「株式投資の考え方いろいろ」カテゴリーアーカイブ

「株式売買スクール」 ギル・モラレス/クリス・キャッチャー(著)

 

7年間の株式投資で18000%を超える収益!
成長株投資で有名なウィリアム・オニールのもとで、著者たちはポートフォリオマネジャーを勤めました。本書では、超絶パフォーマンスを生んだ株式の投資法を解説します。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

成長株投資で大成功したい人。

 

要約

株式投資で成功するためには、ジェシー・リバモア、リチャード・ワイコフ、ウィリアム・オニールといった偉大な先人から学ぶ必要がある。
投資の前に、よく調査し準備せよ。
株は安値ではなく高値で買え。
損切りは素早く、利食いはゆっくり。
利益を出す銘柄に資金を集中させよ。
機関投資家の買う株を買え。
チャートパターンを見極める。
正しい買いのポイント、ピボットポイントで買え。
感情、個人的な見解、ニュース、耳寄り情報に動じない。
トレードしすぎない。辛抱強く待て。

クリス・キャッチャーが7年間で18000%の利益を得た方法。
四半期の売上や利益が、加速的に増加している銘柄を選ぶ。
揉み合いのベースからブレイクアウトしたところで、集中的に買う。
10日移動平均線を下回って、下落したところで売る。

ギル・モラレスが11000%の利益を出した方法。
四半期の売上や利益が、加速的に増加している銘柄を選ぶ。
揉み合いのベースからブレイクアウトしたところ(取っ手付きカップの形)で、集中的に買う。
50日移動平均線が強い支持線となることを確認し、買い増す。
マーケットが調整中なのにブレイクアウトしそうな銘柄は、マーケットが上昇トレンドになると大化け株になりやすい。
ピボットポイントからブレイクアウトして、3週間以内に20%上昇したならば、損切りにならない限り8週間は保有する。
チャートパターンが天井を示し、大商いを伴って、窓を開けて下落したところで売る。
分散投資せず、大化け株に集中投資する。

失敗から学ぶ。
儲かってくると、思い上がってすべてがわかったような気になるが、そのようなエゴを抑えることが大切だ。自分ではなくマーケットが正しいので、常に観察してマーケットの示すサインを読み取れ。
物質的な欲求にとらわれず、マーケットの波に乗り続けることだけに専念する。
先入観で銘柄にほれ込まず、自分の投資法(銘柄選択の条件やトレード手法)を守る。
週足チャートで、最低6週間の適切なベースが形成されていなければ、買わない。流動性の低い銘柄を、大量に買わない。
景気や相場サイクルに関わらず、そのときの経済状態で最先端の企業が、大化け株の核となる。新しい経済や業界の重要な地位にある企業を、機関投資家は必ず買う。大化け株には、1日の平均出来高が大きいという特徴がある。
まず自分の銘柄の観察に集中する。マーケットの指標を気にするのはそのあと。
空売りでは、絶好の機会を待つ忍耐力が重要だ。

・ベースからブレイクアウトして高値を更新する銘柄を、さらに早い段階で発見する方法、ポケットピボットについて。

適切な売りシグナルについて。
50日移動平均線を下回ったら売る。買ってから7週間、50日移動平均線の上で持ちこたえたら、それ以降は10日移動平均線を下回ったら半分売る。50日移動平均線を下回ったら、残りの半分を売って手仕舞う。

空売りの基本ルール。
マーケットが下降トレンドであり、弱気相場に入った早めの段階で行う。
直前の強気相場で大きく上昇した大型の主導株で、天井を付けた銘柄を空売りする。
空売りは、天井をつけてから8~12週後に行う。
出来高が多く、流動性のある銘柄を空売りする。
損切りは3~5%に設定する。
利益目標は15~30%が適当。20日移動平均線をトレイリングストップに使ってもよい。
空売りでは、絶好の機会をひたすら待つ。チャートパターンの完成と、急激な株価の下落、大商いを伴うブレイクダウンである。

・マーケットのタイミングを計る、マーケットダイレクションモデルについて。

オニールの十戒。
自己を見失ってはならない。
恐怖を克服する。
敵の中傷から自身の欠陥を学ぶ。
失敗から常に学ぶ。
保有銘柄について話してはならない。
天井で調子に乗らない。
まず週足チャート、次に日足チャートを見る。
まず大化け株を見つけ、次に大量に買う方法を見つける。
付き合う人間は慎重に選ぶ。
常に異常なほどの集中力を維持する。

・オニールと一緒にトレードした経験談。過去に売買した銘柄に関する、チャート分析と解説。

 

書評

オニールの成長株投資に倣って利益をあげた、トレーダーの著作です。著者たちはオニールに学び、オニールの売買ルールを微調整して大きな利益をあげたそうです。

とにかく長い本なので、はじめに著者たちの売買ルールをすべて説明してほしいと思いました。この銘柄をチャートのこの位置で買い、大成功した。こちらの銘柄でも大成功して、利益が500%だった。この売買では大失敗した。などとトレードの経緯が、ずらずら長く書かれています。

はじめに売買ルールが書かれておらず、経過とともにぽつぽつとルールが出てくるので、どういう戦略で取引を始めたのかが理解しにくいです。オニールの成長株投資に興味があるなら、まず「オニールの成長株発掘法 第4版」を読んだ方が良いです。こちらは売買ルールを簡潔に明示しています。そこから、自分に合うように微調整するのが良いでしょう。

読んで納得する教訓もあるのですが、本のページ数が多すぎて冗長です。まとまりに欠ける印象で、「オニールの成長株発掘法 第4版」を直接読んだ方が効率的だと思います。
(書評2015/07/17)

「株式投資 第4版」 ジェレミー・シーゲル(著)

 

何十年にもわたる資産運用において最も有利な投資とは何か、ということを考える本です。200年分のデータ分析から見えてきた、最高の投資方法とは。

 

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

長期の資産運用について考えたい人。難易度は初級者向け以上かと思います。

 

要約と注目ポイント

1802~2006年の米国市場のデータを分析した。

 

長期で利回りの高い資産運用は株式投資

利息や配当、値上がり益すべてを再投資した実質トータルリターンでは、株式投資が最も利回りが高かった。株式投資は200年間を通して、ほぼ一貫して約7%の利回りを記録した。

長期債の利回りは株式より大きく劣り、短期債の利回りはさらに低かった。金(ゴールド)や預金では、実質トータルリターンはほとんどなかった。特に第二次世界大戦以降は、債券や預金のリターンは低くなり、預金はマイナスのリターンだった。

債券は株式より安全と思われることが多いが、金利やインフレ率の影響を受けやすく、債券は長期では利回りが悪くなる。米国以外の国のデータでも、株式投資が最も利回りが高かった。

