「投資」カテゴリーアーカイブ

「40兆円の男たち」 マニート・アフジャ(著)

 

世界で今もっとも活躍し影響力のある、ヘッジファンドのマネジャーの素顔に迫ります。成功する投資家の戦略を学べる本です。

成功しているヘッジファンドマネジャーは十人十色ですが、共通点もあります。

強い目的意識、優れた管理能力、向学心、何になぜどのように投資するかを深く考える、持続可能な形で他人と違うことをする、不快な感情に対応する、失敗から学び軌道修正する、といった特徴を9組のインタビューから発見できるでしょう。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

市場に勝ち続けてきたヘッジファンドマネジャーに興味がある人。

 

要約と注目ポイント

市場に勝ち続け成功している、特別な存在となった、ヘッジファンドマネジャーの投資人生を紹介する。

レイ・ダリオ

グローバルマクロ戦略を採る、世界で最も大きく最も成功したヘッジファンドがブリッジウォーター・アソシエイツである。レイ・ダリオが創設した。

「失敗や大変な経験から学ぶ」、「真実を追及する」、「自分自身を進化させる」、「現実に対処する」ことに断固として集中する。

彼のレポートは、各国の中央銀行や国際機関、大企業、年金基金等で読まれており、強い影響力を持つ。

マーケットと無相関のアルファを追求し、運用ではアルファとベータを分離する。

歴史から学ぶことで、普遍的な投資法や危機管理の原則を確立する。

環境が変わると、各マーケットのベータはそれぞれ異なった影響を受ける。

複数の相関性のないアルファをポートフォリオに入れることで、期待リターンを保ったままリスクを減らす。

リスクパリティと呼ばれる手法を、理論的に構築する。(ポスト・モダン・ポートフォリオ・セオリー)

ピエール・ラグランジュとティム・ウォン

マン・グループとGLGパートナーズの合併により誕生した、世界最大級のヘッジファンドの主要幹部である。

長期の結果を重視し、大きなトレンドから利益を得る。

リスク管理が重要で、勝率を高めることと資金を守ることが基本である。

優秀なマネジャーの自主性を尊重するが、投資のプロセスやリスクは管理する。

ジョン・ポールソン

イベントの裁定取引を基本事業とする。

一流ファンドとなることをめざし、キャリアを積み、好業績を続けてファンドを成長させた。リスクとリターンが不釣り合いな、有利な取引を一貫して追求してきた。

そしてその経歴が、名高いサブプライム市場の空売りにつながった。150億ドルの利益をもたらしたサブプライム証券の空売りで、一躍トップに立つ。その後も大規模な裁定取引を続ける。

マーク・ラスリーとソニア・ガードナー

破綻のおそれがある企業や再建後の企業などの、過小評価された債券や株式に投資するディストレス戦略を行う。

豊富な経験と保守的な運用で、有力なディストレス戦略ファンドに拡大する。その冷静な投資戦略は、金融危機後のフォードの取引でも発揮され、2009年には60%のリターンをあげた。

デビッド・テッパー

信用アナリストとして出発し、ゴールドマン・サックスで債券部門のトレーダーとして大きな利益をあげる。

独立後は、他社に先駆けた積極果敢な投資で、好パフォーマンスを連発する。これは、市場がパニックに陥ったときにも冷静でいられるので、誰よりも早くリスクをとって投資ができるからだ。

ウィリアム・A・アックマン

有力なアクティビストとして知られる。投資先の企業に働きかけ、長期的な企業価値を高めることで利益を得る。

楽天主義者であり、自信満々な態度のため、攻撃的ととられることも多い。

ロックフェラーセンターへの投資、シアーズへの投資、ウェンディーズやマクドナルドへの投資、破産したリートへの投資などで成功する。しかし、検事や証券取引委員会に目をつけられ、取り調べを受けたこともある。

ダニエル・ローブ

自信家で自己主張が強いことで有名である。アクティビストというイメージがあるが、債券取引や裁定取引、ディストレス戦略やイベントドリブン戦略などもこなす。

金融危機前のサブプライム市場の空売りと、2009年の大底での大胆な投資に成功する。ヤフー経営陣へ、積極的な提案も行った。

ジェームズ・チェイノス

空売り専門のファンドマネジャー。早くから、大企業だったエンロンやタイコの巨額不正会計に気付く。決算書を読み込むファンダメンタル分析を核に、ボトムアップの手法をとる。

企業の年次決算書を3回読んでも理解できないときは、詳細を調査せよ。逆に買いの投資家なら、逃げること。

流動性のある大型株か中型株で、空売りを行う。

アナリストは調査に専念し、ポートフォリオマネジャーやパートナーが投資判断を下す。

決算が改竄される可能性はかなりあるので、知的好奇心や疑問を持つことが大切だ。

バブルのような過剰評価や、ある流行がいつまでも続くといった誤認のあとに、空売りのチャンスが生まれる。

2011年以降、中国に対し最大の空売りポジションをとっている。

ボアズ・ワインシュタイン

若くしてドイツ銀行の幹部となり、自己勘定取引で利益を出し続けていた。独立後も、金融危機のさなかに大きな利益をあげる。デリバティブ取引を得意とする。

登場する投資家は、皆すごい能力を発揮し、抜群の成績を残しています。長年の研究、実践、経験。すぐにまねできることはないです。ただ凡人であっても、日々経済と市場を冷静に観察し、勉強するのはムダではないでしょう。

 

書評

成功しているファンドマネジャーにインタビューする本ということで、「マーケットの魔術師」に似た企画です。勝ち続けるファンドマネジャーから学びたいと考え、読んでみました。

ただ登場する人たちが凄すぎるので、個人投資家のトレードや投資には、それほど役立たないような気もします。

素人の意見ですが、私は2007年から始まった金融危機を境に、その前と後では世界が変わったと考えています。リーマンショックに象徴される危機は去ったような風潮ですが、後始末は済んでいないと思います。

日米欧の中央銀行が金利をゼロにして、それでも足りずに莫大なリスク資産を買いっ放しです。危機から7~8年経ちますが、金利を上げることも、買い入れた資産を処分することも、とてもできそうにありません。

中央銀行や政治家が、あからさまにマーケットに介入し、リスク資産の価格形成に関与しています。そういった意味で、金融危機前後でゲームの進め方が少し変わったように感じます。

ですから投資の本では、金融危機後の内容まで含んだものを読みたいと思っています。優秀な成功している投資家が、金融危機後の世界をどのように見て、どう考えているのか、それを知りたいからです。

