信用取引の入門書です。信用取引の基本的事項が、きっちり解説されています。
おすすめ
★★★★★★☆☆☆☆
対象読者層
信用取引をはじめから学びたい人。
要約と注目ポイント
信用取引とは
信用取引とは、委託保証金という担保を証券会社に差し入れ、証券会社から資金や株式を借りて売買する取引である。
信用取引の特徴は、自己資金の約3倍の取引ができることと、取引を売りから始められることである。
信用取引には手数料に加えて、管理費などのコストがかかる。ほかに買いでは金利がある。売りでは貸株料や品貸料(逆日歩)、配当相当額の支払いがある。
また、株主優待はもらえない。長期にわたって信用取引すると、コストの負担が大きくなることに注意。
信用取引を始める
信用取引口座開設についての説明。
信用買い
売買のタイミングが合えば、自己資金以上の利益が得られる。
買付代金や金利などの費用を払えば、現物株として引き取ること(現引きによる決済)が可能。
信用売り
下落相場でも利益が出せる。
現物株を保有している場合は、信用売りでリスクヘッジできる。
市場で買い戻すかわりに、保有株で返済することもできる。
取引のルール
信用取引では、保有する株や投資信託、債券などを代用有価証券として担保にできる。
株は、前日終値に掛目という利率をかけたものが評価額となる。相場環境が良いときは掛目は低く、悪いときは掛目は高く設定される。
信用取引には、制度信用取引と一般信用取引がある。通常、信用取引とは制度信用取引を指す。
制度信用取引は取引所がルールを定めていて、6カ月以内で決済しなければならない。また、取引できる銘柄は取引所が決める。
一般信用取引は、個別の証券会社がルールや銘柄、期限を定めている。一般信用取引では金利が高く、売りができない場合が多い。
制度信用取引で、買いも売りもできる銘柄を貸借銘柄、買いだけの銘柄を信用銘柄という。貸借銘柄より信用銘柄の方が、株価が一方に動きやすい。
信用取引で儲けるには
信用取引では、ロスカットなどのリスク管理がとても重要である。
委託保証金率は約定代金の30%、委託保証金維持率は約定代金の20%であるので、保証金には余裕が必要である。維持率を下回ると追加保証金が発生し、決済が強制されることもある。
信用取引の実例の解説。
デイトレードでの使い方。
クロス取引(現物買いと信用売り)について。
IPO銘柄について。
スイングトレードについて。
信用取引で知っておくべきこと
信用取引情報
東京証券取引所が、毎週第2営業日に信用取引残高を発表する。これにより、相場全体の買いと売りの残高がわかる。
信用評価損益率は、日経新聞が毎週第4営業日の朝刊で算出している。信用評価損益率がプラスに近づくと天井に近く、大きくマイナスになると底入れに近いと言われている。
東証は毎週第2営業日に、信用倍率を発表する。買い残の比率が低いと上昇しやすい。
日本証券金融株式会社では、毎日、融資(買い)と貸株(売り)の残高を発表している。信用倍率が1倍より低くなると、逆日歩が発生して買いが増えやすい。
逆日歩の銘柄は、日証金のホームページの品貸料率一覧表でわかる。
回転日数が5日より短くなると、過熱感がある。
ファンダメンタル分析とテクニカル分析について。
信用取引のポイント
まず含み益をつくり、利益はしっかり確定させる。ロスカットも重要。
銘柄の特徴を見てから売買する。
買いは、好需給の銘柄を選ぶ。
売りは、株価が下落しながら貸借倍率が大きくなっている銘柄を選ぶ。
信用銘柄の動きは、一方通行になりやすい。
逆日歩が発生したときは、踏み上げに注意。
2階建ては厳禁。
取引過熱時の規制強化(委託保証金率の変更など)に注意。
ETFの信用取引について。(リスクヘッジなどに利用。)
書評
信用取引をはじめから学びたい人には、良い本だと思います。信用取引の基本事項が、わかりやすく説明されています。この本で信用取引のことは、一通り理解できるようになりそうです。
チャートをあげて取引の実例をいろいろ解説しているのですが、これらはすべてうまくいった例です。信用取引でどれだけ利益が得られたか、シミュレーションしています。
実際はそこまで思い通りに株価は動かないので、ちょっと出来過ぎ感はあります。
著者はレバレッジをかけて儲けることを想定していますが、私はレバレッジをかけるつもりはありません。
現物株を買うだけで十分リスクはとっています。ただ売りについては研究したいので、信用取引も勉強していくつもりです。
なお本書では、ETFを信用取引に使ってリスクヘッジしたり、サヤ取りについて触れたりしています。
売りを工夫して組み込めば、面白い取引手法をつくれたりするかもしれません。頭を使えば、自分の目的に合わせたトレードを開発できるかも。
信用取引にはいろいろと発展性も感じました。
(書評2014/10/07)