20年程度より長い期間で投資をするなら、株式の利回りが債券の利回りを上回る。これはどの時代の期間を見ても、ほぼ当てはまる。

たとえ株価がピークのときに投資を始めても、20~30年の期間があれば株式の利回りは債券より大きくなる。債券をポートフォリオに入れることで、リスクを低減できる可能性がある。

 

歴史的なデータを見ると、長期では株式投資が最も利回りが高く、有利な資産運用です。平均すると、年7%ほどの利回りでした。

 

投資の基礎知識

株価指数(ダウ平均、S&P500、ナスダックなど)や、その構成銘柄についての解説。

上場投資信託、株価指数先物、オプションについての解説。

ブラックマンデーの教訓。

 

資産運用の考え方

資産の運用利回りを最大化するために、税金について考えることは重要である。税制面で債券投資は株式投資より不利で、債券投資のリターンを低下させる。株式の値上がり益に対する税は、売却するまでかからないためである。

しかし値上がり益は購入時と売却時の価格差なので、インフレ率が高いと税が大きくなり利回り低下の原因となる。

 

株式投資はインフレに強いと言えます。ただ猛烈なインフレが来ると、値上がり幅が大きくなり、売却した場合の税金が重くなります。

 
株式の価値は、企業の利益と配当に基づく。一般に株式、債券、不動産など資産の価値は、将来受け取ることが期待できるすべてのキャッシュフローを現在価値に割り引いた価格である。株価は、将来の配当総額の現在価値と等しい。

企業の利益は、本業からの利益をコアとみなすべきである。従業員のストックオプションを費用計上し、年金費用を調整し、本業と無関係なキャピタルゲインやのれん代の減損は除外されるべきだ。

PERの逆数である株価益回りは、将来の実質利回りの参考にできる。

経済成長率の高い国や成長率の高い時代の株式市場は、逆に株式利回りは低かった。これは高い経済成長には設備投資が必要で、借り入れや増資が行われたためと考えられる。

今後は経済の安定性が増し株式のリスクプレミアムが下がるので、PERが過去の平均値15倍より高い状態が続くだろう。

先進国の高齢化は、資産の買い手を減らし株価の下落要因となる。それを防ぐために、新興国と資本市場が統合されるべきだ。

GDPや株式資本のシェアは、先進国から新興国へと移っていく。米国株式市場だけでなく、他の先進国や新興国にも分散投資すべきだ。

投資先の国やセクターを分散させることで、ポートフォリオ全体のリスクを軽減できる。

 

経済成長率が高くても、株式利回りで有利になるとは限らないようです。そうなると、多くの国に分散投資することは、安定的にリターンを高めることに貢献しそうです。

 
過去のデータは効率的市場仮説に完全には合致せず、市場にはノイズがある。

PERの低い割安株は、高い利回りを示した。PBRの低い割安株も、利回りは高くなった。また高配当な銘柄群は、最終的な投資利回りが高くなった。小型株には大型株より利回りが高くなる時期があった。

ただし常に平均を上回る戦略は存在しないことを、投資家は認識すべきである。

 

長期のインデックス運用で、広く分散投資することが、資産運用の正解です。ただし、市場には歪みがあることは、認識しておくべきでしょう。

 

インフレと景気循環

金本位制からの離脱や通貨切り下げ、金利引き下げなどの金融緩和政策は、株価とインフレ率を上昇させる。マネーサプライを増加させれば、インフレ率が上昇する。

インフレに対し、短期ではどのような金融資産でもインフレヘッジの効果は低いが、長期では株式がインフレヘッジに最も優れている。

株価は企業の利益に左右され、企業の利益は景気循環に影響される。しかし景気循環を正確につかむことは極めて困難である。

そのため投資家は、景況感を後追いして売買してはならない。市場が楽観的なときに高値で買い、悲観的なときに安値で売ることになるからだ。

経済指標の発表は、景気循環やインフレ率、企業利益の予想を変化させる。また中央銀行の政策に影響を与える。これらは株価に影響するが、投資家は短期的に反応するより長期的な投資戦略に専念した方がよい。

 

長期的な視点で投資することが、最後には良いパフォーマンスを残すと考えられます。

 

すぐれた投資とは

株価の動きがランダムではなく、チャートに意味があるという主張は疑わしい。しかしトレンド・フォローやモメンタム投資といった方法で、利回りを改善できる可能性はある。

過去のデータによれば、アノマリーは存在する。1月は小型株の利回りがよい、9月は利回りが悪い、クリスマスから新年にかけては利回りがよい、月の前半が後半より利回りが高くなる、など。

将来もアノマリーが維持されるかは不明であるが、アノマリーを利用できるなら利用するのもよいだろう。

不利な投資行動を避けるため、投資の心理学(行動ファイナンス)について認識しておくべきだ。

アクティブ運用ファンドが市場平均に勝つのは難しい。長期投資家は、時価総額加重インデックスファンドのようなパッシブ運用がよい。

今後はファンダメンタル加重平均のインデックスファンドなど、バリュー重視のパッシブ運用も期待される。

株価が大きく動いた日に、その原因が重大なニュースにあった事例は実はあまり多くない。株価の先行きを予測することはほとんど不可能である。

長期投資で成功するには、感情を制御し、長期的な目標と決定した投資戦略を維持することが重要だ。

 

200年という長い期間のデータで、株式市場を分析しています。個人投資家が長期で資産運用するのに、とても貴重な教訓となります。

 

書評

資産運用を俯瞰的に、大枠から考える本です。個別銘柄やら投信やらを選ぶ前に、まずどういう考え方で投資するかを決めることが大切ですが、本書はそういう方向に役立ちます。

過去200年のデータを分析することで、有利と推測される投資行動を考察しています。そういった意味で、本書は「敗者のゲーム」「ウォール街のランダム・ウォーカー」と同じような位置付けかと思われます。

なお本文中に、税制面で株式投資は債券投資より有利とありますが、これは完全に米国に関する記述です。日本の税金については自分で考えないといけません。

本書の内容は、過去のデータ分析をもとにした投資戦略本と似ています。まとめると普通です。

『超長期で見れば、株式投資が最も利回りがよい。ファンダメンタル面で割安な株を選び、パッシブ運用など分散投資をして、取引コストを節約して長期で保有せよ。経済や株価の予想はほとんど当たらないと考えるべきで、市場心理に巻き込まれないこと。決めた投資のルールを長期で守ること。』

すごく普通なまとめですが、本書は効率的市場仮説に基づくパッシブ運用至上主義ではありません。トレンド・フォローの有効性に言及したり、アノマリーを認めたりしています。

市場に関する解説を読んでも、同意できるところがあります。このように市場は反応したり動いたりするよな、と実際に取引している感覚に近い解説です。

本書の知識を土台に、パッシブ運用を基本に据えながら、自分に合った長期投資戦略を考えてみてはいかがでしょうか。
(書評2014/09/23)