本書は、金融危機のあとで超トップレベルのマネーマネジャーが何を考えているか語るので、有意義な本だと感じました。

とはいえインタビューは2012年ごろまでに行われたようです。アメリカの利上げ、中国経済の減速とそれに伴う新興国の低迷という、2015年現在の重大事項をどう見ているのか、教えてほしいものです。

「続マーケットの魔術師」「リスク・テイカーズ」などを読んで楽しめる人には、面白い本でしょう。
(書評2015/09/12)

「最強の「先読み」投資メソッド」 土居 雅紹(著)

 

中央銀行がつくりだした金融緩和バブルも、そろそろ危ない。著者によれば、2016~2017年にかけて破裂の恐れがあります。バブル崩壊に備えた投資法を教えます。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

世界経済に興味のある人。
投資をしたいが、暴落には巻き込まれたくない人。

 

要約と注目ポイント

バブルの基礎知識

金融市場では、10年に1回くらいバブルが発生して崩壊する。近年はグローバル化のため、世界のあらゆる市場で同時に暴落が起きる傾向がある。

ITバブルのようにブームが限定されていたり、バブルが株式市場にとどまれば、参加者は少ない。不動産でもバブルが発生すれば、一般人の多くが巻き込まれ、社会的影響は大きい。

アベノミクスは、世界中で行われている量的緩和バブルの一部である。バフェット指標で見れば米国株はバブルの領域で、日本株も高い水準にある。

サブプライムバブルの株価のピークは2007年で、すでに8年経っている。中央銀行の量的緩和で生じた金余りバブルも、そろそろ破裂の可能性がある。

2009年からアメリカの株式市場は上がり続けており、そろそろ危険と考えています。毎年1~2回、世界的に株価が急落するときがありますが、まだ相場は崩れていません。

バブルの発生条件

①通貨が過剰に供給される。金融緩和でカネ余りとなる。

②前回のバブル崩壊から時間が経過した。バブルの痛い思いを忘れた。

③投機を正当化するもっともらしい理由がある。楽観的な夢を抱く。

バブル崩壊の原因となりそうな出来事

大本命はアメリカの利上げ。過去の例では、最初の利上げをして6カ月から2~3年で株価が下落に転じている。

その他
①中国不動産バブルの崩壊。

②日本の消費税再増税。

③中東情勢。

④原油安。

などなど‥‥

総合的に考えると、2016~2017年頃が危ない。

バブル発生の条件は存在し、アメリカの利上げも近いのですが、崩れそうで崩れません。

バブルの天井で避けるべき行動

①多額のローンでマイホームを買う。

②海外旅行。骨董品や美術品の購入。(不景気のときは安い。)

③節税目的の不動産投資。

などなど‥‥

バブルの天井でとるべき行動

①半年分の生活費と、投資用資金を貯める。

②割高な保険や金融商品を整理する。

③暴落時の投資候補を調べ、リストにする。購入予定の不動産や高額商品を下調べする。今は買わない。

などなど‥‥

バブル進行中の注意点

①プロ、専門家、専門機関、メディア、政府、すべての人が間違える。多数派の意見を鵜呑みにしない。混雑した投資対象には投資しない。

②株価の目標価格がどんどん上方修正される。前年のパフォーマンスがものすごく良い。(自分も含め)多くの人が儲け自慢をする。これらの現象があれば、危険な兆候。

などなど‥‥

長年成功している投資家は、バブル発生と崩壊のサイクルを、適切な行動で乗り切っています。

 

バブルへの対処を含んだ10の投資法

以下の10の投資戦略から、自分に合うものを3つ併用する。併用することで、どのような経済環境になってもパフォーマンスが安定する。

リターンを狙う積極的な5つの投資法

①日本株と米国株(のETF)を、10月末に買い、4月末に売る。

②バフェット流に、暴落前に現金ポジションを多く持ち、暴落時に優良株や株価指数ETFを大量に買う。しかし、大底を見極めるのはとても難しい。S&P500が直近高値から30%を超えて下落し、S&P500のVIX指数の月中高値が45超となったあと、落ち着いて35まで下がったときを買いタイミングとする。

③トレンドに乗る、順張り投資。

などなど‥‥

守りを重視した5つの投資法

①10月末買い、4月末売りの手法に、トレーリングストップを加える。

②今後の生産年齢人口の伸び、若年層識字率、識字率の伸びしろを参考に、将来性のある国に長期投資する。フィリピン、メキシコ、アメリカ、インドネシア、インド、エジプト、ナイジェリア、バングラデシュなど。

③ゴールドへの投資。金ETF、金ミニ先物、金レバレッジトラッカーを買う。

などなど‥‥

10の投資法は面白いです。自分でもできそうな方法もあります。

 

そのほかの解説

NISA利用の注意点。

退職金を運用するときの注意点。

アベノミクス後の展望。

 

書評

前半では、世界経済の現状と、過去のバブル相場の特徴を解説しています。それをふまえて、バブル相場の暴落に巻き込まれないためにどうするか考察します。

後半では、繰り返されるバブル相場を考えたうえで、10の投資戦略を紹介します。さらに、NISA、退職金の運用、アベノミクスの今後といった、個別事項も取り上げます。

前半は、具体的なデータを揃え、グラフも豊富で、読みやすい解説となっています。内容に大きな驚きはないですが、簡潔に今の金融市場を復習できます。

リーマンショックを受け、各国の中央銀行が超金融緩和を行いました。危機はひとまず去りましたが、リスク資産の価格が相当割高になってきたので、そろそろ危ないです。アメリカの利上げが一番重要です。

後半の10の投資法ですが、詳細は本書をお読みください。10あれば、1つや2つは気に入る投資法もあるかと思います。

投資戦略が一本足打法だと、大失敗もあります。考え方の異なる投資戦略をいくつか用意し、運用を分散しておけば、パフォーマンスの安定化につながると思われます。自分に合う投資法があれば、取り入れてみるのも一案でしょう。

NISAについては、損益が相殺できないという最大の欠点をどう克服するか考えます。退職金の運用は、一言でまとめれば、浮かれていきなり全額を投資するなということです。

最後のアベノミクス後の展望ですが、これは私も一生懸命考えています。私の考えは、当局は金融抑圧政策を取る(緩いインフレを起こしながら長期金利を低く抑える)というものです。

安倍政権は、もう政府債務を返済する気がないと感じます。ゆっくりゆっくり、政府債務を預金者(国民)の資産と相殺していくのでしょう。

本書ではこれに関連し、デット・ジュビリー(Debt Jubilee)が説明されています。私は初めてこの言葉を聞きました。

中央銀行が、発行した通貨で国債を買い、その国債をバランスシート上の資産とします。その資産を通貨発行分の負債と相殺すると、債務が消えるというものです。その方法の変形として、中央銀行が国債を永久に保有するという手もあります。

そうすれば日本のGDP比243%、1000兆円の公的債務が消滅するのです。しかし、そんなことが本当に可能なのですか?

