「システムトレード基本と原則」 ブレント・ペンフォールド(著)

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システムトレードの解説書です。本書は、心理よりも資金管理と売買ルールを重視します。

 

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

トレーディングで儲けたい人。

 

要約と注目ポイント

勝ち続けているトレーダーはわずかだが、彼らはトレーディングの普遍的な原則を守っている。

勝つために、自分の間違いを認めてうまく負けられるようになること。現在あなたが損をしているなら、それは今の売買ルールに問題がある。売買ルールの期待値を検証することが必要だ。

トレーディングで重要なのは、売買ルール、資金管理、心理の3つの要素である。特に勝敗を分けるのは、売買ルールと資金管理である。

すべてのアイデアを検証し、単純さ、パターン、確実性を探すこと。手順を重んじ、トレーディングでは規律と一貫性を保つ。控えめな期待値を設定する。プロの投資家のように行動せよ。

 

トレードで勝つためには、売買ルールを検証すること。そして売買ルールを規律を持って守り、資金管理を徹底すること。以上が本書の主張です。

 

トレードを成功させる6段階の原則

①準備。

②自己啓発。

③トレーディングスタイルをつくる。

④トレードを行う市場を選ぶ。

⑤売買ルール、資金管理、心理コントロールを確立する。

⑥トレーディング実行。

 

準備

マーケットはすべての参加者に、あらゆる困難や逆境をもたらす。この逆境が、常に大多数の弱者から少数の強者にお金を移すことを、最初に認めよ。マーケットに参加する間、いつも傷つき苦しむことを覚悟せよ。

非現実的な利益を目標としないように、感情をコントロールする。目標は控えめな期待値にすること。強欲がトレード回数を増やし、結果としてトレード計画を破綻させる。

勝つことを目標にすると負ける。最もうまく負けること。リスク管理を目標とせよ。

相場は基本的にランダムに動く。動きを予測するのではなく、どう反応すべきか考える。

資金の限度額を決める。失われる可能性のある金額の上限となる。

 

マーケットでトレードしても、思い通りにならないことが多いです。それでも最終的に勝てるシステムをめざします。

 

自己啓発

生き残ることに関心を持たねばならない。

トレードが続けられなくなる破産確率を考える。トレーディングにおいて、破産確率を考えることが最も重要である。

破産確率が0.5%未満でなければ、トレーディングしてはならない。また、破産確率が0.5%未満であっても、将来勝率や平均利益・平均損失が変化して、破産がありうることを認識せよ。

破産確率を下げるには、①一回当たりの取引額を低くし、②売買ルールの勝率を高め、③平均利益と平均損失の比を改善することだ。

トレーディングの聖杯とは、プラスの期待値で複数回トレードの機会がある売買ルールのことである。

トレーディングで生き残るために、期待値の高い売買ルールをつくること。取引機会も重要な要素である。期待値が高く、取引の機会も多い売買ルールを開発せよ。

売買ルールは単純なものが望ましい。自分の売買ルールにおける、単純な支持線と抵抗線の水準を見つけよ。

トレーダーの群れから離れて行動せよ。

売買ルールを開発したら、検証を行う。自分でつもり売買をしても、検証にはならない。繰り返し検証してプラスの期待値が得られれば、その売買ルールを信じてトレードできる。

 

破産確率と期待値の検証については、詳しく解説されています。

 

トレーディングスタイルをつくる

 

トレーディングの手法を選ぶ

トレンドにつくトレンドトレーディングと、逆張りのスイングトレーディングがある。またポジションを持つ時間枠には、1日、1週間以内、2~3週間、1カ月以上などがある。

一般に幅広いポートフォリオを長期でトレンドトレーディングする方が、多額の資金が要る。短期のスイングトレードは、必要資金が少ない。個人投資家は、期間の短いトレードの方が適している。

必要となる資金を考慮のうえ、トレードの期待値や機会を検証する。かなり確実にプラスの期待値が出せるトレーディングスタイルを選ぶ。

 

トレードを行う市場を選ぶ

筆者は、指数と通貨の市場が最適と考える。

 

