明があります。上でも触れましたが、私が社会の中で薄ぼんやりと感じていたようなことを、著者ははっきりと言葉で組み立てて説明してくれます。確かにこの通りだ、確かにこのような現実があって、こういう風に説明できる、と思う箇所がいくつも出てきます。こうした洞察の延長に、隠れた真実が探せるかもしれません。

最後にビジネスに必要な7要素がまとめてありますが、詳細は本文中で解説されています。ビジネスとして本当に大切な内容です。意表を突く記述も多い本ですが、ビジネス書としても読む価値のある内容です。

著者は、計画せず小さく試行錯誤を繰り返すリーン・スタートアップを批判します。これは、未来を予測しようとしないあいまいな楽観主義のためだ、と言います。そして、隠れた真実があると信じ、これを探して発見し、計画を立てて実現させろ、と主張します。

そう言われると、まあそういうものか、と私は思いました。ただ、ほとんどの人は平凡で未来が見通せず、隠れた真実を見つけて果敢に挑戦したわずかな人が、新しい価値を生み出す(世界を変えるというやつです)ということか、とも思いました。

結局、大多数の凡人は行き当たりばったりのリーン・スタートアップの世界で生き、ごくわずかのビジョナリーが計画に基づき大胆に実行し、指数関数的成功を収めているような気もします。ほとんどの企業は革新などとは無縁で、日々競争にさらされています。これらの企業は、リーン・スタートアップとかカイゼンのような方法で、わずかでも競争で優位に立てるように試みていると思います。ほとんどの人(労働者)も、おそらく新しい価値を生み出そうなどとは考えていないと感じます。

ほぼすべての人(組織)は、俯瞰的な視点を持つこともなく、本質的な「難しいこと」を考えもしません。多くの人が0から1の革新をめざすというのは、可能なのでしょうか?そもそも革命家が社会の多数派になるというのは、矛盾では?

いつの時代も、変革者は理解されず、変わり者で、天才とか悪人などと呼ばれ、孤高で、その真の姿は伝説の中に隠れてしまいます。世界を変える起業家も、変革者なのでした。しかし変革者は、我々と地続きの世界に生きています。あなたが世界を変える起業家である可能性も、ゼロではない。かも。しれない。
(書評2014/11/25)

「1万円起業 片手間で始めてじゅうぶんな収入を稼ぐ方法」 クリス・ギレボー(著)本田直之(監訳)

 

会社を辞めなくてもできる、主婦などが週に数時間かけるだけでもできる、それで年収500万円。というような書き出しだったので微妙な気持ちになりましたが、リスク低めでビジネスを始めるための本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

副業やマイクロビジネス(個人での事業)をやりたい人。

 

要約

・キャリア選択において、安全とリスクのポイントが変わってきた。マイクロビジネスにチャンスが生まれている。本書はその実例集だ。

 

起業まで

自分がやりたいように自由に生活しながら、お金を払ってもらえる価値あるものをつくりあげよう。

「1万円起業」の基本モデル。
①趣味や夢中になっていることが、ビジネスのもとになっている。
②超低コスト(100~1000ドル未満)で起業。
③利益が少なくとも年間5万ドル以上。
④特別なスキルは不要。
⑤自分ひとりで経営、もしくは従業員5人未満。

マイクロビジネスがうまくいく3つのルール。
①自分が好きなことや得意なことと、他人の興味が重なる部分を探す。その他人の興味は、喜んでお金を払うほど強いものであること。適切な情熱を適切な消費者に結びつける。
②自分の持つスキルを別の分野に転用する。自分の持つスキルを組み合わせて、他人の役に立てる。
③情熱やスキルに有用性が加わるとうまくいく。

マイクロビジネスで準備する3つのこと。
①あなたが売るもの(製品やサービス)。
②お金を払ってくれる顧客。
③支払いを受ける手段。

人々が本当に欲しがっているものを与えよ。
自分が不満を感じたことは?自分が買いたいものは他の人も欲しがるのでは?空きスペースを有効に使えるのでは?新しい技術の普及で意外な需要が生まれる?人々は何に幸せを感じる?