私の頭では、よくは理解できませんでした。このデット・ジュビリーの結末を、著者ははっきりとは書いていません。ですが、どうも円安(経常赤字の定着)で持続不可能になると示唆しているようです。

私も、通貨安が止まらなくなったときが金融抑圧政策の限界かなと、ぼんやり想像していました。財政ファイナンスと通貨高への介入は無限にできますが、通貨安への介入は限度があります。円安が止められなくなり、インフレが制御できなくなれば、アベノミクスの終わりかと考えさせられました。
(書評2015/07/26)

「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」 足立武志(著)

 

株式投資に必須の、チャート分析を解説した本です。

「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」はファンダメンタルの解説、本書はテクニカルの解説で、2冊で1組という位置付けです。

 

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

株式投資をする人。特にチャートの勉強をしたい人。

 

要約と注目ポイント

個人投資家のファンダメンタル分析は、どうしてもプロの投資家に劣る。それを補うのが、株価チャートの分析だ。

業績が良いと考えても、株価が下がるようなら市場の動きに従うべき。自分の予想が間違っていることを教えてくれるのが、株価チャートである。チャートには、プロの投資家の行動が表れる。

 

能力的にプロに負ける個人投資家を助けてくれるのが、株価チャートです。

 

株価チャートの基礎知識

ローソク足、移動平均線、トレンド、売買高など。

 

売買の基本

トレンドに従う。移動平均線が上向きで、株価がその上にあるのが上昇トレンド。移動平均線が下向きで、株価がその下にあるのが下降トレンド。

上昇トレンド:新規買い、持ち株は保有継続。
下降トレンド:持ち株は売り、新規買いはしない。

 

トレンドに乗ります。トレンドには逆らいません。

 

基本的な買いタイミング

移動平均線からの乖離が小さいうちに買うのが理想。損切りの損失を小さくできる。

①上昇トレンドへの転換直後。

②押し目のあとで、反発したところ。

③直近高値を超えたとき。

ほかの買いタイミングについて。

①底値圏での買い。(底値や直近安値などを下回れば損切り。)

②急落時のリバウンド狙い。(底打ちしたと思われるチャートの形。日経平均株価の25日移動平均線からのマイナス乖離が10%超、個別銘柄の25日移動平均線からのマイナス乖離が30%超、25日騰落レシオが60~70%前後など。)

③過去の節目超え。

 

適切なタイミングで買うことが、損失を小さく抑えます。儲けることより、まず大損害を防ぐことを考えます。

 

基本的な売りタイミング

移動平均線を割り、下降トレンドに転換したら、すみやかに売る。再び上昇トレンドに戻れば、買い直す。

ほかの売りタイミングについて。

①直近安値割れ。

②急騰時の売り。

③吹き値への対処。

 

損切りの方法。

①原則は、25日移動平均線割れ。

②直近安値割れ。

③5日移動平均線割れ。

④買値からの下落率(10%など)で売る。

 

含み益があるときの売りタイミングで、パフォーマンスに大きな差が出ます。また、損切りは早くするのが定石と言えます。

 

実践的な株式売買の方法

空売りの考え方と方法。

トレンドを見極める考え方。

トレンド転換直後の、急騰や急落に備えた逆指値注文の方法。

レンジ相場への対応法。

大相場への対応法。

ポジションの管理法。

株価チャートの分析に加え、ファンダメンタル分析、売買高と信用取引残高の確認を行うと、成績が向上する。

 

その他の解説事項。

決算発表。

増資。

突発的な暴落。

バブル。

IPO銘柄。

大天井をつけた株。

 

売買の方法や個別の事項の解説では、著者の投資経験を十分に学ぶことができます。

 

個別銘柄のチャートを使った実戦練習。

 

具体的な銘柄で、数多くのチャートを使って解説します。

 

書評

以前に読んだ「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」がとても勉強になったので、姉妹編の本書も読みました。

実は「ファンダメンタル投資の教科書」の方でも、必要最小限のチャートの解説はされていました。トレンドについていくため、移動平均線の説明などがありました。

本書は、その部分が詳しく拡大されたと言えます。

著者の手法は、トレンドに乗る順張りです。規律に沿った損切りで大きな損失を避けながら、利益は大きく伸ばすことを目標とします。著者が使用するのは、専ら25日移動平均線です。

このあたりは、各個人の好みや経験にも左右されるかと思います。買いシグナルや売りシグナル、トレンドの判定で使い慣れた指標があれば、それを使っても良いのかもしれません。

投資の本でよく書かれていますが、大切なのは利益を伸ばし、損を小さくすることです。本書では移動平均線というとてもシンプルな指標で、これを実践します。

本書を参考に規律正しくトレードすれば、大損を回避し、勝ちに近づけそうな気がします。基本的なチャートの形なども説明されていて、勉強になりました。

いろいろな銘柄のチャートを使い、売買のタイミングを論じているので、実際のトレードで応用できると思います。

個人的に残念なのは、このような株式投資の実践本を、もっと昔に読んでおくべきだったことです。

私は、アベノミクス相場のごく一部分にしか乗れませんでした。分散投資は少し実行していたので、円安と米国株高に関しては恩恵を受けられたのですが。

しかし、勉強も無駄ではないはずです。投資家の真価が問われるのは、下落相場です。アベノミクス相場で大儲けはできませんでしたが、バブル崩壊には巻き込まれないようきっちり逃げたいと思います。

それほど遠くない時期に、米国株式市場の下落や、アベノミクスの終わりが考えられます。そのときは失敗しないように、利益確定と早い損切りで逃げていきたいと思います。
(書評2015/07/24)

「トレードシステムはどう作ればよいのか 2」 ジョージ・プルート(著)

 

さまざまなトレードシステムを、評価し分析します。「トレードシステムはどう作ればよいのか 1」の後編です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

システムトレードを行う人。

 

要約と注目ポイント

本書は、先物や株式市場のアルゴリズム取引についての評価と分析を掲載する、「フューチャーズ・トゥルース誌」の記事をまとめたものである。2006年から2012年の記事となる。

さまざまなシステムの評価と分析

・ケリーの公式について。

・適応型システムについて。

・オープンレンジブレイクアウトの評価。

・有限状態マシンの解説。

・オシレーター系インディケーターの検討。

・S&P500のデイトレードの評価。

・エクセルのVBAによるシステムの検証とトレード。

・商品の買いのみのトレードを評価する。

・電子市場におけるトレードの注意点。

・システムテスター「ガジット」で、日中データを検証する。

・「アルゴリズムトレーディング入門」、「TradeStation Made Easy」、「Modeling Trading System Performance」、「Alpha Trading」の書評。