トレードするのに適切な市場の条件

価格と出来高に透明性がある。
流動性が豊富で、24時間取引できる。
取引相手が信用できる。
(規制がなく)公正で効率的である。
取引費用が安い。

などなど‥‥

 

人によって、得意なトレーディングのスタイルや、取引する市場は違います。自分が勝つ見込みがあるトレードに徹します。

 

資金管理

トレーディングで最も重要な要素が、資金管理である。資金管理の2つの目的は、生き残ることと利益を増やすことである。負けたときにポジションを減らし、買ったときにポジションを増やすのが基本となる。

ケリーの公式とラリー・ウィリアムズの資金管理手法について。

資金管理戦略の比較。
固定リスク額、固定資金、固定比率、固定ユニット数、ウィリアムズの固定リスク率、定率、固定ボラティリティ。

いつトレードを中断するか、システムストップを考案する。

 

売買ルール

売買ルールは、セットアップとトレード計画という2つの要素からなる。

売買ルールは、単純で論理的であるべきだ。売買ルールを開発したら、期待値を検証し、破産確率を計算する。実行に移すときは、資金管理戦略を組み込む。

セットアップは、支持線と抵抗線の水準を見極める。その水準に適した逆指値をおく。トレンドに沿った順張りか、逆張りもしくはスイングトレードを考える。テクニカル分析では、変数の少ない単純で客観的な指標が良い。

トレード計画は、セットアップの利用の仕方である。どこで仕掛けて、どこに損切りの逆指値をおき、どこで手仕舞うか。

トレンドトレーディング、逆張り、スイングトレーディングの考察。

各指標の有効性の考察。

一般の個人トレーダーには、基本的なシステムのトレーディングが適している。

 

心理コントロール

心理は重要だが、適切な資金管理と売買ルールがさらに重要だ。心理では、希望と強欲と恐怖をコントロールすること。またマーケットは逆境なので、苦痛に耐え続けなければならない。

 

トレーディング実行

トレーディングを始めても、スリルや興奮ではなく、退屈や苦痛を感じるだろう。そう感じるようなら、売買ルールや資金管理が確立して、トレーディングがビジネスになったということだ。

トレーディングの手順は、
①セットアップが存在するか確認。
②仕掛け、損切り、手仕舞いの設定。
③トレード額と資金管理の確認。
となる。

そのほか、注文方法の説明。

 

トレードしても興奮せず退屈になったのなら、ビジネスになったときです。勝つシステムが構築されたので、規律正しく継続します。

 

書評

トレードにおいて大切と思えることを、いくつか指摘しています。そういう点は再確認として役立つかと感じます。ただこの類の本にありがちですが、話が長いというか、文章量が多いです。

ところで投資本を読むにあたり、長年巨額の利益をあげ生き残ってきた投資家や、伝説になった投資家の話は、素直に聞く気になります。

ただ本書の著者は、大成功した人という感じでもないので、参考になるところは勉強させてもらおう程度の気持ちになってしまいます。

個人的に参考になりそうな部分を挙げてみます。

取引を始める前に、まず売買ルールの検証や資金管理の手法を検討せよと述べています。これは取引を続けていると忘れそうになるので、大事なことかと思います。

多くの個人トレーダーは損を出すことがリスクと考えているが、真のリスクはうまくいっている売買ルールをいじることだ、との指摘。

確かに、ちょっとうまくいくとレバレッジを上げたくなりますが、控えめなトレードで成功しているならそれを続けるべきです。

破産を避けるための、資金管理手法の比較。とにかく生き残ることを第一にしており、この点は共感します。

しかし実際にシミュレーションしているのですが、どのような計算をしているのか、私にはあまり理解できませんでした。

とりあえず、1回トレード当たりの最大損失額を、総資金の一定比率以下に抑えること。勝っているときは資金量に応じてトレード額を増やし、負けているときはトレード額を下げるかトレードを中断すること。

このあたりは守ろうと思います。

なお巻末に、トレーダーのインタビュー集と破産確率シミュレーターがあります。
(書評2015/01/15)

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