価値とは人々の役に立つこと。
消費者が感じる感情的な必要性と価値が結びついていなければならない。隠れた本音(望み)を掘り起こす、顧客をヒーローにする、人が買うものを売る。

・人々がより多く増やしたいことは、愛・お金・自由・時間・他人からの承認など。
人々がより少なく減らしたいことは、ストレス・不安・争い・悪い人間関係・長時間通勤など。
増やしたいことを提供するか、減らしたいことを取り除くことがビジネスの目標になっていればよい。

コンサルタントとしてビジネスを始めるには。
①特定の問題に的を絞れ。
②値段を低く設定しすぎない。1時間100ドルを目安に定額料金を請求する。料金の内訳は明確に。
③クライアントに提供するコア・ベネフィットと、それを提供できる自分の技能を示す。
④このサービスが役立った実例を示す。
⑤すぐに依頼できる方法を明示する。

「好きを仕事に」する時の注意。
趣味そのもので収入を得ることはできない。誰かがその趣味をする手助けか、趣味に間接的に結びつくものなら収入となる。
趣味を仕事にしたらストレスにならないか?にも注意。
(情熱 + スキル) × (顧客の問題 + 市場) = ビジネスの機会

・従来の属性ではない、新しい人口統計(興味・情熱・能力・価値観)で顧客を分類する。
顧客を探すには
①人気のある趣味や流行を探す。
多くの人が興味を持つが、日常生活で実行するのが難しいことがよい。(ダイエットなど。)
②お金を払ってくれそうな人に質問してみる。
○○についていちばん困っていること、いちばん知りたいこと、どんなことをしてほしいか?

・考案したビジネスプロジェクトは、影響の大きさ、必要な時間と労力、収益性、将来性を考えて評価する。

 

販売する

すばやく始めて、反応を見てから考えよう。
「売り出す」ときのルール。
①有用性のある(お金を払ってもらえる)アイデアを選ぶ。
②初期費用を抑える。
③まず売ってみる。
④つくる前に市場があるか確かめる。
⑤最初の結果から、変えるべきところを変える。

ビジネスプランをチェックする。
何を売るのか、誰が買うのか、このアイデアは誰の役に立つのか。
いくら請求するのか、どうやって支払いを受けるのか。
このプロジェクトで、稼ぐ方法はほかにあるか。
このプロジェクトを顧客はどうやって知るのか、広める方法は。
成功と考えられる指標(顧客数または総収入)は。
計画の障害となりそうな問題と、その解決策は。
いつまでに立ち上げるか。

ミッション(括弧内の部分)をまとめる。
私たちの[製品またはサービス]は、[顧客]が[コア・ベネフィット]を達成するのに役立ちます。

お客に欲しいと思わせるには。
①人が「実際に欲しいもの」と「欲しいと言うもの」は、必ずしも同じではないと知る。
②押し付けて買わせようとしない。
③今すぐ買いたいと思わせる要素をつける。

お客へのオファーは、適切な相手に適切な約束を適切なタイミングで。
FAQのページは、予想される反論に答えて買い手に安心感を与え、ベネフィットを伝えるために使う。
わかりやすい保証をつける、もしくは保証を一切つけない。
お客の期待以上のものを届ける。

製品やサービスの告知方法。
ステップ1:とにかくすごいことを伝える。
ステップ2:なぜこのプロジェクトが重要か伝える。
ステップ3:具体的な情報を流し始める。
ステップ4:発売日直前に情報を出し、買う気にさせる。
ステップ5:発売開始のメッセージ。購入手段へのリンクもつける。
ステップ6:リアルタイムで情報発信を続ける。発売時にトラブルが起きれば誠実に対応。
(ステップ7:終了期限を伝え駆け込み需要を促す。終了時に感謝のメッセージ。)

告知した約束は守ること。製品やサービスの弱点もうまく伝える。とにかく多くの知り合いに協力を頼んでみる。売り込みはギブアンドテイクで、まずギブから

プロジェクトがビジネスであることを忘れない。常に利益を重視し、初期投資は小さく。
収益性を高めるには
①コストではなく、ベネフィットに基づいて価格を決める。
②わかりやすい何通りかの価格帯を設定する。
③顧客が継続して買ってくれるプログラムをつくる。