・タートルシステムの再考。

・固定比率ポジションサイジングの検討。

・ポートフォリオの構築。

・過去に作成したシステムの再考。

・トレードステーションのカスタマイズ。

・ラッセルデイトレードシステムでの改善。

・現在でもトレンドフォローは有効か。

・パターン認識について。

いろいろなアイデアや手法に基づくシステムを、徹底的に評価し分析します。ものすごいページ数なので、システムトレードを行う人には、参考になるシステムがあるかもしれません。

 

書評

本書は「トレードシステムはどう作ればよいのか 1」の後編です。前編と同様、はじめに申し上げますが、私はシステムトレードを行わないので、よくわかりません。おすすめは★5個の普通にしてあります。

この本のシステムトレードは、価格データのみに基づくためか、経済動向の記述は一切ありません。前編と後編で13年ほどカバーし、ITバブルにもサブプライムローン危機にもかかった時期ですが、全く無視です。ただひたすらボラティリティが高いか低いか、値動きがどうかを検討しています。

完全に価格データに集中し、経済を無視している姿は、清々しいほどです。ファンダメンタル的要素を加えたら、もう少しパフォーマンスが向上しそうな気もするのですが、余計なお世話でしょうか。
(書評2015/07/22)

「トレードシステムはどう作ればよいのか 1」 ジョージ・プルート(著)

 

世間に出回っている、さまざまな売買システムを検証します。売買システム分析のフューチャーズ・トゥルース誌の連載を、本にまとめています。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

システムトレードを行う人。

 

要約と注目ポイント

本書は、先物や株式市場のアルゴリズム取引についての評価と分析を掲載する、「フューチャーズ・トゥルース誌」の記事をまとめたものである。1999年から2005年の記事となる。

さまざまなシステムの評価と分析

・動的なブレイクアウトシステムの評価。

・各デイトレードシステムの評価。

・損切り手法の比較。

・先物市場のシステムを株式市場に移行した結果。

・ミニ先物でのシステムトレードを評価。

・S&P500とナスダック100。

・ボラティリティが高い市場での比較。(2000年のITバブル末期の時期と思われる。)

・ナンピンを続けるスケールトレードの評価。

・静的なマネーマネジメントストップと、動的なプロテクティブストップの比較。

・移動平均の検討。

・パターン認識の検討。

・大きな利益を目標とする長期システムにおいて、適切な利食いとは。

・通貨のオーバーナイトトレードでの、翌朝の寄り付きについての検討。

・勝てるトレードシステムの検討。

・賭けのサイズの検討。

・複数のシステムを使うとどうなるか。

・ゾーン分析の評価。

・トレンドフォローシステムについて。トレンドフォローシステムには、トレーリングストップを併用する。トレンドフォローシステムの改善。

・オープンレンジブレイクアウトについて。

・ボラティリティが低い市場での評価。

・資産曲線をトレードに応用することの是非。

・モンテカルロ法の適用。

・ギャップはトレードに利用できるか。

・S&P500のデイトレードで有効な方法。

・商品ポートフォリオの分散化。

・タートル・トレーディング・アプローチの評価。

いろいろなアイデアや手法に基づくシステムを、徹底的に評価し分析します。ものすごいページ数なので、システムトレードを行う人には、参考になるシステムがあるかもしれません。

 

書評

はじめに申し上げますが、本書の評価はよくわかりません。私はシステムトレードを行わないので、おすすめを★5個の普通にしてあります。システムトレードを実行される方には、参考になる本ではないでしょうか。

トレードを完全にシステマティックに実行して、その成果について評価と分析を行う本です。システムトレードでも、多少はファンダメンタル的な指標を入れる方法もあると思うのですが、本書はすべて価格データに基づいた手法のようです。

しかし、個人がデータを解析しトレード手法を開発したとして、プロやマーケットに勝てるのでしょうか。データ解析、評価、分析の能力。決められた通りのトレードを繰り返すにあたっての資金量。力勝負になると、個人がプロ組織に正面から勝つのは難しそうにも思えるのですが。実際はどうなのでしょう。

勝てるトレード方法を開発しても、勝ち続けられる期間はそう長くないようです。勝てなくなって、別のシステムに変更したり、新しい方法をまた開発しなければならないようです。厳しい話です。
(書評2015/07/22)

「金(ゴールド)はこれから2倍になる」 林則行(著)

 

株式市場の暴落は近い。暴落から身を守るため、そして儲けるために金(ゴールド)を買おうという本です。

 

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

金投資に興味がある人。株式市場の暴落が気になる人。

 

要約と注目ポイント

5年後に金(ゴールド)価格は、2倍以上になると予想する。金を買おう。

 

金価格が上がる理由

超金融緩和の最後には、株価暴落と経済停滞、通貨価値の毀損が起こる。

マネーの総量の方が、ゴールドの総量より伸びている。

金価格は歴史的な上昇期にある。

金の生産コストは現在の金価格より高い。金価格が低くなれば生産量は減少する。

新興国の国民は金が好き。新興国の中央銀行は、金の保有量を増やしている。

 

世界はデフレ傾向ですが、中央銀行がマネーをばら撒いているのは事実です。そして、アメリカは金融緩和を終わらせようとしています。

 

投資の原則

投資の原則は、誰にも止められない時代の大きな流れに乗ることである。

現在の大きな流れは、政府の借金が増え続けること。政府は、借金をインフレで解決しようとしている。歴史では、インフレ政策は繰り返されてきた。

 

超金融緩和の後で起きること

株価は下落し、米ドルの信用が低下して、金利が上昇する。金利の上昇幅は、経済の混乱や通貨の信用低下の程度による。金利が上がるほど、金価格も上がる。

世界的に需要が不足している。供給過剰を政府が引き受けるので、政府の債務は増える。政府債務の増大により、インフレとなる。

米国の不動産バブルの清算は終わっていない。不良債権の処理がまだ残っている。対処として量的緩和を続け、マネーが増えた。経済成長を支える主力産業がないのに、マネーの力だけで株価が上がっている。

金融緩和が終われば、株価は維持できない。実物経済より、金融資産の規模が膨張しているので、下がるときは暴落となる。

 

2009年から上げ続けたアメリカの株式市場に、利上げが迫っています。

 

金相場の情報収集

金相場に関連する情報(サイト)の解説。鉱山会社の売りポジション比率に注目する。

株式市場がピークを過ぎると、金価格は上がりやすくなる。ピークを見極める。
相場を代表する銘柄や銀行株が、市場指数に先行して下がり始める。シティバンク、バンカメ、JPモルガン・チェース、ウニクレデイト、RBS、ロイズ、三菱UFJ、三井住友、みずほ等の株価を監視する。