「ビル・ミラーの株式投資戦略 S&P500に15年連勝した全米最強の投資家」 ジャネット・ロウ(著)

 

1990年代から2000年代にかけて、米国株式市場でS&P500を15年連続で上回る成績を残した投資家、ビル・ミラーに関する本です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

株式投資で市場平均に勝ちたい人。ハイテク株も保有する、変則的なバリュー投資の手法を知りたい人。解説書というよりは、やや読み物に近い本です。

 

要約

ビル・ミラーはファンドマネージャーとして、1991年から15年連続でS&P500に勝ち続けた。ミラーはバリュー投資を行うが、割安な株だけでなくハイテク株などにも投資する。大学では法律、政治倫理、哲学などを学び、投資家となった後も最新の自然科学や社会科学の研究に関心を持っていた。

・本質的な価値に比べて、大幅に割安な株価の企業に投資する。投資対象は限定せず、ハイテク企業なども含まれる。バリューとは、投資が生み出す将来のキャッシュフローの現在価値がバリューであることだ。マーケットが弱気のときが、投資には好機だ。

・資源開発、農業、汎用品製造などの分野では、従来の経済学にある効用逓減の原則が成り立つ。しかしソフトウェア、医薬品、航空機など知識集約産業では、効用は逓増する。すなわち、市場やシェアが拡大すれば、ますます利益は大きくなる。

コスト優位性、ネットワーク効果、親しみやすい状態という3条件があれば、効用は逓増する。コスト優位性とは、初期投資(研究開発費)は莫大だが複製をつくるコストがきわめて低いことである。ネットワーク効果とは、ある製品を使う人が増えれば、それを使わざるを得ない状況が増え、その製品の普及が加速することである。親しみやすい状態とは、消費者がある製品に慣れれば、さらにずっと使い続けることになる状態を指す。
このような理由で、初期に優位に立てば、圧倒的な地位を占めることもある。ただし有利な立場は、10年くらいしか持続しない。

効用の逓増するハイテク業界では、勢い(動的なプロセス)が重要となる。

・(市場のような)複雑な状況では、問題を定義すること自体が難しく、論理的に考えることもできなくなる。パターンを認識しモデル化するという、帰納的な思考が有効である。

・金利やGDPを予測することは不可能である。予測できない変数を予測してポートフォリオを運用することは、過ちを引き起こす

ミラーが影響を受けた、サンタフェ研究所の経済思想。
①個々の市場参加者が相互の行動を推測して行動し、相互作用の結果として経済事象が発生する。
②世界経済全体の管理人は存在せず、経済は常に新しい条件に適応して変化し、均衡点はほとんど実現しない。

ミラーは企業の本質的な価値を推測するため、定量的な分析と定性的な分析を行う。
定量的分析:PER、PBR、キャッシュフロー、ボラティリティなど
定性的分析:企業の製品、競合、戦略、産業動向など
しかし伝統的なバリュー投資では、有形固定資産を持つ企業を買う傾向がある。動きのあるハイテク株などへの投資では、広い視野が必要となる。将来得られるキャッシュフローを、どれだけ正確に推計できるかが問題となる。

・投資に成功した株の特徴としては、一時的な問題で大きく値下がりした株業界トップ企業の株経営者が優れている企業の株利益率が高い(資本調達コストより高い)事業を持つ企業の株、などがあった。

モダン・ポートフォリオ・セオリーを意識する。
リスク・リターンの観点から投資対象を評価し、資産配分を決め、銘柄を選んでポートフォリオを最適化し、投資成績を評価する。

資産配分では、大部分を株式に投資する。ひとつのセクターには集中させない。景気循環型の銘柄は避ける。

 

ミラーの投資原則

バリュー投資を基本とし、環境変化に応じ投資戦略を進化させる。

・慎重にバリューかどうか評価し、企業の本質的価値より大幅に安い価格で買う

・経済と株式市場について、観察はするが予想はしない

・優れたビジネスモデルを持ち、長期にわたり利益率の高い企業を選ぶ

誤った市場心理に惑わされず、逆にそれを利用する。

・株価が上昇している競争力のある企業をポートフォリオに残し、競争力がない企業は外していく

平均購入コストを低く抑える

ポートフォリオは15~50銘柄に絞る。

長期投資し、保有株の回転を低く保つ。

株を売却する時期。
①株価が適正になったとき。(株価が本質的価値まで上昇し、割安でなくなったとき。)
②より割安な銘柄を見つけたとき。
③投資環境が変化し、投資戦略を変えたとき。

・銘柄選択の正解率を上げるのではなく、ポートフォリオの予想利回りの最大化をめざす

 

書評

15年連続で市場平均に勝つという、とんでもない成績を残したファンドマネージャーについての本です。ビル・ミラー本人が書いてはおらず、ライターが本人へのインタビューや取材をまとめて書いたので、読み物っぽく仕上がっています。そのため投資手法を勉強したい人には、ちょっと使えない印象です。ミラーの投資原則としてまとめられているところだけ、簡潔でわかりやすいです。

ITバブル崩壊後に書かれたのでハイテクやITの話が多く、ひとむかし前の本だなという感想は浮かびました。もう興味は金融危機後の世界の姿だとか、先進国の停滞の真相などに移ってきています。

ミラーの、「経済と株式市場について観察はするが、予想はしない」や「銘柄選択の正解率ではなく、ポートフォリオの利回りの最大化を目指す」といった考え方にはとても共感します。「本質的な価値より大幅に割安な価格で企業に投資し、株価が本質的価値に到達したら売る」という考え方で売買しようと私は現在考えているので、偉大な投資家に同じことを言われると心強くなります。

ところがこれほど優れた投資家であるミラーも、2008年からの世界的な金融危機で大きな損失を出します。どうも金融株を保有して、失敗したようです。これだけ実績がある人でも、市場環境や企業の業績を見誤ることがあるとは、本当にリスク管理は大切です。恐るべき金融市場。
(書評2014/09/12)

アマゾンでのご購入ビル・ミラーの株式投資戦略 S&P500に15年連勝した全米最強の投資家
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「ピーター・リンチの株で勝つ アマの知恵でプロを出し抜け 新版」 ピーター・リンチ/ジョン・ロスチャイルド(著)

 

伝説のファンドマネージャー、ピーター・リンチの著作です。株式投資の奥義を垣間見ることができます。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

ピーター・リンチの株式投資手法を学びたい人。

 

要約

投資を始める前に、投資をする目的を考え、自分の態度をしっかり決めておくこと。
株式投資についてどう思うか、市場を信頼しているか、何を期待して投資するのか、短期なのか長期投資なのか、株価が急落したときにどうするか、などである。優柔不断で確信が持てないままで投資をすると、暴落のさなかに底値で投げ売りする最悪の行動をとりかねない。