 

増収のために

「ツイーク」(大きな変化につながる細かい修正)せよ。
アクセス量、コンバージョン率、平均販売価格、お得意様への販売量をそれぞれ少しずつ上昇させる。

複数のプロジェクトをやりたくなったら。
自分のメインのウェブサイトを本拠地、メイン以外の活動を前線基地と位置づける。
パートナーシップでは、お金の分配、責任の分担、情報共有、運営方法、期間などを確認。
アウトソーシングするかどうかは、ビジネスの性質と経営者の性格で決める。
アフィリエイトを採用する。

ビジネスの状態を確認する。
売上、訪問者数、平均注文金額、コンバージョン率、ネットプロモータースコアなどから重視する指標を決め、常に監視する。

・会社の売却が目的なら、オーナーに特殊な能力がなくても利益が出る組織にする。価値が高く、後継者をつくりやすいビジネスであること。

 

書評

本書は10万部ほど売れたようで、ヒット作です。アマゾンにも感想が結構集まっていますが、そんなに書かれているようにはうまくいかないよ、という意見も聞かれます。

私が気になったことは3つです。

ひとつめは、ビジネスが成功した場合はそれが専業になるということです。本書は会社を辞めずに起業できると書いていますが、ビジネスが動き出したら本気で専念しないと無理です。本書の例でも、年5万ドル以上稼ぐ人はほとんどがそれを本業としています。

ふたつめは、 本書は個人事業主のために書かれているということです。タイトルは起業ですが、副業レベルから最大でも個人事業主として少人数を雇うレベルまでです。会社の規模を大きくすることに関しては、本書の範囲を越えます。

みっつめは、意外と普通のことも書いてあることです。そんなにうまくいかないよという読後の感想が多かったのですが、一応は教訓も書いてあります。好きだけでは仕事にならないとか、お金を払ってもらえるほど誰かの役に立っているかとか、ビジネスの目的は利益を出すことだとか。

本書を読んだだけでうまくいくことはなかなかないでしょう。しかし本書では超低コストでの起業を勧めているので、リスクもほとんどありません。失敗してもダメージが少ないので、もしやりたいことがあるのなら、副業からでも始めてみればいいのでは。やってみれば、いろいろ「気づき」や「学び」もあるでしょう。
(書評2014/02/25)

「リーン・スタートアップ」 エリック・リース(著)

 

どうしたら起業の失敗確率を下げられるか。どうしたら少ない資源でも起業の成功の可能性を高められるか。リーン・スタートアップと呼ばれる起業の方法論です。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

起業したい人、特に少ない資源で起業を始めたい人。新規事業を立ち上げる人。

 

要約

起業とはマネジメントの一種である。イノベーションを継続的に生み出す方法がある。これをリーン・スタートアップと呼ぶ。

・本書ではスタートアップを、不確実な状態で新しい製品やサービスを創る人的組織と定義する。
未来が見通せないので、検証し学びながら持続可能な事業をめざす。アイデアを製品化し、顧客の反応を計測し、方針を判断するというフィードバックループが基本となる。進捗状況の計測や優先順位の策定などには、スタートアップに適した会計手法(革新会計)が必要である。

・本書は3部構成となる。
第1部ビジョンでは、起業に適したマネジメント手法について述べる。
第2部舵取りでは、構築―計測―学習フィードバックループを解説する。
第3部スピードアップでは、フィードバックループをできるだけ速く回す方法を検討する。

 

第1部 ビジョン

・スタートアップの目標は、できるだけ早く顧客が欲しがりお金を払ってくれるモノを突きとめることである。そのために、「検証による学び」という従来とは異なる方法で生産性を測る必要がある。

・検証による学びを得るには、現実の顧客から集めた実測データをもとにしなければならない。生産性の評価は、投入された労力から検証による学びをどれだけ得られたかが基準となる。

どのような顧客がどのような理由で自分たちの製品を使うのか、を知るために検証を行う。

・成功に向けて少しずつ進んでいることを確認するためには、マーケティングなどでお化粧した数字ではなく、検証による学びを活用せよ。

事業計画を体系的に構成要素へと分解し、部分ごとに実験で検証する。戦略を検証する実験では、どの部分が優れていてどの部分が狂っているか、定量的および定性的なテストを行う。(ザッポスの創業時の例)