 

株式市場の動揺は、必ず金相場にも影響します。

 

金に投資する

情報を検討して、金を買う時期を戦略的に大まかに決める。買いの時期に、時間をずらして買っていく。相場は2段階で上昇すると考え、高値の目安をつける。

実際に金を買う手段の解説。
地金、金貨、純金積み立て、ETF、先物取引のそれぞれの長所・短所について。税金について。

そのほかの商品の解説。
銀、プラチナ、金鉱株、南アフリカ通貨ランド、原油、食糧。

 

金へ投資する方法を比較し、解説しています。金以外のコモディティについても、適切な投資か検討します。

 

書評

以前に「伝説のファンドマネージャーが教える株の公式」「伝説のファンドマネージャーが実践する株の絶対法則」といった林氏の著作を読み、投資法に影響を受けました。成長株投資に近い方法で、読んでから四半期の業績推移をチェックするようになりました。

今回は、ゴールドを買えという話です。なぜ金を買うのかということで、はじめに現在の世界経済の状況を解説しています。金融緩和による人為的な株高なので、暴落は不可避と指摘しています。

2009年3月からの米国株の上がり方を見れば、それなりの規模の暴落がそろそろ来るだろうと、私も思います。それでは株式市場の暴落にどう対処するか。著者の解決策はゴールドです。

この本を読んだ直後は、すごくゴールドのETFを買いたくなりました。現在の金価格は1130ドルまで下がってきたので、そろそろ買い下がっていってもいいような気になります。

ただ私は、全面的に金に賭けるのも危険かなと思います。

大きな資産を持っているなら、5%とか10%を金にするのもありだとは思います。しかしバフェットが金を買わないように、金自体は利益を生みません。

あくまでも値上がり益を狙うか、インフレヘッジという役割に限定されるでしょう。

それにしても、シティバンクやバンカメがこれほどひどいとは思いませんでした。銀行株は興味がないので見ていなかったのですが、リーマンショックからの回復がとても鈍いです。

それから、イタリア株やヨーロッパの銀行株もまるで回復していません。ギリシャの問題もあり、やはり南欧はダメなのかと思いました。これらの株価に注視せよという指摘は、勉強になりました。

今後の日本は、物価上昇率より金利が低い、金融抑圧の環境になりそうです。ですので、資産を守るという観点で、ゴールドとかビットコインのようなものを買うのは有効と感じます。

売買で値上がり幅を取り、投機的に利益が出せるかは、私には自信がありません。
(書評2015/07/19)

「株式売買スクール」 ギル・モラレス/クリス・キャッチャー(著)

 

7年間の株式投資で18000%を超える収益!
成長株投資で有名なウィリアム・オニールのもとで、著者たちはポートフォリオマネジャーを勤めました。本書では、超絶パフォーマンスを生んだ株式の投資法を解説します。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

成長株投資で大成功したい人。

 

要約

株式投資で成功するためには、ジェシー・リバモア、リチャード・ワイコフ、ウィリアム・オニールといった偉大な先人から学ぶ必要がある。
投資の前に、よく調査し準備せよ。
株は安値ではなく高値で買え。
損切りは素早く、利食いはゆっくり。
利益を出す銘柄に資金を集中させよ。
機関投資家の買う株を買え。
チャートパターンを見極める。
正しい買いのポイント、ピボットポイントで買え。
感情、個人的な見解、ニュース、耳寄り情報に動じない。
トレードしすぎない。辛抱強く待て。

クリス・キャッチャーが7年間で18000%の利益を得た方法。
四半期の売上や利益が、加速的に増加している銘柄を選ぶ。
揉み合いのベースからブレイクアウトしたところで、集中的に買う。
10日移動平均線を下回って、下落したところで売る。

ギル・モラレスが11000%の利益を出した方法。
四半期の売上や利益が、加速的に増加している銘柄を選ぶ。
揉み合いのベースからブレイクアウトしたところ(取っ手付きカップの形)で、集中的に買う。
50日移動平均線が強い支持線となることを確認し、買い増す。
マーケットが調整中なのにブレイクアウトしそうな銘柄は、マーケットが上昇トレンドになると大化け株になりやすい。
ピボットポイントからブレイクアウトして、3週間以内に20%上昇したならば、損切りにならない限り8週間は保有する。
チャートパターンが天井を示し、大商いを伴って、窓を開けて下落したところで売る。
分散投資せず、大化け株に集中投資する。

失敗から学ぶ。
儲かってくると、思い上がってすべてがわかったような気になるが、そのようなエゴを抑えることが大切だ。自分ではなくマーケットが正しいので、常に観察してマーケットの示すサインを読み取れ。
物質的な欲求にとらわれず、マーケットの波に乗り続けることだけに専念する。
先入観で銘柄にほれ込まず、自分の投資法(銘柄選択の条件やトレード手法)を守る。
週足チャートで、最低6週間の適切なベースが形成されていなければ、買わない。流動性の低い銘柄を、大量に買わない。
景気や相場サイクルに関わらず、そのときの経済状態で最先端の企業が、大化け株の核となる。新しい経済や業界の重要な地位にある企業を、機関投資家は必ず買う。大化け株には、1日の平均出来高が大きいという特徴がある。
まず自分の銘柄の観察に集中する。マーケットの指標を気にするのはそのあと。
空売りでは、絶好の機会を待つ忍耐力が重要だ。

・ベースからブレイクアウトして高値を更新する銘柄を、さらに早い段階で発見する方法、ポケットピボットについて。

適切な売りシグナルについて。
50日移動平均線を下回ったら売る。買ってから7週間、50日移動平均線の上で持ちこたえたら、それ以降は10日移動平均線を下回ったら半分売る。50日移動平均線を下回ったら、残りの半分を売って手仕舞う。

空売りの基本ルール。
マーケットが下降トレンドであり、弱気相場に入った早めの段階で行う。
直前の強気相場で大きく上昇した大型の主導株で、天井を付けた銘柄を空売りする。
空売りは、天井をつけてから8~12週後に行う。
出来高が多く、流動性のある銘柄を空売りする。
損切りは3~5%に設定する。
利益目標は15~30%が適当。20日移動平均線をトレイリングストップに使ってもよい。
空売りでは、絶好の機会をひたすら待つ。チャートパターンの完成と、急激な株価の下落、大商いを伴うブレイクダウンである。