・プロの機関投資家は、アナリストがフォローしておらず推薦していない銘柄は買いにくい。値下がりしたときに責任を問われるからだ。特に企業年金や保険会社で運用する場合は、投資先に多くの制約がある。
アマチュアにはプロの投資家にはない強みがあるので、それを活かせ。あなたはアナリストより特定の分野に詳しいかもしれない。また、どんな銘柄を選ぶか、いつ買うのか、いつ売るのか、どれだけ買うのか、どれだけ売るのか、ポートフォリオにどんな銘柄をどれだけ入れるか、制限がないことは強みだ。

・歴史的に見れば最も収益率が高いのは株式で、次に社債や公共債であり、いちばん低いのは国債である。株式投資はリスクが高いが、債券にも金利変動のリスクはあり、インフレを考慮すると国債は実質利回りゼロに近い。よく調査し長い目で見て基本に忠実に行動すれば、株式で勝てる可能性は高くなるので、株式投資には挑戦する価値がある。10銘柄を選び6銘柄で成功すれば、十分な成果があげられるだろう。

人々が株式市場に集まり人気を博しているときは株式投資に悪い時期で、不人気で無関心なときが株式投資に良い時期となる。

株式投資を始める前にチェックする3つのこと。
①家を持っているか。
よく調べてそれなりの家を買えば、長期間住んだあと値上がりした価格で売れる。株式の前に住宅を買うこと。
②お金が必要か。
2~3年で必要になるお金では株式投資をしない。失敗しても今後の毎日の生活に支障のない、余裕資金で株式投資をする。
③株で成功する資質があるか。
忍耐強さ、自主性、常識、苦痛への耐久力、自由な思考力、謙虚さ、柔軟性、意欲、失敗を認める強さ、パニックを無視する力など。完全な情報がないなかで決断する能力や、自分の変な信念や思い込みを除くことも必要だ。相場先行きの予測や自分の相場観など信じず、それを無視し、ファンダメンタルズに変化がなければ保有したままジッとしていられるか。

相場の先行きはわからない。相場の予測をするよりは、ファンダメンタルズと比較して割安な株を探すべきだ。

・身の回りの物事をよく見ることで、アナリストがまだ見つけていないテンバガー(10倍上がる株)を探し出すことができる。自分が詳しい業界の知識と、一般消費者としての知識は、急成長する新興中小企業を探すのに役立つだろう。
だが候補に挙がった株をすぐに買ってはいけない。会社についてよく調べる。巨大企業の株価は動きにくく、小さい会社の株価の方が動きやすい。

株価の動きから、企業は6つに分類できる。
なお、企業は成長の段階やビジネス環境によって、別の分類へ移ることもある。
①低成長株
大きくて古い会社。国の成長率より少し上くらいの成長である。これらは過去に急成長したが成長が鈍化した会社などで、株価は横ばいで配当は高く安定的である。
②優良株(中成長株)
低成長株を上回る成長をする巨大企業で、株価は緩やかに上昇する。買うタイミングがよければ、かなりの収益が期待できる。ただテンバガーにはなりにくく、2年で50%も上昇すれば利食いを検討する。不況時にも強いので、ポートフォリオに入れるのもよいだろう。
③急成長株
年に20~25%成長する小さい企業で、うまくいけば10倍かそれ以上に株価は上昇する。急成長株は急成長産業の中にあるとは限らず、低成長の業界にあることも多い。ただし急成長株には倒産のリスクや、成長の限界が来て停滞し株価急落のリスクがある。いつ成長が止まるか、どれだけの資金を投資するかの見極めが大事だ。
④市況関連株
売上や利益が循環的に上下し、株価も上下する。自動車、航空、鉄鋼、化学、タイヤなどである。株価は好況時には優良株より大きく上昇するが、不況時は大きく下げる。市況関連株は大企業だが、優良株と混同してはならない。市況関連株はタイミングがすべてである。
⑤業績回復株
業績不振を極め無成長となったが、破綻の手前で回復した株である。相場一般とは無関係に急速に株価は上昇する。業績回復株には、政府の支援によって破綻を回避したもの、予想外の業績悪化から回復したもの、突発的な大事故で下げたもの、倒産企業から優良事業がスピンアウトしたもの、リストラによるもの、などがある。
⑥資産株
アナリストや乗っ取り屋がまだ気付いていない資産を持っている株。自分の業界知識や消費者としての知識を利用して探す。現金、不動産、優良事業などの資産を持っている。

わかりやすい「どんな馬鹿でも経営できる」会社は、投資対象として最高である。
社名が退屈もしくは奇妙、代わり映えしない退屈な業容、感心しない魅力的でない業容、分離独立した、機関投資家が保有せずアナリストがフォローしていない、悪い印象を与える、気が滅入る業容、無成長か低成長の産業、ニッチ産業もしくは独占的、買い続けなければならない商品をつくる、テクノロジーを使う側である、インサイダーが買っている、自社株買いをする。このような会社は素晴らしい。

避けるべき株。
超人気産業の超人気株。(業界内の競争が厳しすぎる。)
第二の××と呼ばれる株。(××は有名企業。)
多悪化した株。(本業と関係ない会社を高すぎる価格で買収し、悪い多角化をする会社。)
耳寄りなストーリーを持つ株。(中身のない特ダネで期待を引きつけている。)
下請け会社。(特定の顧客に依存している会社。)
耳触りのよい社名の会社。

・株をいくらで買えばよいのか。株は会社の部分所有権だということを忘れるな。最終的には株価は収益と並行になる。調べる会社のPERを、株式市場全体、業界平均、過去のPERと比較する。急成長株はPERが高く、低成長株のPERは低くなるが、会社がどのように将来の収益を伸ばそうとしているのか調べてみる。

・ある会社の株を買う前には、十分に調査をし、自問自答すること。買う理由を子供に理解できるように、2分間で自分に説明してみる。

事実を確認する。
年次報告書や四半期報告書をチェックする。証券会社から情報を得る。会社に質問したり、IRから話を聞く。本社を訪問して会社の雰囲気を感じる。商品やサービスを利用したり、販売店を観察する。

