「リスクを取らないリスク」 堀古英司(著)

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デフレの失われた20年から、インフレの日本へと変わるのか?もし本当に環境が変わるのなら、どうすればよいのでしょう。それを考える1冊です。

おすすめ

★★★★★☆☆☆☆☆

 

対象読者層

これから日本で起こりそうな事態と、その対処について考えたい人。

 

要約と注目ポイント

日本は金融の分野で遅れていると危機感を覚え、(著者は)ニューヨークでヘッジファンドを設立した。しかし20年以上アメリカで働きながら見ていると、日本人のリスク回避志向は変わっていない。頑張った人はご褒美をもらえるという原則のほかに、リスクを取った人がご褒美をもらえるという原則も日本人は知るべきだ。

日本経済は20年間も停滞している。リスクを避けることで、成長や利益が損なわれてきた。

本書では、「不利な状況に陥る可能性がある行動を選ぶ」ことを「リスクを取る」と呼ぶ。株式投資や転職など。

リスクを避け、現状維持を選ぶことで、日本は停滞に陥ってきたと指摘します。

リスクを考えるときの原則。

①人間はリスク回避的になりやすい。
②リスクがあることには、リターンが要求される。
③リスクとリターンのバランスは、需給で変わる。

リスクに対してリターン(期待値)が大きいか、考えてみる。ハイリスクローリターンな金融商品はあるが、ローリスクハイリターンな金融商品はない。

経済には、リスクの担い手が必要だ。株式投資や消費活動は、リスクを担うことで、社会生活を支えている。

リスクとリターンの関係を、正しく理解することが重要です。

日本経済の現状と、個人でリスクを取ること

アメリカと日本の金融政策について。金利、円高と円安などの解説。

リスクについては、「リスクを取ったことにより起こるリスク」と「リスクを取らなかったことにより起こるリスク」を、同時に検討すべき。

日本の高い公的サービスや生活の水準を維持するためには、経済成長が必要である。経済が成長するためには、競争して努力すること、リスクを取ることが求められる。

革新が起き経済が成長すると、格差は広がりやすい。しかし、格差問題と経済成長は別に考えるべきで、セーフティネットの整備などとともに、経済成長も追及しなければならない。対策としては、教育や職業訓練、英語の習得、移民(労働力)の受け入れなどが考えられる。

日本の累積債務、少子高齢化と人口減少から、将来は格差が拡大していくことが予想される。

経常収支と日米金利差を考えると、長期的にはこれから円安が進行するだろう。円高の時代が終われば、何もしないことが正解だった時代も終わる。

年金制度の問題では、経済成長の達成、年金支給年齢の引き上げ、移民の受け入れ、年金積立金の運用見直し、が対策となる。将来的には年金支給額の減額を覚悟しておくべきだろう。

政府債務の増大、人口減少と高齢化、格差拡大などは確実な未来と言えます。そうすると、経済成長が必要ですし、個人としても否応なく、リスクを取らされる場面が来るかもしれません。

投資・保険と、リスクの考え方

投資でリスクを取る前に、それ以外のリスクを考えてみる。

保険は、確率は低いがコストは大きい事象のためにある。生命保険は、残された家族の生活に必要な額だけ、掛け捨ての定期生命保険でかける。ほかに必要な保険は、自動車事故や住宅の火災など。

個人がリスクを取るのに、最適な金融商品は株式である。投資家が不安になりリスクを取らない時期は、リスクプレミアムが高くなり、その時期に投資できたならば高いリターンが得られる。

情報の透明性や信頼性、成長力、益利回りなどから、まずアメリカ株式を勧める。株式には長期の観点で投資すること。売却のタイミングは、お金が必要になったときに必要な額だけ売る。

生命保険や医療保険、自動車保険は高い買い物です。リスクとリターンを考えて、契約しましょう。長期投資に株式が適しているのは確かです。本書はあまり投資方法を扱っていないので、他の本でも勉強しましょう。

住宅の購入はローリスクに

①賃貸に転用できるような、良い地域の物件を選ぶ。

②お手ごろな価格の物件にする。(高すぎると相続税が問題になる。売却時に買い手が見つからない可能性がある。)

③住宅ローンは、余裕をもって返済できる範囲内とする。

④キャッシュがあっても、住宅ローンを低利で借りられるなら借りる。キャッシュは長期投資に回す。

人口減少する日本で、住宅の購入に失敗することは、とてもハイリスクな買い物になります。十分な事前の検討が必要です。

転職もリスクを取る行為

仕事を選ぶときも、「リスクを取るリスク」と「リスクを取らないリスク」を考える。他人にできないことをやっていく。人から信用されること、体力、胆力は大切だ。

実際にリスクを取る。

①事前に徹底的に分析する。

②短期で勝負しない。

③最悪のケースを想定しておく。

④失敗しても再挑戦できる措置をとっておく。また失敗を過剰に悲観しない。

将来の日本で、追い込まれた状態でリスクを取らされるなら、今、自分の方からリスクを取っていくことが、結局はローリスクかもしれません。

 

書評

想像通り、これからはリスクを取らないと厳しい環境になる、という本でした。でもまあ、その通りだと思います。頑張った人や他人にできないことをした人が、ご褒美をもらえるのが資本主義のルールだと強調されています。サボっている自分には痛い言葉です。

日本経済の今後を展望し、もはや国家が個人の生活を保障してはくれないので、対策を自分で行う必要があることを訴えています。私の場合は、1990年代後半から何となく不安は感じていましたが、東日本大震災で決定的に危機感を持ちました。

しかし、橘玲氏の本などを読むときも感じますが、本書を読んで問題意識や危機感を持たなければいけない人は、書店でこの本を手に取ることはないだろうと思います。

本書を読まなければいけない人は読まず、読むのはもうわかっている人です。資本主義が嫌いな日本人は、ずいぶん多いように思います。お金持ちへの妬みが強い社会なのでしょうか。

ところで、住宅購入の解説で、気になったところがあります。低利で住宅ローンを借り、保有するキャッシュは長期投資に回すべきと述べています。これに対し山崎元氏は、住宅ローンを返済することはリスクなしでローンと等しい利率で運用していることと同じなので、最優先で住宅ローンを返済すべきとしています。

私なりに考えを補足してみますと、住宅はあくまでも投資として冷静に検討し、資産価値がある物件を適正な価格で適正なローンで購入する。保有するキャッシュで買ったり、すみやかにローンを返済するのが保守的で安全だ。住宅ローンの利率以上で、長期に確実に運用できる自信のある人だけが、ローンを組みつつ保有するキャッシュを運用に回すのがよい。となります。
(書評2014/11/07)

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