・マーケットのタイミングを計る、マーケットダイレクションモデルについて。

オニールの十戒。
自己を見失ってはならない。
恐怖を克服する。
敵の中傷から自身の欠陥を学ぶ。
失敗から常に学ぶ。
保有銘柄について話してはならない。
天井で調子に乗らない。
まず週足チャート、次に日足チャートを見る。
まず大化け株を見つけ、次に大量に買う方法を見つける。
付き合う人間は慎重に選ぶ。
常に異常なほどの集中力を維持する。

・オニールと一緒にトレードした経験談。過去に売買した銘柄に関する、チャート分析と解説。

 

書評

オニールの成長株投資に倣って利益をあげた、トレーダーの著作です。著者たちはオニールに学び、オニールの売買ルールを微調整して大きな利益をあげたそうです。

とにかく長い本なので、はじめに著者たちの売買ルールをすべて説明してほしいと思いました。この銘柄をチャートのこの位置で買い、大成功した。こちらの銘柄でも大成功して、利益が500%だった。この売買では大失敗した。などとトレードの経緯が、ずらずら長く書かれています。

はじめに売買ルールが書かれておらず、経過とともにぽつぽつとルールが出てくるので、どういう戦略で取引を始めたのかが理解しにくいです。オニールの成長株投資に興味があるなら、まず「オニールの成長株発掘法 第4版」を読んだ方が良いです。こちらは売買ルールを簡潔に明示しています。そこから、自分に合うように微調整するのが良いでしょう。

読んで納得する教訓もあるのですが、本のページ数が多すぎて冗長です。まとまりに欠ける印象で、「オニールの成長株発掘法 第4版」を直接読んだ方が効率的だと思います。
(書評2015/07/17)

「バーンスタインのトレーダー入門」 ジェイク・バーンスタイン(著)

 

トレードの要点を、30日で速習できる本です。トレードで利益をあげるための技術を、順番に素早く学びます。

おすすめ

★★★★☆☆☆☆☆☆

 

対象読者層

アノマリーを利用するトレードや、システムトレードの手法を、さっと知りたい人。

 

要約と注目ポイント

個人投資家が短期トレードで利益をあげられるように、投資ツールを30日で学習する。

30日の学習プログラム

・1~2日目
トレーディングの枠組みとなる、3つの条件を知る。
①セットアップ
②トリガー
③フォロースルー
仕掛けと手仕舞い、利益を伸ばし損失を小さくするルールを決める。パフォーマンスを検証する。

・3~5日目
季節性に基づくセットアップと、それに有効なトリガー。ストップロスなどのフォロースルーについて。

・6~9日目
モメンタム手法について。

・10~11日目
移動平均チャネルを使うトレード。

・12~14日目
価格パターンについて。

・15日目
移動平均線を使うトレード。

・16~19日目
COTリポートの利用法。

・20~21日目
S&P500のブレイクアウト手法。

・22~24日目
ポートフォリオの管理法。

・25~27日目
トレード手法を分散し、パフォーマンスを安定させる。

・28日目
まとめ。

・29~30日目
心理のコントロール。

トレードの基本を身につけたあと、いろいろな手法を順番に学んでいきます。

 

書評

トレード手法のつくり方の一例を、知ることはできそうです。このような方法で著者は成功したのか、とは思うのですが、今の自分には役立ちそうにはありません。10年以上前のアメリカ先物市場のデータなので、ちょっと使いにくい感じです。

まあこのような方法を真似て、自分がトレードする市場のデータを分析すればいいのかもしれません。合う人には参考になるでしょう。私にはちょっと合わない方法でした。

本書の内容では、パフォーマンス安定化のために、投資対象銘柄、タイミング、トレード手法を分散させるというのは、確かにいいと思います。自分もやっています。それから、心理のコントロールの大切さを解説していますが、これも妥当と感じました。
(書評2015/07/12)

「続マーケットの魔術師」 ジャック・D・シュワッガー(著)

 

「マーケットの魔術師」シリーズの第4作です。リーマンショック後に書かれており、今の市場環境で生き残ったトレーダーたちについて知ることができます。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

マーケットに勝ち、大きな利益をあげたい人。

 

要約と注目ポイント

主に1990年代から2000年代に成功している、ヘッジファンドのマネージャー15人にインタビューした。それぞれのトレード手法や投資哲学、相場観などが語られる。

リーマンショックを乗り越え、勝ち続けるトレーダーたち

スティーブ・クラーク

高卒で証券会社の雑用として仕事を始め、マーケットメーカーや裁定取引の経験を積む。イベントドリブン戦略のヘッジファンドを創設し、大成功する。

「得意なトレードに専念して、苦手なトレードはしない。」
「トレードサイズが重要。起きたときに気になるようでは、ポジションが大きすぎる。」
「自分の考えを柔軟に変えられる。」
「興奮した感情的なトレードをしない。」
「常に資産管理をする。」

トレードを始めると、調子に乗っていろいろな市場で売買したくなります。ですが、やはり相性と言うか、得手不得手はあります。得意なトレードに専念せよ、起きたときに気になるのはポジションが大き過ぎ、などはすごく納得です。

マーティン・テイラー

東欧株式ファンドを運用する。完璧にロシアのデフォルトを予測して、好パフォーマンスをあげる。そのあと新興国ファンドを設立し、高いリターンを出し続ける。

「ファンダメンタルズが最も良い国(市場)で、長期的に良い経済環境にあり、将来の成長と予想利益が素晴らしく、妥当な株価の会社を選ぶ。」
「暴落時も、自分が安心できる水準の買いポジションは保持する。すべて手仕舞うと、焦りから不適切な場面で買いに走る。」
「長期的な視点で、投資判断する。」

暴落時も買いポジションを少し残せ、と言うのは共感できます。全部売ると、焦って買いたくなります。

トム・クローガス

化学会社の役員の地位を捨て、ヘッジファンドを創業する。手法は平均回帰の考え方に基づく逆張り。株式の銘柄選択にも独自性がある。

「将来収益が期待されるが、現在の株価に織り込まれていない銘柄を買う。」
「トレードは結果では評価できない。勝率の高いトレードが良いトレードで、それを続けること。」

将来の利益から見て割安の株を買え、トレードは確率で有利な売買を続けるべき、も良い教えです。

ジョー・ヴィディッチ

ファンダメンタルズ分析で大局観を作り、個別銘柄を選択する。そしてイベントに対する値動きを参考に、マーケットのセンチメントを察知してトレードを行う。

「損切りは少しずつ行う。含み益があれば、下げ始めるまで売らない。」
「恐れに支配されて判断しないように、ポジションサイズを限定する。」
「考えを柔軟に変える。」
「損切りによる損失に慣れる。リスク管理には必要だから。」
「割高だからという理由だけで空売りし、割安だからという理由だけで買うのは危険。」