注目すべき数字を確認する。
①興味深い商品が売上全体に占める割合を調べる。
②PERを見る。
(成長率+配当利回り)÷PER の値が2以上なら望ましく、1.5でまずまず。
③キャッシュを見る。
1株あたりどれだけキャッシュや、キャッシュに相当する資産を保有するか見る。それを株価と比較する。
④負債を見る。
バランスシートで負債はどれだけか、資産と負債の比率はどうか、短期と長期の負債はどれだけあるか。
⑤配当。
配当がその会社にどのような影響を与えているか。低成長株や優良株なら、配当は着実に支払われてきているか。無配でも急成長しているか。
⑥簿価。
簿価よりも実際の資産価値が低くないか。あるいは、不動産やブランド力や特許に含み資産がないか。
⑦キャッシュフロー。
株価に比べて高いフリーキャッシュフローが得られているか。設備投資の必要性が低い事業が望ましい。
⑧在庫。
売上以上に在庫が増えていれば危険な兆候である。
⑨成長率。
収益の伸びを見る。20%の成長率でPER20倍の会社の方が、10%の成長率でPER10倍の会社よりも望ましい。
⑩税引前利益率。
同業種内で利益率の高い会社がよい。長期保有なら利益率の高い会社を選ぶ。業績回復株なら、利益率が低い方が回復期には利益率の増加が大きい。

定期的に会社をチェックする。
株を買った理由となる状態は維持されているか。会社の成長段階には、本業が発展する始動段階、新規事業を展開する急成長段階、成長が停滞する成熟段階がある。会社がどの段階か考える。

個人投資家は年利回り12~15%をめざして、長期に利益を最大限にするような一貫した戦略をとり、ポートフォリオをつくるとよい。自分の得意な業界や、綿密に調査した銘柄から選ぶ。割安な優良株、最悪期から回復を始めた市況関連株や業績回復株、よく調査した資産株や急成長株などである。買った株の買った理由となるストーリーが崩れ始めたら、他の良い株と入れ替えてポートフォリオを調整する。

・ファンダメンタルズが良好な株が暴落に巻き込まれたときは、絶好の買うタイミングである。売るべきタイミングは難しい。ファンダメンタルズが悪化したとき、買った理由が失われたとき、値上がりしたので利食って別の割安な株に乗り換えるとき(優良株)、業績の循環が頂点に来たと思われるとき(市況関連株)、成長が鈍化したとき(急成長株)、業績が転換点に来たとき(業績回復株)、市場に発見されて値上がりしたとき(資産株)、などが売るタイミングである。業績回復株は回復後に他の分類に移行することもある。

次のような声に惑わされてはいけない。
「こんなに下がったのだから、もう下がらない」
「ここが底値だ」
「これだけ上がったのだから、もう上がらない」
「必ず値は戻す」
「保守的な株は値が動かない」
「これ以上待っても値は動かない」
「値上がりしたから良い投資だった、値下がりしたから悪い投資だった」
など。

オプション、先物、空売りは勧められない。

 

書評

さすがにいいことを言っているような気がしますが、ちょっと本の古さは否めない面もあります。本編はおそらくブラックマンデー直後頃に書かれており、新版に寄せた序章もITバブル崩壊直前あたりに書かれたようです。本文中にあげられる企業やビジネス環境が古いので、例はわかりにくいです。

このあとITバブル崩壊、アメリカの住宅市場バブルとその崩壊、リーマンショック、欧州金融危機と来るので、著者の見解を知りたいと思いました。最近の先進国の超低金利などについて、聞いてみたいです。株式投資の基本は変わらないと言われるかもしれませんが。

企業の6分類や望ましい会社、避けるべき会社の考察には、普遍性があるように感じました。退屈な社名の会社、気が滅入る退屈で人気がなく無視されるような事業の会社こそが最高の会社だ、というのは笑えました。言いたいことはわかりますが。葬儀屋チェーン、ガソリンスタンドの廃油を集める会社、缶と瓶の栓を作る会社(社名はクラウン・コルク・アンド・シール)、採石会社などがあげられています。

住宅はほぼ間違いなく利益が出るので、株の前に買えというような記述もあります。アメリカは今後も人口は増えるので、注意深く選べば住宅も値上がりするでしょうが、絶対はありません。必ず儲かると限度以上の借金で不動産を買った結果が、サブプライムローン危機です。古い本なので読んで納得できるところは教訓とし、現在には合わないかもというところは気に留める程度がいいのではないでしょうか。
(書評2014/07/30)

「ミネルヴィニの成長株投資法」 マーク・ミネルヴィニ(著)

 

本書は株式投資の解説書で、成長株投資について書かれています。成長株投資は、急騰する銘柄を探し出して大きなリターンを狙う方法です。この手の本にしては結構新しく、リーマンショック後のマーケットについてまで含まれています。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

 

対象読者層

成長株投資について勉強したい人。難易度は入門書から初級者向けレベル。

 

要約

はじめに

急成長株への投資では、適切なノウハウや規律を身につけ、勝つための戦略が必要である。株式トレードで並外れたパフォーマンスを達成するには、成功したいという強い熱意を持たなければならない。

十分に研究してトレード戦略をつくり、準備を万全にして好機を待て。少額からでも始めて、自分で考え自分で調べて実戦で経験を積め。

・個人投資家は機関投資家より有利である。流動性に拘らず銘柄を選べるし、投資先を分散させなくてもよいし、機動的に取引でき、現金比率も自由に変えられる。

・普通のやり方では超絶したパフォーマンスを上げられない。普通の人ではできない努力をしなければならない。バリュー株投資、成長株投資、デイトレード、長期投資、何かに秀でるにはひとつのことに絞れ。自分の手法をはっきりと決め、目標をめざすためのルールをつくれ。

 

SEPA(Specific Entry Point Analysis)戦略 明確な買い場分析

特徴
①急成長の初期のトレンドを発見する。
②急成長局面の前に起こる、ファンダメンタルズの大幅な向上を予測する。
③上昇のきっかけを待つ。
④正しい買い場のタイミングを計る。
⑤利益確定と損切りを行い、利益を守る。

銘柄のランク付け(スクリーニング)
以下の順序でスクリーニングする。
①トレンドテンプレート(後述)を満たすか。
②ファンダメンタルズでスクリーニングする。
③残った銘柄は、リーダーシッププロファイル(過去の急成長株)との類似点を調べる。
④手作業での検討を行う(売上、利益、EPS、業績予想、会社のニュース、競合との比較、株価、出来高、流動性リスクなど)。売上や利益のサプライズな上方修正、機関投資家による買い、需給のアンバランス(買いが多い)があるか考慮する。

・典型的な急成長株は、上場してから日が浅く比較的小規模である。ただし、下落相場の時期には急上昇しにくい。

PERの高低で判断して株を買ってはならない。昔の株価で高いか安いかを判断してはならない。急速に売上を伸ばし、最も増益の見込みが高い会社を探せ。

 

トレンドテンプレート

上昇トレンドにあり、(特に大手機関投資家に)関心を持たれている株を買いたい。

株価のサイクルには4つのステージがある。
第1ステージ 横ばいの底固め局面(無関心)
第2ステージ 上昇局面(機関投資家の買い集め)
第3ステージ 天井圏(機関投資家の売り抜け)
第4ステージ 下落局面(投げ売り)