・戦略の重要な仮説には、価値を提供できるのかという価値仮説と、新しい顧客に広がりがみられるかという成長仮説がある。仮説を検証実験し、その結果から戦略的計画が改善される。

 

第2部 舵取り

・アイデアを構築し製品を作り、顧客から得られるデータを計測し学習してアイデアを改良する。この構築―計測―学習のフィードバックループをどれだけ速く回せるかが、スタートアップの舵取りで重要な点だ。

①仮説の検証
はじめにスタートアップの計画ですべての基礎となる仮説(挑戦の要となる仮説で価値仮説や成長仮説などがある)を検証する。

②構築フェーズ
仮説がクリアできたら、実用最小限の製品(以下MVP)を作る。MVPで構築―計測―学習のループを回す。

③計測フェーズ
製品開発が本当に前進しているのか、革新会計という手法で測る。革新会計でフィードバックループのチューニングが成果を上げているか、定量的に計測できる。学びの中間目標も設定できる。

④戦略策定
構築―計測―学習のループを回ったあと、戦略を維持するか戦略を方向転換(ピボット)するか決めなければならない。仮説に誤りがあるなら新しい戦略的仮説にピボットする必要がある。

・実際は上記とは逆の順序となる。
①まず学ぶ必要があるものを見つける。
②検証のため計測しなければならない項目を革新会計で確認する。
③実験と計測を行うためにどのような製品を作るか考える。

・顧客を実際に見て理解することが重要だ。顧客がどうしても解決したい問題を抱えているか、その問題を仮説によって解消できるか検証する。

・見込み客をつかんだら文書で顧客の原形(customer archetype)がつくれる。ただし検証による学びが必要なので、顧客の原形は仮説と考える。

MVPは基礎となる要の事業仮説を検証するためのもの。(ドロップボックスではデモ動画)

誰が顧客なのかがわからなければ、何が品質なのかもわからない。MVPを作るとき、求める学びに直接関係ない機能や労力はすべて省く。

持続可能な事業にする方法を学んでいると証明するのが革新会計だ。
革新会計は3段階からなる。
①会社の現状をMVPから得る。
②現状のベースラインから事業計画の理想状態へ調整を(少しずつ何回もかけて)行う。これが学びの中間目標であるエンジンのチューニングだ。
③微調整や最適化が終わったら、戦略を維持するかピボットするか決める。

・エンジンのチューニングではコホート分析を行うこと。総売上や総顧客数のような総計や累積値を見るのではなく、微調整した製品と新しく接した顧客グループ(コホートと呼ぶ)の成績を個別に見る。

・累積値が急速に増えているからうまくいっているという「虚栄の評価基準」は捨てる。コホート分析やスプリットテストで持続可能な事業に近づいているのか確認する「行動につながる評価基準」を採用せよ

・新機能の開発はかんばん方式で行う。
かんばん方式の例:
作業の進捗状況をバックログ、構築中、構築完了、検証中の4段階とする。各段階には最大3つのプロジェクトしか入れられない。有益性が検証できた機能は製品に取り込み、検証できなかった機能は取り除く。各段階に空きがないとプロジェクトは進めない。

・検証には3つの尺度が重要。
①どのような行動で同じ効果が繰り返し得られるのかという、「行動しやすさ」。
②顧客の行動を評価に使うという、「わかりやすさ」。
③データの信頼性を守る、「チェックしやすさ」。

・スタートアップでは残り時間(現金残高/月の現金減少額)で何回ピボットできるか意識する。

・ピボットのタイプ
ズームイン型ピボット:製品機能のひとつを製品全体とする。
ズームアウト型ピボット:製品全体をもっと大きな製品の一機能とする。
顧客セグメント型ピボット:最初の想定と異なる顧客だった場合、ターゲットを変更する。
顧客ニーズ型ピボット:製品と顧客ニーズのずれを修正する。
プラットフォーム型ピボット:アプリケーションとプラットフォームとのピボット。
事業構造型ピボット:高利益率・少量のマーケットとマスマーケットとのピボット。
価値補足型ピボット:企業の生みだす価値の捉え方を変える。
成長エンジン型ピボット:成長エンジンモデル(ウイルス型、粘着型、支出型)を変える。
チャネル型ピボット:販売チャネルや流通チャネルを変える。
技術型ピボット:同じソリューションを全く異なる技術で実現する。