こちらも名言です。損切りはリスク管理に必要。割高だから空売りし、割安だから買うというだけでは危険。

ケビン・デーリー

株価が事業の本質価値を大きく下回っている会社を探す。ウォーレン・バフェットの投資哲学に従い、高いリターンを継続する。しかも、投資環境を判断し、現金化して損失を低く抑えることができる。

「本質価値に比べて割安な会社を買う。」
「割安でも、キャッシュフローを増やし本質価値を大きくできない会社は避ける。」

本質価値より安い株を買う、というのも全くその通りです。

ジミー・バロディマス

トレンドに逆らい、上昇相場で空売りし、下落相場でナンピンする。それでも15年間利益をあげ、損失は出していない。

ジョエル・グリーンブラッド

バリュー投資で長年にわたり、市場平均を大きく上回るパフォーマンスを達成する。企業分割や合併などのイベントを利用していた。近年は独自の指標に基づく、システマティックなバリュー投資に力を注いでいる。

「収益利回りで割安かどうか、有形資本利益率で良い会社かどうか判定する。割安かつ良い会社に長期投資する。」
「バリュー投資は儲かるが、短期的にはうまくいかないときもある。それは機関投資家が、ますます短期のパフォーマンスを重視するようになったからだ。」

バリュー投資は効果的な方法だと思います。ただ、時間がかかることがあるというのは、おっしゃる通りです。自信を持って値上がりを待てるかです。

コルム・オシア

低リスク水準のトレードで損失を最小限にとどめながら、20年間好パフォーマンスを続ける、グローバルマクロ戦略のマネージャー。

「ファンダメンタルが重要。ファンダメンタルがマーケットを動かすが、人々が気づき始めるまでトレンドは発生しない。」
「バブルの時期は、バブルを信じ切っている人が必ず勝つ。流動性のある投資対象でバブルに乗りながら、相場が転換するまでひたすら待つ。」
「今何かが起きていると気づいたら、それに従ってトレードはできる。」
「トレードのアイデアよりも、トレードを適切なやり方で実現することが重要。利益が大きくなり、判断を誤っても損失が限定されるトレードをする必要がある。」
「マーケットで重要なのは、成長率ではなく変化率。楽観主義者の力を過小評価してはならない。」
「自分の個性にあったトレード手法を使うのが大切。世界の変化をありのままに理解して、考えを柔軟に変える。」
「自分の仮説が間違いとわかる価格に、損切り注文をおく。」

個人的には、この方の話が本書で最も勉強になりました。先進国の中央銀行がつくった金融緩和バブルも、そろそろ終わりが近いです。このような投資の考え方が必要な局面が来ると、個人的には思っています。

レイ・ダリオ

世界最大のヘッジファンド、ブリッジウオーターの創設者。40年間、市場で勝ち続ける。
「間違いからは、将来の間違いを減らす原則が学べる。」
「各マーケットは、それぞれの決定要因に従って動く。決定要因の異なる、相関関係のない資産でポートフォリオを構成するのが良い。」
「自分のトレード戦略が、異なる相場環境でも通用するか検証する。」

知る人ぞ知る、金融業界の巨人です。この方の制作した、「30分でわかる経済の仕組み」という動画は面白いです。

ラリー・ベネディクト

平均回帰の考え方に基づき、短期トレードを繰り返す。20年間、損失を小さくしながら利益をあげてきた。

スコット・ラムジー

ファンダメンタル分析でマクロの見方を決め、テクニカル分析に基づきトレードする。リスクと損失は低く抑えられ、好パフォーマンスを維持している。

ジャフリー・ウッドリフ

トレンドフォローでも平均回帰でもない、コンピュータを使う独自のシステムトレードを開発する。プログラムで運用する資産は50億ドル以上になっている。

エドワード・ソープ

数学の力でカジノに勝つ。オプションとワラントの市場でも勝ち、世界初のクオンツファンドを創立した。

ジェイミー・マイ

サブプライムローンの破綻に賭けた男として、「世紀の空売り」に登場する。だが実際は、もっと知的に洗練されたトレーダーである。創業したヘッジファンドの成績は、9年間の年平均純利益が40%に達する。

「既知のリスクに不確実性があると、マーケットは株価を割り引き過ぎることが多い。逆にマーケットは、はっきりと確認されていないリスクを過小評価しがちだ。」
「ある銘柄のボラティリティが非常に低いときは、ボラティリティの買いを検討するのに良い時期だ。」

「世紀の空売り」では素人のような扱いでしたが、本書を読んだら完全なプロでした。この方の戦略もすばらしいです。

マイケル・プラット

裁量によるトレードと、システマティックなトレンドフォローのトレードを行う。リスク管理は徹底しており、裁量のトレードでも最大損失(ドローダウン)は5%以下である。

「トレードするセクターと戦略を分散化する。運用単位の最大損失を3%に限定する。日々、トレードの方法、相関関係や戦略、ポジションの見直しをする。これらによりリスク管理を行う。」
「マーケットでは、どんなことも起こる可能性がある。マーケットが間違っていると考えてはならない。マーケットは常に正しく、損をするなら自分が間違っていると認識する。」
「相場で利益を出すために3つの必要なこと。ファンダメンタルズに関するまともなストーリー。今後も続きそうな良いトレンド。ニュースを自分の考えと同じように扱う市場。」

マーケットが間違っていると考えてはならない。これはその通りだと思います。安過ぎるとか高過ぎると自分が思っても、そのようにマーケットが反応しないことはよくあります。それを受け入れないと、大損害を食らいます。

 

書評

読んだ感想は、「マーケットの魔術師」とだいたい同じです。この本を読むだけでは儲かりません。日々相場の研究をし、自身のトレードの検証を行い、努力を続けている人が読むと、ヒントが見つかるかもしれません。

ただ2冊を比べると、本書の方が読みやすくて有益だと、個人的には思いました。難易度も上がっている印象ですが。

読みやすくなっているのは、単純に4作目で著者も慣れてきて、インタビューの内容や文章表現、解説やまとめが整理されているためかと推測します。最後にある40の教訓も、よくまとまっています。

有益と考えるのは、やはり情報として1作目の「マーケットの魔術師」は古く、4作目の方が新しいためです。トレーダーの話は、1作目だと30~40年前の内容になりますが、4作目では3~4年前までフォローされています。

「マーケットの~」では、登場するトレーダーはいかにブラックマンデーが悲惨だったかを話していました。しかし今考えると、ブラックマンデーは世界の終わりではありません。

株式市場が1日で20%以上下落するというのは、大惨事です。ただ1980年代から1990年代は、全体では幸せな上昇相場でした。ブラックマンデーの傷もすぐに回復します。長期の上昇相場で何回か起こりうる、大規模な調整と位置付けられるでしょう。