第1ステージ
株価は200日(または40週)移動平均線の近くで上下しトレンドはない。出来高は少なく、何カ月かあるいは何年も続く。底値拾いは不要である。第2ステージの上昇トレンドが形成されるまで買わないこと。

第1ステージから第2ステージへの転換
上昇はたいてい予告なく始まり、出来高がかなり増える。押し目になると出来高はある程度減る。
株価>150日移動平均線>200日移動平均線となる。
200日移動平均線は上向きで、高値と安値を切り上げてきている。商いを伴って下落した週よりも、商いを伴って上昇した週の方が多い。

第2ステージ
ファンダメンタルズの改善など追い風がある。機関投資家による買い集めの兆候がある(上昇局面での長大陽線と大きな出来高、押し目での出来高減少)。
株価>150日(または30週)移動平均線>200日(または40週)移動平均線となる。
株価は高値と安値を階段状に切り上げ、200日移動平均線も上昇トレンドである。短期の移動平均線は長期の移動平均線を上回っている。平均以上の出来高のときは、下落よりも上昇が多い。

第3ステージ
増益率が落ちてきて、天井圏で変動幅が大きくなり不安定になる。一部の機関投資家が売り抜け、買い手は弱い買い手に変わる。業績予想を上回ることができなくなり、上昇トレンドラインを下抜く。通常は出来高を伴って、大きく下にブレイクする。200日移動平均線は天井圏で数回上下し、横ばいとなり、下降トレンドへ転換する。

第4ステージ
下方修正などのネガティブサプライズもありえる。下降トレンドは続き、下げる日に出来高が増え、上げる日は出来高が減る。
200日(40週)移動平均線>株価となる。
株価は52週安値に近く、高値と安値を階段状に切り下げる。200日移動平均線は下降し、短期の移動平均線は長期の移動平均線を下回る。

4つのステージ分類は、株価がサイクルのどこにあるか見通すために使う。株を買ってよいのは第2ステージのみ。

トレンドテンプレート(以下のすべての基準を満たすこと)
①株価>50日(10週)移動平均線>150日(30週)移動平均線>200日(40週)移動平均線
②200日移動平均線が少なくとも1カ月(4~5カ月以上が望ましい)上昇トレンドである。
③現在の株価が52週安値より30%以上高い。(良い候補では52週安値から100~300%以上も高い。)
④現在の株価が52週高値から25%以内にある。(新高値に近いほど良い。)
⑤レラティブストレングス(株価指数と比べてどれだけ強いかの指数)のランキングが70以上。(80台か90台なら望ましい。)

・第2ステージの途中で3~5回ほど、5~26週続く横ばいのベースが形成される。ベースの数で、第2ステージがどれだけ進んだか目安にできる。

ファンダメンタルズより株価のトレンドを目で確認すること。ファンダメンタルズの悪化がわかるより、株価の下落の方が早いことがある。

 

カテゴリーと業種

会社は6つのカテゴリーに分類できる。
①先導株
業界で最も増益率が高く、売上や利益は1位もしくは2位か3位である。相場の上昇初期に最も上昇率が高い。競争優位性があって急成長できそうかを見る。小売業なら、既存店売上高が健全に伸びているかを見る。急成長している先導株は割高に見えるが、比較的初期のうちにこれを見つけて投資することが目標である。

②大手ライバル企業
業界トップの2~3社の動向は常に見ておく。大手ライバル企業がトップを追い抜いて、シェアを奪うこともある。

③機関投資家好みの銘柄
コカ・コーラ、ジョンソン・アンド・ジョンソン、ゼネラル・エレクトリックのような実績のある成熟企業である。

④業績回復銘柄
業績回復した銘柄は、直近2~3四半期の決算が極めて良く、大幅な増益か過去の最高益に近い場合に買う。コスト削減以外で利益を上げているか、財務状況はどうかチェックする。株価が順調に上げているかと、ファンダメンタルズが強くなっているかを見る。

⑤循環株
自動車・鉄鋼・化学などの景気に敏感な銘柄が循環株である。循環株は株価の上昇前にPERが高く、上昇の終わりごろにPERが低くなる。循環株では在庫と需給を見ること。増益が続き良いニュースがあり増配されPERが低くなると天井で、減益が続き悪いニュースがありPERが高くなると底入れの時期である。

⑥かつての先導株と出遅れ株
出遅れ株は、売上や利益の伸び、株価の動き、すべてで劣る。手出ししないこと。

・下落相場の底入れは、特定のいくつかのセクターから始まる。市場全体が大底をつける前に強気相場の上昇を始めることもある。個別銘柄を監視して相場を主導するセクターを見つける。相場を主導するセクターに投資するのが良い。

・あるセクターの先導株(トップ企業)の業績が悪化したときは、業界全体が悪化する前兆のおそれがある。

 

ファンダメンタルズ

利益こそが重要である。利益の大きさ、収益の持続性、利益の見通しの確かさが株価にとって重要である。ポジティブサプライズがあり、業績予想を上回っている会社を買え。
過去2~3四半期に、前年同期比で最低でも20~25%は増益となっていること。本当に成功している会社は、40~100%以上の増益率となる。利益の伸びが四半期ごとに加速していると望ましい。売上も増加していることを確認する。年間EPSが伸びていたり、過去最高益であると機関投資家は好む。

急成長してきた会社の増益率が減速したら、危険な兆候だ。

・営業外収益や一時所得ではなく、中核事業からの利益か確認せよ。会計を取り繕って好調を装っていないか、見極めよ。経費削減のみで利益を上げている場合、それは続かない。売上と利益率が増大していること。また、市場全体や会社のシェアが拡大していること。

・利益率を見る。業界平均と比べて純利益率が高ければ、競争優位性がある。

・決算発表後、株価の動きを見て市場の反応を確かめる。
①最初にどう反応したか。
上昇したか下落したか?下落後は元の水準まで戻したか?自律反発後に再び下落したか?
②その後の抵抗は。
上昇はどのくらいの期間持ちこたえて、利食い売りに抵抗したか?
③反発力は。
調整後に素早く力強く反発したか?それとも下落後に上昇できないか?

