「スタートアップ・バイブル シリコンバレー流・ベンチャー企業のつくりかた」 アニス・ウッザマン(著)

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著者は日本に留学経験があり、IBMなどで勤務し自分でもビジネスを興し、その後シリコンバレーでベンチャーキャピタルを設立した方です。シリコンバレーの起業事情に通じ日本の状況もよく理解されているという、貴重な人物です。

おすすめ

★★★★★★★★☆☆

 

対象読者層

起業したい人(特にIT系)。日本のベンチャービジネスについて考えたい人。

 

要約

・日本は技術やサービスは優れているが、ベンチャー育成の情報と知識が不足している。本書の目的は、日本のベンチャーが世界で勝てるように情報と知識を提供することである。

スタートアップで重要な6つの要素
1.よいチーム
2.系統立てた効率的なプロダクト開発
3.特許の管理
4.適切なマーケティング戦略
5.資金調達戦略
6.エグジット戦略

 

1.よいチームの作り方

・チームメンバーを選ぶポイントが一貫していること。
ビジョンが一致、価値観、情熱や意欲、柔軟性、誠実さなど。

・チームメンバーとなるのは、次のような事例が多い。
身近な友人、学生時代の知人、仕事の同僚や知人、スタートアップのイベントなどで知り合った人、アドバイザーやインキュベーターの紹介、オンラインジョブサイトやソーシャルメディアでの採用。

・会社の組織構成は基本を守れ。
組織内で役割と責任を明確にするため。外部関係者から信頼を得るため。

・必要なポジション(会社の方向性や時期によって数は異なる)とその役割
CEO:ビジョンを示し、戦略を決める。企業文化をつくり、社員のモチベーションを保つ。投資家とよい関係を構築する。
CTO:プロダクト開発の統括。
CFO:資金調達戦略、経理、財務、人事。
VP of Sales:営業、マーケティング戦略の実行。
CMO:マーケティング、広報。
COO:会社のマネジメント、中核事業の執行。

・取締役会は、代表取締役社長、社内取締役2~3名、投資家派遣の取締役1~3名、(社外取締役1~3名)のようにバランスをとり、会社経営を迅速化させるような人材を選任する。

・アドバイザーは、経験豊富な専門家で人脈を持っている。スタートアップの信頼性を高め、資金調達や顧客集め、パートナーシップの紹介、人材の採用、オペレーションなどの面で支援してくれる。
自社のビジネスを加速させるようなネットワークを持ち、自社のビジネスモデルに適するアドバイザーを選任する。

・起業初期は外部の取締役は不在でもよいが、アドバイザーは招いた方がよい。

・起業後のシード、アーリー、アドバンス、エグジット各段階における、取締役と責任者の役割について。

・人材採用では4つのプロセスがある。
①求める人材の能力や資質を考える職務分析
②募集(会社のホームページ、大学のウェブページ、求人斡旋会社のウェブページ、SNS、ヘッドハンティングなど。)
③書類審査(求める人材であるか確認。)
④インタビュー(オフィスに来てもらう。会社と同じ目標を持っているか、コミュニケーション能力、協調性、モチベーションなどを確認。)

・スタートアップの人件費の負担は重いので、アウトソーシングも活用する。

 

2.プロダクトの作り方

・マーケット調査
①どのような問題を解決したいのか。どのように問題を解決するつもりか。
②誰がユーザーか。市場は世界か自国のみか。想定される市場の大きさは。海外進出の際の障害は何か。
③すでに同じようなプロダクトが存在するか。誰と競合するか。競合との違いは何か。競合より優れている点は何か。潜在的なパートナーは誰か。潜在的な買収先は誰か。
④どのように収益化するのか。ユーザーにライセンス販売するのか。他の企業にライセンス販売するのか。フリーミアムか。広告費を収益とするのか。

・プロダクト開発
できるだけ早くプロダクトを開発し、顧客ニーズを検証しながら開発を続ける(リーン・スタートアップ・モデル)。最初にリリースするというインパクトが大切であり、他社より早く公開しシェアを獲得すること。バグはリリース後に修正できる。
①プロトタイプ
(資金調達のためのデモンストレーションやマーケティング戦略が目的)
②アルファ・バージョン
(顧客ニーズの調査やバグ取りが目的)
③ベータ・バージョン
(外部のユーザーにリリースしフィードバックを受けて、性能や機能を改良しバグ取りをすることが目的)
④プロダクション・バージョン
(一般ユーザー向けプロダクト)
⑤アドバンス・バージョン
(リリース後に新機能の追加やユーザーインターフェースの変更などを行う)

・世界に同一のプロダクトをリリースする標準化と、地域のマーケットに合わせる現地化について考える。

 

3.特許

・自社が開発した技術を守る特許を取得することは、将来の事業展開を有利にする。特許が認められる要件は、産業上利用可能で、新規性があり、発明が容易でないという進歩性をもち、先に出願されたもの。