「続~」では、1997年からの新興国金融危機、2000年前後のITバブル崩壊、2008年のサブプライムローン危機をトレーダーは経験しています。このうちITバブルは、インターネットを材料にした典型的なバブルと言えます。

しかし1997年の金融危機は、グローバルに投資や投機の資金が動くことで起きました。現在、世界中の中央銀行が金融緩和を行い、マネーがじゃぶじゃぶです。アメリカの利上げなど、金融政策の変更で世界のマネーの動きが変われば、重大な事態を引き起こす可能性があります。その意味で、参考になる出来事です。

サブプライムローン危機は、典型的な不動産バブルとも言えますが、劣悪な資産を金融工学で最上級の資産と取り繕い、レバレッジで超巨額に膨らませたところが新しかったです。

あまりにもやりすぎたので、7年経った今も経済にダメージが残っています。7年経っても先進国がゼロ金利、マイナス金利という異常な状態のままです。サブプライムローン危機の後は、世界が低成長の時代に変わったようです。サブプライムローン危機が、長期上昇相場と長期停滞相場の境になったかもしれません。

これから投資やトレードを考える人は、サブプライムローン危機で何が起きたかを知るべきだと思います。中央銀行がゼロ金利の世界をつくり、債券バブルが発生しています。量的緩和の効果に限界が見えてきており、債券バブルの行く先が怪しくなっています。

またここにきて、世界第2位の経済大国である中国の様子が変です。中央銀行の債券バブル、中国のバブル、崩壊した場合はどちらも、サブプライムローン危機の規模を超えそうな予感です。

内容の難易度が上がっている、という印象も持ちました。「マーケットの~」は、プロのトレーダーに学んで個人投資家も億万長者になろう、というノリも感じます。

「続~」は、ヘッジファンドのマネージャーばかりなので、かなり理屈っぽいです。私が本書を買った目的はレイ・ダリオ氏のインタビューでしたが、これも難しいです。いろいろなマネージャーの理論を理解できれば、勉強になると思いますが。

「マーケットの魔術師」と「続マーケットの魔術師」は、両方とも文章量が相当多いです。どちらか1冊読むなら、私は上のような理由で、「続~」をおすすめします。
(書評2015/07/08)

「マーケットの魔術師」 ジャック・D・シュワッガー(著)

 

トレードに関する名著とされる「マーケットの魔術師」シリーズ。原点となる第1作です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

マーケットに勝ち、大きな利益をあげたい人。

 

要約と注目ポイント

敏腕トレーダーである著者が、非常に優れたパフォーマンスのトレーダー18人にインタビューし、トレードの秘密に迫った。

聖杯を見つけた偉大なトレーダーたち

マイケル・マーカス

商品先物トレーダー。

ブルース・コフナー

主に為替取引を行うトレーダー。

リチャード・デニス

商品先物取引から出発し、成功を収めたトレーダー。

ポール・チューダー・ジョーンズ

長年にわたり、驚異的なリターンをあげ続ける先物トレーダー。

ゲーリー・ビールフェルド

穀物相場で集中的に取引し成功する。そののち債券取引を行う。

エド・スィコータ

開発したトレーディングシステムで、最高のパフォーマンスを出す。

ラリー・ハイト

役者と脚本家から転職し、徹底したリスク管理を特徴とするファンドを創設する。

マイケル・スタインハルト

株式市場を特異な洞察で見るファンドマネージャー。

ウィリアム・オニール

独自の手法で急騰する成長株を発掘する。

デビット・ライアン

ウィリアム・オニールの弟子で、成長株投資を行う。

マーティ・シュワルツ

10年間負け続けたあと、圧倒的なリターンを生むトレード手法を編み出した。

ジム・ロジャース

ジョージ・ソロスと設立したクオンタム・ファンドで、最高のパフォーマンスをあげる。その後は自身の資産を運用している。

マーク・ワインスタイン

徹底したテクニカル分析、多くの経験と優れたセンスにより、ほぼ100%の短期トレード勝率を誇る。

ブライアン・ゲルバー

ブローカー出身の、市場心理を読むのに長けたトレーダー。

トム・ボールドウィン

個人で巨額の資金を動かす、超短期トレーダー。

トニー・サリバ

巨額の利益をあげるオプショントレードを成功させながら、安定的なパフォーマンスも長く維持する。

バン・K・タープ

トレードで成功するための心理学を研究している。

エドワード・ソープ

確率の力でカジノに完勝した数学者。世界初のクオンツ・ヘッジファンドを創設。

勝利を収めてきたトレーダーたちは、何を考え、どのようにトレードしてきたのか。貴重なインタビュー集です。

 

書評

たくさんの成功者が出てきて、それぞれのトレード手法や投資哲学を語ります。知らない人もいますが、有名人もいます。

ジム・ロジャースは、日本のメディアにもよく登場します。私が書評を書いた本と、関わりのある人たちもいました。

「オニールの成長株発掘法 第4版」の著者ウィリアム・オニール。「ヘッジファンドⅠ・Ⅱ 投資家たちの野望と興亡」で取り上げられた、マイケル・スタインハルトとポール・チューダー・ジョーンズ。

18人のトレーダーが、成功の秘訣を語ります。なるほど、役に立つ教訓だと思うことはあります。

1回のトレードでの最大損失を限定する。ポジション全体のリスク管理。損切りは早く、利食いは遅く。感情的なトレードをしない。トレードがうまくいかないときは、トレード額を落としていく。規律を守る。などなど。

大成功するトレーダーは個性が強い人が多いので、インタビューでも面白い言い回しや例えなどをします。奥深いような発言をたくさん読んでいくと、自分も何かすごいことがわかったような気持ちになりやすいです。

しかしトレードを始めたばかりの人が、この本を読んでうまくいくとはあまり思えません。こういう本を読むと、自分も大儲けできるような気になりますが、読んだだけでは勝てません。

本書が役に立つのは、毎日相場の研究を重ね、自分のトレード結果をずっと検証しているような人でしょう。そんな人なら、多種多様なトレーダーの話の中に、自分の売買手法に合うヒントを見つけることもあると思います。

各トレーダーで手法が違うので、教訓も異なります。

損切りの基準を決めている人もいれば、損切りポイントを決めていない人もいます。1つのトレードを、必ず資産全体の一定比率以下に限定する人もいます。チャンスと考えたトレードに、とても大きな比重をかける人もいます。

そのようなわけで、かなり分量のある本ですが、各読者にとって有益な部分はそれほど多くないような気もします。
(書評2015/07/02)