・会社発表の業績予想は、経営陣の公式な見通しである。求めているのはポジティブサプライズな決算と、非常に高い業績予想である。

・売上高に対する在庫の増減を確認する。売上の増加以上に在庫が増加していれば、注意する。売上より売掛金の増加が速いときも注意。

売上、EPS、純利益率の3つが3四半期連続で加速している会社を探せ。

 

先導株

強気相場での利益のほとんどは、最初の12~18カ月で得られる。最も良い銘柄の上昇を逃さないために、先導株を追うこと。
弱気相場が底入れすると、最も下落に抵抗していた先導株が最初に転換する。主要株価指数が上昇を始めるころには、先導株は新高値圏にある。相場が下げている間に調べておくことが重要だ。
先導株は下落相場への転換も早い。主要株価指数が天井に達するころには、先導株の多くは下落を始めている。

・新しい上昇相場が始まると、最初の上昇局面は力強く、買い場はない。押し目買いの機会はほとんどない。大底からの上昇初期に先導株に注目せよ。
強気相場では先導株、同じセクターの株、市場平均、出遅れ株の順に上昇する。下落相場でも持ちこたえて、新たな強気相場の最初の4~8週間で新高値をつける先導株を逃さないこと。

相場の底入れの印
①先導株の第1波が現れて、階段状にベースをつくる。
②先導株は少ししか下げず、下げても素早く回復する。
③大半の先導株は安値を切り下げることがない。
④主要株価指数の出来高が、下げる日より上げる日の方が多い。

先導株は最も強いものから買うこと。高値圏に最初に入り、強い値動きをする銘柄から順に買え。何に投資すべきかは、個人的な相場観ではなく相場の強さで決めること。

急成長株には利食い売りの計画が必要である。急上昇局面が終わると、上昇幅のほとんどを失う可能性がある。先導株は下落局面では厳しいので、損切りして手仕舞う計画も必要だ。強気相場で先導株となった銘柄は、通常は次の強気相場では先導株にならない。

 

チャート

チャートは買い手と売り手のすべての動きを表している。チャートはトレードのタイミングを計り、リスクを管理して利益を得る確率を高めるために使う。
チャートではまず長期トレンドを見る。第2ステージの上昇トレンドの、適切なベースを探す。適切なベースでは、左から右に向かってボラティリティが低下する(出来高も減る)。横ばい期間で弱い保有者が取り除かれ、売りが枯れる。

・高値から50%下げたからといって、割安とは限らない。ファンダメンタルズに問題があるかもしれないし、大量の戻り売りも発生する。調整幅が小さい銘柄の方が、成功の可能性は高い。

・適切なベースが形成されるまで待った方が良い。また、1~3回振るい落としがあるまで待った方が良い。出来高を伴う株価の突出高は、機関投資家による買い集めの兆候である。最適な買い場では、出来高は少ない。

・急成長株として、新規事業から1~2年以内の若い会社を狙う。ただし、上場後に健全な第1ベースが形成されていること。

 

リスク管理

株式市場で一貫して成功するために、最も重要なのはリスク管理である。毎日大引け後、自分のポジションを率直に評価する。今とっているリスクと、将来期待できるリターンを評価する。リスク管理という基本原則を怠ってはならない。

・損切りは早くすること。株価が50%下落したら、100%上昇しないと損失は取り戻せない。10%の下落なら11%の上昇、5%の下落なら5.26%の上昇で損益ゼロとなる。1トレード当たりの平均利益を求め、その2分の1の水準で損切りすべきである。ただし損切りの水準は、10%を超えないこと。

・永遠に倒産しない、値下がりしない安全な優良株は存在しない。

・負けトレードの損失より勝ちトレードの利益が長期で大きくなれば、成功できる。株式市場では確率に賭ける。規律を守り、確率の高い状況でのみトレードをする。

感情に従わず、規律を守って自分の戦略を遂行しなければならない。良いトレードは退屈だが、悪いトレードは刺激的である。事前に緊急時の対策を考えておき、常に更新しておく。混乱や驚きなしにトレードすることが目標である。
①株を買う前に損切りの水準を設定する。上昇したら手仕舞う水準を引き上げる。
②損切りした株でも、セットアップが再び整えば仕掛け直す。
③利食いの計画も立てる。急上昇後に買い疲れが起きそうなときか、相場に弱さが見えた直後に売る。
④災害対策をする。インターネットの接続が切れたり、停電したらどうするか?

・負けが続く(損切りに繰り返し引っかかる)ときは、銘柄選択に問題があるか、市場環境が厳しいかである。失敗が続く間は、取引額を減らすこと。

・ナンピン買いをしてはならない。正しい買い場で買った後に下げているなら、それは危険信号である。

・現金から株へポジションを移すときは、徐々に進めるべきだ。小さなポジションから始め様子を見て、うまくいけばポジションを大きくしていくのが良い。

・ボラティリティが大きくなっているときは、市場環境が厳しいときがほとんどなので、損切り水準を狭くする。利食いも早くする。

・ポートフォリオの持ち株は4~6銘柄、多くても10~12銘柄までが良い。

 

書評

成長株投資の解説書です。著者は30年以上の経験がある個人トレーダー出身で、高パフォーマンスを記録した方です。成長株投資についての本は、以前に数冊読んだことがありますが、大筋では似た内容でした。投資戦略としては、標準的な成長株投資手法のように感じました。

トレードを行う水準を部分的に数値で記述していますが、文章での解説も多いです。トレードのルールを完全にマニュアル化しているわけではないので、自分で考えて取引ルールをつくらなければなりません。

著者はまだ現役のようで、2012年頃の米国株まで話が出てきます。近年はアルゴリズム取引や超高速取引などが幅を利かせていて、個人が手作業でする取引に勝ち目があるのかと考えることもありますが、まだやっていけるようです。アベノミクス相場を体験したあとで、本書の弱気相場と強気相場の解説を読むとかなり正確だと思いました。
(書評2014/05/05)

「オニールの成長株発掘法 第4版」 ウィリアム・J・オニール(著)

 

急騰する成長株を具体的な基準で選び出す、成長株投資の方法論です。成長株の特徴を見切り、資産をふやしたウィリアム・オニール氏の著作です。

おすすめ

★★★★★★★☆☆☆

 

対象読者層

株式投資について勉強したい人。特に、数か月から数年かけて上昇する成長株を発掘したい人。

 

要約

大化けする銘柄を発見するための要素を、CAN-SLIMとしてまとめた。
C(Current Quarterly Earnings) 当期四半期のEPSと売上。
A(Annual Earnings Increases) 年間の収益増加。
N(Newer Companies, New Products, New Management, New Highs Off Properly Formed Bases) 新興企業、新製品、新経営陣、ベースを抜けた新高値。
S(Supply and Demand) 株式の需給。
L(Leader or Laggard) 主導銘柄か停滞銘柄か。
I(Institutional Sponsorship) 機関投資家による保有。
M(Market Direction) 株式市場の動向。

チャートを研究せよ。
チャートパターンが認識できれば、売買タイミングが大きく改善される。(本書には100銘柄のチャートが記載されている。それぞれチャートパターンの解説がある。)

直近四半期のEPS増加率(前年同期比)が高いこと。
25~30%は最低でも必要だ。また売上も、直近四半期で25%以上増加していること。EPSや売上は、2~3四半期続けて増加しているのがよい。