・日本とアメリカでの特許取得方法について。

 

4.マーケティング

・ステージごとのマーケティング戦略
①シード
(資金がなくプロダクトがリリース前)
友人の口コミ。
SEO対策を行ったウェブサイトで潜在的なユーザーとコンタクトをとる。動画コンテンツをつける。
ブログは費用がかからない、ブログ経由だとユーザーになってもらいやすい。
クラウドファンディングで資金調達とユーザー獲得を同時に狙う。
②アーリー
(開発資金はある程度集まっている、アルファ・バージョン以降のプロダクトは完成しているがユーザーが少ない)
ソーシャルメディアで動画を利用したりユーザーのフィードバックを受ける。
テクイベントやスタートアップ関連イベント。
投資家やアドバイザーや取締役のネットワーク。
既存ユーザーに新規ユーザーを紹介してもらう。
③アドバンス
(プロダクトがリリース後で一定のユーザーも獲得している、プロダクトから収益が得られている)
広告展開。
PR会社の利用。

・プロダクトの見せ方
ユーザー、投資家、社員の3者に向けての見せ方がある。
①ユーザー
プロダクトの特徴と斬新さを伝え、感情に訴えかけて購買意欲を刺激する。
②投資家
会社の成長性を示して資金を調達する。シードでは顧客ニーズを、アドバンスでは市場の拡大を訴える。
③社員
プロダクトの状況を正確に伝え、会社の将来のプランを示してモチベーションを高める。

・プロダクトの販売方法について
パッケージ化、ポイント付与、フリーミアム。

・他企業とのパートナーシップについて
相手企業にとってのメリットを示し、シナジーを生み出せる企業とパートナーシップを結ぶ。

・ブランディングについて
会社名、ロゴ、ドメイン名。

・海外市場について
シリコンバレー、中国、シンガポール、東南アジアなど。

 

5.資金調達戦略

・資金調達先
家族や友人
クラウドファンディング
エンジェル
インキュベーター
ベンチャーキャピタル
提携先(パートナーシップ)

・ラウンドごとの資金調達戦略
①シード・ラウンド
プロトタイプやアルファ・バージョン完成までの運転資金として、1万~100万ドルを調達。エンジェルとベンチャーキャピタルの投資を受けて、アドバイスや人脈の紹介を得るのが望ましい。
②シリーズA
ベータ・バージョンからファイナルプロダクトを完成させるため、100万~300万ドルを調達。エンジェルやベンチャーキャピタル、戦略的提携先から資金調達する。
③シリーズB
プロダクトをリリース後にマーケット拡大のため、200万~600万ドルを調達。調達先はベンチャーキャピタルや戦略的提携先。
④ファイナル・ラウンド
海外進出、M&A、IPOなどの費用にあてる。調達先はベンチャーキャピタルや投資銀行、ファンドなど。

・資金調達の方法
①投資家が知りたいことを知る
どのような問題をどのようにして解決するか。市場規模。チームの強み。競合に勝っている点。現在の状況。今後の計画。
②良いプレゼンを準備
③ビジネスプランをブラッシュアップ
④デモンストレーションを見せる

・資本政策
普通株式、優先株式、種類株式、コンバーティブル・ノート、ストック・オプションについて。適切な株主構成について。

 

6.エグジット

スタートアップにとってのエグジットはIPOとM&Aのふたつ。どちらをめざすにせよ、創業時から戦略的に行動する。

・IPOのメリット
上場により成長のための資金調達ができる。キャピタルゲインが得られる。知名度や信用度が向上。ガバナンスの強化。企業買収が機動的に行える。ストック・オプションで優秀な人材を維持する。

・各国証券取引所について。IPOの準備について。

・M&Aのメリット
特許を取得する。マーケットを拡大する。人材を確保する。

・M&Aの準備について。

 

書評

現在の日本でIT関係の起業を考えるときに、知っておかなければならない基本的な事項をわかりやすく網羅しています。丁寧にやさしくわかりやすく、まとまりよく書かれています。とにかく基本をわかりやすく押さえています。

著者はアメリカ人ですが日本語で書いたそうです。本当にわかりやすいテキストに仕上がっています。
NHKの国際放送で、外国人なんだけど標準的な文法で滑舌よくきれいな発音で日本語を話すので、ネイティブの日本人よりわかりやすい日本語だ、というイメージです。

それから本文中にもありますが、著者の日本に対する愛情が伝わってきます。日本には良い技術やサービスがたくさんあるのだから、もっとできるはず。世界的に活躍できる企業を生み出す基盤があるのだから、それをサポートしたい。というとてもありがたい日本への好意があります。

著者にはこれだけ日本に愛着を抱いてもらい、さらに日本の起業の手助けをしてもらい、このような良い本を書いてもらいました。

これに報いるには、日本人が世界に通用する良い会社をつくるしかないですぞ。
(書評2013/11/22)

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