ピボットとは新たな戦略的仮説を策定し、その構造の変化を検証することである。

 

第3部 スピードアップ

・持続可能な事業の構築方法をできるだけ早く学ぶため、バッチサイズを小さくする

・バッチサイズを小さく変更の回数を多くしても致命的な欠陥が発生しないように、継続的デプロイメントという手法をとる。

・過去の顧客の行動が新しい顧客を呼び込むことを持続的な成長という。
持続的な成長を推進する4要素
①口コミ
②顧客の利用が周囲に影響を与える
③有料広告
④繰り返しの購入

・成長エンジンには3タイプある。ビジネスモデルがどの成長エンジンに該当するか考えて、その成長エンジンに集中する
①粘着型
顧客にずっと使い続けてもらうことがビジネスとなるタイプ。顧客の離反率や解約率に注目する。
②ウイルス型
顧客が製品を使うと、他の人々に製品が認知され新たな顧客が発生するタイプ。顧客ひとりから何人の新たな顧客が生じるかというウイルス係数に注目する。
③支出型
顧客を得るのに支出が必要なタイプ。顧客ひとりあたりの売上と新規顧客の獲得コストに注目する。

スタートアップは順応性の高い組織であること。問題が発生したときは真因を突きとめるため、5回の「なぜ」を繰り返す。

・新人の教育訓練プログラムも実験と改訂を繰り返す。技術的に見える問題もその根底には人的問題が隠れている。5回の「なぜ」で明らかになった問題には、その症状の軽重に応じた比例投資で対応する。

・5回の「なぜ」では悪者探しはしない。人間ではなくプロセスの欠陥を発見し対処するために行う。問題に関係するすべての人が参加して、5回の「なぜ」検討会を開く。

・5回の「なぜ」は小さくて新しく起きた問題から始める。やり方が社内に浸透してから大きな問題にも取りかかる。

・会社が大きくなってもイノベーションの文化を維持するにはどうするか。

・リーン・スタートアップの学習リスト。

 

書評

不確実で変化の速い環境において、スタートアップや新規事業はいかになされるべきかを体系的に論じた本です。

スタートアップにおいて、ビジョン、リスクを取る覚悟、踏み出す勇気、苦境に耐える精神、創造性などを著者も重視はしています。ただし、ただやってみようで起業を始めないようにと著者は主張します。アントレプレナーの貴重な資源を、不確実性の高い環境下でムダに浪費しないようにと強調します。

何を作るべきかわからない時代に、資源をムダにしないでスタートアップが進められるように、著者の体験から書かれています。本書の原点は、いかにムダを省き品質を高めるかを追求したトヨタ生産方式(リーン生産方式)にあります。これを製造業だけでなく、スタートアップや他の産業にも適用できるように進化させた体系がリーン・スタートアップです。

過去1世紀のマネジメント理論を下敷きに、著者の失敗と成功の体験を加味し、現代の社会環境をも考慮に入れた現在進行形の理論になっています。変化の激しいビジネスに関わるなら参考になる1冊と思われます。
(書評2013/12/22)

「リアルスタートアップ」 塩野誠(著)

 

週刊東洋経済のコラムをネットで読んで、いいことを書くなあと思っていました。起業についての著作があるので読みました。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

就職前の学生、閉塞感を覚える若者や起業を考える若者。

 

要約

・労働人口の減少、高齢化、増え続ける莫大な国家債務と、日本は長期的な衰退トレンドにある。このような日本で自分と家族、仲間が生きていくにはどうすべきか?

