「リーマン・ショック・コンフィデンシャル」 アンドリュー・ロス・ソーキン(著)

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おそらく第二次世界大戦後で最も深刻だった、金融危機の話です。当時何が起こったのか、経済書としても読める一級のエンターテインメントです。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

2008年の世界的な金融危機に興味がある人。

 

要約と注目ポイント

サブプライムローン危機

サブプライムローン危機は、ベア・スターンズのヘッジファンド破綻とBNPパリバのマネー・マーケット・ファンドの返金凍結という形で、2007年8月に姿を現し始めた。

物語は、2008年3月のベア・スターンズ破綻とJPモルガン・チェースによる救済で幕を開ける。ウォール街には不穏な空気が漂っていた。

アメリカ5大投資銀行のうち、最小規模のベア・スターンズは退場した。市場の標的は、次に小さいリーマン・ブラザーズとみなされた。

本書はニューヨーク・タイムズの金融専門記者による、世界金融システムがまさに崩壊しようとしていた日々の記録である。綿密な取材により、危機に肉薄した当事者たちの行動と、極限状態へと追い込まれていくその感情をありありと描いている。

リーマンショック

市場に会社の存続を疑われ、株価が下落しているリーマン・ブラザーズでは、幹部たちが必死の、だが独善的な戦いを続けていた。戦況は一進一退だったが、しかし確実に敗色は濃くなっていった。

またリスクを忘れ巨額の利益を貪っていた巨大な金融機関、メリルリンチ、AIG、ファニーメイ、フレディマックにも猛火は迫っていた。

彼らは危機の直前まで、リスクのことはほとんど気にも留めていなかった。あるいは危険性に途中で気付いた者もいたが、もはや引き返せないところまで事態は進んでいた。

連日の株価下落で追い込まれたリーマンは、めぼしい金融機関すべてと交渉し、FRBにも掛け合い、金策に奔走する。部門売却、合併、買収、スピンオフ、ウォール街の主要金融機関による協調支援。しかし策の尽きたリーマンは、ついに2008年9月15日に破産申請する。

金融危機

すでに瀕死であったAIGにも、リーマンの破綻により審判のときが訪れた。流動性はきわめて逼迫し、残された時間はもうなかった。AIGが生き残るためには、翌日までに500億ドル以上を調達する必要があった。

恐るべきことに、AIGは世界中のクレジット・デフォルト・スワップを3000億ドル以上保護し、1.9兆ドルの生命保険証券を発行していた。市場は疑心と恐怖に包まれ、金融当局の介入は避けられなくなった。

一方、リーマンの次に市場に狙われることが明らかな投資銀行第3位のメリルリンチは、バンク・オブ・アメリカとの合併交渉を進めていた。メリルリンチとバンク・オブ・アメリカの経営者たちは、合併は有益で意味のある行動だと考えていた。

しかし功に逸り、交渉の詰めが甘くなった。帳簿の調べの不正確さは、バンク・オブ・アメリカを窮地に追い込むことになる。

5大投資銀行のうちすでに3行が消滅し、危機は第2位のモルガン・スタンレーにも飛び火した。金融システムが目詰まりし、資金を必要とするヘッジファンドがモルガン・スタンレーに償還を求めていた。モルガン・スタンレーは1800億ドルの資金を確保していたが、24時間で200億ドル以上も引き出された。

市場はモルガン・スタンレー、そしてゴールドマン・サックスの破綻をも想定し、動いていた。これらが実現すれば、金融システムは完全に崩壊し、世界大恐慌の再来となるだろう。

モルガン・スタンレーは最後の救済先と目される、中国の政府系ファンドCICとの交渉に臨んでいた。CICの提示した投資条件はきわめて不利なものであったが、すでに流動性残高は400億ドルとなっていた。そのとき、三菱UFJより接触があった。

介入

月曜早朝にリーマンが破綻した激動の一週間が終わろうとしていたが、事態は全く改善していなかった。

財務省と連銀は週末、力ずくでもモルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスをどこかの銀行と合併させ、銀行持株会社にして破綻を回避しようとしていた。そして恐慌を防ぐ最後の策として、不良債権を7000億ドルで買い上げる法案を準備した。

三菱UFJがモルガン・スタンレーに90億ドル、ウォーレン・バフェットがゴールドマン・サックスに50億ドル投資することで、2行の危機はひとまず遠ざかった。

しかし、ワシントン・ミューチュアルが破綻し3000億ドルの資産が差し押さえられ、ワコビアがウェルズ・ファーゴに買収されるなど、市場の動揺は続いた。そのようななか、財務省の法案が下院で否決され、株式市場は暴落する。

財務省の救済法案は修正され、取り込み工作で何とか成立したものの、株式市場は安定せず、なお下落していた。金融システムを維持するため、当局はついにすべての金融機関への強制的な資本注入を決断するのだった。

よくぞここまでと言うほど、しっかり取材されています。それでも、世界に波及した金融危機の全体を理解するのは、かなり難しいです。金融危機の歴史的評価も、これからです。

 

書評

精緻な取材と調査、読ませる構成力はさすがプロフェッショナルです。面白い。

私は経済のことは、よくわかりません。しかし2008年当時はさらにわかっておらず、リーマン・ショックで何が起こっているのかさっぱり理解できませんでした。ただひたすら社会の底が抜けたような、不安と興奮を感じていました。

あのころを思い起こすと、毎日、日経平均株価が1000円上下していたような気がします。もう少し正確に言うと、一歩進んで二歩下がる塩梅で、日経平均が15000円から7000円になっていました。

百年に一度の危機だと言われ、それはちょっと言い過ぎのようでもありましたが、現在も世界経済は低迷しています。

サマーズ元財務長官が主張するように、米国や先進国は長期停滞に陥っているのかもしれません。リーマン・ショック以前の、投資をすればするほど儲かるという感覚がもう夢のようです。

リーマン・ショックが歴史的転換を示したとすると、私たちはリーマン・ショック後の世界を生きることになります。それは、将来が今より豊かになることはないと考えながら、慎ましく生きる世界です。

ひっそり慎ましく、経済成長なく変化なく生きていく。と予想しつつも、金融危機の後始末はまだ終わっていないようにも思われます。

借金をしてレバレッジをかけて今を豊かに生きることは、将来につけを回していることと同義です。まだつけを払い終わっていないようです。

欧州にデフレが迫っていますが、これはユーロの構造的欠陥でしょう。中国の不動産バブルは、清算のときが近づいているようです。日本の財政は、現在の形では持続不可能です。

どれをとっても、巨大なショックをもたらす問題です。金融危機は去ったような空気もありますが、そう遠からず再び現れるのでしょう。
(書評2014/10/04)

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