著者の塩野誠氏の「リアルスタートアップ」は、以前に紹介しました。本書は学生や若手社会人におすすめします。この本には、将来の人生の可能性を広げてくれる知恵があります。
おすすめ
★★★★★★☆☆☆☆
対象読者層
就活前の学生。
就活中の学生。
働き始めた若者。
要約と注目ポイント
本書の目的は、経済状況の変化や社会の多様化をふまえ、幸せに働いて生きるために知っておくべき基本を若者に伝えることである。
仕事とは
キャリアを考えるとは、ご飯を食べていくために人生の各段階で、どんな仕事をしてどれだけお金を稼ぐのかを考えることだ。
自分の仕事に価値や技術はあるか、誰かがどれだけ自分にお金を払ってくれるかは常に意識する。未来は不確実で思った通りにはいかないが、将来を考えて準備はしておく。
キャリアプラン
体力面で、あるいは結婚・子育て・介護などのライフイベントのため、仕事にフルタイムで本気で取り組める期間は意外と短い。
現在の会社は新人を育成する余裕がなくなってきている。やりたい仕事ができるよう、自分で準備をして選択肢を広げよう。
若いうちは失敗のコストが低いので失敗するべき。加えて少しの成功体験と、自分ひとりでゼロから最後までやり遂げた経験を持とう。
20代は仕事への投資の時期で、好きだとかやりたいとか続けられるとか勉強になるなどの要素で仕事を選べ。そこで経験や技術や人脈を積み重ねたことが、30代後半以降の収穫(報酬)につながる。
自分に合う仕事、やりたい仕事
学生だと相手の警戒心もないので、偉い人や気になる人も割と会ってくれる。ガンガン会いに行ったり質問したりしてみる。
就職前にバイトやインターンで会社の中をのぞいてみるのもよい。
これから盛り上がる業界が分かるかは、社会への好奇心を持っているかどうか、自分で調べて行動できるかによる。
キャリアアップ
ビジネスでの「英語ができる」の定義は、海外で英語で交渉して自分のやりたいことが実行できる、である。日常業務なら定型的な言葉やメールを利用すれば何とかなる。
現在の転職市場で一番高く売れるのは、海外で資本提携や事業提携などをまとめられる人。
海外(留学)で得る経験の価値は、日本との差異や驚きに出会うことにある。語学だけなら日本でも学習できる。
自分に何のとりえもないと本当に思うのなら、英語や簿記など必要性のあるスキルを勉強せよ。現在の日本にはハングリーに努力する人は少ないので、それだけでひとつの強みができる。
新卒で大企業に入るとビジネスマナーは身につく。年を取ればやってきた仕事の内容と実績が重要。
人の役に立つ仕事、やりがいのある仕事
NPOやNGOでなく一般企業でも世の中の役に立っている。NPOやNGOは一般企業以上にマネジメントが難しいと覚悟すべし。
自分が送りたい生活を冷静に考えて、必要額よりちょっと多く稼げれば、まあ幸せと言える。
エリートとは本来、才能や家柄や環境に恵まれていることを自覚した者が、高貴な者の義務として自主的に公益に尽くそうと行動する人のことである。
社会人の基礎力、マナー、常識
一緒に仕事をしてこそ本物の人脈がつくれる。信用をなくさないように。
ロジカルシンキングは習慣とすればよい。最初に結論、次に自分の立場のイエスかノーかを明確にし、理由を述べる。問題設定は適切に。
MBAとは、仕事において経営の論点として考える目次を頭の中につくるためのもの。
会社が日常的に違法行為を行っている。職場環境が悪く、肉体的・精神的に危険である。このような場合は早く辞めて逃げろ。
プロフェッショナルとは、その仕事については自分が一番考え抜いていると思える人。
就職と転職では
退職は円満退社で。転職回数は少ない方が無難。転職時は安めの給与で入社して、評価されて給与が上がる方が快適。
採用面接では社会常識を守り、自分が所属する組織の悪口は言わない。見た目にも最低限の配慮をしよう。面接では、結論を先に理由を後から簡潔に。何について話すのか、頭出ししてから話そう。
ケースインタビューでは、面接官は思考プロセスを見る。合理的な前提を立てられるか、論理構成はあるか、優先順位をつけられるか、数式が成り立っているか。
自分でビジネスをつくり出す能力を持っていれば食べていける。
書評
著者は就活前や就活中の学生、若手社会人に向けて書いたと述べています。読んでみて、確かに私も就活前に本書の内容を知っておけばなあ、と感じました。働くことに実感が持てない学生は、読んだ方がいい本です。
たいした仕事をしてこなかった私でも、20代にこういうところを意識して働いていれば、もう少しキャリアを上積みできたような気がします。まあそれでも一生懸命生きてきたし、人生に後悔はしていませんが。
しがないおっさんの私もうなずくところが多かったのですが、特に若い人に知ってもらいたいことはふたつ。
ひとつは、仕事にフルパワーでのめりこめる期間は結構短いということです。家庭の事情みたいなことも増えますので。それで、失敗も許される若いうちに必死で働くと、あとから効いてくるキャリアが積めます。
ふたつめは、若い人(学生)には偉い人や忙しい人も結構面白がって会ってくれるということです。
ビジネスパーソンの常識としてはアホ丸出しだけど、潜在能力はありそうで、素直で目がキラキラしていて活動的な若い人が、自分を指名して会いたいと言ってくると、話してもいいかなと思う社会人は多いのでは。
そんなわけで学生にはおすすめの本です。私も若者とは関係なくがんばろう。
(書評2013/12/28)