「「空き家」が蝕む日本」 長嶋修(著)

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空き家が増え続けている日本。投資用のアパートやマンションの購入を考えている人は必読です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

空き家から日本の不動産について考えたい人。

 

要約

日本では空き家が増え続けている。
2040年には、住宅の3件に1件は空き家になると予測される。賃貸住宅の空室率は、現在すでに約20%である。

・空き家の増加は治安を悪化させるので、自治体は税金を使って空き家の撤去を促している。景気対策として新築住宅の建設が推進されているが、空き家の増加は成熟社会へと変化した日本の社会構造に、政策や思考が追い付いていないことを表している。

・日本の住宅には、住宅寿命が異常に短い、賃貸住宅が貧弱、中古住宅市場が閉鎖的、という問題がある。住宅は金融商品であるとともに生活の場でもある。住宅市場が変化することで、日本社会に利益がもたらされることを期待する。

・不動産業者は、住宅価格を感覚的な基準で査定している。また仲介手数料をとるため、物件情報を囲い込もうとする。不動産業者(宅地建物取引主任者)には、建物に関する見識はない。顧客が守られていない実態がある。

・住宅ローンの審査では、本人の属性が重視される。日本の住宅は、新築で100%、入居した瞬間に80%、10年後に50%、25年後に0%の価値となる。住宅ローンで日本の新築住宅に住む場合、ずっと債務超過の状態にある。住宅を売ってもローンが残れば、返済する必要がある。(アメリカではローンが払えなくなれば、住宅を手放して清算できる。)

外国との比較。
欧米では、中古でも一律に建物の価値が下がることはない。アメリカには住宅診断士がいて、金融機関も住宅ローンの審査では実際に建物を調べる。アメリカの住宅データベースは日本よりはるかに整備され、公開されている。不動産エージェントには資格が必要で、高い倫理観が求められ、社会的地位も高い。英米仏では中古住宅取引数が新築住宅着工戸数の数倍であるが、日本では逆となる。

・空き家は地方だけでなく、都市部でも増えている。空き家が放置されるのは、建物が残っていた方が宅地扱いとなり、固定資産税が安くなるためである。住宅着工戸数が現状より減っても、2040年には空き家率が30%以上になると予想される。空き家率が30%を超えると、治安が悪化し街は荒廃するという研究結果がある。

長期間空き家となっていれば課税する、10年単位で住宅需要を推計し新築住宅着工戸数を調整(抑制)する、などの対策が有効だろう。

日本の住宅に資産価値を持たせるためにも、中古住宅市場とリフォーム市場の整備や、中古住宅の評価方法の改善が求められる。

木造住宅もマンションも、適切に設計、工事、点検、メンテナンスが行われていれば100年前後はもつ。住宅の寿命が26年でマンションが37年とよく言われるが、これは取り壊した(建て替えた)平均築年数である。木造住宅では屋根裏や床下を年1回は点検しよう。水漏れや雨漏りをチェックする。マンションではクラック(ひび割れ)を調べる。いずれも早めの修理で安く寿命が伸ばせる。

・耐震性では、マンションが1981年の新耐震設計基準に従っているか、一戸建てでは法改正された2000年基準を満たすかが、ひとつの目安となる。

・日本の住宅政策では、賃貸住宅は持ち家を得るまでの前段階と位置付けられている。景気対策のねらいもあり、新築住宅には助成や金利優遇がなされる。賃貸住宅には補助はなく(他の先進国では家賃補助は一般的な政策)、大家の経営は圧迫されるので賃貸住宅の質は低くなる

日本の住宅政策は、新築住宅に偏り過ぎている。しかし住宅関連の業界団体には力があるので、住宅予算を賃貸住宅市場に振り分ける見込みは今のところない。また借地借家法なども時代遅れになっている。

・売主も買主も自分で探せば手数料が2倍稼げるので、不動産仲介業者は物件情報を囲い込もうとする。しかしこれは顧客との契約違反であり、業界の悪習である。情報隠蔽を法で禁止し、媒介契約をオープン型とクローズ型に分けることが望ましい。

・不動産を売却したいとき、仲介業者との契約は売れやすい物件なら一般契約で、やや売れにくい物件なら専任契約がよい。

・日本の住宅には、消費エネルギーを減らすという「省エネ」においても改善すべきところが多い

・日本の不動産市場は縮小するが、マレーシアやタイ、フィリピンで良い場所を探せば有望な投資先はある

 

書評

近所でもたくさん空き家が目につきます。冬の大雪で駐車場や物置の屋根が傾き、植木の枝や雑草が道路にまで飛び出てきています。放火されたりするのではと、心配になります。

そんな空き家の数十メートル先に、消費税増税前の駆け込み新築住宅が何件も建てられました。同じ光景は何か所もありました。販売価格は数千万円で、ほぼすべて売れました。住宅の支払いは一生ものですが、それだけの価値があるのでしょうか。うまくいけばいいと思います。予定外の出来事があれば、住宅ローンが人生の重荷になります。

私にはどうしても、日本で実物不動産に集中投資することが有利な選択になるとは思えません。まあそれぞれ個人の自由なのですが。大規模な不動産開発業者のように、大量の物件を持てばリスクが分散されるのでそれもありかと思いますが、サラリーマンが人生を賭けて借金をして、1件の住宅を選ぶことは怖くて仕方がありません。

著者は日本の不動産取引の慣習に問題意識を持つ方なので、住宅を買いたい人にも参考になることがあるかと思います。本書は文章も平易でわかりやすく、分量も少ないので興味があればすぐに読めます。ただ詳しく勉強したい人には、物足りないと思われます。
(書評2014/09/03)

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