「ヤバい日本経済」 山口正洋/山崎元/吉崎達彦(著)

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アベノミクスも後半戦、終盤戦といった趣ですが、この先の日本経済についての対談集です。著者3人の見解は微妙に違うようですが、要約は3人の意見がごちゃ混ぜになっています。詳細は本書をお読みください。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

アベノミクスの今後や日本経済について考えたい人。

 

要約

2014年以降の数年は、日本経済に大きなチャンスが訪れそうだ。著者三様の切り口で日本経済と世界の行方を論じている。日本経済が大きく動くときに、個人が将来を予測し準備をして明るい未来を迎えられるよう、本書が指針となれば幸いである。

 

日本経済

エコノミストたちの予想を覆し、日銀の金融緩和政策でデフレを脱し、物価は上昇を始めた。期待に働きかける政策に効果はあった。アベノミクスの本質は資産価格誘導政策で、株価や地価を上げようとしている。

・公的資金(年金)による株価対策は、即効性はあるが一時的なものである。金融緩和は資産価格を上昇させるが、消費税増税の悪影響は大きい。株価よりも土地の価格が上がることが、経済を好転させるには重要だ。広い範囲で地価を上げるには、規制緩和をして外国人が土地を買うことも認めるべき。

・高齢化と人口減少は重大な問題だ。女性が就業したり高い地位についたりすることで、世帯の所得が向上し、経済成長に寄与する。

異次元緩和で国債が暴落するという事態は、すぐには考えにくい。銀行の自己資本に一定の基準を課すバーゼル銀行監督委員会が、2020年の前に規制を決める(バーゼルⅢ)。自国通貨建ての国債について、リスクウエイトをゼロのままとするか変更するかが決められる。この決定は日本の銀行に影響を与え、日本国債の動向も左右する可能性がある。

・化石燃料、通信機、医薬品、衣料品などの輸入増もあり、日本の貿易赤字は定着した。貿易赤字自体には善悪はない。日本の製造業には柔軟性があり力を維持している部分もあるが、製造業を国策の中心に据えるのはもはや難しい。日本の観光産業には改善の余地が大いにある。国家戦略特区はあまりうまくいきそうにない。カジノ特区は実現させ上手に運営してもらいたい。

 

アメリカ経済

アメリカ経済はとても好調である。リーマンショックの落ち込みはほぼ回復した。シェールガスも盛況だ。アメリカの金融緩和は終わろうとしているが、引き締めるわけではない。

ウォールストリートには過剰にレバレッジをかけたり、信用リスクをとりすぎてバブルの生成と崩壊を繰り返す体質がある。個人も住宅ローンを最大限まで借りている。不況時に金融政策を有効にするためにも、FRBは金融緩和終了後にバランスシートを縮小しなければならないが、それには非常に時間がかかる。

安倍内閣の安全保障政策は古い日米同盟人脈の流れ(アーミテージレポート)に沿っているが、現オバマ政権は全面的な米中対立を望んでいない。オバマ大統領はアメリカ国民に見放されており、TPP成立は危うい。2016年の大統領選はヒラリーが主役となる。

・シンクタンクやアドボカシー(多国籍企業が背後にいる)が世論に与える影響は大きい。ただウォールストリートの投資銀行の力は落ちている。世界で業界トップ2となる多国籍企業の力は強大だ。ハイテクセクターも強いが、アメリカは次々と経済の主役が変わる。シェールガスも有望で、アメリカ人のマインドを変えた。

 

中国経済

・高成長を続けてきた中国経済は、不動産の販売が鈍ったり中央政府と地方政府の方針が一致しないなど、2010年ごろに潮目が変わった。中国の企業会計には問題が多く、海外で上場している企業にもリスクがある。不動産は最後には連鎖的な投げ売りがみられるかもしれないが、海外への波及は小さいだろう。

・中国、ロシア、ブラジルなど新興国は急激に豊かになったので、社会的な不満も抑えられてきた。低成長となれば、育ってきた中産階級の不満は抑えられない。中国は高齢化が進むが年金など社会保障が安定しておらず、労働人口が減っていくという問題もある。

