ダイヤモンドオンラインに、著者のコラムが連載されていました。勉強になると思っていたら、連載後に出版されました。個人事業のスモールビジネスから、会社をつくるやや大きい規模のビジネスまで、どちらにも参考になる本です。
おすすめ
★★★★★★★★☆☆
対象読者層
起業したい人。独立したい人。起業したいが、具体的にどう行動すればわからない人。
要約
・起業の成否は、事前にどれだけ準備をしたかで決まる。手書きの起業ノートを活用しよう。
・本書では起業の準備期間を1~3年とし、起業して5年以上事業が続けられることを目標とする。
・手書きの起業ノートの効果は3つ。
思考が整理できる。不足しているスキルやノウハウが認識できる。起業準備の進捗状況を確認できる。
・起業後に事業が継続できなくなる原因は3つ。
日々の仕事に追われ、アイデアが生み出せなくなるアイデアの壁。やる気が落ちたり、タイムマネジメントがうまくできず行動力が鈍る行動力の壁。心が折れるマインドの壁。しっかり起業準備をした起業ノートを振り返ることで、3つの壁を乗り越える。
・起業ノートは自分だけが見るので、正直に書く。ただしネガティブなことを書いても、自分のモチベーションを高めるメッセージを必ず残すこと。
・起業準備でノートに書くべきこと。
①動機と理念
②起業までのスケジュール
③ビジネスモデル(の検討)
④起業家マインドの強化
⑤不足するスキルとノウハウ(を補う)
⑥人脈形成
⑦事業計画と経営資源調達
・起業家で重要なのは行動力。起業前にできることはすべてやっておく。起業の日を決め、逆算して行動プランをつくる。
・起業することによる、自分にとってのメリットとデメリットを書く。事業が軌道に乗ればデメリットは解決できることを認識し、意欲を高める。
・社会貢献を目的としていても、利益の確保という視点を忘れない。
・メディアで華々しく紹介される起業家には惑わされない。ただし、参考になることはノートに記録しよう。他の起業家との違いを考え、競合他社との違いを常に意識する。
・起業家になるには、マインド、タイム、マネーに関して自分自身をマネジメントする必要がある。
苦難に耐え克服する心の強さ、効率よく仕事をする時間の使い方、リターンを考えリスクをとって投資し利益を出す能力、が求められる。
・起業準備の段階では、ビジネスモデルとマーケティングについてアイデアを考え抜く。ビジネスモデルは300個以上考えよう。
・既存の多くのビジネスモデルを少しずつ取り入れて、独自の工夫を凝らしてオリジナルのアイデアをつくる。
・異業種や海外のビジネスモデルから学ぶ。顧客の不便や不満、既存のビジネスでの新しいコスト削減方法、自分だけが提供できること、を考えアイデアをつくる。
・お客様が自分のビジネスにお金を払うか検討する。
ターゲットの顧客の数。提供する商品やサービスと競合他社を考慮し、顧客が自分から買う理由があるか。顧客はどれだけお金をもっているか。顧客はいくらなら買ってくれるか。
・多くのアイデアから起業のビジネスモデルを構築するには、
①「CAN」「MUST」「WANT」でアイデアを分類する。
②実現、継続可能性を分析する。
③誰に何をどうやって売るのかを明確にする。
・他の起業家の失敗事例から学ぶ。自分のビジネスモデルに対する、他者からの評価は冷静に受け止める。
・自分のキャリアの棚卸をして、足りないスキルやノウハウは起業までに学ぶ。勤めている会社のノウハウを取り込んだり、専門家を活用する。
・起業にITの活用は必須。
・セミナーに参加したり、気になる人に会いに行こう。独立準備中という名刺も有効。
・ビジネスで関係する可能性と、信頼できるかという、2つの軸で人脈マップをつくる。
相手にメリットを与えられてはじめて、自分もメリットを得られる。
・起業ノートから事業計画を練り上げる。イニシャルコスト、ランニングコスト、キャッシュフローを計算する。5~7年で元が取れる投資額を検討する。融資も検討する。
書評
すばらしい内容です。私がやりたい事業をうっすらと思いついたあと、ああでもないこうでもないと考えたことはすべて本書に書いてありました。そして、私が考えつかなかった重要なことも多くありました。
著者は融資担当者として長年金融機関で勤務し、さらに自身が起業の準備をして独立し、事業を軌道に乗せているという、起業を論じるのに最強の立場にいる人です。
とにかく具体的に、何をどうやって準備していくべきか、どう考えて行動するべきか、をわかりやすく解説しています。
起業するなら、本書で指摘されていることは考え、行動しましょう。本書の内容は、必ずやるべきと思われます。起業する人にとって、本書は読むべき1冊とおすすめできます。私も起業ノートを書きます。今日から。
(書評2013/9/22)