・著者自身の略歴。国や企業が守ってくれない時代になったが、ビジネスをつくり出せる能力があれば生きていける

・自分の勤務先および自分自身について
①現在の強み、②現在のリスク、③将来のチャンス、④将来のリスク
を考えてみる。

・仕事をするときはその仕事の
①企業の戦略上の意義、②付加価値をつけるにはどうするか、③ゴールとその達成期限、④達成すると身につくスキル、⑤将来応用できる場面
を考えてみる。

「誰かの何かを解決すること」がビジネスになる。

ビジネスのアイディアについて。存在や価値を再定義してみる。
オズボーンのチェックリスト(既存の製品やサービスに対して)
他の使い道は?他に適合できないか?色や形を変えたら?顧客を変えたら?範囲を変えたら?小さくしたら?場所や順番を置き換えたら?何かを組み合わせたら?

提供する価値でお客さんはお金を払ってくれるのかを考える。

・事業計画
①誰(チーム)がやるのか?最初のチームメンバーはとても重要。創業者チームの各人の経験、役割分担、必要な人材を考える。
②どんな問題を解決しようとしているのか?まず解決したい問題を考え、それを解決する仕組みを考える。提供する価値はどうすれば最大化できるか?
「誰」の何を解決するのか?(「誰」はターゲット市場となる。)政治、経済、技術などの影響で市場はどのように変化するか?

・ビジネスモデル
真の顧客は誰か考える。提供する価値にいくらと価格設定するか。ベンチャーは1つのビジネスに集中し、素早くチューニングせよ。

・売上高(=顧客数×単価×購入頻度)-費用(=固定費+変動費 )=利益
数字を動かしてビジネスが成立するか検討する。

・市場参入戦略
誰にどこで(誰が)売るのかを考える。どうやって製品やサービスを認知させるか、ソーシャルメディアの使い方。

・競合
直接の競合のほか、消費者の財布や時間を奪い合う広い競合も考える。どうやって競合に勝つのか?

ビジネスモデルのリスクは何か?法律や規制は?

・資金調達について。

・ベンチャーキャピタルについて
どの業界・領域に投資?どのフェーズで投資?サポートはあるか?投資額、ファンドの規模、ファンドの償還期限、既存投資先企業はどこか、担当者はどうか、などを確認する。

・予想の財務三表と事業計画書の作り方。予想キャッシュフローを割り引いて現在の企業価値を算出する。資本政策について。

・社内で新規事業を立ち上げるときは、経営者のビジョンとプロジェクトの責任者が必要。経営者のビジョンがないと社内の調整がつかず失敗しやすい。
プロジェクトメンバーの内発的な動機付けをして、評価軸はチーム重視で設定する。自社の強みを理解し、アイディア出しは漏れのないようなプロセスをとる。

・起業に失敗した場合はどうなるのか?株主には出資分を返済する必要はないが、借入の連帯保証した部分は借金が残る。ベンチャーは潰れることの方が多いが、潰れる前後で起きることについて。また起業がうまくいった場合はどうなるのか?

・人生やりたいことがあったら結局やるしかない。最後に必要なのは跳ぶ勇気だ。ただし跳んだ後はリアリズムに徹すること。

 

書評

大学生や若手社会人あたりを対象に書かれた本です。スタートアップが書名になっていますが、内容は自己啓発が3割、起業の考え方が7割位の比重です。起業するにせよしないにせよ、これから若者は国や会社に人生をまかせることができないので、生きていく方法を考えようというのが本書のテーマです。

筆者はこれからの時代で生き残るために必要なのは、自分でビジネスをつくり出せる力だと考えています。ビジネスをつくり出す能力を持つ重要性について説き、ビジネスを成立させるための思考や行動について解説しています。その力が身に付けば、起業しても会社で働いても最終的には何とか人生やっていけるだろう、というのが著者の立場です。

くだけた文章の本ですが、起業の基礎テキストとして読んでも無駄にはならないと思います。また起業とは離れますが、会社に対して少し冷めた客観的な視点を持たせる効果があるので、就活前の学生にもおすすめだと感じました。

本書はかなり独特のゆるい軽い文体なので、読者を選ぶ可能性はあります。私はもともと筆者のコラムを読んでいたので、抵抗なく読めました。表面上は軽い印象を与えますが、日本の若者が将来それぞれの人生を全うできますように、という祈りが裏側に窺える1冊です。
(書評2013/12/06)