過去3年連続で、年間EPSが増加していること。
年間EPSが安定して、25%以上増加していることが必要だ。またROEも高い(17%以上が望ましい)こと。

・PERは、株式の売買判断にはほとんど役に立たない。

新しいサービスをつくる新興企業、新製品、新経営陣などが、大きな株価上昇をもたらすことがある。また、新高値を更新した株式も、さらに上昇する傾向がある。この場合、チャートを見て正しいタイミングで買う。

発行済み株式数や浮動株の数、日々の出来高をみて、株式の需給を確認する。

上昇を主導する銘柄を買い、つられて値動きする停滞銘柄は買わない。

機関投資家による保有を調べる。
成績優秀なファンドが保有している銘柄がよい。また、保有する機関投資家の数が増えている銘柄が望ましい。

強気相場か弱気相場か見極めよ。
代表的な市場平均株価の指数について、値動きと出来高を日々確認する。また、市場を先導する個別銘柄も、値動きと出来高を確認する。

買値から8%下落したら損切りせよ。例外はない。
8%以上下落したなら、銘柄選択の誤りか、買いのタイミングの誤りか、市場全体の下落の始まりである。成長株で利益をあげるには、損切りのルールを守らなければならない。

利益確定は、テクニカル指標を確認して売る。
売りのテクニカル指標については、本文で詳細な解説がある。

・そのほか、分散投資、長期投資、信用取引、空売り、オプション取引、新規株式公開、投資信託、外国株、債券などについて。

 

書評

成長株投資という手法を、私はよく理解していませんでした。本書は、成長株への投資手法として、ひとつの基本形かと思います。かなり勉強になりました。
本書は米国株式市場を研究した内容なので、日本市場での応用には、少し工夫が必要かもしれません。しかし大きく化ける成長株で収益をめざすときに、基本的な考え方として押さえておいてもよいと感じました。
チャートの有効性に関しては、私自身はどこまで意味があるのか、何ともわかりません。
(書評2013/07/27)

「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力」 メアリー・バフェット/デビット・クラーク(著)

当代随一の投資家バフェットに学ぼうという本です。バフェットが財務諸表をどう読むか述べています。バフェット自身に著作はないので、他人が書いたバフェット本は、内容が妥当かは読者が判断しなければなりません。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

対象読者層

株式で長期投資志向の人。財務諸表から、優良企業を見つけるポイントを知りたい人。

要約

・競争優位性が永続的な、スーパースター企業に投資せよ。これらの企業には、財務諸表において一貫した特徴がある。

・粗利益率が高い企業は、永続的競争優位性がある可能性が高い。粗利益率を40%以上に一貫して保持していると、その可能性は高い。

・販売及び一般管理費、研究開発費が一貫して低くなければならない。減価償却費を無視してはならない。減価償却費の割合は、粗利益に対し低くなければならない。

・支払利息、長期借入金が少ないことを確認せよ。自己株式調整済み負債比率が0.80以下ならば、永続的競争優位性を持っている可能性が高い。

・純利益が長期的に、右肩上がりで成長している企業か確かめよ。売上高に占める純利益の割合が、長期間20%以上なら永続的競争優位性がある可能性が高い。10%以下なら競争優位性はないと考えられる。10~20%ならば、他の要素と併せて検討せよ。

・売上高に占める売掛金の割合が、同業他社より一貫して低ければ、競争優位性を持つ可能性がある。

・優良企業には、優先株を発行しない傾向がある。

・内部留保が、長期的に着実に増加している企業は、永続的競争優位性を持つ可能性が高い。

・自己株式(金庫株)が存在することは、永続的競争優位性があることを示している可能性が高い。

・株主資本利益率(ROE)が、平均より高いことを確認せよ。

・キャッシュフロー計算書において、資本的支出が低いか確認せよ。純利益に対し、一貫して資本的支出が50%以下なら、永続的競争優位性を持つ可能性がある。25%以下ならその可能性はさらに高い。

書評

本書でも、学問的な理論ではありませんが、簡潔で実用的なバフェットの理論を紹介しています。いかにして、長期にわたり好業績をあげ続ける会社を探すか、要点をつかめると思います。本書の指摘するポイントを押さえれば、少なくとも倒産したり、平均以下のパフォーマンスしか出せない会社は、避けられると思われます。さらに実際の投資で活用するには、読者自身の試行錯誤と研究が必要でしょう。
(書評2013/03/17)

「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」 メアリー・バフェット/デビット・クラーク(著)

言わずと知れた投資家バフェットの、銘柄選択の考え方を紹介する本です。バフェット自身に著作はないので、他人が書いたバフェット本は、内容が妥当かは読者が判断しなければなりません。

おすすめ

★★★★★★☆☆☆☆

対象読者層

株式に長期で投資したいと考える人。長期投資による複利効果で、10年後20年後に向け資産を大きく増やしていきたい人。難易度は初級者向けと思われます。

要約

・投資家の多くは短期の視点しか持っておらず、好材料で買い、悪材料で売る。バフェットは長期の視点で考えることにより、投資で大成功した。

・株式市場は、ごく一部の消費者独占型企業と、その他大多数のコモディティ型企業からなる。バフェットは、消費者独占型企業にのみ投資をする。

・消費者独占型企業とは、消費者が商品(サービス)を選ぶとき、その企業の商品しか選択の余地がないほど、圧倒的なブランド力などの価値を持っている企業である。世界中どこの飲食店や小売店に入っても、コカコーラがあるような状況は、コカコーラ社が消費者独占型企業であることを示す。消費者独占型企業は、高い利益率で安定した利益をあげ続ける。

・コモディティ型企業とは、過当競争の業界にあり、売上高利益率やROEが低く、業績が安定しない企業である。

・安値で買うことが、投資収益率を高める。

・優良企業でも、株式の買い場のチャンスは訪れる。相場全体の下落・暴落、景気後退、その企業の一時的トラブル、構造的変化である。下落した株価から、その企業が立ち直れるだけの力があるかをよく見極めよ。再度好業績を取り戻すと確信したら、力強く買い向かえ。

・消費者独占型企業の期待収益率を、10年程度先まで予想してみる。そのうえで国債の利回りと比較して、投資効率を評価せよ。本書の中では実例に基づき、投資収益率を簡便に計算で予測したり、結果を検討している。

・高ROEの企業が、利益を内部留保として再投資することで、投資収益率が高まる。

・自社株買い戻しは、株主の富を増やす。

書評

学問的な理論ではないですが、実戦的で明確な理論です。一人の投資家の考え方なので好みは分かれると思いますが、ともかく世界で最も成功した投資家の理論です。株式で長期投資を行う人は、知っておくべき内容と思われます。いろいろな情報が飛び交い、目先の変化に惑わされそうになったときは、基本を思い起こすのがいいでしょう。優良な銘柄の株式を安く買い、利益が拡大し株価が上がる間、持ち続ければいいのです。
(書評2013/03/09)