・海外に出るような中国企業の経営者は非常に有能。中国人経営者はモチベーションが高く合理的だが、最近の日本人経営者はがつがつしていない場合が多い。中国人を含めアジアの国民は、豊かになるため他国に移住することを厭わないが、日本人は海外へ行きたがらない。日本社会は平均に劣ることには敏感だが、マッチョな感覚はあまりなく、ほどほどで満足する価値観である。アメリカ人でも中国人でも、自己主張し続けることに疲れる人には日本は合う。

中国人の国民性は、資本主義的だが話し合いの文化はない。共産党と民衆の利害が一致しなくなれば、共産党体制は支持されない。中国政府の行き詰まりは、国家の分裂に至る可能性もある。

10年経って日中の力関係が完全に逆転したら、中国の眼中にあるのはアメリカだけで、日本の存在はない。交渉でも日本の立場は弱くなる。中国も歴史問題や尖閣問題に拘らなくなるのではないか。

アメリカや中国の市場原理主義企業と、日本のほどほど主義企業とがグローバル市場で競争すると、ほどほど主義企業は喰われる。中国企業に敗れる日本企業も多くなるだろうから、個人は割り切って自分を高く売れるように準備しておくべきだ。競争相手であるからこそ、中国のことは学ぶべき。

 

新興国経済

韓国経済は、外資引き上げリスクがある。また経済全体に対し、サムスンなど特定企業の比率が高すぎる。韓国はアメリカから離れ、中国に接近しすぎている。日韓関係は改善が望ましい。

BRICsの高成長は終わり。ロシアはロマノフ朝から革命を経て共産主義となり、資本主義を経験していない。そのためお金の稼ぎ方がわかっておらず、ロシアは希少資源は売れるが、付加価値をつけて売ることを知らない。ロシアは資源があって付加価値がつけられず、日本は資源がなくて付加価値がつけられるので、組むには相性が良い。

・インド人は数字に強く、商売にも熱心だ。ITも強いが、最近はインド人の経営者も多い。今後、インド経済が栄えるというよりは、インド人が栄えるというイメージ。

・インドネシアは市場も大きく、日本との関わりも深い。インドネシアで東南アジアはもっている。インドネシアが崩れるとシンガポールにも影響がある。タイは国王の後継問題があるが、自動車産業の集積は強み。シンガポールはバックオフィスにはよいが、人材の数が少ないので本社移転は無理。シンガポールは大国に囲まれ、資源も人口もないので政府は常に危機感を持っている。

 

個人のマネー管理

個人投資家はプロの真似をせず、個人のやり方で運用すべし。所得と支出のバランスが取れた生活をするのが大事。日本の医療保険や年金保険は必要ない。長期金利が2%を超えてくれば、インフレ対策を意識する。自分の資産の実質的な価値を、将来に残す方法を考える。

・巨額のローンを組んで住宅を買っている日本人は、早くローンを返すことを考える。住宅を買うときは、地価変動リスクや流動性リスクを認識し、値段を見て考慮する。不動産業者は、自分たちがいらない物件しか売らない。

 

書評

サクサク読める手軽な対談集です。私は日本経済の先行き、アベノミクスの終わり方が気になって読みました。そのような日本経済の予測も書いてありますが、日本経済や世界経済について著者たちの考えがざっくばらんに語られています。日本経済をよくするにはこうしたほうがいい、といった提言的なものもあります。

相場の予測のヒントを期待したのですが、それについてはあまり書かれていないようです。誰にとっても市場の未来を予測するのは難しい、というように受け止めることにしました。最近はFRBが後手に回って、結局はバブルが生じるような気配もします。リスク管理は地道に個人でしておこう。

お金持ちの中国人に日本の土地を買わせてもいいんじゃね。とか、カジノいいっしょ、みたいな内容もあります。建前よりは実利という対談です。中国に関しては、歴史問題に寛容になるという見方はかなり疑わしく感じました。本書は自由主義的な感じなので、保守的な人が読むと気に食わないかもしれませんが、まあこんな見方もあるかと気楽に読んでください。
(書評2014/08/03)

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